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戦国異伝

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第百五十六話 加賀平定その六

「さて、延暦寺じゃな」
「次はですな」
「あの寺ですな」
「爺の文によると都に僧兵達を送ろうとしているという」
 信長が警戒しているのはこのことだった、延暦寺の僧兵達は平安の頃より都を脅かしてきていたのである。
 それでだ、彼等が都に向かうことはというのだ。
「どちらにしても延暦寺は何とかせねばならぬと思っておった」
「では、ですか」
「それではですか」
「どちらにしても延暦寺はですな」
「収めるつもりだからこそ」
「摂津のことも気になるがこれも一つの機じゃ」
 それでだというのだ。
「それではな」
「はい、それでは」
「今より延暦寺に向かい」
「あの寺をどうにかしますか」
「その代わりすぐに終わらせる」
 長引かせることはしないというのだ。
「やはり摂津が気になるからのう」
「では、ですな」
「越前から近江に戻り」
「そうして」
「延暦寺といってもよい僧達も多い」
 信長もこのことはよくわかっている、延暦寺は確かに多くの破戒僧がいるがそれでも昔から多くの高僧も出してきているのだ。
 それがわかっているからだ、信長も言うのだ。
「そうした僧侶達には出来るだけじゃ」
「手を出さずにですな」
「そうしてですな」
「手荒にならなければそれでよい」
 それが最善だというのだ。
「ではな」
「はい、延暦寺に」
「今から」
 こう話してだった。88
「そうするぞ、金ヶ崎の爺とも合流してな」
「そういえば平手殿ですが」
 ここで林が平手について言う、信長の話を受けて。
「この度の戦では非常に助かりました」
「兵糧も武具も常に十分にあったからな」
「はい、飯に困らず戦えることは有り難いです」
 腹が減っては、という。それでなのだ。
「ですから」
「この度の戦での爺の功は大きい」
「それでは」
「次の論功では弾む」
 平手に多くの褒美を与えるというのだ。
「そうするとしよう」
「ですな、それでは」
「その爺との合流し延暦寺じゃ」
 あの寺と向かい合うというのだ。
「さて、この度はどうなるかじゃな」
「本願寺とは得体のしれぬ者達との激しい戦になりましたが」
「延暦寺とは、ですな」
 ここで林の弟である通具も言ってきた。
「しかしあの寺も収めれば」
「都は安泰ですな」
「それもあってじゃ」
 延暦寺に向かうと言う信長だった。
「延暦寺も何とかせねばな」
「では間も無く加賀も落ち着きますし」
 柴田が強い声で信長に言う。
「そうなればすぐにですな」
「近江に向かうぞ」
 こう話してだった、信長は加賀を平定させたうえですぐに近江に向かうというのだ、戦は本願寺とだけではなくなっていた。
 義昭は織田家と本願寺の戦の成り行きを都で聞いていた、そのうえで難しい顔で残っている幕臣達に言うのだった。 
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