こんな私(俺)の物語
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第二十二話 テロですか赤白対決ですか
命懸けってのは凄いものだ。
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『速符「ルミネスリコシェ」』
伴器を投げつける。途中で結界を利用して反射させ、何人もの魔術師を貫く。
『仙符「無機転生」』
緋想の剣を大地に差し、大地を隆起させる。さらに仙術を利用して、相手を大地の槍で貫く。
『傷符「インスクライブレッドソウル』
緋想の剣と雪器による剣閃。無造作に相手を切り裂く。
よし、まだまだ余裕がある。妖怪に比べて威力は落ちるが、それでも一人を葬るのには十分だ。長く戦う練習。もっとも、命がかかっているが。死ぬ気は更々ない。
空ではアザゼルとカテレアがドンパチやってる。
「キリがないな」
ゼノヴィアがデュランダルで校庭ごと魔術師を大勢葬る。
もーちょい無駄な破壊を無くせ。
『断霊剣「成仏説得斬」』
緋想の剣と雪器で巨大な紅い柱を作り上げる。
緋想の剣を使うと、どうしても紅くなっちゃうんだよね。
さっきから上空の交戦の余波で校舎に甚大な被害が出ている。ここの連中は自重をしないのか?←お前もだ。
『緋閃「全人類の緋想天」』
砲撃の全人類の緋想天を斬撃にして放つスペル。消耗も無駄な破壊も少ない。それなのに威力はそのまま。範囲は狭いが。
にしてもこいつら全く減らない。こんなにも人数いるんだ。ある意味すげぇよ。
『境巣「幻想蟲ネスト」』
スキマを背後に開き、枝分かれするレーザーを放つ。魔術師を防御障壁ごと貫く。
こいつら、本当に一体一体が中級悪魔並なの?えらい簡単に倒せるんですけど・・・。
攻撃も単調で避けやすい。雑魚すぎない?
「木場くん、大丈夫かしら?いざとなったら結界の中に送るわよ」
「ありがとう、紫さん。でも、まだまだ大丈夫だよ」
「ゼノヴィアは?」
「問題ない」
二人は結構余裕そうだな。まあ、この程度なら楽にいける。
アザゼルとカテレアは、アザゼル優勢で進んでいる。まあ、この場では一位二位の強さを持っているからな。
すると、カテレアが懐から黒い蛇の入っている小さな小瓶を取りだし、中身を飲み込んだ。あ、あれ貰っとけばよかったかも。
刹那、空間が激しく振動し、カテレアの魔力が膨れ上がり、不気味なオーラを漂わせる。源力の総量は籃の方が多いが、魔力だけならこの場にいる存在の中ではかなり上位だ。
アザゼルが無数の光の槍をカテレアに向かって放つが、カテレアが右腕を横になぐだけで消失させた。だからさ、質より量なの?質を高めやがれ。とりあえず、俺は俺の仕事をやるか。
アザゼルがヴァーリの攻撃を受けた瞬間だった。
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「・・・チッ。この状況下で半期か、ヴァーリ」
「そうだよ、アザゼル」
まあ、知ってたけど。とりあえず、新スペル
『式神「八雲籃」』
スキマから籃を出して、後は任せる。ん?杜撰?俺もそう思う。
籃は九つの尾を妖力などの三重強化し、大きく凪ぎ払う。それだけで、地面は抉れ、魔術師は紙細工のように吹き飛び、千切れているやつもいる。あれ?こんなエグいスペルだっけ?
「はっ・・・雑魚が」
決め台詞?確かに籃に比べたら雑魚だけどさ。因みに、籃の尻尾は伸縮自在なのさ。
「和平が決まった瞬間、拉致したハーフヴァンパイアの神器を発動させ、テロを開始させる手筈でした頃合いを見てから私と共に白龍皇が暴れる。三大勢力のトップの一人でも葬れば良し。会談を壊せればそれで良かったのです」
「失敗してるわね」
あ、思わず声に出た。
「で、先程もいやらしい視線を感じたのですが、あの子が赤龍帝なのですか?ヴァーリ」
「ああ、非常に残念ながらそうだよ。本当に残念な宿主なんだ」
「残念残念言うな!俺だって日々を懸命に生きてるんだよ!・・・って、お前、マジで裏切ったのかよ・・・」
「マジで?誰か俺が裏切ることを知っていたやつがいるのか?」
あ、はい。俺です。ていうか魔術師ども!邪魔じゃ!ちまちまちまちまと!うざったいことこの上ない!
