戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
十一章 幕間劇
歓迎会×神の鉄槌
「ころ。野菜は全部切っても平気?」
「はい。今日は人数が多いですからね。出してある分は全部切っても構いませんが、それは小刀ですか?」
「ああこれ?これは俺が良く使うナイフという物だ。戦闘用ではなく調理用のだけど」
「へー、色々あるもんなんですね」
と言いながらも、次々と切る俺だけど。それに戦が終わった後はお腹減ったと思うし。
「一真様。寝床の支度、整いました」
「ご苦労さん」
「鞠もお手伝いしたのー!」
「そうか。鞠もありがとな!」
「えへへー」
「それと一真様。小波ちゃんが、寝床はいりませんって言ってきたんですけど」
ああ、小波なら言うだろうな。忍何だし、たまに軍人で立って寝る奴もいるし。この時代で言うなら身分の違いとかだろう。
「とりあえず準備しといて」
「はいっ。そう仰ると思って、詩乃ちゃんと一緒に勝手に準備しておきました!」
流石だな。二人とも俺の考えをよく分かっている。一真隊は身分とか関係ない部隊。
「ですので、小波さんへの説得はお願い致します」
「了解した」
まあ無理に命令とかで、縛るのはアカンと思う。何とかなるだろうと思いながら野菜を切っていた。
「すみません、一真様」
「ん?どうしたの。エーリカ」
「はい。少し、お願いしたい事がありまして」
俺に用があるようだが、何の用かな。
「一真様。ここは私達でやっておきますから、エーリカさんの方に行ってあげてください」
「そうか。なら任せる」
と言って調理用ナイフを洗ってから拭いて鞘に戻した。
「ひよ、詩乃ちゃん。手伝って」
「はーい」
「承知致しました」
「鞠は・・・・」
「ここは三人で大丈夫だから一真様のところに行ってくれる?」
「分かったの!」
「それでお願いというのは何だ?」
「はい。梅さんに・・・・」
という事で梅を呼んだら観音寺城の見学に回った。城好きだからな、エーリカは。
「あちらに見えるのが本丸、その上が伊藤丸ですわ」
「観音寺城というからには、観音寺というお寺もあるのですか?」
「ええ。私達がこれから向かうのは、まさしくその観音寺方面ですわ」
梅の流れるような説明に、エーリカは真剣に頷き返している。
「エーリカは本当に城好きなんだな」
「はい。・・・・申し訳ありません。戦闘が終わった後の慌ただしい時なのに、こんな事をお願いしてしまって」
エーリカの頼みは、他でもない。観音寺城に通じた梅に、城内案内をしてほしい。その口添えを俺に頼めないかという事だった。
「一人でも歩いてみたのですが・・・・曲輪の多さに、驚いてしまって」
「別にいいよ。俺も観音寺城のある程度は把握しておきたかったし」
葵達も城内を探索に出ているとは聞いていたけど、俺達も全て把握はしてない。
「別に、貴方のために引き受けた訳ではありませんわ。天守教の司祭様のお願いだから引き受けたのですのよ?」
「引き受けてくれればそれで十分だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
顔合わせの時にエーリカは梅とも面識が出来たはず何だが、わざわざ俺を通したのは、たぶん梅の態度を含めて色々と気を使ってくれているのだろう。それに俺は神だし、デウスとも面識もある。まだ梅が俺が神で創造神である事は知らないはず。
「ふむ。どの曲輪にも池があるんだな」
「そんな事も分からないようでは、この蒲生忠三郎賦秀を使いこなす事など夢のまた夢ですわよ?」
「しょうがないだろう?俺はこの時代の人間じゃないのだから」
「お城では、水の確保は基本なの。たくさんあっても困らないけど、なかったらとっても困るの」
「この辺りは水源は豊富なのですか?」
「もちろんですわ。それもあって、この繖山に城が築かれたんですのよ」
なるほど。水がしっかり確保できるなら、籠城戦になっても耐えられるという事か。
「あーーっ!一真様ーーーーーーっ!」
「ぐえっ!」
上の曲輪から飛んできた声に反応した時には遅かった。俺の腹に打ち込まれたのは、細見で勢いのある弾丸のような。
「あ・・・・綾那・・・・」
「ひゃ!?な、何ですの!敵襲?」
「あーっ!綾那ズルいのー!鞠もするのー!」
「じゃあ鞠様も来るのですよ!」
「わーい!」
綾那の誘いに元気よく応じて、鞠もそのまま元気一杯に小さな身体を宙に躍らせる。
「げふっ!」
「か、一真様っ!?」
「うぅ、一人一人は小さくとも二人ならば・・・・」
と思ったが、この二人は一人でも一騎当千だった。
「ふ、二人とも降りてくれ」
「一真様!」
「あ、葵ちゃんなのー!」
「葵様ー!」
「ああ、綾那。何をしているのですか。・・・・申し訳ありません、一真様」
「これしきの事で気にしないでくれ」
二人にとってはスキンシップの一環何だろうけど。流石の俺も潰されそうだった。それに悪意はない。
「それで、葵は偵察?」
「はい。・・・・しかし、あまりにも曲輪が多くて」
「この観音寺城には、千を越える曲輪がありますもの。一晩やそこらで把握できると思ったら大間違いですわ」
まあ、トレミーからの情報なら把握済みなんだが。実際見ると把握しずらい。
「伏兵が残っているとでも?」
「私達もそれを警戒して、詳しく調べるように指示してありますが」
「・・・・たぶん、大丈夫だと思いますわ」
「そうなのですか?」
