| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

万華鏡

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六十一話 日本シリーズその二

「あのユニフォームを着てたのよ、田渕さん」
「似合っていなさそうね」
「実際に似合ってなかったわ」
 副部長もこのことは否定しない。
「阪神のユニフォームの方がね」
「似合ってたのね」
「あの人は阪神のユニフォームが一番似合うのよ」
 何故かそうなのだ、田淵幸一という人は他にもホークスの監督を務めていたこともあり楽天でもコーチだった、しかしどのユニフォームよりも阪神のユニフォームが似合う人なのだ。
「不思議なまでにね」
「そうよね」
「ご本人西武時代のことあまり言われないしね」
「日本一になったのに?」
「それでもなのよ」
 何故か西武時代のことは言わない人なのだ。西武ファンにとっては残念であろうか。
「やっぱり阪神なのよ」
「成程ね」
「とにかく広岡さんの頃より森さんの頃の方が強くて」
「その西武がなのね」
「第二試合に絶対のエースを出して」
 例えば郭泰源だ、台湾から来たこのピッチャーは西武のピッチャーの中でも群を抜いてよかった。そのシーズンによってそれは渡辺久信だったり工藤公康だったりしたが。
「勝ちを狙ってきたのよ」
「じゃあ阪神も」
「とはいっても今シーズンの阪神はね」
 副部長はここで自分が愛するチームの話に入った。
「どの先発ピッチャーもいいから」
「誰が投げてもなのね」
「そうは打たれないわ」
「今のロッテ打線でも」
「そう、マリンガン打線でもね」 
 ロッテの代名詞となっている、連打つまりつながりのある打線がこのチームの伝統だ。
「勝てるわ」
「絶対になのね」
「抑えられない筈がないわ」
 今の阪神の先発ピッチャー達ならというのだ。
「誰でもね」
「それじゃあ」
「勝てるわ」
 絶対にだというのだ、このことは。
「相手にボビーがいてもね」
「バレンタイン監督ね」
「前はしてやられたわ」
 その二〇〇五年のシリーズだ、阪神は一敗地に塗れた。
「けれど今度はね」
「バレンタイン監督yがいてもなのね」
「勝てるわ」
 絶対にだというのだ。
「何があってもね」
「そこまでの戦力だっていうのね」
「そうよ、だからね」
 阪神は勝てる、いや勝つというのだ。
「一気にいけると思うわ」
「完全にね」
「一戦も二戦も」
「それからもね」
 二勝だけでないというのだ。
「三つまで負けられるけれど」
「先に四勝すればいいのよ」
 副部長は言った、これまで強く。
「あとシリーズはね」
「シリーズは?」
「っていいますと」
「こうも言われているのよ」
 副部長は一年生達にも話す、やはり強い口調で。
「短いって思った方が勝つってね」
「長いと思うよりもですか」
「短いと思う方がですか」
「シリーズはいいんですか」
「勝つんですか」
「そう言われているわ」
 こう話すのだった。
「四戦でもそれ以上でもね」
「短く感じた方が勝つ」
「それがシリーズなんですね」
「それだけ神経が集中しているってことだからだと思うわ」
 人間は集中していればその時に感じる時間は短く感じる。これは集中していれば集中しているだけそう感じることだ。
「だからね」
「シリーズもですか」
「短く感じる方がいいんですね」
「嫌なことをしていると時間が長く感じるでしょ」
 副部長はこのことも言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