「・・・全く、俺もやきが回ったもんだ。身内がこれとはな・・・。いつからだ?いつからそういうことになった?」
「コカビエルの処理帰りの時だな。途中でオファーを受けたんだ。悪いな、アザゼル。こっちの方が面白そうなんだ」
「ヴァーリ、『白い龍《バニシング・ドラゴン》』がオーフィスに降るのか?」
「いや、あくまで協力するだけだ。魅力的なオファーをされた。『アースガルズと戦ってみないか?』こんなこと言われたら、自分の力を試してみたい俺では断れない。アザゼルはヴァルハラーーアース神族と戦うことを嫌がるだろう?戦争嫌いだものな」
「俺はお前に『強くなれ』と言ったが、『世界を滅ぼす要因だけは作るな』とも言ったはずだ」
「関係ない。俺は永遠に戦えればそれでいいんだ」
「・・・そうかよ。いや、俺は心のどこかでお前が手元から離れていくのを予想していたのかもしれない。ーーお前はであったときから今日まで強い者との戦いを求めていたものな」
「今回の下準備と情報提供は白龍皇ですからね。彼の本質を理解しておきながら、放置しておくなど、あなたらしくない。結果、自分の首を絞めることになりましたね」
「・・・・・・全部紫さんの言った通りだ」
なんでそこで俺の名を出すのさ!幸い聞こえていないらしい。
「赤龍帝、俺の本名はヴァーリ・ルシファーだ。死んだ先代魔王ルシファーの血を引く者なんだよ。けど、俺は旧魔王の孫である父と人間の母との間に生まれた混血児。ーー『白い龍』の神器は半分人間だから手に入れたものだ。偶然だけどな。でも、ルシファーの真の血縁者でもあり、『白い龍』でもある俺が誕生した。運命、奇跡というものがあるなら、俺の事かもしれない。ーー何てな」
運命はレミリアの、奇跡は早苗の得意なことだと思うんだけど。
悪魔の翼を出しながらヴァーリが言う。毎度毎度思うけど、翼の数多いって!
「嘘よ・・・。そんな・・・」
「事実だ。もし、冗談のような存在がいるとしたら、こいつのことさ。俺が知っている中でも過去現在、恐らく未来永劫においても最強の白龍皇になる」
このご時世、ハーフが強くないですか?
「覚悟を決めてもらいましょうか、アザゼル」
自分が有利になると途端に見下すな。よし、アイツ斬る。
「・・・チッ、先程膨れ上がったオーラの量、オーフィスの野郎に何をもらった?」
「ええ、彼は無限の力を有するドラゴン。世界変革のため、少々力を借りました。おかげであなたと戦える。サーゼクスとミカエルを倒すチャンスでもあります。彼らは愚かな総督。あなたもです」
「・・・俺はそうだ。愚かかもな。シェムハザがいなけりゃ、何もできねぇ。ただの神器マニアだ。ーーけどよ、サーゼクスとミカエルはそこまでバカじゃねぇと思うぜ?少なくともてめぇよりは遥かに優秀だ」
「世迷いごとを!いいでしょう、今ここでトドメを刺します。新世界創造の第一歩として、堕天使の総督であるあなたを滅ぼす!」
強い口調で言うカテレア。しかし、アザゼルは愉快そうに笑うだけだ。
アザゼルは懐から一本の短剣のようなものを取り出した。
「それはーー」
「・・・神器マニアすぎてな。自分で制作したりすることもある。レプリカを作ったりな。まあ、殆どの物が屑でどうしようもないが。神器を開発した神は凄い。俺が唯一、奴を尊敬するところだ。ーーだが、甘い。『神滅具』と『禁手』なんていう神と魔王、世界の均衡を崩せるだけの『バグ』を残したまま死んじまったんだからな。ま、だからこそ神器は面白いんだけどよ」
「安心なさい。新世界では神器なんてものは絶対に作らない。そんなものが無くても世界は機能します。ーーいずれ北欧のオーディンにも動いてもらい、世界を変動させなくてはなりません」
「それを聞いてますますお前らの目的に反吐が出る思いだ。ヴァルハラ!?アース神族!?横合いからオーディンに全部かっさらわれるつもりかよ。というよりもな、俺の楽しみを奪う奴はーー消えて無くなれ」
アザゼルの持つ短剣が姿を変えていく。
「ーーッ!ま、まさか!アザゼル、あなたは!」
「禁手化・・・ッ!」
一瞬の光が辺りを覆う。光がやんだあと、そこにいたのは黄金の全身鎧を纏ったアザゼル。
さらに、背中から十二の翼を出す。おお、ダークヒーロー?