「今だから言えますけど、観音寺城はこのような構造ですから、それ程籠城には向いておりませんの。この城を巡る幾度かの戦いでも、一度抜け出して再戦を期する事の方が多いくらいでしたのよ」
「でもさっき言った水源も確保してあるから籠城向きとか言ってなかった?」
「い、一々細かい事を仰いますのね」
「最初はそういった思想の元に作られた城だったのでしょう」
「そうですわ。ただ、増築に増築を繰り返す内に、こうなっていったのです」
強くなるために増築したら、本来のコンセプトが生かせないっていうのは皮肉な話だ。
「大きくなりすぎた船や組織と同じように、大きくなりすぎた城もまた、機を見て敏に応じる事できなくなるのですね」
トレミーは大丈夫だ。今の大きさはスメラギぐらいになっているが、ちゃんと管理してるし。ゼロが。
「ところで一真様。この方は?随分と観音寺城に通じておられるようですが」
「そうだ。ついでだから葵にも紹介しとく。梅」
「私は蒲生賢秀が三女、蒲生忠三郎梅賦秀ですわ!蒲生家は遠く藤原一族を祖に持つ・・・・」
「はいそこまで!そこから長くなるからいいや」
「なぁんですってぇ!ここからが大事な所ですのに!」
「・・・・蒲生・・・・という事は?」
「うむ。梅も六角氏の客将だったんだけど、今は色々とあり俺の・・・・」
「久遠様の元で働かせて頂く事になったのですわ!久遠様の元で!」
「今は一真隊に・・・・」
「私の心は常に久遠様と共にありますの!」
「今は・・・・」
「く、お、ん、さ、ま、の!」
「最後まで言わせろやボケが!」
と言って梅の頭にハリセン一発。俺のハリセンは、普通のハリセンじゃない。擬態の聖剣だし。
「という訳で」
「ふふっ、そうなんですか。我が名は松平次郎三郎元康、通称は葵と申します」
「いたた、松平・・・・!?まさか三河の・・・・っ!?」
「はい。一真様の麾下に入る方でしたら、以後お見知りおきを」
「綾那は本多平八郎忠勝なのです!一真様の所の将なら、綾那でいいのですよ」
「しかも本多家の・・・・!」
松平家の棟梁がこんな丁寧な物腰だ何て、普通は思わない。俺に対しての態度も何とかしてほしいのだが、あと梅は葵の事を小隊長くらいにしか思ってなさそうだし。
「一真様。小波は役に立っていますか?」
「まあな。呼べば出てくるんじゃねえの」
「ここに」
「ひゃああっ!?」
「小波、出てくる時は出てくるって言って欲しいのです」
「申し訳ありません。ですがそうなると、草の役目が果たせなくしまいますので・・・・」
「小波。これからも一真様のお役に立つのですよ?」
「はっ。我が命に替えましても」
「いや、命は大事にしろよ」
「・・・・・はぁ」
と言ったら消えた。照れ隠しか?
「あの方は一体どちらに・・・・?」
「気配と気で分かるけど、この辺りにいると思うよ」
「本当に心の臓に悪いですわ」
「では一真様。私達はまだこの辺りの調査が残っていますので。行きますよ、綾那」
「分かったのです!それじゃ、一真様ー」
「ああ、気を付けてな」
「・・・・・あれが、松平の」
「この辺りを調査してるから、ちょうど会えてよかったよ」
「私のような者にも分け隔てなく接して下さる方でしたわね・・・・。ですがなぜ、あのような方や、本多家の方まであなたの事を・・・・?こんななのに」
失礼だな、梅は。まあ時が来れば本来の姿に戻るけどな。
「今は分かんなくても、その内きっと分かるの」
「まあ、鞠さんがそう仰るのでしたら・・・・」
そんな葵達との顔合わせも終えて、城の大まかな所をぐるりと回った俺達は、元の曲輪へと戻ってきた。
「お帰りなさいませ、一真様」
「ただいまー」
「ご飯の支度、出来ていますよ!」
「おう。それとエーリカも一緒だけどいいか?」
「大丈夫ですよ。今日はお鍋、たくさん作りましたし」
「だってよ。エーリカも食べていけよ」
「はい・・・・ありがとうございます」
「小波」
「はっ」
「小波も一緒に食べよ」
「はっ・・・・・・・は?」
「夕食。今日は祝勝会もだけど、小波と梅の歓迎会も兼ねてるからさ。同席してもらえるか?」
「自分のような者が、ご主人様と食事の席を同じくするなど・・・・」
「一真隊は身分関係無し、だからな。俺らでは普通なんだよ」
「そうですよ。私も小波ちゃんとご飯食べたいです」
「鞠もー!みんなとご飯食べるの、とっても楽しいの!」
「・・・・・ご、ご命令とあらば」
命令か。確かに普通なら考えられないけど。一真隊もそうだが、黒鮫隊も俺が飯食う時はできるだけ部下を集めて食べてた。口調もだけど、それはいいとしてこれに関してはきっかけを作らないとな。それに小波は壁を作ると思う。
「じゃあとりあえず今日は、命令だけど、慣れてほしい。これが俺達では普通の事だから」
命令で強制させたくないし、俺の部下もそうだけど。まあ慣れてもらうまでは、仕方がないか。
「・・・・努力します」
「それじゃ、食べようか。いただきます」
「いただきまーす!・・・・・にゃ?」
元気よく食べようとした鞠だけど、目の前の光景を見て動きを止める。
「天にまします我らの主よ・・・・」
「ここに用意された食事と、この席を同じくする全ての同胞に感謝と主の祝福が・・・・」
「一真。エーリカと梅ちゃん。何やってるの?」
「食べる前の祈りだよ」
俺やひよ達は、堺に行った時にエーリカと一緒に動いてたから慣れてる。鞠はこの光景を見るのは初めてだったな。同じ理由で、小波も二人の様子を驚いた風に見つめる。やがて、二人は小さく十字を切って、祈りの言葉を口にした。というか祈りは俺かデウスに聞こえてる。
「お待たせしました」
