機動戦士ガンダムSEED DESTINY~SAVIOUR~
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第五話 ユニウスセブン 前編
前書き
ユニウスセブンに異常が発生。
そしてアレックスは…
ボギーワンを逃がしてしまったミネルバ。
直ぐさまボギーワンを探すが…。
メイリン「あ…艦長。最高評議会よりデュランダル議長に通信です。ユニウスセブンが軌道を外れて地球へ向かっています!!」
デュランダル「…ユニウスセブンが地球へ…!?他にも何も言ってきてないかね…?」
メイリン「ジュール隊がメテオブレイカーを持ってユニウスセブンへ向かったとのことです。」
アーサー「メテオブレイカー…!?」
タリア「あれ程の質量よ。動き出したら止める術はそうはないわ。後は砕くしか…」
デュランダル「艦長。ミネルバもジュール隊の支援に向かってくれないか?出来ることはそうないかもしれんが…」
タリア「しかし、ボギーワンは…」
デュランダル「アーモリーワンから別の捜索隊を出す。今はユニウスセブンの方が重要だ。」
ナオト「あれ?シン?」
シン「あ、ナオトさん。」
医務室の前でナオトに名前を言われたシンは向き直る。
ナオト「どうしたの?医務室に何か用でも?メディカルチェックは済ませたじゃない。」
シン「いえ、ガイアの強奪犯が医務室にいるって聞いて、ちょっと気になっちゃって」
ナオト「ふ~ん。まあいいか。私も行くね」
シン「え?」
ナオト「私も強奪犯のことで少し気になることがあるの。」
シンとナオトはガイアの強奪犯…ステラのいる医務室に向かった。
そして医務室に入ると、シンは驚愕で目を見開くことになった。
シン「この子…!!」
ナオト「知り合い?」
シン「いえ、知り合いというか…その…」
顔を赤くして口ごもるシンにナオトはニヤリと笑う。
ナオト「分かった~。シンってこういう子が好みのタイプなんだあ…」
シン「ち、違います!!第一、この子は敵ですよ!?」
ナオト「照れないのニブチンさん♪」
シン「(ニブチンって…アレックスさんのことに全く気付かないあんただけには言われたくねえ…)」
シンはアレックスがナオトに好意を抱いていることを知っているが、ナオトはアレックスがどんなにアピールしても全く気づかない超弩級の鈍感なのだ。
そんなナオトにニブチン扱いされたシンは胸中でツッコんだ。
ナオト「まあ一概にこの子が敵と言えるかは分からないけどね。」
シン「え?」
ナオト「この子は普通の人間じゃない。大量の薬物が彼女には使われているの。その状態を安定させるため、強制的な記憶操作も行われているようだね」
シン「そ、それって!?」
ナオト「多分、この子は連合のブーステッドマンかエクステンデッド。遺伝子操作を忌み嫌う。連合、ブルーコスモスが薬や様々な方法を用いて作り出した生きた兵器。戦うためだけの人間。コーディネイターに対抗するために肉体と精神を改造して子供の頃から戦闘訓練ばかり受けさせられて、適応出来ない者は容赦なく淘汰されて、基準を満たした者は戦場に送り出される」
シン「この子がそうだって言うんですか…?だったらコーディネイターは自然に逆らった間違った存在とか言っておきながら!!こういうのはいいんですか!?人をまるで道具みたいに!!」
それを聞いたシンは身体が熱くなるような怒りを感じた。
そんな場所があるのなら、今すぐインパルスで乗り込んで踏み潰してやりたい。
そんな衝動にさえ駆られた。
ナオト「うん、私達が本当に倒すべきなのは、そういうことを平然とする馬鹿達なのかもしれないね」
シン「そうですよ!!遺伝子弄んのは間違っててこれは有りなんですか!!!?」
ステラ「ぅ……ぁ……」
ナオト「あ、起きちゃった」
シン「え?」
ステラ「ここ……どこ?」
おずおずと、辺りを見回す仕種をしながら、ステラは不安げな表情で言う。
シン「あ……だ、大丈夫だよ、ここはミネルバの医務室だから……」
シンは怖がらせないように慌てて笑顔になって、ステラにそう言った。
ステラ「ミネルバ……ネオ、ネオはどこ?スティング…?アウル…?」
その単語を理解出来なかったのか、ステラは不安そうな表情のまま、またキョロキョロと辺りを見回すと、誰かを探すような言った。