「『白い龍』と他のドラゴン系統の神器を研究して作り出した、俺の傑作人工神器だ。『堕天龍の閃光槍《ダウン・フォール・ドラゴン・スピア》』、それの擬似的な禁手状態ーー『堕天龍の鎧《ダウン・フォール・ドラゴン・アナザー・アーマー》』だ」
禁手が多い今日この頃。ブリ○チの卍解も同じようなものだけど。
「ハハハ!さすがだな、アザゼルは!やっぱりすごい!」
ヴァーリが笑う。
「ヴァーリ、てめえも相手にしてやりたいところだが・・・。まあ、『赤い龍』かスキマの嬢ちゃんと仲良くやってな」
「・・・それも良いかもな・・・」
えええええ!?なんで!?俺のせい!?嫌だよ!確かに勝てる可能性があるかと聞かれればあると言えるけどさ!籃もいるし!でもやりあいたくねぇ!
「・・・力を有したドラゴンをベースにしましたね?」
「ああ、ちょっくら『黄金龍君』ファーブニルをこの人工神器に封じてな。二天龍ーー『赤い龍』と『白い龍』の神器を模したのさ。今のところは成功ってとこか」
この世界、強い龍が多くね?ティアマットはどっかで聞いた記憶があるけど。
「アザゼル!それだけの力を持ちながら、あなたは!」
「ーーカテレア、『無限の龍神《ウロボロス・ドラゴン》』をバックにしておいてよく言うぜ」
「・・・神器の研究はそこまで進んではいなかったはずです・・・」
「その様子じゃ、俺の組織を裏切った輩が神器研究をいくらか持ち出したみたいだな。だが、無駄だ。真理に近い部分は俺とシェムハザしか知らない」
予想外の事態に舌打ちするカテレア。奥の手は隠すものさ。多分。
「私は偉大なる真のレヴィアタンの血を引く者!カテレア・レヴィアタン!あなたごとき忌々しい堕天使に負けはしない!」
「来いよ」
「舐めるな!」
強大なオーラを見に纏いアザゼルに飛び込み、アザゼルは光の槍をもって応戦した。
そして、カテレアの体から血が噴き出した。力なく、その場に膝をつく。
カテレアの後方には、アザゼルの一撃の余波で地面が裂けていた。学舎を壊すな!
「ーーッ!ただでは殺られません!」
カテレアが自身の腕を触手の様に変え、アザゼルの全身に巻き付ける。そして、体に怪しい紋様が浮かび上がる。
「あれは自爆用の術式だわ!」
リアスがそう言う。知ってるけど、全身に巻き付けられてる。あれ?ヤバい?
アザゼルは触手を引き剥がそうとするが、一向に剥がれる気配はない。
「アザゼル!この状態になった私を殺そうとしても無駄です!私と繋がれている以上、私が死ねばあなたも死ぬように強力な呪術も発動します!」
「ーーッ。犠牲覚悟で俺に大ダメージってか。安っぽい発想だが、効果は絶大なわけだ」
「皆!距離を取るわよ!このままでは自爆に巻き込まれるわ!」
「でも部長!アザゼルは?」
「彼も一組織の総督なら、なんとかするでしょう!それよりも私たちが巻き込まれて死ぬわ!」
必死なリアス。急いで距離を取る。
「わっ!」
ギャスパーの悲鳴。ギャスパーの両眼に呪術的な紋様が出ていた。
「悪いな、それ、封じさせてもらう。時を停められるのはウザいんだ。ーーしかしさ、能力と発動条件を知れば対した驚異でもないな、その神器は。弱点だらけだ。視覚を奪う術なんていくらでもある。それに幻術をくらえば味方にも被害を出す諸刃の剣とかすぞ」
ご説明ありがとうございます。アドバイスする敵って多いよな。バトルジャンキーだと特に。
アザゼルは触手を切れないでいた。
「その触手は私の命を吸った特別製。切れませんよ」
「・・・ちょっとヤバいかもな・・・」
あ、アザゼルさん?