「さて。改めてだが、食べようか」
「はいっ!」
「はい、鞠ちゃん」
「わーい!ありがとなの!」
俺やひよが鍋から適当に具を取っている間に、鞠もころによそってもらったお椀を満面の笑みで受け取る。
「鞠は好き嫌いはあるか?」
「鞠、何でも食べられるの!好き嫌い何てしないの!」
「そうか。偉いな」
「えへへー」
「ええっと・・・・これは、何ですの?」
「鍋ですよ」
「・・・・鍋?」
「ああ。梅さんが私と同じ反応を・・・・」
そういえば武士の家って鍋を食べる習慣がなかったけな。詩乃も今は慣れているが、初めて食べた時も同じ反応だった気がする。
「この鍋から好きなだけ取って、好きなだけ食べるんです。とっても美味しいですよ!」
「はぁ・・・・」
「はい。梅ちゃん、どうぞ」
「これはどうも・・・・」
よそわれたお椀をころに渡してもらっても、相変わらず梅は不思議そうな顔をしている。
「ん?という事は、鞠も鍋は初めてか」
一真隊で鞠の歓迎会の時は南蛮料理=洋食だったからな。今川家のお姫様は、こういうの初めてだったか。
「初めてだけど、すっごく楽しいからいいの!」
美味しいじゃなくて楽しいか。こうしてワイワイしながら食べるのもいい感じだしね。それが鍋料理って感じだけど。最初から鍋の一番いい所をしっかり満喫してるとか、鞠らしいな。
「エーリカも初めてだったか?」
ころからお椀を受け取ってるエーリカも、自然に鍋を受け取ってるけど。俺達と鍋を食べた事ないし、堺で食べてると言う感じはしない。ポルトゥス・カレ=ポルトガルにいた頃に、向こうの鍋料理を食べていたのかな。
「初めてですが、同じ席を囲んで、一つの食事を皆で分かち合う・・・・素晴らしい習慣だと思います」
「まあ、身分によっては食べた事がない人もいるらしいが・・・・」
「な、何ですの!こちらをじっと見て・・・・」
「なんでもない」
「梅ちゃん。おかわり、どうぞー」
「あ・・・・ありがとうございます」
「何で敬語なんですか」
何か南蛮人=外国人のエーリカより梅の方が溶け込んでない感じがするな。
「小波ちゃん。お箸進んでないけど、嫌いな物あった?食べてあげよっか?」
「いえ・・・・そういう訳では・・・・。ですが、ただの草の自分などが・・・・こんな席に」
「一真様は、そんな事全然気にしないよ。私だってちゃんとした身分の出じゃないし、何より一真様自身が草と同じような動きをするから」
「それはまあ、自分もご一緒させていただきましたので」
「私達じゃ、余りお役に立てないと思うから小波ちゃん、一真様を助けてあげてね」
「・・・・はい。それが自分の使命ですから」
それなりに和やかに進んでる鍋パーティーだけど。鍋を楽しんでいたはずのエーリカが、妙に神妙な表情を浮かべてた。
「あの・・・・これは、何でしょうか?」
別の皿に纏めて盛られていた、大皿料理だ。
「茄子の田楽だよ。新しい茄子が手に入ったから田楽にしてみたんだけど・・・・。エーリカさん、茄子苦手?」
「茄子・・・・?」
「ちょっところさん。新しい茄子って、一体どこで手に・・・・?」
「観音寺城の食糧庫。・・・・あ」
「・・・・・・・・・」
まあ、梅からしてみれば微妙な話だな。
「いえ・・・・この城が落ちた以上、食糧庫とて敵の手に渡るのは当たり前の事ですし。元を正せば敗軍の将がこうして勝った側の陣営に紛れて食事をしている自体、可笑しな話ですもの。・・・・お気になさいませんよう」
「気にしなくても良いの、梅ちゃん。それを言ったら鞠だって、国は無くなっちゃったけどこうやってご飯も元気に食べてるの!」
「鞠さん・・・・」
「そういう事だ。今までの事情はどうであれ、これからは俺達に力を貸してくれるんだろ?」
「・・・・・・・。く、久遠様ですわ。・・・・貴方ではありません」
「まだ久遠に拘るか。まあ今はそれで十分だ」
「えーっ!?ホントなの、エーリカさん!」
「はい・・・・」
「今度はどーした?」
「一真様。エーリカさん、茄子食べた事ないんですって!」
「もしかして、ポルトゥス・カレには食べる習慣がないとか?」
「はい。よくご存じで。花の形をを聞いた限りでは、近いものはあると思うのですが・・・・私の国では花は見て楽しむもので、実を大きくして食べるような事は特に」
「もしかしてこれか?」
俺はスマホで検索してから茄子の花を見せた。そしたら、これですって言ったので当たりのようだ。
「確かに茄子の花も美しくはありますが」
「お茄子、とっても美味しいの」
「んー、でも確かエーリカの母親はここ日の本の人なのでは?」
「そういえば。・・・・嫌いだったのでしょうか?」
まあ、茄子って結構クセがあるから食べられないって人はいるな。俺も実は食べれない、一度食べたけど吐きそうになった事があったからそれきり食えなくなった。
「とりあえず、一つ食べてみてくださいよ。エーリカさん、お味噌は平気ですよね?」
「はい。では、一つ・・・・はむ」
皆エーリカの方に視線行ったけどね。しばらく無言になったけど、美味しいようだ。
「だったら、たくさん食べるの!」
「あの美しい花から、こんな美味しい実が生るのですね。この国の素晴らしい所を、また一つ見つける事が出来ました・・・・」
エーリカの口に合うとはね。俺は勘弁だが。
「でも、美味しいですわね」
「うん。ころちゃん、一真隊で二番目に料理が上手だからね」
「二番目?では一番目は?」
「「「一真様です!」」」
と俺を向いて言った。梅は信じられないという顔をしていたけど。
