機動戦士ガンダムSEED DESTINY~SAVIOUR~
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第十九話 連合の闇
前書き
かつての仲間と決別したアレックス。
彼は現在の仲間がいるミネルバに向かう。
誰もいない海岸でアレックスを尾行していたルナマリアは深い溜め息を吐いていた。
ラクスとミーアのこととか、キラという男が平然と条約違反をしていたこととか。
ルナマリアには大き過ぎることは上司に任せてしまおう。
それよりも。
アレックス『ルナマリアか?尾行はもう少し上手にするんだぞ』
ルナマリア「何で気がついたのよぉ」
セイバーに乗り込む瞬間こちらをばっちり見上げて呟いたアレックスの言葉を高性能な集音機は拾っていた。
不審な行動をとった覚えも気付かれるほど近寄った覚えもなかったのに。
ルナマリア「はあ、これも前大戦を生き残った赤の実力?それともクルーゼ隊だったから?」
ルナマリアにだって赤たるプライドはしっかりあるのだ。
項垂れたルナマリアはミネルバへ戻るべく周囲の機材を片づけ始めた。
ミネルバへ戻ろうとしたアレックスはミネルバが既に移動し、任務に就いていることを知った。
アレックス「地球軍の……研究施設?」
施設横に停泊するミネルバのドッグへセイバーを収納し、どこか不安気な空気に近くの整備士をつかまえた。
アレックス「何かあったのか?」
「あ、はい。施設の探索を命じられてシンとレイが向かったのですが、途中でレイが原因不明の発作に襲われて、もしかしたらバイオ汚染で放棄された ところではないかと……」
アレックス「レイが…ありがとう」
「いえ」
レイの発作はおそらく彼自身の出自による可能性が高い。
バイオ汚染であればシンも同様の症状が出てるはずだ。
まずは艦長に報告をしなくてはいけない。
アレックス「艦長。アレックス・ディノ帰艦しました」
タリア「入って頂戴」
アレックス「はっ」
部屋に入るとタリアはどこか思案顔だった。
アレックス「途中で整備士に聞きました。研究施設にてレイが発作を起こしたとか」
タリア「えぇ、シンも検査をするように言っておいたから、それで何事もなければシンとあなた、ナオトにステラ、私とアーサーも含めてもう一度探索に行こうと思うわ」
アレックス「分かりました。放棄されていたと聞きましたが」
タリア「それも最近よ」
シンの報告によると探索は入口付近で終わってしまっているが、電力はまだ生きており、最近まで使っていた形跡が各所で残されているとのことだった。
アレックス「この近辺で何かが起こったという報告はありませんでしたよね」
タリア「そうよ。だというのに研究施設が見つかり、外からの様子では人の出入りがないから調査をするようにと言われたの」
何が起こったのかじっくりと調査をする必要性が大きいようだ。
アレックス「調べてみないことには何も分かりそうにありませんね」
タリア「そう言うことよ。下がっていいわ」
アレックス「離艦報告書は今日中に提出しますから」
タリア「お願いね」
シンの検査結果は健康そのものだった。
だから言ったのにとふてくされたような表情のシンだったが、ステラの不安を払うためにすぐに忘れた。
そしてアレックス、シン、ステラ、ナオト、タリア、アーサーは研究施設へ乗り込み、長い廊下を奥へ奥へと進む。
アーサー「なんか……不気味ですねぇ」
シン「そりゃあ、こんな所にあるような施設ですからね」
必要最低限にしか明かりは点されておらず、薄暗い上に研究施設故の無機質さがどこか恐ろしく感じるのだろう。
ナオト「艦長。一応、人の気配はしないようですが、気を付けてください」
タリア「えぇ、開けて頂戴」
シンとレイが探索していない部屋まで進み扉の両側に身を潜め扉を開ける。
開けた瞬間にアレックスとナオトはその光景に流石に息を飲んだ。
ナオト「これ……は……」
シン「どうしたんですか…って、何だよこれ」
研究員と思われる白衣を着た男と幼い子供達が重なるように死んでいる。
部屋の中はいたるところに血が飛び散り赤黒い色をしている。
ステラ「あ…ああ…」
ステラは顔が青ざめ、身体を震わせ、膝をつく。
シン「ステラ!?」
ステラ「あ…ああ…!!ううっ……ああああっ!!」