「おーい、スキマの嬢ちゃんと九尾」
俺と籃のこと?
「この触手、斬ってくれねぇか?」
・・・・・・何を頼んでるんですか!?
「いやー、腕に巻き付かれたのなら腕を切り落とせばよかったんだが、全身に巻き付かれるとはな。というわけで、ご自慢の緋想の剣で切ってくんね?」
この総督、大丈夫?
まあ、頼まれたしやってみるか。
『緋閃「全人類の緋想天」』
斬ッ!
一本ギリギリ斬れるか斬れないか、ぐらいか。
「終わりですね!堕ちた天使の総督!」
勝ち誇った顔をするカテレア。うん。緋想の剣でも斬れないか。だったら、
『境界「全てを二つに断つ線」』
ズバンッ!
境界線は、あっさりと全ての触手を切り裂いた。
「お、すげぇな。斬れるじゃねぇか。じゃあな、カテレア」
アザゼルの槍がカテレアを貫く。その体が塵となって消えた。
カテレアを倒した瞬間、アザゼルの黄金の鎧が解除される。
「チッ。人工神器の限界か。まだ改良の余地が多分にあるな。・・・核の宝玉が無事なら、まだ作り直せる。もう少し俺に付き合ってもらうぜ、『黄金龍君』ファーブニル」
宝玉に口づけはしなかったが、大事そうに懐にしまうアザゼル。
「さすがアザゼル。でも、鎧が解除されたな。まだまだ人工神器は研究が必要なわけか」
残るはヴァーリ。頼むから俺にこないでくれ。
「さて、ヴァーリ。どうする?俺はまだやれるぞ?鎧がなくても五体満足だ。十分お前と戦える」
光の槍を手に、刃をヴァーリに向ける。確かに、アザゼルは無傷に等しい。
しかしヴァーリは構えるアザゼルを一瞥し、一誠に話始める。
「しかし、運命ってのは残酷だと思わないか?」
「・・・・・・何が言いたいんだ?」
「俺の様に魔王プラス伝説のドラゴンみたいな思い付く限り最強の存在がいる反面、そちらのようにただの人間が伝説のドラゴンが憑く場合もある。いくらなんでもこの偶然は残酷だと俺は思うな。ライバル同士のドラゴン神器とはいえ、所有者二名の間の溝はあまりにも深すぎる」
「・・・俺のことか?」
「そうだ。君のことだ。君のことは調べた。父は普通のサラリーマン。母は普通の専業主婦で、たまにパートに出ている。両親の血縁は全くもって普通。先祖に力を持った能力者、術者がいたわけでもない。勿論、先祖が悪魔や天使に関わったこともない。普通のなんの変哲のもない。君の友人関係も特別な存在ではない。君自身も悪魔に転生するまで極普通の男子高校生だった。ブーステッド・ギア以外、何もない。つまらないな。あまりにつまらなすぎて、君のことを知ったとき、落胆よりも笑いが出た。『ああ、これが俺のライバルなんだ。参ったな』って。せめて親が魔術師ならば、話は少しでも変わったかもしれないが・・・そうだ!こういう設定はどうだろうか?君は復讐者になるんだ!」
どこか思考がぶっ飛んでいる。つまらないから人を復讐者に変えるのか?自分勝手にも程がある。
「俺が君の両親を殺そう。そうすれば、君の身の上が少しは面白いものになる。親を俺のような貴重な存在に殺されれば晴れて重厚な運命に身を委ねられると思わないか?うん、そうしよう。どうせ、君の両親は今後も普通に暮らして普通に老いて、普通に死んでいく。そんなつまらない人生で終わるくらいなら、俺の話した設定の方がよっぽど華やかだ!な?」
「・・・・・・殺すぞ、この野郎」
ぼそりと、一誠が呟く。
「お前の言う通り、俺の父さんは朝から晩まで家族のために働く極普通のサラリーマンだ。俺の母さんは朝昼晩と俺達家族のためにうまい飯を作ってくれる普通の主婦だ。・・・でも、俺をここまで育ててくれた。俺にとって最高の親なんだよ。・・・殺す?俺の父さんと母さんを?なんで、てめえの都合に合わせて殺されなくちゃならないんだよ。貴重だとか、運命だとか、そんなの知るかよッ!」
一誠は言う。
「やらせるか。ーーてめえなんぞに俺の親を殺されてたまるかよぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!」
『Welsh Dragon Over Booster!!!!』
腕輪を代償に、赤い全身鎧を纏う一誠。
「ーーっ。見ろ、アルビオン。兵藤一誠の力が桁違いに上がったぞ。怒りという単純明快な理由が引き金だが・・・ハハハハ、心地よい龍の波動だな」
『神器は単純で強い想いほど力の糧にする。兵藤一誠の怒りは純粋なほど、お前に向けられているのさ。真っ直ぐな者、それこそドラゴンの力を引き出せる真理の一つ』
「そうか。そういう意味では俺よりも彼の方がドラゴンと相性がいいわけだ。ーーだが!頭が悪いのはどうだろうか!兵藤一誠!君はドライグを使いこなすには知恵が足りなさすぎる。それは罪だよ」
「さっきからベラベラと!そんなことわかりきってるんだよぉぉぉぉぉッ!」
背中の噴出口から赤いオーラを噴き出し、ヴァーリにタックルを仕掛ける。しかし、ヴァーリは軽やかな動きで避ける。
一誠は籠手からアスカロンを伸ばし、ヴァーリに斬りかかるが、ただ振り回すだけの斬戟では当たるわけもなく、軽々と避ける。
ドンッ!