「まあ、今の時期は茄子も旬だしな。秋茄子は嫁に食わすな、という言葉もあるし」
「しゅん・・・・?」
「秋以外の茄子って・・・・お漬け物ですか?」
「まあな」
そういえば、この時代って旬の野菜以外は漬物にしたり干したりでの保存食しかなかったような。俺らの所は年中野菜食えるからな、そう考えたら凄いことなのかな。
「ですが一真様。その話は、久遠様にはしない事をお勧めします」
「分かってるよ、今のは例えだ」
そんな楽しい鍋パーティーも一息ついた。俺達の話は今後の事についてだった。
「・・・・なるほど。久遠様とエーリカさんは、そのザビエルを追って越前まで・・・・」
「はい。先に京で足利将軍達を松永・三好の包囲からお救いした後、近江の浅井様と合流して越前を攻める事になります」
「梅は鬼の事は知っている?」
「噂くらいは聞いた事もありましたけど、まだ実際に見た事はありませんわ。この辺りでは、報告もそう多くはありませんでしたし・・・・」
「恐らくここで見つかる鬼は北近江ではなく、近江の西側・・・・若挟を経由して回り込んできたのでしょう」
この辺りは琵琶湖の南側だからな。ちょうど眞琴や市達のいる小谷城が越前からの防壁になっている。
ここで鬼の目撃例がないって事は眞琴たちが頑張っている事だろう。上洛が終われば小谷へ行ってお礼をしないとな。
「そうですわね。鬼の報告は、観音寺城よりも西からの方が多いはずですわ。そのザビエルとやら、でうすの教えに逆らうだけでなく、日の本の女性を辱め、そんなおぞましい企みに利用するだ何て、断じて許す訳には参りませんわ」
「お手伝い頂けますか?」
「もちろんですわ!この蒲生忠三郎がお手伝いするからには、大船で乗った気でいて下さいまし!」
「は、はぁ・・・・」
「まあ、あなたが倒せるような相手ですから、この私にかかれば、一捻りですけど!」
「うむ。梅も久遠に力を貸してあげな」
「ですから、私はあなた何かに・・・・・って、久遠様ですのね。ええ、当たり前ですわ!」
頼もしいがこういう性格はどうにかしてほしい。俺はともかく、それが油断に繋がらなければいいけど。
「梅さんは久遠様の事が大好きなんですね」
「もちろんですわ。うつけと呼ばれながらも、東海一の弱兵と呼ばれる尾張衆で東海一の弓取りと言われた今川殿を下し、今は美濃まで手に入れたお方ですもの。あ・・・・その・・・・」
「にゃ?・・・・田楽狭間の事なら気にしてないの。母様が久遠よりも弱かっただけなの」
「はぁ・・・・。申し訳ありません」
うむ。非を認めればちゃんと謝る。良い子ではあるんだと思う。俺の実力かもしくは、本来の姿や神召喚でもすれば態度はよくなるのかもな。
「皆さん。雑炊、出来ましたよー」
「わーい!いい匂いなの!」
お、いいタイミングだ。
「雑炊ですの・・・・?今お鍋を食べたばかりですわよ?」
「鍋の最後はコレを食べるって決まっているんです!」
「変わった風習ですのね・・・・」
「エーリカも食べるだろ?美味しいぞ」
「はい。一真様が美味しいというのですから、きっと美味しいのでしょう?頂きます」
「一真様、小波ちゃんの分です」
「あいよ。ほら、小波」
「じ、自分は・・・・ご主人様手ずからそのような物を頂くなど・・・・」
「そういうのは気にしない方がいいぞ。冷めない内に食え」
「は・・・・はい」
小波は、ずっとスパイとして厳しい修行や習慣を身体に叩き込まれたんだろうな。この隊のやり方が小波達の考えとは大幅に違うから、少しずつでいいから慣れてくれると助かる。
「おいしーっ!」
「まあ、美味しい」
「ころ、俺の分は?」
小波と話してたからもしかして俺の分がないわけではなかろうな。
「ご主人様。よかったら、自分のを」
「自分の分はちゃんと食べろ」
「は、はぁ・・・・」
「ちゃんと取ってありますよ」
「ふう、美味しかった」
本当はうどんとかがシメなんだけど、ここでは雑炊と決まっているからな。俺が仕切っていたらうどんだけど。たまにはいいか。ここで、俺の腕時計に緑色のランプが光ったので、左耳に通信機をはめる。
「ちょっと失礼しますわ」
と言って梅はどこかに行ってしまった。トイレか。通信機からだとどうやら鬼が現れたようだな。
「梅さんが、どこかに行く事が分かっているようですね」
「大体はねー。それにここで怒らせたら俺の妻に怒られる」
で、しばらくしてたら雰囲気を、蹴り飛ばされた扉であっさりと掻き消された。
「おーい、一真!鬼ぶっ殺しに行こうぜー!」
「ひゃあ・・・・・・っ!?」
「よう小夜叉。どうした?鬼が出たのか」
「むぐむぐ・・・・おう。偵察に出してたウチの若い衆が見つけたんだよ」
鍋に残っていた雑炊を掻き込みながら、小夜叉の説明を聞いてる内に情報が入ってきた。先程の話を聞いていたら鬼は出ないと聞いたが。
「それはもしかして、城北側ですか?」
「や、違うけど、どうかしたのか?」
ふむ。眞琴達がいる北近江からでは無さそうだ。あと通信機で聞こえないように、指示を出していた。
「それで敵の規模は?お、情報が入ってきた。西の方と南の方だな。数は、西の方は十匹ちょいで、南側は数匹だな」
「おー、よく分かったな。一真の言う通りだ。それでどうしようと思ってな、来てみた訳よ」
「敵も二手に分かれてるなら、こちらも二手でやっちまった方がいいな」
「一真様。でしたら、私達は・・・・」
「俺達は南側だな」
「え?」
「ああ、雑魚は一々回るのが面倒だから、一真に殺させてやる」
「あの・・・・すみません」
「何だ?この変な髪のヤツ」
