機動戦士ガンダムSEED DESTINY~SAVIOUR~
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第二十話 母親
前書き
アウルとアビスを撃墜し、パイロットとアビスはミネルバへと。
ミネルバへ帰ってきたルナマリアは、ハイネの部屋に行き、ハイネに街で買った見舞いの品を渡す。
ルナマリア「これ、お見舞いです」
ハイネ「お、サンキュー」
ルナマリア「ハイネさん、一体何なの?この暗い雰囲気」
ハイネ「ん?ああ、何でもロドニアに連合が使ってたらしい施設があったんだ。連合のエクステンデッド、ルナマリアも知ってるだろ?遺伝子操作を忌み嫌う連合、ブルーコスモスが薬やその他の様々な手段を使って作り上げている生きた兵器。戦うためだけの人間…ステラみたいにな…そこはその実験、製造施設だったんだ。内乱があったらしくてな。子供の死体がごろごろしてた。レイもステラも体調崩しちまったぐらいだ。まあ、今は復調したみたいだが」
ルナマリア「レイとステラが!?でも、コーディネイターは自然に逆らった間違った存在とか言っておきながら、そう言うのはいいって言うの連合は?おかしくないないですか?」
ハイネ「有り…なんだろうな。少なくてもブルーコスモスやロゴスの連中らはそう思ってるんだろうぜ。負けられないな、そんな奴らには」
ルナマリア「はい。」
ハイネ「あ、それとエクステンデットが1人、保護された」
ルナマリア「え?」
ハイネ「ああ、今は医務室で寝ているよ。アビスのパイロットだ。アビスも取り戻したぜ」
ルナマリア「施設の中にいたんですか?」
ハイネ「いや、何だか知らんがたった1機で来たんだ。施設を破壊する特殊な装備を持っていたかもしれなかったからな、ナオトとアレックスで何とか爆散させずに取り押さえた」
ルナマリア「…それって危なくないんですか?」
ハイネ「それがな、やっぱり記憶とか精神とか弄られてるっぽいな。意識を取り戻したら“母さんを守るんだ”とか“母さんが死んじゃう”とか言って暴れたが、艦長を見ると、“母さん!!”とか言って抱きついてな。艦長があやしたら、大人しくなってな。多分、母親に似てたんじゃないのか?それとも母親の姿が艦長と被ったか…」
ルナマリア「そうなんだ……艦長は今はどこに?」
ハイネ「艦長室で休んでいるよ。見舞いの品、サンキューな」
ルナマリア「いえ、ハイネさんも早く元気になってくださいね。」
ハイネ「おうよ。お前らだけに任せられないからな。早く代機が来ればいいんだがな」
そして艦長室に今までの記録が入ったデータディスクを渡す。
ルナマリア「指示されたものです。ご報告が遅れて申し訳ありませんでした」
タリア「いいのよ。騒ぎばかりあって、私もとてもそんな状況じゃなかったもの。悪かったわね、スパイみたいな真似をさせて」
ルナマリア「いえ、艦長もFAITHというお立場ですので。その辺りのことは理解しているつもりです」
タリア「ふふ…」
ルナマリア「でもあの……」
タリア「え?」
ルナマリア「出来ましたら少し質問をお許し頂けますでしょうか?」
タリア「当然の思いよね。いいわよ、答えられるものには答えましょう」
ルナマリア「ありがとうございます。アレックスさん…いえ、アスラン・ザラが先の戦争終盤ではザフトを脱走し、やはり地球軍を脱走したAAと共に両軍と戦ったというのは既に知られている話です」
