Fate/ONLINE
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第二十五話 混沌
前書き
長らくお待たせして申し訳ありません。
更新します。
三体のサーヴァント達がぶつかり合っている頃、そこから数百メートル離れた巨木の上に彼等は居た。
「これはまた…すさまじい奴が出おったな―――――」
セイバー、アーチャー、そしてバーサーカーの戦いを見つめていたライダーは、そう低い声を唸る。
「バーサーカーの奴…。狂っているにはえらく芸達者な奴よのぉ」
ライダーはそう言いながら、遠くで鉄が打ち合う音に耳を傾ける。
そして、後頭部を掻き毟りながら立ち上がった。
「このままでは、その内誰かが脱落しかねん。そうなってからでは遅い―――――――――――お主もそう思わんか?」
そう言うと、ライダーは数メートル後方の崖上に視線を向ける。
「―――――何考えてやがんだ、ライダー」
声をかけられた、その人物。
ランサーは闘争心を剥き出しにしながらライダーを睨みつけている。
「イカンなぁ…これはイカン。余は彼奴等とまだ言葉を交わしておらん――――もう何人か出揃うまで様子を見たかったが、あのままでは確実に一組は脱落する」
「……」
「それでは遅いのだ」
ライダーの言葉にランサーは眉を顰める。
どちらかと言えば聖杯戦争において、一組でも減ってくれればそれだけで勝者に一歩近づく。
だが、あろうことかライダーは脱落してくれては困ると言ってのけた。
「ランサー、お主もその口であろう。本能的に戦いを求めておる――――このような決着を望んではおるまい」
「……チッ」
図星を突かれたのかランサーが舌を打つ。
ランサーの眼つきがさらに鋭くなる。
「彼奴等の殺気に当てられて出て行ったのはセイバーのみ。あわよくばこの勢いに任せて、キャスターの奴も顔を覗かせてくれればと思ったが…」
ライダーが腰の剣を引き抜く。
そして…
「見物は此処までだ!我らも参じるぞ―――!!」
虚空に剣を一閃した。
直後に雷撃が落ちたかのような轟音と共に、空間が裂け、その先にあるものが姿を現す。
強烈なまでの存在感と魔力を帯びたそれは、二頭の牡牛に牽かれた豪奢な戦車だ。
「……!―――ほぉ……」
あまりの光景にランサーも感嘆の言葉を漏らす。
「さあ往くぞ!振り落とされるでないぞ!!」
ライダーが戦車に飛び乗ると同時に、傍らに立つ小さいな蔭へと声をかけた。
恐らくその影こそがライダーのマスターであろう。
その大きさから恐らくは女性、しかもかなりの小柄であると見える。
その影もライダーが乗ったすぐ後に戦車へと飛び乗った。
「いざ行かん!血肉躍る戦場へ!!AAAAAALaLaLaie!!!」
轟音と共に、二頭の牡牛が引く戦車が空中を駆けて行った。
音は次第に小さくなり、やがて聞こえなくなった。
「……」
ランサーはその様子をジッと見つつ、大きくため息をついた。
「―――さて、どうするお嬢ちゃん。俺達も行ってみるかい?」
おもむろに口を開く。
ランサーの隣に立っている少女……ライダーからは影になってよく見えなかったようだが、おそらく気配で気づいてはいただろう。
ランサーが自らのマスターであるサチに問いかける。
「……もう少しだけ様子を見てみよう。ライダーの狙いも分からないし――――――それまでは……」
「まぁ、仕方ねぇな」
ランサー主従はその場で静観を選ぶ。
まだ動く時ではない。
それが彼等の選択であった。
「(セイバーが居るっつうことは、あの坊主も居るってことだよな……)」
ランサーはセイバーのマスターである黒の剣士の事を思い出す。
数ヶ月前は、戦闘を行うことなく別れたあの黒と銀の主従。
あの時は互いに敵意を向け会う関係では無かった――――――だが今となっては……。
「(果たしてこの嬢ちゃんに出来るのかねぇ――――――ちょっと前まで仲間だった奴らを討つ事が……)」
ランサーはサチを横目で見ながらそう考える。
「……キリト」
サチはそう、か細い声で呟いた。
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「ハァァァァァァァァ!!」
戦いは拮抗状態にあった。
セイバーは、自らの剣技でバーサーカーを追い詰めようと、不可視の剣を縦横無尽に薙ぐ。
そして、セイバーが攻めを止め、その蔭から飛び出してくるのは、双剣を構えたアーチャー。
キリトとセイバーが来てくれたおかげで、彼はアスナによりHPの回復をする事が出来た。
体力が全快したアーチャーは、セイバーの手が止まると同時に跳び出し、隙を与えることなく双剣を振るった。
まさに隙の無い、二体のサーヴァントのコミュニケーション。
まるで長年連れ添った良きパートナーと言わんばかりに。
だが、それでも攻め切れなかった。
「Aaaaaaaaaahhhhhh!!!」
バーサーカーは両手に持つ二振りの剣を巧みに操り、セイバーとアーチャーの攻撃を見事に掻い潜っていた。
その洗練された防御は、決して破られる事も無くバーサーカーには傷一つ付いていない。
それどころか、防御をしながらもカウンターを狙っており、少しの隙が出来たら迷わずそこを突き、セイバーとアーチャーに傷を付けていた。
