ドリトル先生と京都の狐
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第四幕その七
「日本の鬼はね」
「じゃあそんなに怖がることもないかな」
「食べられるかも知れないけれど」
皆も王子の言葉を聞いてとりあえずは安心しました、鬼に実際に出くわすかどうかはわかりませんがそれでもイギリスの悪い妖精達よりはユーモラスと聞いて安心したのです。
「童話だといつもやられるそうだし」
「極端に怖くはないかな」
「そうだね、長靴を履いた猫のあの鬼みたいなのかな」
それが近いのではないかというのです。
「オグルね」
「ああ、オグルなんだ」
「だったらちょっと頭を使えばいいね」
「オグルはあまり頭がよくないしね」
「機転さえ利かせたら」
オグルも悪い妖精です、ですがあまり頭がいい妖精でないのでちょっと頭を使えば長靴を履いた猫みたいにやっつけられるのです。
だからです、皆も言うのでした。
「日本の妖怪ってそんなに怖くない?」
「イギリスのよりもね」
「じゃあ安心していいね」
「そうだよね」
こうお話するのでした、そしてです。
そうしたお話もして嵐山に戻りました、夜の嵐山はもう真っ暗ですが灯りで道は明るいです。その灯りを頼りにして旅館に戻って。
そこでまた京都のお料理を食べます、今日のお料理もです。
「いや、いいね」
「今日の晩御飯も美味しいですね」
トミーは今は鳥を食べながら先生に応えます。
「これは鴨ですね」
「ああ、この団子だね」
「はい、これかなり美味しいですね」
煮付けです、人参や蓮根と一緒にお醤油で煮ています。味は薄いですがそれでも美味しいです。
そしてです、王子がここでも二人にお話してきました。
「これつくねっていうんだよ」
「この鴨のお団子の名前だね」
「つくねっていうんだね」
「そうだよ、そういうんだよ」
そのお団子の名前をお話したのです、勿論王子もそのつくねを食べています。
「これも日本のお料理だよ」
「ミートボールとはまた違うね」
先生はイギリスにあるそれと比べて答えました。
「日本の味だよ」
「まあ日本のミートボールだね」
「そうなるんだね」
「それでも日本のものだから」
だからだというのです、この辺りは。
「こうした味なんだ」
「成程ね」
先生は王子からそう聞いて頷きました、そしてです。
そのつくねの煮付けの傍にあった鶏の肉を焼いたものも食べてです、今度はこうしたことを言いました。
「鴨と鶏が一緒にあるけれど」
「それぞれ味が違いますね」
「素材の味が出ているから」
余計にわかるというのでした。
「余計にわかりやすいね」
「そうですね、こうしたことを味あうこともですね」
「日本料理の楽しみかな」
「そういうものですかね」
「ううん、だとすると日本料理は」
どうかとです、先生は今度はこう言うのでした。
「奥が深いね」
「味を比べることも楽しみの一つだとしますと」
「うん、イギリスではそうしたことはないからね」
「紅茶の味あてはしたりしますけれどね」
「料理ではないからね」
「そうですよね」
「京都の料理は特に」
どうかとです、先生はこうも言いました。
「素材を活していているからね」
「味付けが薄いですから」
「味の違いを確かめるのもね」
「その素材のですね」
「そこが違うみたいだね」
「そうですね、ですから」
鴨と鶏の味の違いを確かめる、それを楽しむこともまた日本料理の楽しみ方ではないかと思うのでした。そして。
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