「ああ。エーリカって言って、久遠の客将だよ」
あの時の評定にはいなかったからな、エーリカの事は知らないはずだ。
「我が名はルイス・エーリカ・フロイス。ポルトゥス・カレという異国より参りました、天守教の司祭です。日の本での名は、明智十兵衛と申します」
「オレは森勝蔵長可。通称は小夜叉だ。・・・・で、何だって?」
「あなた方の隊はどれだけの戦力があるのですか?」
「?オレと母の二人だけだけど?」
「たった二人で、十体以上の鬼を・・・・!?一真様。でしたら数に優れる我々が敵の数が多い方を・・・・」
「エ、エーリカさんっ!?」
「あの・・・・それ以上言わない方が・・・・!」
「・・・・一真」
「分かってるよ小夜叉。エーリカ、森の二人をあまり舐めない方がいい。日の本きっての鬼退治の達人だ。一人でも市の千倍は戦える人達だ」
「お市様の・・・・千倍!?」
「まあそうなるな。この前の長久手の時も鬼の巣に五十匹はいた鬼達を最初は、俺と森の二人と殺っていた所だったし」
「そうだったよなー。一真も強いけどオレ達も強かったよ。むぐむぐ・・・・」
「あ、あの・・・・小夜叉ちゃん、おかわりは?」
「あんまり食べ過ぎると動けなくなるからな。雑炊美味かったぞ。ごちそうさん!」
「あ・・・・おそまつさまでした」
「じゃ、オレ達は先に行くぜ。場所はウチの若い衆にと思ったけど、もう分かっているんだろ?」
「ああ。俺達も支度をしたらすぐに出る。一応その森衆の若い連中と一緒に行く」
「雑魚だからな、一真だけでも平気だろうよ」
「そっちも気をつけてな」
「たりめーだ。こんなの準備運動にもなりゃしね」
ニヤリという、不敵な笑みを残して小夜叉は大股で去っていった。さてと、ん?敵が増えたようだ。恐らくこの外史でのイレギュラーが発生したな。こちらも十匹。
「そんなにお強いのですか?あの小夜叉という方と、そのもう一人は」
「まあな。いつか見るかもしれないけどね」
観音寺城攻めだと、攻めている場所が違ったし。
「ただいま戻りました・・・・何ですの?討ち入りでもありましたの?」
「ああ、おかえり。梅」
「鬼ですって!?」
小夜叉の蹴破った戸を蹴破る前に戻しながら、先ほどの小夜叉の話をした。梅には戸が直った所は見てないけど。
「ああ。ある程度の使い手だけを連れて行く。今回、一真隊の足軽は使わない。少数精鋭で行く」
最も、小夜叉の話だと数匹程度だが、実際は十匹程度かもだけど。小谷での戦いは黒鮫IS部隊がいたから最小限の被害で済んだけど。今は犠牲は出したくない。
「それにあまり騒ぎを大きくすると、他の隊の動揺も誘ってしまいますし」
「そういう事。で、その少数だけど」
「私はご一緒させていただきます」
「うむ。そう言うと思っていた」
この中で鬼との戦闘経験は俺とエーリカぐらいだろう。あとは鞠や小波の戦闘を体験してほしい。
「鞠は一真の部下だけど、ついて行った方がいい?」
「もちろんだ。それに対鬼戦について学んだ方がいい」
「でしたら、自分も」
「そうだな。小波も経験積んだ方がいいな」
技量を考えると、鞠と小波もこの中では強い方だろう。それにいつでも戦えるように、対鬼用訓練も兼ねてやった方がいい。そう考えると、一真隊は黒鮫隊や森衆と松平衆みたいな戦闘特化ではないしな。
「小波さんが同行するなら、私は残りましょう。お家流で連絡も取れますし」
「だな。ひよところも残ってくれ。隊を任せたい」
「分かりました」
「あぅぅ・・・・一真様、無事に帰ってきて下さいね?」
「俺を何だと思っているんだ。それと・・・・梅はどうする?」
「もちろんご一緒させて頂きますわ!」
だと思った。
「でうすに逆らう不浄の者達を許す訳には参りません!この私が成敗して差し上げます!」
大丈夫か本当に?
「猪が鬼狩りですか・・・・。先程子供夜叉と出会わなかったのは、まさに僥倖としか言いようがありませんね」
「それ、二人の前で言うなよな」
ぼそりと呟いた詩乃に軽く釘を刺した。余りに的を射たそのぼやきが、俺も不安でしょうがない。ピンチになった時は真の姿でやらねえと。俺達は、支度が出来たので案内役の森兵と向かった。情報通りの位置だが、観音寺城の南にある小高い丘の上だ。
「一真様。あそこです」
警戒に残っていた森衆が指した先には、いくつもの巨大な影が見える。暗視ゴーグルで見ると結構な数だぞ。こりゃ神の力を発動しない限りだな。一応神界にていつでも召喚できるようにデウスに準備してもらっている。それと何故か帝釈天と四天王が準備してると。確か誰かのお家流で使役してるんじゃないの?と聞いたら契約主より俺の方が大切だからと、なので準備しているんだと。
「で、近くに人は?」
「あと半刻も進めば、小さな村が」
「とりあえず、途中で数体合流して増えましたが、それから増える気配は今の所ありません。ですが、また増える可能性がありますぜ」
「あれが・・・・」
「百鬼夜行みたいなの・・・・」
うん。この世ならぬ物の列だからそう見えるかもな。最もこの行進は日本全てに災厄をもたらす、はるかにタチが悪いけどね。
「なら、今の内に片付ける。今一度作戦を確認する」
「分かったの!」
「鞠、小波、梅は鬼と戦うのは初めてだよな?」
「でも、あんな奴ら何か負けないの!」
「いいから聞け。敵の動きや習性を理解した方がいい。戦うのは俺とエーリカでやる。今日は鬼の戦い方を身に付ける事に専念しろ」
「鞠は一真の背中を守るの」
「差し出がましいようですが、自分もです」
