Fate/ONLINE
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第二十六話 王と…
前書き
さて、二か月ぶりの投稿。
少しおかしな所もあると思いますが、それは順次直していきたいと思います。
出来れば皆さんからのご指摘もお待ちしています。
「双方、武器を収めよ。王の御前である。」
轟音と共に降ってきた男は、高らかにそう叫んだ。
その大音声はさっきまで響いていた雷鳴に匹敵した。
眼光は物理的な圧迫感を感じさせるほどの圧力をもっている。
本人の言うとおり王の威厳を持つ男だ。
普通の人間ならその威厳に無意識に従ってしまうかもしれない。
だが、その男に対峙するセイバーとアーチャー。
曲がりなりにも英霊である彼等が、この程度でどうこうなる器の持ち主ではない。
だが、この戦場にも英霊でない者達もいる。
マスターであるキリトとアスナは突然の男の襲来に体を硬直させ、大音声で叫ぶその声に、思わず汗を流さずにはいられなかった。
だが、キリトは瞬時に冷静さを取り戻して、その男を見つめた。
自分はこの男にあった事がある。
一度、フィールドで自分を叱咤したあのサーヴァントだ。
「わが名は征服王イスカンダル、此度の聖杯戦争ではライダーのクラスで現界している」
「……なぁ――――!」
誰かの驚く声が響く。
その場にいる全員が絶句した。
聖杯戦争によって重要な意味を持つ真名を自分から明かす英霊が居るとは思っていなかったのだ。
どう反応して良いものか判らない。
「うぬらとは聖杯を求めて相争う巡り合わせだが……矛を交えるより先に、まずは問うておくことがある。うぬら各々が聖杯に何を願うのかは知らぬ。だが今一度考えてみよ。その願望、天地を喰らう大望に比してなお、まだ重いものであるのかどうか」
ライダーの物言いに、不穏なものを感じたセイバーの眼差しが鋭くなる。
「貴様、何が言いたい?」
「うむ、何が言いたいのかというとだな……」
威厳はそのままに、飄々とした口調でライダーはとんでもないことを言う。
「ひとつわが軍門に降り、聖杯を譲る気はないか?さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を制する快悦を共に分かち合う所存である。」
「……」
言葉を失うとはのことだ。
あまりの突拍子のなさにセイバーは怒りを通り越して呆れ果て、アーチャーは鋭い眼差しをそのままにライダーを睨みつけている。
征服王イスカンダル。
またの名をアレキサンダー。
その名は広く世界に知られている。
世界征服に最も近づいた英雄であるその男が、いきなり現れて真名を名乗り、挙句の果てに一合もやりあわぬうちから自分に仕えろと勧誘してくる。
この人を食った提案とむちゃくちゃ以外の評価が思い浮かばない行動はどうだ?
破天荒すぎて英断か愚挙かの判断も出来ない。
「急に現われて何を言い出すかと思えば……」
アーチャーが一歩前に出て言葉を噤む。
その瞳は心なしか細まっているような気がする。
「その提案には承諾しかねる」
睨みつけながら切っ先を向ける。
「そもそもそんな戯言を述べ立てるために、戦いを邪魔したというのか?」
セイバーも前に出て問いかける。
その顔には表情はない。
本人は戯言などではなく徹頭徹尾本気なのだが…。
ライダーは「むう」とうなりながらこめかみを指で掻いている。
それでも威風堂々とした態度は微塵も揺るがないのだからこの男も只者ではない。
「―――――待遇は応相談だが?」
「くどい!」
ライダーの提案はセイバーによって一瞬で切り伏せられた。
「こりゃー交渉決裂かぁ。勿体無いなぁ。残念だなぁ」
どうやらライダーはこれが交渉だと本気で思っていたらしい。
ライダー以外は決裂して当然と思っているが、本人は本気で残念そうだ。
「それじゃあ、他の奴にもちょいと声掛けしてみるか」
そう言うとライダーは辺りを見回して大きく息を吸い込んだ。
「おいこら、他にもまだおるだろうが。闇にまぎれて覗き見をしている連中は!」
いきなりそんなことを大音量でのたまうライダーにセイバーとアーチャーが反応する。
「・・・どういうことだライダー」
セイバーの問いかけに豪胆なる王は満面の笑みに親指を立てて示す。
「セイバー、アーチャー、そしてバーサーカーよ。うぬらの真っ向切っての競い合い、真に見事であった。あれほどの清澄な剣戟を響かせては、惹かれて出てきた英霊が、よもや余一人ということはあるまいて」
