戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十二章
行軍中(1)
観音寺城を落としてから数日が経った。江南の小城を攻めていた壬月達も無事合流を果たした。全ての城を平らげてからの合流で、一つ一つには特に時間は掛からなかったようだ。が、思った以上に城が多かったらしくて、苦労をしたと。それでも大きな被害もなく、皆が無事に合流できたのは嬉しい限り。
合流した織田・松平の連合軍は、観音寺城にて出陣の準備で大忙しだった。兵糧の確認や部隊の再構成に時間を費やし、準備が整い京に向けて出発。ちなみに鬼が出た時の後に俺が寝ずの番をして、次の日になって大天使化解除をし爆睡。皆に説明したが神召喚には、結構体力を持ってかれる。少し本気を出したからだと。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
馬を打たせながら、久遠はぼんやりとした様子だ。恐らく京の事、一葉の事でも考えているのだろう。
「結構長かったな」
「うむ。そうだな・・・・」
口数は少ないが、今はいいだろ。
一葉達と出会ってから、もうどのくらい時間が経ったのか。鬼を駆逐するために、上洛のため、準備を重ねてようやく一歩を踏み出せる。
「これから何が起こるか未知数だけど、やらねばならんだろ?でもやらなければいけないじゃなくやってやるという考えの方が気が楽だろう?」
「一真には何でも御見通しだな」
「まあな。じゃ、俺は隊の方に戻る。呼ぶ時は呼んでくれ」
「うむ・・・・」
久遠と別れ、俺は後方にいる一真隊に行った。隊に戻ると小隊長格が頭を寄せ合って、何かを話していた。
「あらハニー。お帰りなさいまし。久遠様とのお話は、もう良いんですの?」
「うむ。少しは肩の力を抜けと言ってきたし、これ以上言うのは野暮だ」
「さすがお頭。久遠様の事、たくさん分かっていらっしゃるのですね」
「付き合い長いしな」
と言っても、この世界に来てまだ1年も経ってない。そう考えると時間は早いんだと思うが、たぶん拠点では数時間しか経ってないと思うし。
「やる事はもう決まっている。上洛して、一葉と合流してから越前だ」
「越前の様子はどうなっているんでしょうね?それに小谷も」
「お市様、ご無事かなぁ」
「大丈夫ですよ。浅井家棟梁の眞琴様は、類い希なる武士であり、家中にも海北、磯野、赤尾などの強者が多く、団結力もある。今のところ、鬼に負ける様子は皆無です」
「ですが、戦線の維持もいつかは限界は来てしまいますわよ?」
「ふむ。さすが近江の麒麟児。鋭い戦略眼ですね」
「武士として当然の事ですわ。おーっほっほっほ」
「梅さんが仰ったように、小谷の城は、今は大丈夫かもしれませんが、そこの所はどうなのですか?一真様」
俺は今通信機をはめているので、しばらく無言になっていた。それを見た詩乃達は、静かにしていたが情報を聞き終わると詩乃の方に向いた。
「まだ大丈夫だ。俺らには天の眼がある。今の状況は心配いらんが、我らが遅ければ・・・・」
「保たないかもしれない・・・・って事だね」
「うわーんっ!お頭ぁ、早く上洛して、お市様を助けに行きましょうよぉ!」
「無論だ。三好と松永をさっさとぶっ飛ばして、市のところへ向かおう。力を貸せよ、ひよ」
「はいっ!」
「おう一真。観音寺攻めでも大活躍だと聞いた。六角の頸を刎ねたとな」
「よ、桐琴に小夜叉。こんな後ろにまで下がって来てどうした?まだ観音寺城攻めの時の事を拗ねてるのか?」
「別に何でもねーよ」
「かかっ!観音寺攻めではワシの勝ちだ。だが、一番の功労者は一真だな。今度こそワシ達が頸をもらう。三好・松永との喧嘩でも気張ってみせろや」
「うっせーよ。あんま偉そうに言うなよ母ぁ。次はぜってぇー負けねーからな!あと一真もだ」
「ぐははっ!やれるもんならやってみぃ」
「前回は頸だけだったが、今回はどうかな?」
「うーーーーーーーー!」
イライラしながら唸る小夜叉を見て、俺は余裕を見せ、桐琴はゲラゲラと高笑いだ。俺もそうだが、この親子も相変わらずだな。まあ煽りまくる桐琴と、煽りを受けて徐々に怒りのオーラを立ち上がる小夜叉。そんな二人の様子を見ながら通信機で、確認しながらだった。俺以外の者達は巻き込まれないように口を噤み、出来る限り、存在感を消そうとしていた。だが、空気を読まずに絡んでくる者がいた。
「何ですの、この野蛮な方は」
「んだコラァァァァァァァァァァ!!!」
「何ですのうるさいですわね・・・・全く天兵とまで称される織田の美々しき軍勢の中に、これほど野蛮な兵卒がいるとは。美しくありませんわね」
「誰が兵卒だ、ああん?やんのかコラ?あ?いつでもやってんぞコラァァァァァァァァ!!!!!」
今にも槍を出そうとしている小夜叉に慌てずに冷静に止める。
「まあまあ、落ち着け。今は京に向けて全軍が行軍中何だから、問題起こすと久遠に怒られるぞ?」
と言いながら、小夜叉の怒りを回収させてその場で霧散させる。そんで、小夜叉に落ち着くようなオーラを流し込んだ。
「分かったよ」
ふう、やっと落ち着いてくれたのかとホッとする俺だった。
「おほほほほほほっ♪野人のちんくしゃが、何を吠えていらっしゃるのやら。さっさとご自分の隊にお戻りなさいな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・コロス!」
「・・・・っ!?」
あーあー、梅何て事させるんだよ。やっと怒りが収まったのに挑発すんじゃねえよ。
「な、何をなさいますのこのちんくしゃ!」
「おいこら。俺の事をからかって良いのは、久遠様と一真と母だけだ。次言ったら、マジでその頸、刈り取るぞ?分かったかこのちょろぎ女」
ちょろぎ・・・・くるくると、バターロールみたいな形をした植物。梅のクルクルと良く似ている。ちなみに恋姫†無双で言ったら曹操や袁紹みたいな髪型。
「ちょろ・・・・な、な、なっ」
「何だぁ?髪にちょろぎ付けまくってるちょろぎ女、何か文句あんのかコラ?」
「この可愛らしい巻き髪を、よくもちょろぎ扱いしましたわねっ!許しませんわっ!」
「ああんっ!?やんのかコラァァァァ!」
「貴様らいい加減に落ち着かんか!この馬鹿者共が!!!!」
と言って俺は殺気と覇気を解放しながら、ハリセンを出した。
「は、ハニー!?」
「あわわわ、この状態になった一真は誰にも止められねえぞ」
「貴様らきゃんきゃん吠えてやかましい!そんなに吠えたいのなら俺がやってやるぞ!ゴラァ!!!!」
そして、馬から飛び降りてハリセンで何度も叩き殴った。
「だいたい、この騒動になった原因は挑発した貴様だ。あの空気を読まずして何が一流の将だ!貴様もだ小夜叉。一度は収めた怒りをまた出すとは俺がやった意味がねえだろうが!!!!」
そして、説教から数分後、梅と小夜叉は顔を青くしながら元の位置に戻った。さすがの桐琴も、俺の殺気と覇気で一緒に戻っていったけど。後程聞いた話では俺の隊より前にいた者達は、俺の怒号が聞こえたんだと。さすがの久遠でも、あの状態になった俺は止められんと言っていたようだ。
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