タリア「ええ、そうね。記憶を取り戻した本人もそのことを隠そうとはしないわ」
ルナマリア「ですが、今回のことは…あの、そんな彼に何かの嫌疑がある、ということなのでしょうか?私達は議長に特に信任されている方ということでその指示にも従っています。ですがそれがもし……」
タリア「そういうことではないわ、ルナマリア」
ルナマリアの言葉を遮るように言うタリアにルナマリアは内心首を傾げた。
ルナマリア「え……?」
タリア「あなたがそう思ってしまうのも無理はないけど、今回に関しては目的はおそらくAAのことだけよ」
ルナマリア「あ……」
タリア「彼が実に真面目で正義感溢れる良い人間だということは私も疑ってないわ。スパイであるとか裏切るとかそういうことはないでしょう。そんな風には誰も思ってないでしょうし」
ルナマリア「はい!!会話を聞いた限りでは、そんな様子は一向に見られませんでした!!」
タリア「でも今のあの、AAの方はどうかしらね?」
ルナマリア「あ……」
タリア「確かに前の大戦の時にはラクス・クラインと共に暴走する両軍と戦って戦争を止めた艦だけど。でも今は?オーブが連合の陣営に入ろうとしたら突然現れて国家元首を攫い、そして先日のあれでしょ?」
ルナマリア「はい」
タリア「何を考えて何をしようとしているのか全く分からない。どうしたって今知りたいのはそれでしょう」
ルナマリア「はい」
タリア「アレックスもそう言って艦を離れたのだけれど。でも彼はまだあの艦のクルーのことを信じているわ。オーブのことも。本当は戦いたくはないんでしょう」
ルナマリア「ああ……」
タリア「だからそういうことだと思っておいてもらいたいんだけど。いい?」
ルナマリア「あ…はい。でしたら私もあの……」
タリア「とにかくご苦労様。この件はこれで終了よ。いいわね?」
ルナマリア「はい」
タリア「モニターしていた内容もこの部屋を出たら忘れてしまって頂戴」
ルナマリア「はい、失礼します」
ルナマリアは敬礼すると部屋を後にした。
タリア「ふう…」
タリアは目を閉じて、かつて、ディオキアでした会話を思い出す。
デュランダル『タリア』
タリア『何?』
呼ばれる自分の名前。
公私を区別していながらも時に公の場で議長はその呼称を使って呼びかけ、自分をよく困惑に落としたけれど。
今はただ、以前と同じではないけれど同じように答えて。
デュランダル『君は私に子供が欲しいと言ったが…』
確かに言った。
それで授かった子がいるから、それを後悔することはないけれど。
プラントのルールを、自分達にはどうしようもない遺伝子を、彼は何度も呪ってしまった。
あれは、本気の恋だった。
彼も自分も、偽りなく本気の恋だった。
差し出した手を握り、離した瞬間に終わってしまう恋ではなかった。
彼は誇らしげに、きっとギルバート・デュランダルを知る多くの人は見たことがないだろう。
彼等を除いて。
彼のその子供じみたとも言えそうな、誇らしげな顔。
デュランダル『私にも、子供がいるのだよ』
彼の孤独を彼等が癒してくれた。
デュランダル『3人もいてね。レイとナオト、アレックスと言って、皆とてもいい子達なんだ』
夜景に金色が映える。
何て意地の悪い人だろう。
それは自分へのあてつけだろうか?
