戦国異伝
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第百五十六話 加賀平定その五
「何者なのか」
「念仏も唱えませぬし」
「一体全体何者か」
「妙に思っております」
「わからんことじゃな」
信長もここで言う。
「御主達でも」
「左様です」
「門徒の筈ですが」
「どうも門徒には思えませぬ」
「あの者達については我等も妙に思っております」
「どうにも」
僧侶達はまた言う、彼等も闇の服の門徒達については何も知らなかった、それで信長はこうも言ったのだった。
「顕如殿はどうじゃ」
「法主様ですか」
「そうじゃ、顕如殿なら知っておるか」
本願寺の主である彼ならというのだ。
「あの者達を」
「さて」
この問いにもだ、僧侶達はいぶかしがる顔をするだけだった。その顔で信長にも答える。
「法主様といえど」
「どうなのか」
「法主様ならと思いますが」
「それでも」
確かなことは言えないというのだ。
「少なくとも我等は知りませぬ」
「とてもです」
「申し訳ありませんが」
「左様か、ならよい」
信長もその話を聞いてこう返した。
「御主達があの者達について何もわからぬことはわかった」
「はい、残念ですが」
「そうしたことは」
「では下がれ」
信長は僧侶達に穏やかな口調で告げた。
「御主達もそれぞれの寺に帰るがよい」
「そして、ですか」
「そのうえで」
「民達と共に楽しく暮らせ」
そうせよというのだ。
「わかったな」
「わかりました、それでは」
「そうさせて頂きます」
「落ち着けばすぐにこの国でも検地と刀狩りをする」
その二つをすることも告げる。
「そのことはもう言っておく」
「検地ですか」
「それに刀狩りも」
「無論田畑も開梱し町も開く」
そのことも忘れないというのだ。
「道も堤も整えるからのう」
「民の為の政ですか」
「それをして頂けるのですか」
「わしの政のやり方は既に知っておろう」
信長は笑みさえ浮かべて僧侶達に告げる。
「そうであろう」
「ではまことにですか」
「民の為に国を豊かにしてくれますか」
「そうして頂けますか」
僧侶達も信長が噂通りと聞いてそれでだった、ここで一息ついてだった。
それでだ、こう言うのだった。
「では宜しくお願いします」
「どうか民を安んじて下さい」
「そうして頂けば我等は何もいりませぬ」
「民さえ幸せなら」
「うむ、ではな」
信長は確かな声で彼等に約束した、加賀もまた豊かな国にし民を安らかにすることをだ。そのうえで加賀も収めたのだった。
信長は加賀も収めるとすぐに都の方に戻った、目指す場はというと。
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