こんな私(俺)の物語
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二十一話 会談ですか禍の団ですか
前書き
総合評価2000突破!ありがとうございます!
わかっているからこそ、俺は皆を頼る。
=======================================================================================
早朝、俺はギャスパーの特訓に付き合ってやろうと旧校舎に向かった。そこには既に修業を始めている一誠とギャスパーがいた。
「ぐふぅぅぅぅ・・・イッセー先輩・・・つ、疲れましたよぉぉぉぉ」
「そうだな。三回に一回は成功するようになってるし、一回休むか」
えぇぇぇ!?三回に一回!?原作では二十回に一回だったのに!?偉い成長率だな!?
「あ、紫さん、おはようございます!」
「おはよう、アーシア」
「あ、紫さんいたんですか。おはようございます」
お互いに挨拶を交わす。
「それにしても、三回に一回だったかしら?随分と成長したじゃない」
「あ、ありがとうございます!」
前向きだなぁ。と、俺の腕が動かなくなる。ギャスパー?ミスったか?
「ど、どうですか?部分的に停めてみたんですが・・・」
・・・俺を実験台にしやがった・・・!図太くなってないか?
「ええ、右腕だけ動かないわね」
部分的に停めることができるようになっちゃってる。時間停止の感覚は覚えたから、時間停止に対抗する境界を発動できるようにしておくか。部分的に停められると、結構感覚が薄いんだな。
「ぼ、僕は神器を持つ人間としても、ヴァンパイアとしても半端者だけど、皆の役に立てるように頑張ります!」
泣かなくなってきたな。それでこそ男だ。たまに忘れそうになるけど。
「そのいきだ!ギャスパー!お前は頑張れるんだ!さあ、俺にぶつかってこい!同じ部員同士で、リアス部長の眷属で仲間だ!ドンときなさい!」
「はい!頑張ります!」
「よし!学校が始まるまでに後百球はいくからな!」
「わかりました!じゃ、じゃあ、あの紙袋を被ってパワーアップをーー」
紙袋?ああ、あのえらいホラーなやつか。ちょっと見てみたい。幽々子は意外とホラーに強い。
「止めろ!家のアーシアちゃんはそういうの見たら泣くから!紫さんもいるし!」
「私は大丈夫よ?」
どんな感じか知ってるし。結○師の箱田君みたいな感じだろ?
「と、ともかく止めろ!」
「?何のことかわかりませんが、頑張ってください!イッセーさん!ギャスパー君!」
俺は基本ボール拾いだ。水指すわけにもいかんだろ。
「ギャスパー!美少女のアーシア先輩まで応援してくれてるんだから気張れよ!」
「は、はい!ありがとうございます!アーシア先輩!」
学校が始まるまで、熱血特訓は続いた。
=======================================================================================
そして三大勢力の会談の日がやって来た。そう、テロの日だ。もちろん、ギャスパーを拐わせる理由もないので、俺は念話で籃にギャスパーの護衛を頼んでおく。籃ならスキマも使えるし、何より天狐だ。そんじょそこらのやつに負けるほど弱くないだろう。
会場となるのは新校舎の職員会議室。今日は休日。時刻は深夜。
この学園は強力な結界で覆われている。来るもの拒み、去るもの逃がさずな結界だ。結界の外は天使、堕天使、悪魔の軍勢が取り囲んでおり、一触即発の空気らしい。
