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インフィニット・ストラトス 自由の翼

作者:ren sagiri
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クラス代表決定戦 後編……です。

○Noside

試合開始から10分ほど経った頃。

セシリアの戦力は一夏によって大半が無力化、破壊され加えてシールドエネルギーも3割を下回っていた。

「どうしてですの……?わたくしがなぜ……押されていますの!?」

彼女の残る武装はBIT1、5と右手に展開した近接ショートブレード(インターセプター)だけである。

BIT2は一夏によって両断されて大破。スターライトMk.Ⅲは銃身を途中から切断、半分にされて収束率が悪くなり威力も低下している―――撃てない訳ではないがエネルギー効率の悪化に加えて偏光制御(フレキシブル)が難しくなるためセシリアは現在、ライフルを収納している……と言う訳である。

多角からの偏光射撃を簡単に避ける、もしくは防ぐ一夏は素人とは思えない動きでセシリアを翻弄し続けていた。

……まぁ、一夏のこの反射能力は春奈の特訓と称したドラグーンによるフルボッコの恩恵とは口が裂けても言えない一夏であった。

春奈がバスルームにいることを知らずにドアを開けたら下は穿いていて首にかかっていたタオルが大事な部分を隠している健全な15歳男児の目には些か刺激が強すぎる光景を目にしてしまい―――この先は割愛しよう……いや、させてください by一夏

「―――この程度かよ。オルコットさん?……肩慣らしにもならねぇよ。」

『一夏。変なこと考えてないよね?』

プライベートチャンネルが繋がり春奈の声が一夏に届く。

なるべく平常を装いながら一夏は『当たり前だ』と春奈に返した。

回想を誤魔化そうと一夏はセシリアに話しかける。

「冗談は止して欲しいですわ、「これからわたくしの劇的な逆転劇が……っていうんだろ?」―――っ!?」

一夏はセシリアの台詞を先回りしてセシリアの言葉を自身の声でかき消す。

図星を突かれたセシリアは怒りと羞恥に顔を真っ赤に染めていた。

「こっちはこの1週間でそれなりに用意も出来たからな。―――素人相手に余裕こいて訓練怠ったんだろ?」

「くっ……。」

反論できないセシリアは軽く唇を噛んだ。

一夏の言っていることが真っ当故に反論ができないのだ。……たったの1週間でここまでになる一夏もおかしいといえばおかしいのだが。

セシリアは努力と研鑽の上でBT1号機[ブルーティアーズ]のテストパイロットに選ばれたが、対する一夏は実験体として1週間前に白式を受理した。

つまり、この戦いでは稼働時間の長いブルーティアーズが有利なのは必然だったはずなのだ。

因みに一夏も装備の不知火を破損して仙花も中破してリニアが使えなくなってしまっている。

ただ、雪片弐型はほぼ無傷で健在だ。

「ブルーティアーズ!」

セシリアは最後の意地を見せつけんと一夏に向けてミサイルビットとレーザービットを起動する。

ユニットから射出されたミサイルが一夏に迫る。レーザービットも出力を落として射撃する。

これは秒間5発のレーザー弾を撃ち出す速射設定の連射モードだ。

威力は大したことがないのだがレーザー射撃の雨による牽制に使える。

ただし、威力に対してエネルギー効率が悪く燃費が悪いのがネックだ。

「……そろそろ幕引きにしようぜ。」

一夏は急発進と急停止を使い分けた緩急のついた動きでセシリアの雨のような射撃を回避してミサイルを両断する。

一夏は白式のスラスター内部に溜めていたエネルギーを一気に放出する。

すると、機体が慣性に従って急加速する。これは春奈の十八番瞬間加速(イグニッション・ブースト)だ。

一夏の秘策とはこの技能だったのだ。

一夏は弾丸のような速度でセシリアに肉薄する。その途中で一夏の意思に応えた白式が雪片弐型の刀身を開き、そこから白い光刃を発生させる。

白式が零落白夜を起動したのだ。

―――セシリアはチェックを掛けられたのだ。

しかし、一夏の袈裟斬りがセシリアの肩に触れかけたときにそれは起こった。

「……え?」

セシリアは斬られることを覚悟して目を瞑っていた。が、斬撃の感覚も衝撃も来ない。

セシリアが目を開けると白刃が肩に触れかけのところで止まっていた。






……寸止め。






「どうして……どうしてですのっ!?」

「……斬る気も失せた。」

「……は?」

「大の男が女相手に何やってんだろうな。」

「何の話ですの?」

一夏はしばらく黙るとセシリアにこう告げた。

「俺は誇りに背くようなことはしない……したくない。自分の都合で人を傷つける奴は許せないけどお前は心の底から周りを見下してるようには見えない。だからこそ、斬る理由がないんだ。」