「だからこそだ。今日鬼の戦い方をきちんと身に付けておけば、京の先で今よりもっと俺と一緒に戦うのが楽になる。いいな?」
「分かったの」
「承知いたしました」
二人はそれで不満だったけど、もし神の力を発動したら巻き込まれる可能性がある。
「梅もいいな?」
「分かっています。・・・・どうして私に改めて聞くんですの?」
「一真様は梅さんが実際に戦う所を見るのは初めてですし、心配していらっしゃるのですよ」
「エーリカの言う通りだ。気を付けて戦うんだぞ(エーリカ、もしかしたら本来の姿になって戦うかもしれない。その時は合図をするから)」
「(分かりました。合図は私を呼んで下さい。あの姿になると)」
「そのような心配は無用。皆様にも私の実力がどれ程のものか、見せて差し上げますわ!」
俺はエーリカに頼んでから梅がそういう発言をしてた。一番危険な発言だから、油断禁物だ。皆には言ってないが増えてる事とかな。
「藪蛇でしたね」
「ある程度は予想してた」
「森衆の諸君は、この辺りの警戒をお願いする。こちらも少数だから伏兵や増援がいたらな」
「任せてくだせい」
「増援や伏兵がいたら、ぶっ殺していいっすか?」
と言った森衆を梅達から少し離れて話した。
「いいか。もし伏兵がいたらやってもらうが、増援がいたら俺は本来の姿になって戦う。なので、もしその姿になったら避難を頼む。巻き込まれると厄介だ」
「へい。あの姿と言うと神の姿ですね。分かりました、あの御姿になったらじっくり見させてもらいまっせ」
と言った。実を言うと森衆には、だいぶ前から俺の本来の姿を見せている。あの姿=大天使化の事を知っている。あと力の加減も出来ない事もね。そして鞠達の所へ戻る。
「よし。行動開始だ」
「ご主人様。まだ連中には気取られていないようです」
「よし。まずは手前の二匹から倒すか」
辺りを警戒ているのか、普段の鬼よりも小柄な鬼が二匹。群れから少し離れているのが見て分かる。素早く動けば本隊から見つかる事はないだろう。本当は煙幕とかあればいいのだけど、今日は味方も多いし、連携も即席だ。
「俺とエーリカで一匹ずつ。鞠と小波は俺に、梅はエーリカを・・・・」
「雑魚の二匹はお任せしますわ!私は本隊を叩きます!でええええええええええいっ!」
って言おうとした端からっ!?
「ああもう!くそ!こうなったらエーリカ、後ろを頼む。鞠と小波はエーリカの援護を!絶対に敵に背中を見せるな!いいな」
「一真様は!」
「俺はあの猪野郎の梅のところに行く。森衆の一人は俺と来い。ここは任せたぞ!」
と言って空間から刀を取り出して、鞘から抜く。俺と森衆の一人は分かっているんだろうな。俺があの姿になるために梅を避難させる事を。全くもしかしたら大天使化するかもしれないな。
「どけえ!雑魚が!」
梅の突撃でこちらに気付いた鬼の注意を引きつけるように、俺は叫ぶ。
「てえええええいっ!」
裂帛の気合と共に振り下ろされた刃の一撃で崩れ落ちるのは、梅より遥かに大きな異形。
「あら・・・・思ったよりも簡単な相手ですのね。この程度の相手なら・・・・やはり私一人で十分ですわ!次はあなたがお相手ですのね!参りますわよ!」
正々堂々の戦いならば、掛かってこいとでも言うべき所だろうが、今日の相手は神に仇なす悪鬼羅刹の類だ。わざわざ待ってやる理由などない。
「でうすの加護を受けた正義の刃、受けてご覧なさい!はあああああああああっ!」
所詮、森衆の若手でさえ倒せる相手。名家蒲生家に生まれ、武芸百般に通じる梅からすれば、やはり大した相手ではなかったのだ。
「これなら行けますわ。さあ、どんどんかかっていらっしゃい!」
刃を構え、走り出す。次に定めたのは、今までの鬼達よりも二回りも大きな鬼であった。
「次は貴方ですわ!覚悟なさい!」
月光を弾き爛々と輝く瞳も、その巨大な体躯も、既に怖くも何ともない。神に仇なす悪の使徒は、全て自身が下してやると。
「はああああああああああっ!」
そんな想いと共に振り下ろされた刃は。
「え・・・・・・?」
あっさりと受け止められた。驚きに漏らす言葉も間に合わない。丸太のような巨大な腕が横薙ぎにぶうんと空を裂き。その先にあった細い体を巻き込んで、速度を緩めぬままに振り抜かれる。
「ぐ・・・・・が、はっ!?」
打撃の重みに連なったのは、地面に叩き付けられた時の大きな痛みと、そこから転がった先、止まるまでに幾度となく打ち付けられた連続の痛み。
「かは・・・は・・・・っ」
全身を揺さぶる一打に、肺の奥底までの空気が全て吐き出された。今は呼吸のままもならない。痛みに至っては、体中に広がり最早どこが痛いのかすらも分からなかった。
「は、は・・・・っ。ぁ・・・・」
そんな梅に掛かるのは、月光を背にした巨大な影だ。大きい。それはこれ程に、大きな相手だったのかは先程倒した鬼達よりも、幾分か大きいだけではなかったのか。
「・・・・ひっ・・・・・っ」
爛々と輝く瞳に見据えられ、漏れるのは、言葉どころか歯が震えてぶつかり合うカチカチという音だけだ。鬼とは、此程に恐ろしい物だったのか。
「(わ・・・・私の剣・・・・でうすの祝福を受けた剣が・・・・どうして・・・・っ)」
心の中に渦巻くのは、そんな混乱と怯えに彩られた黒い嵐。目の前の恐怖から内への思考に逃げようとするが、かち合う視線は彼女を据えたまま、逃げる事を許さない。
「あ・・・・・・ぁ、あ・・・・・・っ」
目の前の大きな闇が一歩を踏み出す度に、身体が震え、視界が恐怖にぐらりと揺れる。
「(お、鬼は・・・・・攫った女性を襲って・・・・)」
そして、どうするのかだった。