「ーー皆、いくわよ」
リアスの言葉に皆が頷く。
「ぶ、部長!み、皆さん!」
未だに落ち着くときは段ボールに入っているギャスパー。雰囲気に飲まれている。それでも、蓋を開けてる分成長している。
「ギャスパー、今日の会談は大事なものだから、時間停止の神器を完全に使いこなしていないあなたは参加できないのよ?」
「は、はいぃ。わかってますぅ」
「ギャスパー、おとなしくしてろよ?部室に俺の携帯ゲーム機置いていくから、それで遊んでいてもいいし、お菓子もあるから食べてもいい。紙袋も置いていくから寂しくなったら存分に被れ」
「一応、私の式神を置いていくから、何かあったら頼りなさい」
「は、はいぃ。ありがとうございますぅ!」
さて、会議に向かうか。
=======================================================================================
コンコン
「失礼します」
職員会議室に到着した俺達。もっとも、大した距離じゃないんだが。
扉を開くと、そこには、各勢力の代表が真剣な表情で座っていた。おおう、プレッシャーが。
悪魔側はサーゼクス・ルシファー、セラフォルー・レヴィアタン、げ、グレイフィアさん。
天使側はミカエルと知らない天使。イリナじゃないんだな。まあいい。
堕天使側はアザゼル改め胡散臭いおっさん、白龍皇ヴァーリ・ルシファー。
ちゃんと全員正装だ。ふざけた魔王消女だったり浴衣ではない。
「私の妹と、その眷属だ。先日のコカビエル襲撃で彼女たちが活躍してくれた」
サーゼクスがリアスを紹介する。
「報告は受けています。改めてお礼を申し上げます」
なんで天使陣営が礼をいうんだ?あ、エクスカリバーは元々そっちのもんだったか。
「悪かったな。俺のところのコカビエルが迷惑をかけた」
悪びれず言うアザゼル。リアスは口元をひくつかせる。ポーカーフェイスがなってねぇ。
「そこの席に座りなさい」
グレイフィアさんに促され、壁際に設置されている椅子に座る。そこにはソーナ・シトリーも座っていた。おおう、こんな空気のなか先にいたのか。
因みに、順番はソーナ、リアス、一誠、朱乃、木場、俺、アーシア、ゼノヴィア、子猫だ。
「全員が揃ったところで、会談の前提条件をひとつ。ここにいる者たちは、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している。では、それを認知しているとして、話を進める」
三大勢力の会談が始まった。ちょっと眠くなるんだけど・・・。
勢力会談中・・・・・・
会談は滞りなく進んでいく。たまにアザゼルの一言で場が凍りつく事があるけどな。絶対楽しんでる。まあ、胡散臭いおっさんだもんな!
でも、長々と話されると眠くなってくるんだけど・・・。和平したいならそう言えや。
暇だ。籃と念話でもしようかな?
「さて、リアス。そろそろ、先日の事件について話してもらおうかな」
「はい、ルシファー様」
ソーナ、リアス、朱乃が立ち上がり、この間のコカビエルとの一戦の一部始終を話し始めた。
報告を受けた各陣営のトップは、それぞれ違った反応をした。笑ったりため息をついたり。
「ーー以上が、私、リアス・グレモリーと、その眷属悪魔が関与した事件の報告です」
「ご苦労、座ってくれたまえ」
「ありがとう、リアスちゃん☆」
結局セラフォルーは軽いじゃねぇか!しかもウインクなんてしてるし!
「さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」
「先日の事件は我が堕天使中枢組織『神の子を見張る者《グリゴリ》』の幹部コカビエルが、他の幹部及び総督の俺に黙って単独で起こした事だ。スキマの嬢ちゃんが完全に消し飛ばした。そっちの報告通りだ。それが全部だ」
「はぁ、説明としては最低の部類ですがーーあなた個人が我々と大きな事を起こしたくないという話しは知っています。それに関しては本当なのでしょう?」
「ああ、俺は戦争に興味なんてない」
あー、コカビエルがアザゼルこき下ろす前に消し飛ばしちゃったから、アザゼルのイメージはあまり良くない。元々信用がないのだが。
「アザゼル、ひとつ訊きたいのだが、どうしてここ数十年、神器の所有者をかき集めている?最初は人間たちを集めて戦力増強を図っているのかと思っていた。天界か我々に戦争をけしかけるのではないかとも予想していたが・・・」
「そう、いつまで経ってもあなたは戦争を仕掛けてこなかった。『白い龍《バニシング・ドラゴン》』を手にいれたと聞いたときには、強い警戒心を抱いたものです」
「神器研究のためさ。なんなら、一部研究資料もお前たちに送ろうか?って研究していたとしても、それで戦争なんざ仕掛けねぇよ。戦に今更興味なんてないからな。俺は今の世界に十分満足している。部下に『人間界の政治にまで手を出すな』と強く言い渡しているくらいだぜ?宗教にも介入するつもりはねぇし、悪魔の業界にも影響を及ぼせるつもりもねぇ。ーーったく、俺の信用は三竦みのなかでも最低かよ」
「それはそうだ」
「そうですね」
「その通りね☆」
満場一致で最低です。信用ないなぁ。カリスマはあるくせに。
「チッ。神や先代ルシファーよりもマシかと思ったが、お前らもお前らで面倒くさい奴らだ。こそこそ研究するのもこれ以上性に合わねぇか。あー、わかったよ。なら、和平も結ぼうぜ。そもそもそのつもりもあったんだろう?天使も悪魔もよ?」
おう。さっさと結んでしまえ。
「ええ、私も悪魔側とグリゴリに和平を持ちかける予定でした。このままこれ以上三竦みの関係を続けていても、今の世界の害となる。天使の長である私が言うのも何ですがーー戦争の大本である神と魔王は消滅したのですから」
「ハッ!あの堅物ミカエル様が言うようになったね。あれほど神、神、神様だったのにな」
「・・・失ったものは大きい。けれど、いないものをいつまでも求めても仕方がありません。人間たちを導くのが、我らの使命。神の子らをこれからも見守り、先導していくのが一番大事な事だと私たち『熾天使』のメンバーの意見も一致しています」
「おいおい、今の発言は『堕ちる』ぜ?ーーと思ったが、『システム』はお前が受け継いだんだったな。いい世界になったもんだ。俺達が『堕ちた』頃とはまるで違う」
皮肉でも言い合ってんの?さっさとしてくれ~。眠い。
「我らも同じだ。魔王がなくとも種を存続するため、悪魔も先に進まねばならない。戦争は我らも望むべきものではない。ーー次の戦争をすれば、悪魔は滅ぶ」
「そう、次の戦争をすれば、三竦みは今度こそ共倒れだ。そして、人間界にも影響を大きく及ぼし、世界は終わる。俺らは戦争をもう起こせない」
アザゼルが真剣な面持ちとなり言う。
「神がいない世界は間違いだと思うか?神がいない世界は衰退すると思うか?残念ながらそうじゃなかった。俺もお前たちも今こうやって元気に生きている。ーー神がいなくても世界は回るのさ」
うん。東方では神すら忘れ去られるからな。神がいなかろうと、人間は生きていくすべを身につける。
その次に、戦力うんぬんの話をしていた。少し緊張が弱まっている。
「ーーと、こんなところだろうか?」
ふぅ。一通り終わったらしい。あー、一時間も話を聞き続けるって、眠いよ!