身体を震わせたステラがうずくまり、叫び始めた。
ナオト「どうしたの!?」
アレックス「シン、彼女を外に」
シン「は、はい…」
シンはステラを外に運び出させる。
アレックスはそれを見届けると、周囲を見回す。
アレックス「本当に酷いな、これは。ステラじゃなくてもおかしくなりそうだ…」
アーサー「これは、一体……っ。何なんですかっ!?ここはっ!!」
堪え切れないと言わんばかりに副長が叫んだ。
その表情は今にも泣きだすんじゃないかってくらいに歪められていた。
ナオト「ん?あれは…」
入った部屋は先ほどと同様に戦闘跡といくつもの死体。
ちょうどこの部屋は中央制御室のようで、アレックスはコンピュータを起動させる。
ナオト「生きているね……」
いくつものデータが流れ出し、この研究施設の主要研究データを引き出した。
アレックス「これは」
エクステンデッド。
精神操作を中心とした強化人間。
アレックスはその中に前大戦時で交戦した地球軍の新型機パイロットの名前も見つけた。
尤も、彼は薬物投与を中心とした強化人間、ブーステッドマンだったが。
中にはステラの名前もあった。
ステラはこの施設出身の人間のようだ。
あのナチュラルにはない驚異的な戦闘能力は人為的に生み出されたものだということだ。
更なる情報をと思い、操作を続けたアレックスだったが、それは唐突に途切れた。
ナオト「……どうやらここは証拠隠滅のために破棄されたようだね」
アレックス「そのようだな。データも最新のものから消去されているが途中で断念したんだろう」
重要性の高いものから消されている。
アレックス「…この施設の出資元は、ブルーコスモスか…。“青き清浄なる世界のために”、コーディネーターを殺すためならいくらでも子供を殺して改造するのはいいんだな……」
ナオト「…最低……!!ステラはこんな所にいたんだ…」
ナオトが吐き捨てた時、突然施設を衝撃が襲った。
タリア「この揺れは、誰かが攻撃しているわ」
アーサー「えっ、えぇ~!?破棄された施設ですよね!?」
アーサーの叫びも尤もだ。
わざわざ破棄された施設を攻撃する意味が分からない。
アレックスも、ナオトも困惑した表情だが、とりあえずは避難をしなくては生き埋めになってしまう。
データディスクを回収しアレックス達は入口へと向かった。
入口まで戻ってきたアレックスの視界に映ったものは思いもかけない機体の姿だった。
ナオト「アビス!?」
アレックス「どうしてアビスがここに!?」
タリア「ナオト、アレックス。ストライクとセイバーの出撃許可します」
ナオト「分かりました!!」
施設入口に止めておいたストライクEとセイバーに乗り込み、起動させる。
アレックス「ナオト、もし施設の破壊が目的なら何か特殊な装備を持っているかもしれない。爆散させずに倒すんだ」
ナオト「了解」
アビスが単機で来た。
カオスや指揮官機のウィンダムと連携されれば厄介だが、アビス単独なら手こずる相手ではない。
アナザートライアルランチャーストライカー装備のストライクEは320mm超高インパルス砲アグニを構え、アビスに向かって放つ。
アビスは跳躍してかわすが、アレックスは後方からセイバーのグリフォン2ビームブレイドを展開し、右肩のシールドを両断する。
ストライクEはアナザートライアルソードストライカーのパンツァーアイゼンからマイダスメッサーを抜き、出力を調整してビームサーベルのようにする。バーニアを吹かして、一気に接近して左腕を切り落とし、コクピットにとどめの一撃を喰らわせた。
無論爆散させないように。
ストライクEとセイバーもアビスが動かないことを確認し傍へ降りた。
ナオト「どんなパイロットが…乗ってるのかな…?」
アレックス「開けるぞ」
アレックスがコックピットを開け、外部の光が中へと差し込む。
ナオト「あっ……この子は…」
アレックス「データにあったエクステンデッド…?」
グリップを握り、気を失っているパイロットの姿は水色の髪の少年だった。
後書き
ステラとガイアが連合にいないのでアウルとアビスがロドニアに向かい、返り討ちに遭いました。
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