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戦国異伝

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第百五十六話 加賀平定その八

「ここは一体」
「はい、ここはです」
「様子を見るべきです」
 二人はこう義昭に告げた。
「今はです」
「延暦寺についても」
「あの寺のこともか」
「とりあえずはです」
「そうしてよいかと」
 こう義昭に言うのだった。
「そして摂津でどうなるか」
「そこで、です」
「どうせよというのじゃ、余は」
 義昭は真剣な顔で二人に問うた。
「織田家がそこまでいけば」
「まだ本願寺は負けてはなりませぬ」
「ここで完全に負ければ織田家は一層力をつけます」
「織田家が摂津を完全に手中に収めればさらに厄介になります」
「ですから」
 それでだというのだ。
「本願寺が危うくなればです」
「ここで上様が動かれるべきかと」
「本願寺を潰してはなりませぬ故」
「その時に」
「では仲裁をするか」
 ここでこう言った義昭だった。
「そうするか」
「はい、それがよいかと」
「その時はです」
「上様が戦を止められるのです」
「そうしましょうぞ」
「うむ、ではな」
 義昭も頷きそうしてだった。
 そのうえでだ、二人もこう言うのだった。
「織田家も疲れます」
「如何に勝っていってもです」
「必ず疲れが出ますし」
「そして本願寺に今倒れてもらう訳にもいきませぬ」
「まだ双方に戦ってもらわねばなりません」
「ですから」
 織田家の疲れも頭の中に入れてそのうえでだというのだ。
「仲裁の時を待ちましょう」
「このまま本願寺が負け続けていても」
「今はそうしましょうぞ」
「ここは」
「機を見るか」
 義昭は袖の中で腕を組んで述べた。
「そうした時じゃな」
「左様です、では」
「今はまだ、です」
「ここは開けましょう」
「そうしましょうぞ」
 こう話してそしてだった。
 義昭は二人の僧達の案を受けた、そして今はこう言うのだった。
「ではな」
「はい、それでは」
「幕府は織田家を見ていましょう」
「そうしていきましょう」
「それでは」
「うむ、ではな」
 こう話してそしてだった、義昭は幕府としては今は動かないことにした。織田家も本願寺も一切止めないのだ。
 このことを決め手だ、天海と崇伝もこう言った。
「それでじゃが」
「はい、政のことでしょうか」
「それでしょうか」
「いや、違う」
 政の話ではないというのだ。
「御主達今から能を見るか」
「能ですか」
「それを今から」
「暇じゃ、能を見ようぞ」
 こう言って二人を誘うのだった。
「銭には困っておらぬからな」
「だからですか」
「今より」
「うむ、それに酒いや般若湯もじゃ」
 二人は僧侶であり酒は飲めないことになっている、だから呼び名を変えたこれを共に飲もうというのである。 
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