「さて、話し合いもだいぶ良い方向に片付いてきましたし、そろそろ赤龍帝殿のお話を聞いてもよろしいかな」
神社では俺の緋想の剣に関して聞いたせいで、一誠の話が後回しになったからな。
「ーーアーシアをどうして追放したんですか?」
一誠が聞いたのはアーシア追放の理由。
「それに関しては申し訳ないとしか言えません。・・・神が消滅した後、加護と慈悲と奇跡を司る『システム』だけが残りました。この『システム』とは、簡単に説明すると、神が行っていた奇跡等を起こすためのもの。神は『システム』を作り、これを用いて地上に奇跡をもたらしていました。悪魔祓い、十字架等の聖具へもたらす効果、これらも『システム』の力です」
「神がいなくなって、その・・・『システム』に不都合が起こった・・・とかですか?」
「はい。正直、『システム』を神以外が扱うのは困難を極めます。私を中心に『熾天使』全員で『システム』をどうにか起動させていますが・・・神がご健在だった頃と比べると、神を信じる者たちへの加護も慈悲も行き届きません。ーー残念なことですが、救済できる者は限られてしまうのです。そのため、『システム』に影響を及ぼす可能性のあるものを教会に関するところから遠ざける必要があったのです。影響を及ぼすものの例としては、一部の神器ーーこれはアーシア・アルジェントの持つ『聖母の微笑《トワイライト・ヒーリング》』も含まれます。あなたの『赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》』、そして『白龍皇の光翼《ディバイン・ディバイディング》』なども」
「アーシアの神器がダメなのは、悪魔や堕天使も回復できるからですか?」
「はい。信者の中に『悪魔と堕天使を回復できる神器』を持つものがいれば、周囲の信仰に影響が出ます。信者の信仰は我ら天界に住む者の源。そのため、『聖母の微笑』は『システム』に影響を及ぼす禁止神器としています。それと、影響を及ぼす例にーー」
ミカエルの言葉を遮って、ゼノヴィアが続ける。
「神の不在を知る者ーーですね?」
「ええ、そうです、ゼノヴィア。あなたを失うのはこちらとしても痛手ですが、我々『熾天使』と一部上位天使以外で神の不在を知った者が本部に直結した場所に近づくと『システム』に大きな影響が出るのです。ーー申し訳ありません。あなたとアーシア・アルジェントを異端とするしかなかった」
システムってのは随分と面倒なものだな。
ミカエルが頭を下げ謝る。当の二人は目を丸くしているがね。
「いえ、ミカエル様、謝らないでください。これでもこの歳になるまで教会に育てられた身です。いささか理不尽を感じてはいましたが、理由を知ればどうということもありません」
「あなたが悪魔に転生したこと。それはこちらの罪でもあります」
「いいのです。・・・多少後悔も致しましたが、教会に仕えていた頃にはできなかったこと、封じられていたことが現在私の日常を華やかに彩ってくれています。そんなことを言ったら、他の信徒に怒られるかもしれませんが・・・。それでも今の私はこの生活に満足しているのです」
「ミカエル様、私も今幸せだと感じております。大切な人たちが沢山できましたから。それに憧れのミカエル様にお会いしてお話もできたのですから光栄です!」
二人の言葉を聞いて、ミカエルは安堵の表情を浮かべる。
「すみません。あなたたちの寛大な心に感謝します。デュランダルはゼノヴィアにお任せします。サーゼクスの妹君の眷属ならば下手な輩に使われるより安全でしょう」
アザゼルがアーシアを見ていた。俺も見ていたが・・・。こいつらの中では俺も堕天使に瀕死の重症を負わされた被害者だったっけ?
「俺のところの部下が、そこの娘を騙して殺したらしいな。その報告も受けている」
俺は一誠の頼みに答えた結果だから謝る必要はないと。そうなんだけどさ。
「そう、アーシアは一度死んだ。お、俺も堕天使殺されたけど、それ以上にアーシアだ!あんたの知らないところで起きたことかもしれないが、あんたに憧れていた堕天使の女性があんたのために、アーシアを一度殺したんだ」
今の一誠に発言権はないんだけどな。リアスもとなりで一誠を落ち着かせている。
まあ、言いたくなるのもわからんでもないが。
「俺達堕天使は、将来害悪になるかもしれない神器所有者を始末しているのは確かだ。危険の芽は早く摘むのは組織としては当然だろう?それでお前は死んだ。理由は何の才能もない人間のお前は赤龍帝の力を使いこなすことができずに暴走させて俺達や世界へ悪影響を与えかねないからだ」
