戦国異伝
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第百五十六話 加賀平定その七
「何と、今度は加賀もか」
「はい、今報が入りました」
「一日で二十七万の門徒達を降したとのことです」
「これで加賀も収まるかと」
「織田家の手で」
「ううむ、何と」
義昭はこの戦は織田家にとって大きな危機だと思っていた、だが。
信長はその戦を一つずつ的確に勝っていた、そして。
幕臣達にだ、こう言った。
「では後は摂津だけか」
「はい、そこを収めればです」
「この戦も終わりです」
幕臣達はここで笑顔で話すのだった、見れば彼等は青い服を着ている。言うまでもなく織田家の青である。
「また一つ織田家は大きくなりますな」
「天下は収まります」
「実によいことです」
「有り難いことです」
「そ、そうじゃな」
義昭も流石に彼等に己の本音を出せない、それでだった。
その本音を隠してだ、こう言うのだった。
「それはよいことじゃ」
「延暦寺が不穏な動きを見せていますが」
「右大臣殿なら何とかしてくれます」
「上様、ここは右大臣殿にお任せしましょう」
「そうしましょうぞ」
「では余は見ているだけか」
義昭はこう幕臣達に問うた。
「そうするのか」
「はい、今は」
「それでいいかと」
「天下は最早右大臣殿が治められているに等しいです」
「善政も敷かれていますし」
「ですからここは」
「そうしましょうぞ」
幕臣達は義昭の本音に気付かないまま応える、そして。
その中でだ、彼はこう言うのだった。
「よい」
「よい?」
「よいとは」
「下がれということじゃ」
苛立つ顔でだ、義昭は幕臣達に告げた。
「御主達は下がれ」
「左様ですか」
「我等は今はですか」
「上様の御前から去ってですか」
「そのうえで」
「休んでおれ」
その苛立っている顔での言葉だ。
「それではな」
「はい、それでは」
「我等はこれで」
「退かせてもらいます」
「それでは」
「天海と崇伝を呼ぶのじゃ」
ここでいつも頼りにしているこの二人の名を出すのだった。
「わかったな」
「はい、それでは」
「すぐにお二人を呼びます」
「うむ、そうせよ」
義昭は精一杯の威厳、去勢で彼等に告げる。そうしてだった。
すぐにその二人が来た、義昭は三人だけになるとこう彼等に告げた。
「近う寄れ」
「わかりました、それでは」
「今より」
二人も応えてそしてだった。
顔を寄せ合う様にしてだ、義昭はこう言った。
「織田家のことじゃ」
「はい、加賀も収めそうですな」
「そうなりますな」
「どうすればよいのじゃ」
義昭は怪訝な顔で二人に問う。
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