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Fate/ONLINE

作者:遮那王
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第二十四話 新たなる局面

 
前書き

皆さん、新年一発目の投稿です。

遅くなりました。
申し訳ありません。

かなーり忙しかったので、こんなにも遅れました。

では、投稿します。

 

 

「~~~~~~~~~~!!」

フィールド中に激しい叫び声が響いた。
憎悪と怒りが滲み出ている。
その声を発しているのは全身を鎧で武装した一人の男。

その怒りを真正面から受けているのは、一組の男女だ。

男の方は、対して焦った様子も見せず目の前から叩きつけられる殺気を受け流している。
だが、女の方はそうもいかない。
自分達に向けられる殺気に対して、戸惑いと恐怖を抱き、目の前の存在を見つめている。

「マスター、もう少し下がっていたまえ。巻き込まずに相手をする自信はない」
「アーチャー…」

アーチャーはそう言うと、アスナを一歩後ろへ下がらせた。
そして目の前に立つ自らの敵を真っ直ぐ睨み付ける。

二人の正面に立つ存在…。

バーサーカーは、両手に持つ二振りの片手剣をギリリと音がなるほどに力を籠めた。
アーチャーはその様子を見つつ、両手に持つ双剣、干将莫邪を油断なく構える。

一触即発の空気の中、二体の人知を超えた存在が互いに空気を震わせている。

「~~~~~~~~~~!!」

地面を蹴り、バーサーカーが一気にアーチャーへ間合いを詰める。
そのスピードは、以前セイバーと闘った時とは比べ物にならないほど精錬されていた。

「―――――――――!!!」

それを迎撃するアーチャー。
本来、肉弾戦には特化していないクラスではあるが、その非凡な剣捌きで何とかバーサーカーの剣筋を逸らす。

対するバーサーカーは、二刀持つにもかかわらず、一振りで体を縦に両断しそうな勢いで剣を叩き込む。
その武芸は、セイバーと同等かそれ以上に精錬されており、本当に狂っているのか疑問を浮かべそうである。

「(形勢は不利……か)」

アーチャーは、口に出さずとも内心そう考える。

バーサーカーの剛剣の前にアーチャーの双剣は、一度受けるたびに一つ罅が入り、二度受ければ刃が零れ、三度受ければ剣が砕けた。
その度にアーチャーは剣を投影し直すが、それもいつまで続くか…。

「……」

その様子を後方で控えているアスナは、何も出来ない事に歯噛みをしながら、ただその戦いを見つめていた。

そもそも、なぜこのような事になったかは、監督役からのメッセージが原因であった。

------------------

通達:聖杯戦争参加者

全てのサーヴァントが召喚され、一同戦いに明けている事であろう。

だが、問題が発生した。

キャスターとそのマスターは聖杯戦争の大義を忘れ、貸し与えられし力を浅薄な欲望を満足させるためだけに使っている。

キャスターのマスターは昨今、ゲーム内を騒がせているオレンジプレイヤーであることが判明した。彼は犯行に及んでサーヴァントを使役し、犯行に及んでいる。

彼とそのサーヴァントは聖杯召喚の障害であると同時に、君ら一人一人の敵だ。

故に、ここに暫定ルールの設定を宣言する。

今後、キャスター及びそのマスターの位置情報を君達に解除する。

見事キャスターとそのマスターを討ち取ったものには特例措置として追加の令呪を寄贈する。
もし単独で成し遂げたのであれば達成者に一つ。
また他者と共闘しての成果であれば、ことに当たった全員に一つずつ。
令呪が贈られる。

このルールに従うか否かは君たちの判断次第。

熟考し、ゲームに挑みたまえ。

------------------

二日前に、このようなメッセージがアスナの元に届いた。

無論、正義感の強かったアスナは、この暴挙を許す事は出来なかった。
故に首謀者を説得、またはキャスターを止めるために行動を起こす。

アスナ達主従はそのメッセージに書かれていた位置情報を頼りに四十五層の迷宮区へと足を運んでいた。

だが、彼等に予想外の事が起きる。

フィールドを出て三十分ほど進んだ所で、ある存在と鉢合わせした。
目の前に立っていたのは、フルプレートのアーマーを身にまとった不気味な存在。
バーサーカーはアスナ達に敵意を剥き出しにして、突如襲いかかって来たのであった。

突然のバーサーカーの襲来。
だが、アーチャーはそれに対しても冷静に対処していた。
常に冷静なアーチャーは、襲いかかるバーサーカーを油断なく迎え討ち、この場を切り抜けようとしていた。