タリア「ええそうね、とても良い子達だわ、本当に」
羨ましくて少し妬けるぐらい。
自分は彼を選べずに同じ道を歩めなかったけれど、それでも彼は幸せだったのだ。
長い長い時間を、彼と共有出来なかった自分の代わりなどではなかったのだろう、少年と少女。
彼はあの子達だけが受け止めることの出来る愛情を、注いだのだろう。
誰の代わりでもなく。
アレックスもレイもナオトも彼にとって大事な息子と娘なのだから…。
ふと、自分を母と呼んだ連合のエクステンデッドの少年の姿が思い浮かんだ。
タリアは自嘲するように呟いた。
タリア「あの子に情が移っちゃったかな…?あんな大きい子供がいるような歳でもないけれど……あなたもこんな気持ちだったの?ギルバート……」
タリアはかつての恋人の名前を呟きながら艦長室を後にする。目指すは医務室。
アレックスが談話室に向かおうと通路を歩いていた時。
ナオト「あ、アレックス!!」
ナオトは声を上げるとアレックスに走り寄った。
アレックス「ああ、ナオトか。どうしたんだ?」
ナオト「うん、ちょっとね……」
アレックス「そうか」
沈黙が2人を包んだまま、2人は歩き出す。
ナオト「ねぇ……」
歩いていたナオトがぽつりと言った。
アレックス「ん?何だナオト?」
ナオト「アレックス…、離れないよね?ずっと…一緒だよね?」
アレックス「え…?…さあ、どうなるかな。上が異動しろって言えば異動しなければならないし……」
ナオト「……AAに、行ったりしないよね?」
ナオトは勇気を振り絞ってアレックスに尋ねた。
アレックス「……」
アレックスは一瞬目を見開いたが、次の瞬間微笑んだ。
アレックス「俺は……ザフトのアレックス・ディノだ。大丈夫…ずっと一緒だナオト。」
ナオト「アレックス…ふふ。嬉しい」
それを聞いたナオトは嬉しそうにそっとアレックスに肩を寄せた。
クレア「ミネルバに配属されたクレア・トワイライトです。機体はデスティニーインパルスです。よろしくお願いします」
アレックス「ああ、昨日はゴタゴタしてたからまともな挨拶も出来なかったな。アレックス・ディノだ。よろしくクレア」
クレア「はい。」
アレックスとクレアは握手をし、そのまま会話をするのだった。
艦長が医務室に入るとアウルがベッドから起き上がる。
アウル「母さん!!」
アウルは艦長に抱き着き、艦長もアウルの頭を撫でる。
タリア「……何とかなるのね?」
「ええ。ステラ・ルーシェのデータが使えますし、彼女が服用している中和剤もありますから、早期の治療が可能です。後、艦長の存在がありがたいですな。エクステンデッドは投薬より精神操作等を中心として強化された者なので。このようにちょくちょく顔を出していただけると、精神的、容体的にかなりの落ち着きを見せます」
タリア「……では、措置は今まで通り続けて頂戴」
「分かりました」
タリア「アウル、大人しくしてて頂戴ね?」
アウル「うん」
艦長は医務室を後にすると再び艦長室に。
ミネルバはディオキアを出航、ボスポラス海峡を抜けマルマラ海を南下、ダーダネルス海峡を抜けエーゲ海に出て、ジブラルタルに向かうことにした。
現在の登場人物
アレックス・ディノ
この作品の主人公の1人。
本名は知っての通り、アスラン・ザラ。
オーブの軍人達による私刑により防衛本能が働いて記憶喪失になっていたが、ハイネのグフイグナイテッドがカオスに撃墜されたことにより、過去の記憶が蘇る。
過去の記憶と現在の人格が融合したが、基本的な人格はアレックス・ディノ。
変に悩まない分、原作のアスランより強い。
カガリとは完全に破局している。
ちなみにお相手のナオトとは両片想いの状態。
搭乗機はセイバーガンダム
シン・アスカ
原作の機動戦士ガンダムSEEDDESTINYの主人公にしてこの作品の主人公の一人。
原作同様、オーブとアスハ家は嫌ってはいるが原作程ではない。
アスランとは原作とは違い、最初から仲間であり、ちゃんとアスランが先輩?をしているため、仲は良好。
アスランとナオトからの地獄の訓練を経て、現時点の実力は原作におけるエンジェルダウン作戦時(フリーダムに武装を破壊されたのは、フリーダムと初交戦であるためとガイアの武装が破壊されたために注意力が散漫していたため。)のもの。
ステラとは恋人というには少し曖昧な関係。
ただ互いに互いを必要としている。
搭乗機はインパルスガンダム
ナオト・フジワラ
