SHIN プリキュア
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第三話 決心
一人で歩く通学路。私は毎日一人で登校している。友達がいないわけではない。確かに下校の時も割と一人で帰ることはあるが、友達と帰ることがないわけではない。というよりも登校って友達とするの難しくない?だって下校はもう学校に皆集まってるわけで、必然的に誰かと帰ることになるでしょ。その点登校は約束でもしない限り誰かと行くことは出来ないわけ。だから私がこうして一人で登校しているって事には何の不思議もないし、哀れみとか同情なんていらないんですよ。え?ならどうして昨日の下校は一人だったかって?本当に友達と帰る帰り道を歩いたことがあるのかって?・・・う、うるさいなぁ!無いですよ無いですけどそれのどこが悪いんですか!いいじゃない、一人で帰ったって。気楽なんだよ、何かと。
そんな自問自答をしながら今私は学校に向かっている。いつもどおりの朝だ。こうして頭の中で何かに向かって話しかけながら登校するのが私の日課だ。まぁその内容と言えば自分の弱いところをただひたすら開き直るという何とも切ないものなのだが、今更やめることなど出来ない。なぜならまずこれは日課だから意識しないで勝手に始めちゃうし、こうすることで自身のアイデンティティーが保たれているのだから。常に開き直ってないと生きていけないのだよ、ははは。さて、しかし実はというと、今日の私はいつもと少し違う。こうして日課をこなしているし、自身のアイデンティティーも保っている。いつも通りの大して面白くないフツーの人生を歩んでいる。それにも関わらず今日の私はいつもと少し違う。どういうことかというと・・・。
「はぁ・・・。」
どうしたものだろう、そんな感じのため息が出る。いつも通りの朝、いつも通りの通学路、そしていつも通りの私。その中にひとついつもと違うあるものが混じっている。それがこの、今私が右手に持っている謎の携帯電話。そいつは最高にエキセントリックでアバンギャルドなデザインだ。どっからどう見ても市販されているものではない。そうとう強い個性を持つものにリメイクされてしまっている。何でかは大体分かる。これは私が昨日学校からの帰り道に出会ったそれはそれは奇妙な方々の内の一人から頂いてしまった携帯だからだ。超非現実的でぶっちゃけありえない昨日の出来事は、完全に私の脳裏に焼きついている。今朝起きた時私は全てを理解した。あの時の出来事は夢でもなんでもない、現実だったんだってことを。
「あぁ・・・。」
朝起きて第一声がそんな声だった。
「マジか・・・。」
思わずそんなことをつぶやいた。なぜなら昨夜机に置いた携帯電話が今朝ちゃんと机の上にあったからだ。理由はそれだけじゃない。昨日私は怪物に迫られた時尻餅をついた。その時に体を支えた両手をすりむいて、怪我をしていたらしいのだ。昨日はあまりの出来事の連続に手のひらなんぞにに気を使っているヒマなんてなかったし、それよりも非現実を否定するための試行錯誤で頭がいっぱいだった。だから全く気づかなかったのだが、今朝起きて冷静になった時手に痛みを感じ、よく見ると少し擦りむいていた。よくあることだ。その時は気づかなかったけどなぜか指先が切れていて「あぁ、あの時紙で切っちゃったのかな」みたいなこと。いわゆるそれだ。こうなった以上、おそらくもう私が考えられる範囲であの非現実を否定するケースは浮かばない。
そして私はいつも通りの登校へとしゃれ込むわけだが、その心境はいつもと違った。今私に何が起きているのか、これからどうなるのか。果たして次はいつあの方々にお会いすることになってしまのか。もやもやっとしているのが現状だ。
でも、それに対して凄く不思議なのだ。私は昨日あんなに異常な出来事に出くわして、信じられないようなものをいっぱい見せられて、凄く凄く疲れたし緊張したしドキドキしたっていうのに・・・なぜか、なぜか心は安らいでいるというか、不安な気持ちは全くないのだ。むしろ今までより体が軽い。気のせいだろうか。気のせいかな。
「うーん・・・。」
その時だ。
―プルルルル
「うわぁ!!」
突然例の携帯が鳴り始めた!うそうそどうすんのこれ、出ていいの?出ちゃっていいの私!?しかし落ち着いて考える余裕などなく、私は思い切って電話に出てしまった。すると聞き覚えのある声が聞こえた。
「アイ?」
この声は・・・もしかして。
「アイかメイ?」
もしかし・・・いや確定だ。この語尾は完全に昨日の毛玉だ。しかしアイってことはコレ間違い電話?マジで?そんなことあるのコレ!?おどおどしていると昨日の毛玉(名前は忘れた)はどんどん話し続けてしまった。
「買っておいたメイ。えっと何だっけメイ、そうそう赤丸ジャンピングとかいうやつメイ。これでよかったメイ?いっぱいあってよくわかんなかったけどたぶんこれだよねメイ?アイ?」
赤丸少年ジャンピング・・・?待てよ、何だかいやな予感がする。今日は確か・・・そうだ、週刊少年ジャンピングの発売日だ。一方赤丸少年ジャンピングは別に今日の発売ではないはず・・・ということはつまり今ヤツは
「母さんコレ頼んだやつじゃないよ!!」
「あらホント?ごめんなさいねどれも同じに見えたもんだから。」
「なんだよもー!」
「そんなこと言うんだったら自分で買えばいいでしょう!全く。」
「わ、悪かったよ・・・はぁ。」
現象を引き起こそうとしているに違いない!!!え?何でそんなに詳しいかって?い、いいじゃない別に!すきなのよ!マンガとかアニメが!・・・とにかく今はまず間違い電話であることを知らせて、たぶん頼まれたやつそれじゃないよ!って伝えなくては。これは、由々しき問題であるのだから!!!
