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SHIN プリキュア

作者:ジサボケ
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第三把 決心

「よし・・・。」

心を整え電話を握る。無事学校も終わり、私はついに自分から非現実に向き合おうとしていた。しかし私はもともと電話が苦手だ。どこかに問い合わせることはおろか、友達に電話することすら嫌なのだ。正直今もけっこうドキドキしてるし、出来ることなら逃げ出したい。でも私には今電話をしなければいけない相手がいる。理由がある。何かを変えるためには今頑張らなければいけない気がするのだ。さあ、かけるぞ私!いざ、呼び出しいいい!!

「えっと・・・。」

しまった。この携帯電話どうやって使うんだ!?今はじめて画面をまじまじと見て見たが、明らかに一般的な使用方法とは異なりそうなメニュー画面。というかそもそも使われてる言語が日本語じゃない!!それに今日とっさに電話に出たときは気がつかなかったが、何だか受話器の出る、切るの絵もかなり独特だ・・・。やはりメルヘンの国の電話。私の現実が一切通用しないとは。まさか、こんなところでつまづくとは。せっかく気分も乗ってきたところだったのに!!

「あれ、あなたは。」

「いやぁ!!!?」

「そ、そんなに驚かなくてもいいんじゃない・・・。」

驚かないわけないだろう。私は今、はたから見ればちょっと痛い中学生。こんな変な携帯を使ってるところ、正直見られたくない!ど、どうしよう、誰だろう・・・。とりあえず、

「とりあえず振り向きましょうよ・・・。あなた昨日の、例の選ばれた子でしょ?」

「えっ・・・?」

「やっぱり。私だよ、昨日の・・・あ、そっか。」

何だこの綺麗な人は。おもわず見とれてしまった。どうやらこの人は私のことを知っているようだけど、私はこの人のことを知らない・・・。するとその人は私に持っていたかばんを突き出した。

「ちょっと持っててくれる?持てなくなるから。」

ん?意味が分からない。がしかし渡されてしまう私。
その時彼女は太陽のように光り、私の目を眩ませた。
いやいや、なんだそれ!!!こんなことありえな・・・あ!まさか!

「私シプよ。」

いやっぱりぃいい!突然私の前に現れまばゆいほどの発光をしてみせたこの人は、昨日いたモジャモジャ生物の片方だったのだ。いや、実際はこの人があのモジャモジャだとは思わなかったが、発光しちゃった時点で確信した。たぶんメルヘンの国のひとだろうなと!そしてそのモジャモジャ生物になってしまっては確かにカバンが持てない!マスコットみたいなその体では!しかしこれはラッキー極まりない。さっそく聞いて見ることにした。

「あ、あなただったのね!あ、あのさ、聞きたいことがあるんだけどいい?」

「え、ええ。いいけど、どうしたの?」

「この携帯電話なんだけど、どう使うのかな?何かことごとく意味が分からないんだ。どこ製?」

「あぁ、これシプね。あれ、なんで初期設定のままなの?アイはこのまま渡したの?」

「う、うん。設定で私にも使えるようになるの?」

「なるシプよ。ちょっと貸してごらん。」

ピピッ ピッ ピカーン!!!

いやピカーンて!また光りよった!なんだその初期設定!

「はい。」

「あ、ありがとう・・・。・・・?」

渡されたのは某携帯会社のデザインによくにた携帯電話。え?どゆこと?

「あ、あの、これは何をしたの?」

「初期設定シプよ。」

「初期設定って・・・。」

か、形変わっちゃうの!?!?どういうこと!?

「使えるようになったでしょ。あなたの普段使ってる携帯と同じ操作方法のはずシプよ。」

「えっ、これってまさか。」

自分の持っている携帯を取り出し見比べる。さ、さ、さ、

「最新式!!私の持ってるシリーズの最新式のやつだ!!」

「あぁ、確かにそうかもしれないシプね。あなた達に使えるような設定に変えるときはいつもそうなるみたい。」

あれ、今このモジャモジャなんか言ってた?いや、まあ大切なことならもう一度言ってくれるだろう。それより凄いな・・・これがプリキュアの力なのか?いや待てよ、この人がプリキュアとはまだ決まっていない。逆にプリキュアだったら少し困るぞ。私もこんな姿にされてしまうかもしれないということだ・・・!はやくあの、アイとかいう子に連絡しなければ!

「あのさ、私これからアイさんに会いたいんだ。だから連絡先を教えて欲しいんだけど、電話番号とかわかる?」

「ああ、そうだったのね。だったらつれてって上げるシプよ。どうせ私もアイのところいくし。」

「えっ、そ、そうな」

シュン!!!

「うわっ!」

ドサッ

「あ、あなた!来てくれたんだぁー!!」

え、え、えっと・・・ああああ!!テレポートで連れてかれたぁ!!

「何かあなたに会いたかったらしいシプよ。あ、あなたそのカバンかえしてくれる?ありがとう。」

ベッドに座りこむ私はいつ間にか人間の状態に戻った彼女からカバンを取られたにもかかわらず、カバンを持ったままのポーズで硬直状態。今回は自ら望んだこととはいえ、メルヘンで非現実なこの現実を受け入れているとはいえ、やはりこの人たちの展開の早さ、予想のできなさにはまだ慣れていない。いや、なれる気がしない。

「そ、そうなの!?あ、えとええと、ど、どしたのかしら?」

「何慌ててるの。よかったじゃない。大丈夫シプよ。彼女、プリキュアになりたいんでしょ。」

あ、プ、プリキュア!そ、そう、その話をしにきたわけだけど。ちょっと待って、まだなるって決めたわけじゃ・・・!