ヴァーリの拳が一誠の胸に入る。その一撃だけで鎧にヒビが入る。
「これが俺のライバルか!ハハハハ!困ったな!弱いよ!弱すぎるよ!」
「イッセー(くん)!」
部員たちの声。心配そうに一誠を見ている。あの中に入っていけるだけの力がないから見るしかない。とか言う俺も、あの速さについていけそうにない。反応はできそうだけどな。
『Divide』
『Boost!!』
白龍皇の力が働き、一誠の力を半減する。すかさず赤龍帝の力が半減した力を倍加し、もとに戻す。
しかし、白龍皇は半減した力を自分の糧にできる。差はさらに広がっていく。
「ほらほらほら!」
無数に魔力の弾を放つヴァーリ。
「攻撃も単調だ。ただ突っ込むだけ。それでは意味がない。宝の持ち腐れ。力の使い方も下手だ。これでは白龍皇と赤龍帝のライバル対決はーー」
「あー、そうかい。俺は下手かい。わかってるよ!そんなことは!」
『Transfer!!』
背中の噴出口から魔力を噴かせ、弾幕の中に飛び込む一誠。さらに、思考速度に譲渡を行い、魔力の弾を紙一重でかわしていく。そして、ヴァーリに一気に近づいていく。
「突貫か。バカの一つ覚えだな。そんなものでーー」
ヴァーリは光の盾を前方に出して防御しようとする。
「ドライグッ!収納しているアスカロンに力を譲渡だッ!」
『承知ッ!』
『Transfer!!』
ゴンッ!
一誠の拳は、ヴァーリの盾を難なく破壊して、顔面へ鋭く食い込ませていた。
「ーーッッ???????」
思いがけない攻撃を受け、ヴァーリの体勢が歪む。すかさず一誠は光の翼、白龍皇の余った力を放出する場所に手を回す。
「お前の神器の効果はここから来ているそうだな。だったら!」
『Transfer!!』
「吸い取る力と吐き出す力を処理しきれないほどに高めてやる!」
ビィィィィィン!
白龍皇の鎧《ディバイン・ディバイディング・スケイルメイル》の宝玉全てが無茶苦茶な点灯を繰り返す。途端に、ヴァーリの体にあった凄まじいドラゴンの力が消失していく。
『ーーッ!なんてことだ・・・ッ!ヴァーリ、一度体勢を立て直せ!』
ヴァーリがアルビオンの声に反応して、両腕で防御を試みる。
バガンッッ!
アスカロンの力が籠った左拳は、ヴァーリの防御を両腕の籠手ごと難なく破壊し、そのまま白龍皇の鎧も呆気なく破壊し、ヴァーリは腹に突き刺さる。
ゴホォ・・・・・・。
ヴァーリの口から鮮血が飛び散る。しかし、口から血を流しながら、ヴァーリは笑う。
「・・・ハハハ、凄いな!俺の神器を吹っ飛ばした!やればできるじゃないか!それでこそ、ライバルーー」
ガンッ!