「(孕ま・・・・・せて・・・・生まれた子供は・・・・・)」
どうなるのだったか。天守教の司祭から聞いた話は余りにおぞましく、それ以上は思考の端に浮かべる事すら穢らわしいものだ。
「いや・・・・・っ」
故にその恐怖は、限界を超えた。
「いや・・・・いやいやいやいやいやぁ・・・・・・・っ!」
口から止めどなく溢れるのは、拒絶を示す言霊だ。けれど、その少女の拒絶の声など涼風の如く。巨大な手は涼風を前に一分の速度も緩める事なく、梅の甲冑に伸ばされて・・・・・・。
「いやぁ・・・・・・っ!」
「はあああああああああああああああああああああああっ!」
「・・・・・・え?」
梅の悲鳴を掻き消すかの如く響き渡ったのは、裂帛の気合と、梅のそれより遥かに鋭い斬撃の音。そして怪物の断末魔と、巨大な身体が崩れ落ちる轟音だ。
「あ・・・・・」
涙に揺れる視界に映るのは、小さな・・・・鬼に比べれば遥かに小さな、けれど梅にとっては大きな背中と。金色に輝く鋼の刃だった。
「ふう、何とか間に合ったか!」
切り伏せた大鬼は、立ち上がってくる気配はない。その後ろに控えた鬼も、今の一撃と喉が割れるほどに吐き出した気合に驚いたのか、近付いてくる様子もない。
「梅!」
「あ・・・・・」
「立てるか、梅!」
ぶつけたのは、単純な内容。説教は後回しだ。今はその時間すら惜しい。
「あ、あの・・・・わ、わた・・・・わたくし・・・」
刀を腰に戻すと、俺はしゃがみ込み、両手でぱしんと梅の両頬を掴んでみせる。
「・・・・ひゃっ!?」
「早く立て、次が来るぞ!森の若いの。こいつを頼む」
「う、後ろ・・・・っ!」
「分かっているよ。はああああああっ!」
腰の刀を抜いて、一撃で鬼をばっさりと斬り落とした。
「森の!急げ!梅は俺が守る!」
「はっ!嬢ちゃん、立てるか?」
「は・・・・・はいっ」
よし、これならいけそうだな。まだ鬼は残っているし、奥には増援が見えるな。
「はああああああああああっ!」
俺の前にいた鬼は稲妻の如き一撃だった。
「大丈夫ですか、一真様!」
「エーリカか。鞠と小波はどこだ?いるなら呼び戻せ!」
「はっ!鞠さーん!小波さーん!戻ってきて下さーい」
と言った後、奥にいた二人はエーリカの声に呼び戻されるように来た。
「どうしたの?鞠ならやれるの!」
「自分もですが」
「今は一真様より後ろに。早く!」
と言ってエーリカは鞠と小波を引っ張るように俺の後ろに下がらせた。よし、これならいけるぜ。トレミーからの情報だと奥に数十匹確認された。ならこれを使うまでだ。
「大天使化!」
翼が出て、髪の色と衣服の色が金色になっていく姿を見た。鞠、小波、梅。そして、金色の光がやむとそこには金色の姿をした神仏だった。
「あ、あれは、誰ですの?」
「我の声で分かるだろう、梅?」
「一真・・・・様?それも神の使い?」
「一真なの?あの姿は何なの?」
「確かに声はご主人様の声。しかし、姿形は私の知るご主人様ではない」
「我の名は創造神黒鐵なり、さてと魔の輩を片付けるのみ」
と言って、我のところへ向かってくる鬼共を瞬殺した。速度は人間の常識を遥かに超える速度だった。
「さて、我の新たな力を使おう。神界よ、我の声を聞け。ここに降臨せよ!デウス!」
と言ったら、俺の隣からゲートが開いてそこから降りてきたのは天守教の神であるデウスだった。
「で、デウス様が目の前にいらっしゃる?これはどういう事です?」
「エーリカ!デウスの力を借りて、魔を払え!」
現世に召喚されたデウスは、エーリカに近づき言葉は発していないが力を貸すという事を。そして、デウスはエーリカの剣に聖なる力を宿した。
「こ、これは!」
「それは、デウスの聖なる力だ。それが光輝くまでデウスは力を貸すだろう。さあ行け!天守教の司祭よ!その剣に乗る聖なる力にて斬撃を飛ばせよ」
「はっ!では、はああああああああああああっ!でやあああああああっ!」
エーリカの放った斬撃は最初は小さかったのが、鬼の軍団に近づくと共に大きくなっていく。そして、デウスのパワーによる斬撃は鬼の身体を横に斬りながら止まらずに進む。
「ふむ。もう少しか。デウスよ、ありがとな」
我はデウスに礼を言うと、デウスは神界へと戻っていった。
「さてと、あとはこれで行かせてもらう。再び神界よ、我の声と共に参上せよ。いでよ、帝釈天!四天王よ!」
再び召喚されたのは、帝釈天と四天王の多聞天・持国天・広目天・増長天。その姿を見た鞠達は驚く。何せ神仏が勢揃いしている。
「あ、あれは、帝釈天と多聞天・持国天・広目天・増長天。神様が勢揃いだ何て!」
「初めて見たのー!」
そう言ってた小波と鞠だったけどね。増援がいるところにまで飛んで行った。もちろん帝釈天達も付いてくる。鬼の集団がいたから、そこでストップ。
「帝釈天達よ、五芒星を描き、聖なる炎で滅せよ!行け、我が僕達よ!」
と言って鬼の集団に五芒星を描いたと思ったら、聖なる炎で魔を滅した。そして帝釈天達は、用が済んだかのように神界ゲートに行くが、手を振りながらだったけど。ん?まだいるな。それもこの反応は、エーリカの所に向かっている。我は神速で飛び、エーリカのところへ向かったら横からきた鬼達に対して翼で粉々にした。まだいたから、刀から元の形に戻すとそこには金色に光った聖剣エクスカリバーの姿。それと同時に鬼達は逃げようとするが、祝福の能力で聖なる祝福で弱らせた後、振り下ろしたら剣が伸びるようにして鞭のように振るう。最後の一撃として上から飛んで剣を振り下ろす。それは数分で終わらせてしまったのか、まだ梅達は固まっていたけど。