シン「?」
シンは首を傾げるが、ステラは首を横に振って、声を出す。
ステラ「ネオがいない……怖い……」
シン「え?」
ステラの態度に、シンははっとする。
ステラ「…怖い、いやぁぁぁぁ…っ」
シン「あ、待って!!」
ステラは上半身を上げて振り乱し、恐慌状態になって暴れかける。
だが、咄嗟にシンは、ステラを抱き締め、押さえつけるように力を入れつつも、頭を交差させたステラの耳元に、優しく言う。
シン「大丈夫、大丈夫だから。誰も、誰も君を傷つけたりなんかしないから……」
だが、ステラの力は幾分弱まったものの、なおも暴れようとする。
ステラ「いや、ステラ、怖い!!」
駄々を捏ねる子供のように、ステラは声を上げる。
シン「……大丈夫だから、君は君は俺が守るから」
シンは咄嗟に、そんな言葉を口に出した。
ステラ「守る……?ステラを…守る…?」
ステラは力を抜き、シンの顔を見た。
ステラを落ち着かせようと、勢いで言ってしまったシンは、恥ずかしそうに笑いながら頭を掻いた。
シン「うん……大丈夫、俺が君を傷つけさせないから」
シンは誰にも見せたことがないくらいの優しい笑みを浮かべながら言う。
ステラ「守る……ステラを……」
ステラは、譫言のようにシンの言葉を反芻する。
ナオト「…若いねえ……」
ナオトがからかうように言うとシンは顔を真っ赤にしながら否定する。
シン「いえ違いますよ!!?俺はそういう意味で言った訳じゃあ…」
ナオト「シン、酷い。ステラとの約束は遊びだったんだ」
シン「いや、俺はあああああ!!!!」
泣きまねをするナオトにシンは頭を抱えて叫ぶ。
デュランダル「失礼するよ」
ナオト「あ、議長」
シン「え?あ…」
議長の存在に気付いたシンは急いで襟を直すと敬礼する。
デュランダル「そう固くならなくてもいい。ガイアの強奪犯が収容されていると聞いていたのだが……どうやら、ただ事ではないようだね……」
ナオト「はい。どうやらエクステンデッドのようです。薬物依存といった中毒症状はないようですが……」
デュランダル「そうかね…」
ナオト「先程も恐慌状態になって、暴れ始めたんですが。シンのおかげで…」
デュランダル「そうか……本来なら後送すべきなのだろうが……どうも取り扱いの難しい問題になりそうだね」
ナオト「はい。私としては早くプラントの医療施設に送るべきだと私は思います。彼女は連合の被害者です。」
デュランダル「分かった。それではこちらで手配をしておこう。」
ナオト「はい。じゃあシン。アレックス達も待っていることだし談話室に行こう。」
シン「え?あ、はい。失礼します。ステラ、また来るから」
ステラ「…うん」
ナオトとシンは議長に敬礼し、シンはステラにまた来ると言い残して医務室を後にするのであった。
そして談話室の自販機でコーヒーを購入すると、会話を聞いていたシン達だったが…。
シン「ユニウスセブンが落ちている!?」
談話室で、レイが切り出した話題にシン達は驚き果てた。
レイ「ああ。ミネルバはこのまま破砕作業に出るらしい」
シン「じゃあ強奪部隊はどうなるんですか?」
アレックス「断念だろうな。強奪部隊よりユニウスセブンの方が優先されるだろう」
アレックスの言葉に静まり返る一同。
ヨウラン「でもさ、何で俺達が行かなきゃ行けないんだって話だよな?」
意味が分からないと言いたげな表情でそう呟くヨウランにシン達の視線が集まる。
しかし、ヨウランの発言に対して確かにと言いたげに頷くヴィーノ。
ヴィーノ「ユニウスセブンに核を撃ち込んだのは連合なんだから連合がやればいいだろ?」
ヴィーノの言う通り、地球に落下中のユニウスセブンに核ミサイルを撃ち込んだのは地球連合軍なのだ。
メイリンもユニウスセブンの破砕作業に思うことがあるのか、ヴィーノの発言に少しの間を置いて頷いた。
メイリン「そうだよねえ……冷静に考えたら、私達がユニウスセブンを砕く義理なんて無いし……」
本来ならこれはユニウスセブンに核ミサイルを撃ち込んだ地球連合軍がやらなければならないことだ。
ルナマリア「面倒ね……」
メイリンの発言に、彼女の姉であるルナマリアも同意見なのか、それに続く。
地球の人々がどうでもいいと言うわけではないのだが、まるで地球連合軍の尻拭いをさせられているような感じがしてならないのだ。