「おかげで俺は悪魔だ」
「嫌か?少なくとも周囲の者たちはお前が悪魔になったことを喜んでいると思うぜ?」
「い、嫌じゃない!皆がいい人で、優遇してもらっているのもわかる。けど!」
意外にも女性と一緒にいられるから嫌じゃない、というわけじゃないらしい。
「今更俺が謝っても後の祭りだ。なんなら、スキマの嬢ちゃんに人間に戻してもらえばいいじゃねぇか。種族を操れるんだろ?」
何で俺にふる。まあ、確かにできないわけではないんだが。
「い、いいです」
他でもない一誠が断るのなら、俺はやらん。
「というわけだ。だから、俺は俺にしかできないことでお前たちを満足させようと思う。ーーさて、そろそろ俺達以外に世界に影響を及ぼしそうな奴らへの意見を訊こうか。無敵のドラゴン様にな。まずはヴァーリ、お前は世界をどうしたい?」
「俺は強いやつと戦えればいいさ」
戦闘狂だなぁ。もう少し他に楽しみを持てや。
「じゃあ、赤龍帝、お前はどうだ?」
「正直、よくわからないです。なんか、小難しいことばっかりで頭が混乱してます。ただでさえ、後輩悪魔の面倒を見るのに必死なのに、世界がどうこう言われてもなんというか、実感がわきません」
まあ、ちょっとまえまで一高校生だったからな。実は俺もあんまり実感わかないんだよね。世界をどうしたいか?さあ、どうせなら、世界を創るよ。幻想郷をな。まだ創れるほど力はないんだけど。
「だが、お前は世界を動かすだけの力を秘めた者の一人だ。選択を決めないと俺を始め、各勢力の上に立っているやつらが動きづらくなるんだよ」
「そう言われても困るんですけど・・・」
「なら、兵藤一誠、恐ろしいほどに噛み砕いて説明してやろう。俺らが戦争したら、お前も表舞台に立つ必要が出てくる。そうなればリアス・グレモリーを抱けないぞ」
「ーーッ!」
アホだ。アザゼルが一誠の手綱の握りかたを覚えたのが悲しいZE。
「和平を結べば戦争する必要もなくなる。そうしたら、後に大事なのは種の存続と繁栄だ。毎日、リアス・グレモリーと子作りに励む事ができるかもしれない。どうだ?わかりやすいだろう?戦争なら子作りはなしだ。和平なら子作りしまくりだ。お前はどっちを選ぶ?」
「和平でお願いします!ええ!平和ですよね!平和が一番です!部長とエッチがしたいです!」
なんて欲望一直線な言葉。アザゼルにいいように誘導されてないか?ああ、眠い。
「やれやれ、イッセー君、サーゼクス様がおられるんだよ?」
そのサーゼクス様は小さく笑ってるんだけどな。
「えっと・・・。俺、バカなんでこの会談の内容も九割ぐらい意味不明です。でも俺が言えるのは、俺に宿る力が強力なら仲間のために使います。部長、アーシア、朱乃さん、それに他のメンバーも、もし危険に晒されたら俺が守ります!・・・って、俺、まだまだ弱いんですけどね。けど、俺ができるのはそれぐらいですから。体張って仲間と共に生きていこうかなってーー」
「失礼します」
一誠の言葉を遮って、この場に黒い線が引かれる。線は二つに割れ、穴となる。穴のなかには、無数の眼が蠢いている。その中から、九つの尾を持つ金色の女性が表れる。その近くには、恐らく眼にビビっているであろうギャスパーがいた。
「何者だ!」
全員が一斉に警戒する。そんななか、俺だけは自然体だ。まあ、当たり前だ。
「で、籃。どうしたの?」
「襲撃です」
短い言葉だったが、それだけで理解できた。
=======================================================================================
「その方は誰ですか?」
始めに、ミカエルが聞いてくる。
「私の式神の八雲籃よ」
「ええっ!?籃さんが紫さんの式神!?」
そう、俺の優秀過ぎてパルパル言いそうになっちゃう籃しゃまだ。
籃の言葉を聞いた各勢力は、まずはこの校舎に結界を張って、話を聞くことにしたらしい。
「で、襲撃とはどういうことだ?」
「私はギャスパー・ヴァラディの護衛をしていたのですが、急に魔導師が入り込んできまして。どうやら、『停止世界の邪眼』を暴走させ、私たちを停止させて一気に葬る気だったようですね」
さすが籃。相手の思惑まで把握しちゃってる。まあ、他心通を使ったんだろうけどさ。
「全く。いつの時代にも和平を結ぼうとすると決まって邪魔が入りやがる」
