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万華鏡

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第六十一話 日本シリーズその一

                  第六十一話  日本シリーズ
 女子軽音楽部はハロウィンで行う学園内での路上ライブの準備を進めながらだった、阪神の日本シリーズの流れを見ていた。
 連日部活の最中もその話で持ちきりだった。
「第一戦は誰が投げるのか」
「それも気になるわね」
「そうよね、まずは一勝」
「そこからだから」
 だから第一戦で誰が投げるかが気になるというのだ、しかしここで副部長は部員達にクールにこう言った。
「日本シリーズは四勝しないといけないけれど」
「そうそう、絶対にね」
「先にね」
「三敗まで出来るのよ」
 クールに言うのはこのことだった。
「三つまでは負けられるのよ」
「つまり負けは許されない訳じゃない」
「そういうことなのね」
「そうよ」
 やはりクールに言う。
「三つまではいいのよ」
「じゃあ三試合は捨てられるのね」
「負けてもいいのね」
「三つ捨てて四つ勝てばいいのよ」
 言うことは単純だった、それだけだ。
 しかしだ、副部長はあくまでクールに言うのだった。
「極論すれば最初の試合は捨ててもいいのよ」
「後で四つ勝てれば」
「それでもいいのね」
「そう、第一試合で負けてもシリーズ勝ったチームなんて幾らでもあるから」
 実際にその通りだ、最初の試合を落としても先に四勝したチームも多い。これはシリーズの記録を見ればすぐにわかることだ。
「最初に一勝するんじゃなくてね」
「先に四勝する」
「それがシリーズなのね」
「第二戦に一番いいピッチャー出すチームもあったわ」
 副部長はこうも言った。
「エースをね」
「昔の西武ね」
 書記は副部長の話を聞いて言った、丁度休憩時間なので彼女も副部長の話に乗って言ってきたのである。
「あのチームね」
「ええ、最初にエースを出さずに二番手を出して」
「二戦目で絶対に勝つのね」
「それで第三戦ね」
 次はこの試合だった。
「ここで勝てるかどうかよ」
「シリーズの流れを掴めるのね」
「若し第一戦で負けて第二戦で勝っていれば」 
 一勝一敗だ。
「第三戦で勝てばね」
「二勝一敗ね」
「有利になってるでしょ」
「そうね、確かにね」
「流れに乗れるから」
 野球に限らずスポーツでは流れが重要だ、流れに乗れればそのまま進むことが出来る。サッカーやアメフトでもそうだ。
「第三戦が大事なのよ」
「そういうことね」
「勿論第一、第二で勝っているに越したことはないわ」
 副部長もこれをベストとしている、やはり勝つに越したことはない。ベストだ。
「けれどね、三つまで負けられてね」
「第二戦でエースを出して第三戦が重要なのね」
「そう言われているわ」
 こうクールな顔で話すのだった。
「昔の西武でもそうだったわ」
「森監督の頃ね」
「まだ広岡さんの頃は強かったけれど」
 それでもだった、広岡の頃の西武は。
「森監督の頃よりは戦力が荒かったのよ」
「田渕さんがいた頃ね」
 書記は彼の名前を出した、阪神でスラッガーだったので知っているのだ。
「というか田渕さんの西武のユニフォームね」
「昔のね」
 あの帽子にレオ、正確に言えばレオの父親の顔があった。手塚治虫の代表作の一つジャングル大帝のキャラクターだ。 
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