ヨウラン達の言葉にシンとレイとアレックス、ナオトは黙ったままだ。
アレックス「だが、ユニウスセブンをあのままには出来ない。地球にいる同胞を死なせるわけにはいかないだろう?」
地球にもザフト軍兵士やコーディネーターが沢山いる。
このままでは彼らもユニウスセブンの落下の被害に巻き込まれてしまうのだ。
ヴィーノ「分かってますよ。でも案外楽なんじゃないですか?俺達にとっちゃさ」
ヨウラン「確かに。これは事故なんだし。俺達には責任は無いんだからな。しょうがないよな。これでナチュラルがいなくなるんだったら変なゴタゴタも一緒に消えて一石二鳥だよな」
ナオト「ヨウラン。そういう言い方は良くないよ」
あんまりな言い方にナオトは咎める。
ヨウランは苦笑しながらナオトの方を向く。
ヨウラン「冗談ですよ。ちょっと場を和まそうと…」
ナオト「ちっとも和まな…」
カガリ「冗談だと!?」
アレックス「ん?」
叫び声に反応し、アレックスが見遣るとそこにはカガリとキラが立っていた。
カガリ「しょうがないだと!?案外楽だと!?これがどんな事態か、地球がどうなるか、どれだけの人間が死ぬことになるか、ほんとに分かって言ってるのか、お前達はっ!?」
カガリは猛烈な勢いで、ヨウランを指差し、糾弾する。
ヨウラン「すいません」
しかしヨウランは、ヴィーノ達と顔を合わせてから、形式ばかりに頭を下げた。
その姿に、カガリはさらに顔を紅潮させた。
カガリ「くっ……やはりそういう考えなのか、お前達ザフトは!!あれだけの戦争をして、あれだけの思いをして、やっとデュランダル議長の下で変わったんじゃなかったのか!?」
激情のままに、ヨウランやアレックス達に怒鳴りつける。
シンは眉間に皴を寄せる。
カガリ「それとお前もだアスラン!!」
アレックス「え?」
カガリ「勝手にいなくなって私がどれだけ心配したと思ってるんだ!!何でお前がザフトなんかにいるんだ!!」
“ザフトなんかに”その発言に全員がカガリに非難の視線を浴びせる。
しかしアレックスはシンの方を見遣ると尋ねる。
アレックス「シン。彼女は誰だ?」
カガリ「え?」
疑問符を浮かべながらシンに尋ねるアレックスにカガリは目を見開いた。
シン「オーブのアスハですよ。アーモリーワンを訪問してた時に巻き込まれてここに来たんですよアレックスさん」
仏頂面で答えるシンにアレックスは頷いて、アレックスはカガリに向き直る。
アレックス「申し訳ありませんでした。アスハ代表。そうとは知らずに。」
一国の代表に失礼な態度を取ってしまったアレックスは即座にカガリに謝罪する。
カガリ「な、何を言ってるんだアスラン!!どうしてお前がザフトなんかにいるんだ!!答えろ!!」
アレックス「何故と言われても、プラントは俺の故郷だから守るために軍に入ったので…後、私はアスランという名前ではなくアレックス・ディノです」
カガリ「そ、そんなはずない!!お前はアスランだ!!」
キラ「カガリ」
アレックスの肩を掴んで叫ぶカガリを制止し、キラがアレックスに向き直る。
キラ「アスラン。どうして君はザフトにいるの?」
アレックス「アレックスです。先程も言ったように、プラントは俺の故郷です。なら、俺がザフトにいるのも当然では?」
キラ「それが正しいの?ザフトにいることが本当に正しいことだと思ってるの?」
ザフトにいるアレックスを非難するように言うキラにシン達の眉間に皺が寄る。
アレックス「……」
キラ「何で戦争をしようとするの?」
アレックス「それは…っ!?」
突如、アレックスに頭痛が襲うが、表情には出さずに耐える。
異変に気づいたナオトがアレックスの隣に立って背中を撫でる。
それを見たカガリが顔を顰めた。
キラ「答えてよアスラン」
シン「……さっきから何なんだよあんた達は!?」
とうとう我慢の限界が来たのか、シンがアレックスとキラ達の間に立ち、アレックスを庇うように叫んだ。
シン「自分の故郷を守ろうとするのが何がいけないんだ!!力がないと何も守れないから、今の家族を守るためにアレックスさんはザフトに入ったんだ!!そんなことも分からないのかよあんたは!!?」
キラ「だけどアスランは…」