そう言ってアザゼルが外を指差す。そこには、多くの黒いローブを纏った連中が、今まさに攻撃しようとしているところだった。
しかし、結界を破ることはできない。当たり前だ。
「なんだ!?あれ!?」
「所謂魔法使いって連中だな。悪魔の魔力体系を伝説の魔術師『マーリン・アンブロジウス』が独自に解釈し、再構築したのが魔術、魔法の類いだ。・・・放たれている魔術の威力から察するに一人一人が中級悪魔クラスの魔力を持っていやがりそうだな。まあ、俺とサーゼクスとミカエルで強力無比な防壁結界を展開しているから大丈夫だ。おかげでここから出られないがな」
仕事が早いやつらだな。
「私の下僕をテロの武器に?万死に値するわ・・・!」
はいはい。守れたんだからいいじゃないか。
「ひえぇぇぇ!怖いよぉぉぉぉ!」
ギャスパーは平常運転だな。異常なし。
「・・・・・・ギャー君、落ち着く」
子猫はいいところに回るな。
「あらあら、ギャスパー君、大丈夫でしたか?」
朱乃も一緒に宥める。
「安心して☆ソーナちゃん。あんなの相手じゃないから☆」
「お姉様。少しは緊張感をお持ちください」
セラフォルーは平常運転、ソーナは呆れる。
こいつら、大丈夫なのかな?仮にも命を狙われている立場だってのによ。
俺は種族を天人にする。一番持久力がある種族だ。今現在は。妖怪は短期決戦が主流だ。
「この学園は結界に覆われている。にもかかわらず、こいつらは結界内に出現してきた。この敷地内に外の転移魔方陣とゲートを繋げているやつがいるってことだ」
アザゼルは説明しながら、空に無数の光の槍を作り出し、雨のように降り注がせる。
テロリストどもは防御障壁を張るが、難なく貫き、魔術師を一掃した。
しかし、校庭の各所に魔方陣が表れ、そこから新たな魔術師が出現する。
「とまあこんな感じだな。俺達が倒しても倒しても表れるだろう。しかし、タイミングがいいな。未遂とはいえ、テロの方法が巧妙だ。こちらの内情に詳しいやつがいるかもしれない。案外、ここに裏切り者がいるのか?」
裏切り者、か。
「ここから逃げないんですか?」
「逃げないさ。学校全体を覆う結界を解かないと俺達は外へ出れない。だが、結界を解いたら人間界に被害が出るかもしれない。俺は親玉が出てくるのを待つのさ。作戦が失敗したんだ。そのうち痺れを切らして顔出すかもな。早く黒幕を知りたいもんだ。それに、下手に外に出て大暴れすると敵の思う壺かもしれないってわけだ」
相手の黒幕と作戦を見ると。
「そうだな、今は籠城するのが最善手だ。幸いにも、ギャスパー君を利用されることはなかったからね。礼を言うよ」
「大したことはしていないさ」
そう籃に言うサーゼクス。まあ、俺からの頼みを受けただけなんだけどさ。
「さて、黒幕が出てきたときの準備をしとけ。いつ交戦し始めてもおかしくないからな。それと、そこのハーフヴァンパイア」
「はいぃぃ!?」
「この腕輪を着けておけ。神器の力を抑える事ができる。それ着けて邪魔にならないところでじっとしてろ。それと、赤龍帝」
「お、俺は兵藤一誠だ!」
「じゃあ、兵藤一誠。お前にはこっちを渡しておく。短時間なら、代価無しで禁手状態になれる。外のやつらは素のお前より強いからな。ただし、副作用で一時的にお前に施されている封印もとけるからな。使うのは最終手段にしておけよ。体力の消費までは調整できんからな」
「お、おう」
どんだけ詳しいんだよ。
「よく覚えておけ。現段階のお前自身は人間に毛が生えた程度の悪魔だ。強大な神器を有していても宿主が役立たずでは意味がない。今のお前でも相手が未熟な者なら、ドライグの力を振りまくだけで勝てるが、その力よりも上の者や能力を把握している。者にとってみれば御しやすい代物だ。なんせ、お前自身がその神器の弱点だからな。ーー使いこなせないというのはそれだけ弱味の塊なんだよ。力を飼い慣らせなければいずれ死ぬぞ」
懇切丁寧な説明ありがとうございます。俺も能力を使いこなせるようにならないとな。
「ヴァーリ」
「なんだ、アザゼル」
「お前は外で敵の目を引け。このままじゃ状況が変わらん。なにかを動かすためにも、白龍皇を前に出した方がいい」
「了解ーー禁手化」
『Vanishing Dragon Balance breaker!!!!!!』
音声の後、ヴァーリの体を白いオーラが覆う。光が止んだとき、ヴァーリの体は光の翼を携えた白い全身鎧に覆われていた。モデルはガ○ダムらしいよ?