どうやら他のサーヴァントがいることを知覚している訳ではないらしい。
多分いるだろうくらいの感覚だろう。
勘以上の根拠はあるまい。
「情けない、情けないのぅ、集った英雄豪傑どもよ。彼等が見せ付けた気概に、何も感じるところがないと抜かすか?誇るべき真名をもちあわせておきながら、こそこそと覗き見に徹すると言うのなら、腰抜けだわな。英霊が聞いて呆れるわなぁ。んん!?」
挑発か本心か・・・多分両方だろう。
この英霊には多分裏表がない。
本気で思っていることを口にしているだけだ。
「聖杯に招かれし英霊は、今!ここに集うがいい。なおも顔見せを怖じるような臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!」
ライダーの大熱弁はそれを聞いた者たちに色々な意味で頭の痛い思いをさせた。
あるものはこんな奴に世界は征服されかかったのかと理解の範疇を越え。
あるものはライダーの底知れぬ破天荒さに思考を停止する。
案の定、ライダーの宣言から程なくして黄金の光が現れた。
すでに驚くほどのことではない。
ライダーの言葉に乗せられて出てきたプライドの高いサーヴァントだろう。
「あいつは・・・」
その姿をみたキリトが声を漏らす。
以前ほんの一瞬だけ見ただけだが、それだけで脳裏に刻まれた強烈な存在感、高い街灯の上に立ったのは全身を黄金のプレートメイルに身を包み、黄金の髪と深紅の瞳を持つサーヴァント。
「|我を差し置いて”王”を称する不埒者が涌くとはな」
街灯の上から三人のサーヴァントを睥睨する姿は確かに王といえるだけの威厳とカリスマを感じさせる。
ついでに・・・たとえ何があろうが関係なく、どこまでも我が道を行くと言わんばかりの傲岸不遜さは一目で理解できた。
ライダーも自分と同等かそれ以上に高飛車なサーヴァントがいるとは思っていなかったらしくちょっと固まっている。
毒気を抜かれたライダーが、困惑顔であごの下を掻いた。
「難癖つけられたところでなぁ……イスカンダルたる余は世に知れ渡る征服王に他ならぬのだが」
「たわけ、真の英雄たる王は天上天下に我ただ一人。あとは有象無象の雑種に過ぎん」
やはりと言うかなんと言うか、プライドの高さはおりがみつきらしい。
しかも自分以外を雑種と言い切るあたり生前は相当な暴君だったのだろう。
そして王でありながら雑種と呼ばれたイスカンダルはというと男の物言いに怒るかと思いきやあっさりと流してため息をついた。
「そこまで言うんなら、まずは名乗りを上げたらどうだ?貴様も王たるものならば、まさか己の威名を憚りはすまい?」
「問いを投げるか?雑種風情が、王たるこの我に向けて?」
話が通じない。
しかしそれはなんとなく全員が感じていたことだ。
この男はたとえマスターであろうと他人の言うことを聞かない気がする。
マスターも苦労しているのではないだろうか?
「我が拝謁の栄に浴してなお、この面貌を見知らぬと申すなら、そんな蒙昧は生かしておく価値すらない。」
男の左右の空間が歪む。
まるで浮き出てきたかのように姿を現したものに全員が息を呑んだ。
剣と槍が一本ずつ、施されている装飾や感じ取れる魔力の量から明らかに宝具だ。
男が攻撃状態に入ったのを見た、他のサーヴァントたちは皆迎撃の構えを取り、マスターたちは息を呑んだ。
「おいおい、あまり血気盛んになるな。お主もサーヴァントである以上、名を名乗ってから殺し合うのが礼儀と言う奴であろう。何も真名を言えとは言わんがな」
ライダーが悠長に話しかける。
この状況が分かっていっているのであろうか。
だが、確かに全員が男の存在に興味を注いでいた。
この男のクラスが分からない。
離れていても肌で分かる王気を見せる男が並大抵の存在では無い事を表している。
「戯け。我を薄汚い日陰者共と一緒にするな」
そう言うと男はその場にいる全員に自らを名乗る。
「我は絶対にして始まりの王、英雄の中の英雄王、ギルガメッシュ。凡百の英霊どもと一緒くたにするな! 我にクラスなど関係ない。故に貴様もそう呼ぶがよい」
ギルガメッシュ。
それはこの世で最も古い神話を元とする人類最古の英雄王。
黄金の英雄王は堂々とした立ち振る舞いでそう名乗った。
後書き
バーサーカーが空気になっているのは気にしない。
次回からさらに大暴れしますから(笑)。
そして遂に登場のAUO!!
8体目のサーヴァント。
マスターは誰なのやら……。
感想お待ちしています。
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