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継母選び

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第二章


第二章

「ではな」
「うむ、決まりじゃ」
「わかった」
 彼はここまで聞いて遂に決心した。
「では嫁をもらうことにする。してじゃ」
 ここでまた問題が起こってきた。
「問題は相手じゃ」
「相手か」
「そうじゃ。わしが欲しいと言ってすぐに手に入るものではなかろう」
 そう簡単にいく話ではない。だからこそ困るのである。
 昔も今も嫁を貰うというのは大変だ。その苦労を思えば。五郎はまたしても難しい問題に当たっていた。
「誰かいるか?」
「さて」
「どうにも」
 仲間達はそれには答えられない。首を傾げたり難しい顔をするだけである。
「これがどうにも」
「おらんのう」
「何だ、それでは何の意味もないではないか」
 五郎は彼等の言葉を聞いて口を尖らせてきた。それがまるでひょっとこのようである。髭だらけの随分厳しいひょっとこの顔であった。
「相手がおらんのでは」
「後は自分で探せ」
「その通りじゃ」
 仲間達は口々にこう述べる。
「じゃからな」
「御主の努力次第じゃ」
「そうか」
 五郎はその言葉に顔をなおした。それでまた思索に入った。
「そうなるのか」
「左様」
「ではわかったな」
「うむ」
 そのうえでまた仲間達の言葉に頷いた。
「嫁を探す。決めたぞ」
「では早速探すがいい」
「しかしじゃ」
 ここで仲間達はまた言う。
「相手はよく選べよ」
「よいな」
「わかっておる」
 五郎もそれに応える。
「前ので懲りておるからな」
 苦笑いしてこう述べてきた。
「だから。それは弁えておるつもりじゃ」
「だとよいがな」
 仲間達はまずはその言葉に応える。
「しっかりしろよ」
「今度はもっとおしとやかなおなごにせい」
「おしとやかじゃな。わかった」
 この言葉にも頷く。
「ではやってみる。よいな」
「うむ」
「頑張るのじゃ」
 こうして彼は後妻をもらうことになった。それを自分の家に帰り娘にも話した。娘と二人向かい合って食事を食べながらの話であった。
「新しいお母さん?」
「うむ」
 娘に対して頷く。
「そうじゃ。御前もそろそろ年頃じゃ」
「ええ」
 娘のみよは父の言葉に応えた。黒髪に楚々とした顔の綺麗な少女であった。とても髭だらけの五郎の娘とは思えない。身体も実に小さく小奇麗な着物を着ている。
「だからじゃ」
「私もうすぐお嫁に行くのに」
「わかっておらぬのう」
 五郎は飯である玄米を食べながら述べてきた。そろそろ白米も食べられたりするが彼はこれが好きだった。鎌倉の時の武士のように強くなりたいとの思いからであろうか。あの時代の武士は玄米を主食としていたのである。
「だからじゃ」
「だからなの」
「御前は今大切な時じゃ」
 彼は言う。
「だから母親が必要なのじゃ。わかるか」
「それはわかったけれど」
 だがみよはここでどうにも難しい顔をしてきた。箸の動きも鈍っていた。
「ただ」
「ただ。どうしたのじゃ?」
「その新しいお母さんだけれど」
「うむ」
「どんな人かが」
 不安げな顔でこう述べてきた。
「やっぱり気になるわ」
「そうか。そうだよな」
「勿論じゃない」
 みよは述べる。
「若し私が苛められたりしたらどうするの?」
「その時は俺に言え」
 五郎は左手の拳で胸を叩いて述べてきた。
「いいな」
「信じる?」
「いや、ひょっとしたら」
 情けないことにここで少し首を捻ってきた。
「騙されるかもな。御前を信じるが」
 彼は自分でも認める騙されやすい男であった。今まで何かと騙されてきている。武辺者ではあるがそのせいで損もしてきている。。実はみよにも結構助けられているのである。
「でしょ?若しその新しいお母さんがずるい人だったら」
「そうだよな。やっぱり危ないよな」
「そうよ。だからね」
 彼女は言う。
「新しいお母さんは心の優しい人にして」
「わかった」
 それに頷く。
「では優しい女の人にする」
「前のお母さんみたいにね」
「なぬっ」
 しかしこの言葉には目も顔も顰めさせてきた。そのうえで娘に問い掛ける。
 
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