ヴァーリは会議室の窓を開け放ち、空へ飛び出す。そして、蹂躙を始める。あらら、相手が可愛そう。捨て駒扱いだよ。『犠牲』もいいとこだ。
しかし、魔方陣が光を放つと、すぐに魔術師が数を取り戻す。めんどくさ!
「アザゼル、先程の話の続きだ。神器を集めて、何をしようとした?『神滅具』の所有者も何人か集めたそうだな?神もいないのに神殺しでもするつもりだったのかな?」
「備えていたんだよ」
「備えていた?戦争を否定したばかりで不安を煽る物言いです」
「言ったろ?お前らと戦争はしない。こちらからも戦争は仕掛けない。ーーただ、自衛の手段は必要は必要だ。俺が備えている相手は、『禍の団《カオス・ブリゲード》』だ」
「・・・カオス、ブリゲード?」
「組織名と背景が判明したのはつい最近だが、それ以前からもうちの副総督シェムハザが不振な行為をする集団に目をつけていたのさ。そいつらは三大勢力の危険分子を集めているそうだ。中には禁手に至った神器持ちの人間も含まれている。『神滅具』持ちも数人確認してるぜ。そいつらの目的は破壊と混乱。この世界が平和なのが気に入らない、最大級に質の悪いテロリストだ」
「とりあえず、ギャスパー、子猫、会長、朱乃は少し奥に行ってくれるかしら?結界を張るわ」
その言葉に従い、四人は部屋の奥の方に移動する。そして俺は四人を囲むように境界線を引いた。
「この線は簡単には破れないから、安心しなさい」
実際、白龍皇を止めた線だからな。
「組織の頭は『赤い龍《ウェルシュ・ドラゴン》』と『白い龍《バニシング・ドラゴン》』の他に強力で凶悪なドラゴンだよ」
『ーーッ!』
悪魔歴が短い一誠と、知っていた俺以外が絶句していた。
「・・・そうか、彼が動いたのか。『無限の龍神《ウロボロス・ドラゴン》』オーフィスーー。神が恐れたドラゴン・・・。この世界ができあがった時から最強の座に君臨し続けている者」
アイツ性別不明なんだけどね。ジジイの時があれば、ロリの時もある。まあ、戦いになっても少しは抵抗できるだろ。勝てるとは思わないが。
『そう、オーフィスが「禍の団」のトップです』
声と同時に会議室の床に魔方陣が浮かび上がる。
「そうか。そう来るわけか!今回の黒幕はーー旧魔王!」
それぞれの反応は違った。アザゼルは相変わらず面白そうに笑い、サーゼクスは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「ーーレヴィアタンの魔方陣」
「ヴァチカンの書物で見たことがあるぞ。ーーあれは旧レヴィアタンの魔方陣だ」
魔方陣から表れたのは、胸元が大きく開いていて、深いスリットのドレスを着ている女性。
おいこら一誠目がエロいぞ?