「ま、まだ決めたわけじゃないと思うよ!私全然話してないもん、プリキュアのこと。」

「そうなの?なら早く話してあげなさい。じゃあ私はご飯の支度してるから。」

「あ、うん。わかった。」

え、ご、ごはん。えっと、プリキュア。あ、あっと、えっと。

「あ、じゃあここ座って!今飲み物持ってくるからね!」

「は、はい!」

・・・ち、ちくしょう。ちょっと話を聞くくらいのつもりだったのに、というかそもそもココに向かう途中で色々考えようと思ったのに。質問とか、なんかこう色々。と、とにかく心の準備が出来ていない!なんでこんな展開が早いんだ!あ、戻ってきた。

「はい、麦茶です・・・。あとこれ、チョコとかクッキーとか。よかったらどうぞ。」

「は、はい。」

ま、またおもてなし。今度は別に私が兼ねてより食べたかったものではない(因みに今はマカロンが食べたい)。それより私はまだ「は、はい」としか喋っていないぞ。ど、どうしよう、何から話そう。

「えっと、会いにきてくれてありがとう!とりあえず連絡だけでもよかったんだけど、まさか直接会いに来てくれるなんて。」

「いや、電話の使い方がわからなかったから・・・。」

くい気味で何言ってんだ私は!嫌われたいのか!

「へっ!は!」

ほら困っちゃってるじゃない彼女!落ち着いて私!

「そしたらたまたまさっきの人が通りかかって。連れてきてくれた。」

「それでシープと一緒に!ああ・・・ごめん、携帯の使い方とか設定とか、何も教えてなかった・・・。うっかりしてた。」

「いや、も、もういいよ。済んだことだし。」

「う、うん、ありがとう。」

よ、よし。とりあえず事務的な話は終わった。なんだ、話せるじゃないか、私。いける、いけるぞ!

「そ、それより!」

「え!う、うん!」

こ、声がでかすぎた・・・き、気にするな!とっととプリキュアの話をしてもらわなきゃ!そのために来たんだ!

「プ、プリキュアの話・・・聞かせてもらえますか。」

よし!!!言えた!!

「う、うん!わかった!」

わかったあああ!!

「お、お願いします。」






「という所かな・・・。一気に説明しちゃったけど、何か質問はある?」

・・・・・・いや、質問ある?じゃない。質問だらけだ!!今聞いたすべてのことはあまりにも私が生きていた世界と違いすぎる!すべてを理解せずとも、ただ鵜呑みにしてしまえば楽かもしれない。しかしこれは人生を左右する話・・・。気軽に信じて着いて行ってしまっていいのかは分からない!ひとつひとつ・・・質問していくしかない。幸いこの空間は時間に縛られないらしいし・・・。ひとつひとつ・・・。


彼女は最初にこう言った。

「じゃあ、まずプリキュアって具体的に何なのかなんだけど。簡単に言えばこれは、選ばれた戦士達の総称。名前自体に深い意味はないわ。とにかくここで重要なのは、この名で呼ばれる人達は選ばれた戦士であるっていうこと。」

何だか昨日、メイメイ言ってた毛玉も同じようなことを言っていた気がする。なるほど、どうやら私や彼女は何者かに選ばれた存在らしい。しかしここまでは何とか理解できた。確かに今までの私であればこの時点で彼女の言っていることを聞こうともしなかったであろう。でも今は違う。今の私には信じざるを得ないとも言えよう状況と、信じたいという気持ちがある。じっと彼女を見つめ話を聞いていた。
しかしそれにも関わらず彼女の話はすぐに私のキャパをこえた。

「だからつまりあなたも決心をすれば選ばた戦士、プリキュアになるということ。じゃあ誰が私やあなたを選んだのか。それは他でもない私達の王、キングよ。」

まず私はここで小さな疑問を抱いた。王、キングとはどういうことか。それは同じ意味でないのか。犬ドッグとか鳥バードとか、そういうことになってしまうがいいのか。いや、この際そんな小さなことはどうでもいいとしよう。私が一番に抱かなくてはいけないこと、それは私達に王がいるということだ。この国には王様がいない。それどころか王様なんてもの、世界中にも数えるほどしか存在しないのではないだろうか。それともどこか他の星に私達が従うべき王様がいるのだろうか。疑問はつきなかった。
しかし私は考えた。この時点でもうこれだけ疑問が沸いてしまうということは、もしかするとこの先疑問だらけになり、話が進まなくなってしまうのではないだろうかと。
ということで、私はこれ以降も質問をせずひたすら彼女の話を聞き続けた。そして案の定彼女の話はなかなかによくわからない事だらけになってしまった。
彼女は次にこう言った。

「そしてキングは私たちを通してこの地上を変えたいと願っている。それはつまり、あなたが昨日見たスネーカーたちを倒し、スネーカーに囚われている人たちを一人残らず救うということ。」

どうやらスネーカーは人々を捕らえているらしい。具体的にどういうことなのか。聞いて見たかったがやはりあえて後で聞くことにした。

「救われた人たちは目が開かれて私達を見ることが出来るようになる。そして協力してくれるようになるわ。同じ計画を目指して。それぞれの形、役割を通してね。えっとね、見えるようになるっていうのは、どういうことかと言うと。」

そして彼女はここで、今日一番驚く発言をした。

「実は今見えないんだ、私。救われた人たちと、私達と同じプリキュアと、スネーカーに囚われた人たち以外には。」

それはつまり、プリキュアになるということは、私の存在がある何人かの人には確認されなくなってしまうということ。そしてそれは、私の友達や家族の可能性もあるということだった。





 
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