そして冒頭へと至る。

「(何で……)」

あまりにも唐突な出来事であったため、アスナは軽く混乱していた。

聖杯戦争に関して、アスナは否定派である。
お互いに潰し合っても攻略の妨げになるだけという考え。
そして何より聖杯という願望機をアスナは信用していなかった。

だからこそ、目の前で戦いを仕掛けてきたバーサーカー。
……そしてそのバーサーカーを蔭ながら従えているそのマスターに問いかけたかった。

――――――何故私達は戦わなければいけないのか。

だが、相手は理性を持たない狂戦士。
話が通じる相手とは思えない。

そのマスターも、今どこにいるかも分からないし、話しようがない。

「(いったいどうすれば……)」

思考を巡らせるが、考える時間もほとんどない。
こうしている間にも、アーチャーが防戦一方の戦いを強いられていた。

「―――――ぐっ…!」

バーサーカーの激烈な剣筋はアーチャーを徐々に追い詰める。
体中に傷を受けつつも、アーチャーは投影を繰り返し反撃の隙を見定めていた。

が、状況はさらに悪化する。

「(―――――魔力が底をつきそうだな……)」

アーチャーに限界が近づき始めていた。

元々、このSAOには魔法というものが無い。
そのため、魔力という概念自体は存在していない。

だからサーヴァント達は、自らが体内で蓄えていた魔力のみで戦いを挑む事になる。
とは言っても、宿などで一晩休めば魔力自体は自然に回復するし、戦いさえしなければ魔力が自然に無くなるという事にはならない。

だが、このような状況では魔力がいくらあっても足りない。

アーチャーの投影には少なからず魔力が必要である。
また、連続で投影するとなると、かなりの魔力が必要となる。

アスナ自身もアーチャーに以前指摘されて、“魂の改竄”では魔力の底上げもしっかりしていた。

だが、それでも足りない。

アーチャーもそれを考慮していたが、如何せんバーサーカーの剣技には隙が無さ過ぎる。
確実に此方のウィークポイントを捕らえてくるので、防ぐのがやっとの状況でもあった。
さらには、捌き切れなかった剣のせいで、確実に相手は此方にダメージを与えている。
状況は悪化の一途をたどっていた。

「……ッ!!」

双剣でバーサーカーの剣を防ぐが、勢いに負けそのまま後方へ吹き飛ばされてしまう。
何とか着地しするが、またしても手に持つ双剣は砕ける。
アーチャーはアスナの目の前でバーサーカーを睨みつけた。

「……マスター、このままではジリ貧だ。些か勿体ないが令呪で撤退すべきだ」

アーチャーはアスナにそう問いかける。

それについては、アスナも考えていた。

サーヴァントを強化させ、ブーストとしての機能も発揮する絶対的な命令権でもある令呪。
その力を今ここで使うべきではないかと、アーチャーは判断した。

だが、アスナはその事にすぐ頷く事が出来ないでいた。

今この場で三つしかない令呪を使ってしまっていいものか。
今後の攻略の事を考えても、取っておくべきではないのか。

そう頭をよぎる。

しかし、その一瞬が命取りとなった。

「~~~~~~~~!!!」

バーサーカーが雄叫びを上げて、アーチャーに突進を仕掛けた。

「…ッチ…!」

舌を打ちながら、アーチャーは双剣を交差させてバーサーカーの剣を受けた。
だがそれだけでは終わらない。
もう一方の手に持った、二振り目の剣がアーチャーに向けて横薙ぎに振り抜かれた。