シン「この人はアスラン・ザラじゃない!!俺達の仲間のアレックスさんだ!!ナオトさん!!レイ!!アレックスさんを医務室にでもどこでもいい。連れてってくれ!!」
ナオト「あ、うん…」
レイ「分かった。」
ナオトとレイはアレックスを連れて談話室を後にする。
カガリ「ま、待てアスラン!!話は終わって…」
シン「待つのはあんただ馬鹿野郎!!」
2人に連れられていくアレックスを止めようとするカガリにシンは叫んで妨害する。
シン「自分の考えを押し付けようとするところは親父にそっくりだな!!」
カガリ「何だと!?お父様を侮辱する気か!?」
シン「現実を見ない理念だけの馬鹿首長だろ」
カガリ「お前!!」
ウズミを侮辱する発言をするシンにカガリは激昂する。
シン「教えてやるよ!!俺の家族はあんたの親父に殺されたんだ!!あんたらの下らない綺麗事のせいでな!!」
カガリ「え…?」
シン「国を信じて、あんた達の理想とかってのを信じて…そして最後の最後にあんた達の選んだ道のせいで、オノゴロ島で殺された!!」
そしてシンはカガリを一層強く睨む。
カガリはそれに怯え、後退する。
シン「だから俺はもう、あんた達を信じない!!あんた達の言葉なんか信じない!!そんなあんた達の言う理想とかってのも信じない!!この国の正義を貫くって…綺麗事並べて自己満足して…あんた達はあの時、自分達のその言葉で誰が死ぬことになるのかちゃんと考えてたのかよ!!あんた達に…あんた達なんかに今のあの人を否定する資格なんかない!!」
そう吐き捨ててシンは談話室を後にする。
ルナマリア達もシンを追うように談話室を後にした。
そして医務室に連れられたアレックスはナオトから飲み物を渡された。
ナオト「アレックス、落ち着いた?」
アレックス「ああ…少し酷い頭痛だったが大丈夫だ。それにしても彼女は本当にガイアの強奪犯なのか?俺には普通の女の子にしか見えないが…」
飲み物を受け取りながら、大人しくしているステラを見遣るアレックス。
ナオト「まあ、見た目はね」
ステラ「?」
アレックスとナオトの話を理解していないのかステラは首を傾げていた。
すると今度は医務室にシンが入って来た。
アレックス「シン」
シン「アレックスさん…」
アレックス「ありがとうシン。庇ってくれて。」
シン「別に…アスハに腹が立ったからですよ」
ステラ「シン…どこか痛いの?」
シン「え?」
ステラ「シン…泣きそう…」
シン「…だ、大丈夫だよ。ステラは気にしないでゆっくり休んで、ユニウスセブンを砕いたらステラはプラントの医療施設に行くんだから」
ステラ「ステラ…シンといられないの…?」
シン「ユニウスセブンを砕いたら休暇を取ってでも会いに行くよ。約束するから」
ステラ「うん…約束…!!」
アレックス「…シンが別人に見える……」
信じられない物を見たと言いたそうな表情のアレックスである。
アレックス「ナオト、シンと彼女はどんな関係なんだ?」
ナオト「………」
アレックスの問いにナオトは無言で小指を上げる。
アレックス「こ、恋人?」
シン「ち、違います!!」
アレックス「おめでとうシン。心から祝福するよ」
即座に否定するシンに対してアレックスは本心から言う。
それを聞いたシンは渋い顔をする。
シン「(この人の場合100%善意だから怒るに怒れない…)」
悪意がないからタチが悪い。
これがあのヴィーノかヨウランならボコボコにしてやれた物を…。
アレックス「コーディネイターとナチュラルの恋人か…前途多難かもしれないが、こちらも精一杯サポートさせてもらうからなシン。」
シン「あ、いやだから…」
ナオト「コーディネーターとナチュラルの結婚って…理想的だよね」
デュランダル「そうだね。私もコーディネーターとナチュラルの共存を目指す者として君達の仲を応援しようじゃないか」
シン「議長まで!?あんた達は一体何なんだーーーーっ!!!!!!」
アレックス、ナオトに続いて議長まで悪ノリするので、シンは思わず叫んでしまったのであった。
後書き
ユニウスセブンに向かう直前の話です。
実はステラの扱いについて悩んでます。
ステラをミネルバにいれるか否か…。
入れないなら民間人コース
ミネルバなら赤服コースです
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