「ごきげんよう、現魔王のサーゼクス殿」
不敵な物言いで言う女性。にしても、敵陣のど真ん中に出現とはな。作戦も失敗したっていうのにさ。
「先代レヴィアタンの血を引く者。カテレア・レヴィアタン。これはどういうことだ?」
旧四大魔王が滅び、新しい魔王を立てようとしたときに徹底抗戦を最後まで唱えたのがこいつら、旧魔王の血を引く者たちだったらしい。
「旧魔王派の者たちは殆どが『禍の団』に協力することに決めました」
なんだかな~。自分達じゃ敵わないのなら他の力を頼ると。まあ、仕方ないっちゃ仕方ないのか?
「新旧魔王サイドの確執が本格的になったわけか。悪魔も大変だな」
アザゼル。他人事だけど以外とあんたもターゲットなんだよ?
「カテレア、それは言葉通りと受け取っていいのだな?」
「サーゼクス、その通りです。今回のこの攻撃は我々が受け持っております」
「ーークーデターか」
どうしてこう貴族連中は血統を重視するかねえ。
「・・・カテレア、なぜだ?」
「サーゼクス、今日この会談のまさに逆の考えに至っただけです。神と先代魔王がいないのならば、この世界を変革すべきだと、私たちはそう結論付けました」
新世界の神になるってか。なんか残念だな。
「オーフィスの野郎はそこまで未来を見ているのか?そうとは思えないんだがな」
「彼は力の象徴としての、力が集結するための役を担うだけです。彼の力を借り、一度世界を滅ぼし、もう一度構築します。ーー新世界を私たちが取り仕切るのです」
オーフィスも可哀想だな。マスコットにされ、力だけもらって世界ができたら後は用済みかよ。純粋過ぎるのもいいのか悩むねぇ!
にしてもこいつら、マジで新世界の神になるつもりかよ。
「・・・天使、堕天使、悪魔の反逆者が集まって自分たちだけの世界、自分たちが支配する新しい世界を欲したわけか。そのまとめ役が『ウロボロス』オーフィス」
オーフィスはただホームシックなだけなんだと思うのだけれど。
「カテレアちゃん!どうしてこんな!」
「セラフォルー、私から『レヴィアタン』の座を奪っておいて、よくもぬけぬけと!私は正統なるレヴィアタンの血を引いていたのです!私こそが魔王に相応しかった!」
どんだけ魔王に拘ってるんだよ・・・。ていうより、お前が弱いからセラフォルーにレヴィアタン取られたわけだろ?自業自得じゃん。
「(籃、念のため聞くけど、幽々子は大丈夫かしら?)」
「(はい、私が離れると狙われる可能性もあると思ったので、スキマの中に避難させておきました)」
マジで優秀だ。こんな優秀な式神をこき使う原作ゆかりんって・・・。
とりあえず、これで心配事は無くなった。幽々子がテロに利用される可能性もあったからな。籃、いなり寿司、好きなだけ作ってやる。
「(約束ですよ?)」
念をおすな。
「一誠、離れておきなさい。あなたは多人数を相手にするのは向いていないのだから。いざというときのために力を残しておきなさい。恐らく、アザゼルのいった通り、裏切り者はいるわ」
「ッ!?誰なんですか?」
「恐らく、ヴァーリ、白龍皇よ。あの戦闘狂のことだもの。強い敵を用意してくれるのなら、そちら側についてもおかしくないわ」
「・・・・・・紫さんの説明ってすごい納得できますね」
まあね。原作を知っている身としては、な。一応、俺と一誠の内緒話だ。
「旧魔王レヴィアタンの末裔。『終末の怪物』の一匹。相手としては悪くない。カテレア・レヴィアタン、俺といっちょハルマゲドンでもしゃれこもうか?」
「望むところよ、堕ちた天使の総督!」
あっちはあっちで始まったか。
木場はサーゼクスの指示で魔術師を倒し、サーゼクスとミカエルは結界を強化する。グレイフィアは魔方陣を解析し、ギャスパーたちは結界の中から応戦する。おいおい、まあいいか。無理はするなよ?ゼノヴィアは木場と共に魔術師を倒す。一誠は裏切りに備える。
さて、俺も実戦といきますか。
俺は地面を隆起させた。
ページ上へ戻る