体を捻じるように剣をかわすアーチャー。
だが、完全にはかわしきれずにアーチャーの腹部に、一本のエフェクトが奔った。

「ぐっ……!!」

アーチャーは苦悶の表情を浮かべるも、すぐに臨戦態勢を取る。

隙を見せてはいけない。

「アーチャー!!」

アスナの悲鳴が木霊する。
アーチャーはその声に答える余裕も持っていなかった。
ダメージの蓄積と、魔力の枯渇。
防戦一方のこの状況。

苛烈なバーサーカーの攻撃に今のアーチャーでは対抗できない。

「――――あ…」

アスナの口から声が漏れた。
何を口に出そうとしたかは定かではないが、この状況をアスナは黙って見ていられなかった。

頭を瞬時に切り替える。

「(…令呪……!!)」

今、使うしかない。
アスナは令呪を使用する決心を付けた。

左手を掲げ、命令を下す。

だが、

「~~~~~~~~!!!」

アーチャーの一瞬のふらつく動作を見せた瞬間、バーサーカーからのプレッシャーが上がった。

裂帛の気合と共に振り上げた剣。
アーチャーを防御ごと吹き飛ばそうという大振りの一撃だ。

――――――――間に合わない。

今、命令を下したとしてもバーサーカーの剣はアーチャーの防御する双剣を砕き、脳天へ一撃喰らわせるであろう。

一瞬の油断が命取りの世界で、アスナの判断はあまりにも遅かった。

アーチャーは衝撃に耐えるべく、双剣を身構える。

そして、バーサーカーの剛剣がアーチャーへ振り下ろされた。

「|風王鉄槌|《ストライク・エア》!!」

予想していた一撃は来なかった。
代わりに、目の前で剣を振りかぶっていたバーサーカーが衝撃で吹き飛ばされている。

アスナは、一瞬の出来事に目を白黒させる。

「アスナ!!」

不意にかけられた声で、アスナは意識を取り戻した。
後方から駆けてくる足音が聞こえる。

「ご無事ですか」

アスナへと駆けよる女性。
セイバーはバーサーカーを意識しつつ、油断なく剣を構えながらアスナへ声をかけた。

「―――セイバー……さん?」

アスナは隣に立つ女性を確認すると、力なく体が崩れ落ちた。

「大丈夫か?」

セイバーの蔭から、線の細い男性が現われる。
黒いロングコートを身に纏った彼は、自らも片手剣を構えてバーサーカーを見つめている。

「キリトくん……」

セイバーのマスター……キリトはアスナの身を案じつつも、隙を見せないように警戒している。

「随分とボロボロですね、せっかくの|色男|《ハンサム》が台無しですよ」
「……君はいつからそんな軽口を叩くようになったんだ、セイバー?」

セイバーはアーチャーの隣に立つと、アーチャーへと冗談めいた言葉を言う。

キリト・セイバー組とアスナ・アーチャー組が、いつ出会ったかはここで語る事はないが、いずれ語る事にしよう。

いずれにしても重要なのは、彼等は敵対する訳でなく、互いに協力関係を結んでいるという事だ。

そして、セイバー組がこの場に参戦したという事で、状況ががらりと変わった。
セイバーは前に歩み出て、剣を構えた。

「…er…」

バーサーカーの雰囲気も変わる。
先程までも殺意を剥き出しにして戦っていたが、ここで再び周りを包んでいたバーサーカーの怨嗟が膨れ上がった。

「……アーチャー、一旦下がってください。回復を―――――」
「―――――すまないがその言葉に甘えるとしよう」

セイバーはアーチャーを下がらせる。
より一層膨れ上がるバーサーカーの殺気をセイバーは肌で感じていた。

「…セイバー」
「奴は以前よりも、格段に力を上げているようです。キリト達はなるべく離れて」

セイバーの言葉に、キリトはバーサーカーへと視線を戻した。
姿形は以前から変わっていない。

だが、なんとなくだが雰囲気が以前よりも禍々しくなっている。
そうキリトは感じ取った。

「~~~~~!!」

不気味な気迫を全面に押し出しながら、バーサーカーが地面を蹴った。
そのスピードは、以前セイバーが対峙していた時とは比べ物にならない。

「ハァァァァァァァァァァァ!!」

同時にセイバーも地面を蹴る。
不可視の剣を握り締め、その身を一陣の風としながらバーサーカーを迎撃する。

甲高い、鉄と鉄の当たる音で今回の聖杯戦争……一番の局面が、此処に始まった。
 
 

 
後書き

今回が、聖杯戦争の一つのファクターになる事が間違いないと思います。

何故、セイバー組とアーチャー組が互いに知っているのかは、いずれ書きたいと思っています。

そして、バーサーカーVSセイバー&アーチャー。

この三人の乱戦、一体どうなるのか。

原作で言うと、圏内事件辺りを元に作品を作りたいと思っています。



そして私事ですが、この度私卒業論文の完成に向けてまた少々投稿ペースが遅れると思います。
暇を見つけて何とか書いてきましたが、その暇すら見つからない状況です。
次回の投稿時期もまだ未定です。
どうか、皆さんには迷惑をかけてしまい申し訳ありませんが、何とかこの作品を書き続けていきたいので、応援よろしくお願いします。
 
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