「あのっ」
「メイ?あれ、アイ?」
「私アイさんじゃないよ・・・てかあなた!たぶんアイさんが頼んだの赤丸じゃなくて普通の週刊のほうだよ!!」
「えっ、これじゃないメイ!?」
「た、たぶんそうだよ。そっち高いし、アイさんがっかりするから返品して買いなおしな!」
「わかったメイィ!!ありがとうメイィ!!」
ふぅ・・・これで一安心。ん?
「何やってんだ私?」
というかヤツはどうして買い物ができたんだ・・・?
謎が謎を呼び私は途方にくれたが、同時に再再確認をさせられた。やっぱり昨日の出来事は、何一つ夢ではなかったらしい。
学校に着くと私は席に座った。そしてただ、時が経つのを待った。え?何で待ってるのかって?それは始業時間より早く着いてしまったからだ。え?そういう問題ではない?はて、私にはあなたが何を言っているのかさっぱりわからない。学校は勉強するところでありそれ以外には何もやることはない、というよりもしてはいけないのだよ!?え?言いすぎ?まったくこれだから最近の若者は。え?友達がいないんだろうって?うるさいよ。いるよ。2人。
「キコちゃんおはよぉ~。」
そらみたことか。さっそく私の友達が話しかけてきただろ?
「おはよう、えっと。」
「ユメだよぉ。」
「あぁそうだった。おはようユメ。」
「おはよぉ~。じゃあまたねぇ~。」
「うん、またね。」
うむ、やはり持つべきものは友達だな。え?今のどこが友達かって?友達だろう、どう見ても。挨拶をしたんだぞ。というか挨拶するだなんてもはや親友だろう。まったく、最近の若者は。え?名前忘れてたじゃないかって?いいかいキミ、人間の脳はね、忘れるようにできてるんだよ。まったく最近の若者は。え?会話が短い?うるさいよ。この最近の若者が。
― キーンコーンカーンコーン
あ、始まった。よーし、勉強するぞー!!
― キーンコーンカーンコーン
「ということで今日はここまで!はいじゃあ号令。はい、お疲れ様でしたー。」
「ジュルッ・・・。」ガタッ
・・・はっ!寝てしまった。いやぁー、よく寝た。うん、うん、良い睡眠だった。うん、良しとしよう。まぁそのあれだ、昨日色々あって夜眠れなかったんだろう。いや実際そういうわけじゃないけどまぁ、うん。さて、10分休みだからまた時が経つのを待つか!
・・・お気づきの方もいるかもしれない。そう、私は大体毎日毎時間をこの調子で過ごしている。やる気になっては寝て、やる気になっては寝ての繰り返しだ。そのため授業の内容はほとんど頭に入っていない。がしかし、成績は至って普通だ。なぜかは自分でもよく分からないがそうなのだから仕方ない。さて、そんなこんなで今日も学校が終わろうとしている。残すは掃除。これが終われば私はソッコー家に帰りソッコー着替えてソッコーPCを点けてソッコー椅子に座ってソッコーのんびりする。もうアニメが見たい、早く見たい!だから早く学校から出たい!・・・毎日、そんなことを考えている。私、本当に何のために生きてるんだろう・・・。
「アニメ見るためなのかな・・・。」
私はここ最近ずっとこんな生活を送っている。それなりに楽しいし、息苦しいわけではない。でも、はぁ。さっきまであんなにテンション高かったのに、またこんな気分になってしまった。どうしてだろう、どうして私は自分の生きる意味を考えてしまうのだろう。そしてその答えが見つからないのだろう。ていうかぶっちゃけ友達なんていないわ私。はぁ、考えるんじゃなかった。またウツっぽくなってしまった。昨日帰り道もそうだった。毎日変えるときは同じようなことを考えてて、そしてこの気分になって・・・。
「あ・・・。」
ずっとブレザーの右ポケットに入れていたおもちゃみたいな携帯電話を取り出し、見つめる。そうだ、すっかり忘れていた。私は昨日、いつものちょっと憂鬱な帰り道でいつもと違う世界に巻き込まれたのだった。うーん、何だろう。これはもしかすると何かのチャンスなのかもしれない、そう何となく思った。自分を変えるというか、世界を変えるというか。よくわからないけど、このいつもと違う世界は私を呼んでいる気がする。プリキュア・・・、そう、プリキュアとか言ってた気がする。もしそれになれば私は、何か変われる・・・?
はたから見れば単純な人だって思われるかもしれない。でも、何だか直感的にそう思ったのだ。この憂鬱な気持ちから抜け出せるなら、もう一度あの人たちの話を聞いて見たい・・・。そう思った時だった。
―プルルルル
「わっ!!」
慌てて出た。何でって、ここ学校の中だから!電話持ち込んでるなんて先生にバレたらまずいから!!即座に物陰に隠れ、声を押さえて電話の主に言う。
「ごめんなさい今度はどなたか分かりませんが今学校なので後にしてもらえますか・・・。」
「あっ!ごめんね!わかったまた後で!あっ、そうだ!メイメイから聞いたよ!ジャンピングありがとね!とっても助かった!じゃあまた後でね!」
―ブツッ
・・・ア、アイさん?何か・・・、凄いタイミングだったな。
「・・・うむ。」
もしかしたらこれは何かの運命なのかもしれない。そんなことを、また何だか直感的に思った。よし、学校が終わったらこっちから電話してみよう・・・。
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