この作品のオリジナルキャラにしてヒロインの一人。
女性でありながらFAITHの称号を得る程の実力者だが、フリーダムには敵わなかった(フリーダムは核エンジン搭載で、ストライクEがバッテリー機であり、キラがスーパーコーディネーターであるため当然といえば当然)。
しかしそれでも充分パイロットとしての実力は高い。
アスランとは両片想いであるためシン達は二人をくっつけようと作戦を練っているとか。
搭乗機はストライクE
ステラ・ルーシェ
この作品のヒロインの一人。
原作では悲劇の死を遂げたが、この作品では死亡フラグを(アスランが)へし折った。
エクステンデッドであるため、ナチュラルとは思えない高い能力を持つが、精神操作を主としていたために薬物投与による強化が中心のブーステッドマンには劣る。
現在は義勇兵としてミネルバのガイアのMSパイロットに。
身体に投与された薬物の中和剤を服用しつつ、シン達と共に戦っている。
シンとは恋人と言えるかは曖昧な関係。
本人曰く“シンといると胸がドキドキする”とのこと
“アレックスとナオトをくっつけ隊”の会員の一人。
搭乗機はガイアガンダム
レイ・ザ・バレル
ラウ・ル・クルーゼと同じクローン人間であるが、詳細は不明。
ラウと同じくクローン故にテロメアが短く、残り短い命だが幼なじみであり姉のようなナオトと兄のようなアスラン。
そしてアカデミーで同年代の友人に恵まれたためか世界を滅ぼすのではなくデュランダル議長が望む新しい世界を作るために戦っている。
ちなみに“アレックスとナオトをくっつけ隊”の隊長が彼だという噂が…。
ちなみに副隊長がシンという噂も…。
更に噂によると議長も関わっているらしい…。
搭乗機はグフイグナイテッド
ルナマリア・ホーク
原作機動戦士ガンダムSEEDDESTINYのヒロインだが、この作品ではステラの生存によりヒロインフラグが粉砕され、ヒロインから降格した。
アカデミー時代から誤射をしまくったために、周囲から誤射マリアという有り難くない二つ名を頂戴した。
その代わりに格闘の能力はシンやナオトと比べても遜色が無いくらい高く、ガナーよりスラッシュウィザードを装備させたザクの方が圧倒的に強い。
しかし他が空戦が可能なのに対し、ザクが空戦不可のために他のメンバーと比べて影が薄い。
本人はグフかバビを回して欲しいとのことだが、アスラン達によって当然の如く却下された。
“アレックスとナオトをくっつけ隊”の会員の一人。
搭乗機はザクファントム
ハイネ・ヴェステンフルス
第2次ヤキン・ドゥーエ攻防戦に参加したザフトのエースパイロットで、FAITHに任命されている。
ナオトとは腐れ縁。
パーソナルカラーはオレンジで、ザクファントムやグフイグナイテッドにもオレンジ色に塗ってしまう程。
明るくざっくばらんな性格で、細かいことは気にしない主義。
しかしその一方で“戦争”というものは何なのかを理解しており、時には割り切ることも必要と考えている。
ナオトのストライクEを庇い、機体は大破したが、悪運の強さが幸いし、生き延びている。
現在は代機の申請中。
アーサー・トライン
ミネルバ艦内でおろおろしてる場面ばかりが目立つ副官。
何かと驚いては艦長に突っ込まれるのがミネルバでの基本スタイル。
ミーアの慰問ライブでノリノリだったり、ロドニアの強化人間研究所に入った際に超驚いていたりと、ザフト一のリアクションを見せるがそんな彼でもいざという時との指揮は的確である。
ちなみに趣味はエロゲでルナマリアやナオト、メイリンに見つかった際には問答無用で破壊される。
最近ではステラの情緒教育に悪いということでシンからも破壊されるらしい。
一部のミネルバクルーからはエロゲ王、エロゲ勇者、エロゲ魔人の愛称で呼ばれているらしい。
タリア・グラディス
ザフト新造艦ミネルバの艦長。
新米が殆どのミネルバでは、ベテランらしい落ち着きと決断力を持ち、胆力共に優れている。
ユニウスセブン破砕作業後、FAITHに任命されるが、ガルナハン攻略など艦長として奮闘する日々に変わりはない。
最近の悩みの種はアーサーの頼りなさらしい。
アウルに対して情が移ったことに自嘲している。
後書き
ステラに続いてアウル生存。
アレックスとナオト、微妙に進展?
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