セシリアは呆気にとられた。こんな男がいたのか……と。

自分の誇りに従って生きる、強い瞳の男。

「完敗ですわ……。わたくしの負けですわ。」

セシリアはそう言いながら背を向ける。

『セシリア・オルコットの降参により試合終了。勝者、織斑一夏。』

この瞬間、一夏のクラス代表就任が決まった。まぁ、どっちに転がっても一夏にとっては損しかなかったわけではあるのだが。




○side春奈

クラス代表戦は一夏の勝利に終わりました。

うちの弟は変なところで甘ちゃんな紳士ですから困ったものですね。

まぁ、そこも含めて一夏の良いところなのですがね。

さて、私は今回の戦闘データを整理する作業に取り掛かることにしますか。

コンコン

む?お客でしょうか。

「開いてます。どうぞ~。」

「じゃ、遠慮なくお邪魔するわよ~。」

「……邪魔するなら帰ってください。」

「……春奈ちゃんヒドい。」

「冗談ですよ楯無さん。お茶淹れますからそこにかけて待っていてください。」

「お気遣い無くね。」

バッと開かれた彼女の口元を隠す扇子には[期待]の文字。

私が簡易キッチンにてお茶を入れている間に暫し回想。

更識楯無さん。IS学園の生徒会長と言う最強の称号を保持する学園最強です。マーシャルアーツ・古武術などの体術、剣術を極めているとの噂もある現ロシア代表のIS操縦者でもあります。

って、私は誰に説明してるんだろう。

「春菜ちゃん、和菓子も持ってきてるから緑茶にしてね~。」

「そうだと思っていたので緑茶を入れましたよ。」

「相変わらずな鋭い直感だねぇ。おねーさん感心しちゃう。」

「嘘ですよね?」

「半分だけ嘘。おねーさんからすれば春菜ちゃんはまだ生まれたばかりのウミガメだからね。」

……例えがイマイチ分からないなんて言えない。バレたら―――

「その顔は意味を理解してくれなかったってことかな?」

「例えがイマイチです―――あ。」

「んもー素直なんだから。」

椅子から立ち上がり両手をわきわきとさせながらこちらに来る楯無さん。

「教養のない子はお仕置きしないとね♪」

「っ!!」

机の上の扇子の文字が変わり[理不尽]となっています。……不幸ですね。

「そんじゃあ……イッツショウタイム!」

「い、いやぁぁぁぁぁ!!」

このあと私は2分間笑わされっぱなしでした。くすぐられてですがね!




○Noside

セシリアは熱めのシャワーを浴びながら物思いに耽っていた。

「……織斑一夏。」

その名をつぶやきそっと自身の唇に指を添える。

高鳴る鼓動、昂ぶった気持ちに比例して早鐘の速度を増す心臓。

セシリアは今まで味わったことのないキモチに戸惑っていた。

セシリアの両親は変わった人だった。だったと言うのは両親が他界しているからだ。

母はセシリアの目標であり憧れだった。そんな母の機嫌を常に伺う気の弱い父を見て育ったセシリアは自然と情けない男とは結婚しないと思うようになっていた。

そして、理想の強い瞳を持つ男と出会ってしまった。

―――知りたい。

このキモチの根源が。

―――深く知りたい。

一夏のことを―――好きになってしまったから。

シャワールームはただただ水の流れる音のみが木霊していた。 
 

 
後書き
1025室にやって来た生徒会長楯無の目的とは?

「春菜ちゃん。生徒会(うち)のメンバーにならない?」

次回インフィニット・ストラトス 自由の翼

春菜、庶務就任

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