「(バーサーカー……以前戦った時とは別人のようだ。一体何が――――――)」
セイバーは戦いの最中、一つの疑問を感じていた。
バーサーカーと最後に戦ったのは、あの橋での一戦。
あの時のバーサーカーは、お世辞にも万全の状態とは言い切れなかった。
ステータスの差が明らかにあり過ぎた。
結果、バーサーカーはセイバーに敗北し撤退を余儀なくされた。
だが、今回はどうであろう。
セイバーの剣技に追いつき、アーチャーの不意打ちに対応し、そして確実に此方へダメージを与える。
あれからそこまで月日は経っていない。
いくらなんでも、二体のサーヴァントを相手取って圧倒するほど、ステータスを上げるなど、この短期間では不可能だ。
バーサーカーの技量が高いのは、以前の戦いで証明済み。
だからと言って、此処まで拮抗した戦いにはならないはずだ。
「(何故だ―――――なぜこんな……)」
「セイバー!!!」
突如、キリトの叫び声がセイバーの耳に届いた。
ハッとしてセイバーが思考を切る。
そして、本能的に剣を前に突き出した。
「ガッ……!!」
強烈な衝撃がセイバーを襲った。
両手が痺れるような感覚と共に、セイバーは遙か後方へと吹き飛ばされた。
セイバーは空中で何とか体勢を立て直し地面に降り立つ。
「ク……ハ――――――」
だが、あまりの衝撃の大きさからか大きく息を切らし、現実に思考を戻した。
「(まさか……私が吹き飛ばされるほどの一撃を出せるとは)」
セイバーは一瞬、自分に何が起こったか分からず混乱したが、すぐに結果に行きつけた。
バーサーカーの放った横薙ぎの斬撃が、セイバーの剣と真正面から衝突したのである。
その衝撃のせいでセイバーは吹き飛ばされた。
つまりはセイバーが力負けしたのだ。
「(バーサーカー……貴様は一体……)」
「よそ見をするなセイバー!!」
セイバーの耳に、今度はキリトとは違う太い男の声が届いた。
声の主の男…アーチャーは、双剣をバーサーカーに向けて投擲をしていた。
「アーチャー、何を…!」
「―――投影準備」
セイバーの声が途中で途切れる。
そして突如、アーチャーの頭上に十数もの刀剣が現われた。
そのすべてがバーサーカーに切っ先向けており、発射される時を今か今かと待ち構えていた。
「――――憑依経験、共感終了」
「――――工程完了。全投影、待機」
「――――停止解凍、全投影連続層写………!!!」
一斉にその剣達がバーサーカーの元へ殺到した。
剣の雨はバーサーカーの命を狩り取ろうと、降り注ぐ。
だが、その剣達がバーサーカーを傷つける事は出来なかった。
バーサーカーの持つ二振りの剣が縦横無尽に振るわれる。
「……っ――――――厄介な――――――だが……」
バーサーカーは剣を一本残らず地へと叩きつけた。
だが、その剣達の役目は終わりでない。
「――――壊れた幻想」
アーチャーの一言と共にバーサーカーの周りに散らばる剣達がまとめて爆発を起こした。
その爆発の中心に居るバーサーカーも恐らく無傷ではない。
「……やったか?」
キリトの呟きが全員の耳に届く。
「~~~~~~arrrrrrrrrrr!!!」
だが、その願いも一つの咆哮でかき消される。
「……頑丈な奴だ」
アーチャーが呟く。
バーサーカーの鎧には傷が見えるものの、致命的なダメージは受けていない。
「…あの、爆発で…倒れないなんて……」
アスナがあり得ないものを見るようにバーサーカーを見つめる。
さすがに異常だ。
アーチャーの壊れた幻想はかなりの大火力を誇っていた。
だが、その攻撃を受けてもバーサーカーは立ち続けている。
この戦いで死ぬかもしれない。
この場にいる全員がそう思っていた。
―――――――ガチャリ。
バーサーカーが一歩踏み込む。
それと呼応するようにアスナが一歩後ずさった。
キリトは歯を噛み締め、それを睨みつける。
セイバー、そしてアーチャーは自らの獲物を構え、次の攻撃を迎撃する態勢を取る。
一瞬にも数時間にも思えるような沈黙。
両者の間に満ちる静謐なる空間…。
だが、その瞬間……。
いきなりの轟音が無音を破壊した。
全員が空を見つめる。
「…あれは―――!!」
キリトが思わず声を上げる。
一度見た事のある光景だ。
「……戦車?」
アーチャーが言った通り、それは古風な戦車であった。
もちろんただの戦車ではない。
本来馬が引くはずの戦車を牽いているのは牡牛、たくましい筋肉を躍動させながらも美しい牡牛だ。
それが壮麗な戦車を牽いて空中を駆けながら近づいてくる。
空を翔る戦車は居丈高に頭上を旋回しながら速度を緩め、地上に降りてきた。
戦車に乗っている騎手の姿が確認できる。
男は戦車を操作してセイバーとアーチャー、そしてバーサーカーの中間に降り立つ、その位置は戦闘を邪魔する形だ。
「双方、武器を収めよ。王の御前である。」
ここが聖杯戦争での一つの分岐点となる。
後書き
長い間更新できなくてすいませんでした。
私も就職しまして、引っ越しやら入社式やら研修やら、もうへとへと。
ようやく休日で、書く余裕が少しだけできました。
ちょくちょく更新していきますので、お願いします。
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