一方、観音寺城で待つ三人は。
「うぅ・・・・・一真様達、遅いなぁ・・・・・」
「小波さんからは戦いは無事に終わったと連絡がありましたから、そろそろ戻って来る頃だと。あと小波さんから金色の姿をした者がいたと言ってましたが、一真様は本来の姿になって戦ったのかと」
「それが本当ならもう帰ってきますね。あ!見えてきたよ!おーい、一真様!」
「あ、ひよ、待ってよーっ!ほら、詩乃ちゃんも行こう!」
「ええ。ひよ、単機駆けはしないと約束したではありませんか!」
「一真様!お帰りなさ・・・・」
「皆さんご無事で・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
詩乃は無言か、まあそうだろうな。それに今はまだ大天使化で、浮かびながら進んでいる。
「先程連絡した通り、我達は帰還した。が、何だその目は」
「それは何よりです」
ふむ。口調が冷たいような。
「ただいま帰りましたわ!」
そんな微妙な空気の中。我の腕の中にいるのはお姫様抱っこをしている梅だった。しかも降ろそうとしても降ろすなとの事。あとニコニコと微笑んでいるけどね。
「一応確認しますが、何をしているのですか?」
出る直前は我の事を毛嫌いしていたのに、帰ってきたらこうなっていた。誰でも驚くさ、あんなに嫌ってたのに。
「ただいまなのー!」
ちなみに我の横にいた鞠はニコニコ笑っていたけど、いつものようだから気にしていなかった詩乃達。
「何と言うか説明必要か?主ら」
「あれは・・・・まあ・・・・」
「自分も現場に居合わせたのですが、余りにも神々的な光景を見たので何も言えません」
そして後ろにいた、エーリカと小波は説明しづらい。
「一応ご説明されてもよろしいですか?一真様いえ創造神様」
「うむ。説明するとだな、我達が行こうとしたら梅一人で、突撃して行ってしまったのだ。鬼の群れに突っ込んで、それを我が必死に追いかけて助けた後、鬼を駆逐後こうなったのだ。理解できたかな?」
「はい。ご理解できます」
「という事で、梅よ。そろそろ降りてくれないか。着いたのでな」
やっと降りてくれた梅。で、小波からの報告で神を見たというから我かと思ったが違うと申した。そしたら誰なのです?質問来たから、疲労はしているが、まだいけるので神召喚をした。
「こ、これは・・・・!」
「男神は天守教に祀られている神、デウスだ。で、我の周りにいる女神達は、帝釈天と四天王である多聞天・持国天・広目天・増長天だ」
といったら召喚された神仏達は、一礼した。そしたら、ひよ達はパニックで頭を上げてくださいとか言ってたけど。すぐに神界に戻したけどね。
「本物の神様に出会える何て今日は物凄く幸せです」
「我も神だぞ?それも全てを創ったといわれる神なんだが」
「あははっ!忘れてました。お頭も神である事を」
「私はハニーにお救いされました。この事に感謝致しますわ」
「は・・・・はに・・・・?」
「南蛮の言葉で、愛しの君という意味ですわ!」
「愛しの・・・・そう何ですか?エーリカさんに創造神様」
「ええ、まあ・・・・」
「愛しい人への呼びかけでもある」
「鞠にとってもハニーなの!一真!」
「鞠よ。この姿ではその名で呼ぶな」
「じゃあ何て呼んだらいいの?」
「創造神様か黒鐵様と呼んでくれ」
「じゃあ、創造神様と呼ぶの!」
「ところで、鬼はどうでした?」
「とりあえず我が聖なる光と炎と剣で滅殺してやった。力の加減が難しかったが、皆の被害はない。小夜叉達は?」
「とっくに戻ってきて、今は陣で不貞寝してらっしゃいます」
なるほど桐琴に負けたのね。ウサギどころかネズミ一匹も容赦なく殺すからな。我は善か悪くらいは見えるが、味方も殺すような事は我はしない。それと小夜叉はおそらく撃破数で負けたのであろう。
「城周りも一真隊と明智衆、それと森衆で警備を強化してます。さしむきは大丈夫だとは思いますが」
壬月達が居ればいいのだが、今はいない。とりあえず我が結界を張って寝ずの番をするか。
「とりあえず、我はまだこの姿でいる。我が厳重な結界を張って今夜だけは、我が寝ずの番をしよう。皆の衆は解散し休めと言っておけ。なお、我の姿を知っているのみ話せ。知らん奴がいたら、田楽狭間の天人である織斑一真が結界を張っているから大丈夫とでも言っておけ」
「ではハニー」
それはもう固定なのね。
「南蛮では、好き合う二人は寝る前におやすみの口づけをすると聞きますわ。ハニーもぜひ・・・・」
「む、そう来たか」
「あーっ。梅ちゃんばっかりズルいのー。鞠も創造神様に口づけしてもらいたいのー!」
「だ、だったら、私も・・・・」
「エーリカさん。南蛮とは、そのような破廉恥な風習が公然とまかり通るような場所なのですか?」
「は、破廉恥・・・・・!?」
「うぅ・・・・・一真様じゃなくて創造神様ーっ!梅さん一人だけ何てズルいですーっ!」
「詩乃、これは破廉恥な事ではないと宣言する。皆の者落ち着け、一人ずつキスをしてやるから」
「ハニー!私に、熱い口づけをーっ!」
何か知らんが戦いの後のテンションがおかしい。と言って地上に完全に降り立った後に、まず梅からキスをしたらに一人ずつキスをした。キスした後ぞろぞろと城の中に入る諸君。我は城の真上に飛んで結界を張った。地上に居る奴らは、詩乃達が言っているのか数十分で城周辺を見ていた者は寝ていた。さて我は暇になったので、久々にゲームでもするかと思いながら、一晩中ゲームをしていた。
ページ上へ戻る