一誠の容赦ないストレートがヴァーリの顔面に入った。
「・・・殴らせてもらったぜ。お前だけは殴らないと気が済まなかった」
ついに顔面に一発入れた一誠。しかし、ヴァーリの鎧は再び元の状態に戻る。
所有者を戦闘不能にするまで戦いは終わらない。
すると、一誠が地面に転がっている白龍皇の宝玉を拾う。
「なあ、ドライグ。神器は所有者の想いに応えて進化するんだよな?」
『ああ、そうだが・・・どうした?』
「俺のイメージをお前に伝える。ーーやってみてくれ!」
『ーーッ。・・・相棒、危険なイメージを送り込んでくるものだな。だが、面白い!死ぬかもしれないが、その覚悟はあるか?』
「死ぬのは勘弁だな。俺はまだやりたいことが一杯あるんだ。ーー痛みなら、我慢してやる!それで目の前のくそ野郎を越えられるのならなッ!」
『フハハハハハハハハッ!いい覚悟だ!ならば俺も覚悟を決めよう!正気の沙汰ではないがーー我は力の塊と称された赤き龍の帝王!お互い、生きて超えてみせるぞ、相棒!否ッ!兵藤一誠ッッ!』
「応!」
「何をするつもりだ?」
「『白い龍』!アルビオン!ヴァーリ!貰うぜ、お前の力!」
自身の右腕の籠手の宝玉を叩き割り、そこにバニシング・ドラゴンの宝玉をぶちこんだ。
瞬間、右腕が白いオーラに包まれる。
「うがあああああああああああああああああああああああッッ!」
一誠の身に、とんでもない激痛が走る。
「ぬがあああああああああああ!あ、あ、あ、あああああああああああああああああああああああああああッッ!」
全く。
「ッ!俺の力を取り込むつもりか?」
『無謀なことを。ドライグよ、我らは相反する存在だ。それは自滅行為に他ならない。ーーこんなことでお前は消滅するつもりなのか?』
『ぐおおおおおおおおおおッッ!クハハ!アルビオンよ!お前は相変わらず頭が固いものだ!我らは長きに亘り、人に宿り、争い続けてきた!毎回毎回同じことの繰り返しだった!』
『そうだ、ドライグ。それが我らの運命。お互いの宿主が違ったとしても、戦い方だけは同じだ。お前が力を上げ、私が力を奪う。神器を上手く使いこなした方が止めを刺して終わるとなる。今までも、これからも』
『俺はこの宿主ーー兵藤一誠と出会って一つ学んだ!ーーバカを貫き通せば可能になることがある、とな!』
「うぐぁあああああッ!」
全くもって。
「毎回毎回無茶をするわね」
俺は一誠の右腕に手を置き、能力を発動する。相反するものを曖昧にして融合させるなんて、俺にとっては簡単なんだよ!
「ありがとうございます!紫さん!俺の想いに応えろ!神器ァァァァッ!」
『Vanishing Dragon Power is Fusion!!』
ん?ちょっと違う?融合させたからか?
「・・・へへへ、『白龍皇の籠手《ディバイディング・ギア》』ってところか?」
赤い鎧の中に、白を基本として、赤い隈取りのような模様が入った籠手が現れた。宝玉の部分には、赤と白色の太極図が描かれていた。なんか変わってる・・・。完璧に俺のせいですね。わかります。
『あり得ん!こんなことはあり得ない!』
「いや、可能性は少しだがあった。俺の仲間が聖と魔を融合して聖魔剣なんてものを創りだした。それは神がいないためにバランスが崩れているから、実現可能になったらしい。まあ、お偉いさんの言葉を借りるなら、システムエラーとかプログラムバグとかいう状態か?それを利用したのさ」
『・・・「神器プログラム」の不備をついて、実現させたというのか?いや、しかし、そんなことは、思い付いたとしても実際に行うのは愚かだ・・・。相反する力の融合は、何が起きるかわからない。それがドラゴンに関わるものだとしたら、死ぬかもしれなかったのだぞ?否、死ぬ方が自然だ。そちらの女、何をした?』
「能力を使っただけよ」
うん。嘘は言ってない。境界を操っただけだ。
「ああ、痛かった。けど、俺は生きてるな、ドライグ」
『ああ。だが、確実に寿命を縮ませたぞ。いくら悪魔が永遠に近い時間を生きるとしてもーー』
「一万年も生きるつもりはないさ。まあ、やりたいことが一杯あるから、千年は生きたいな」
さて、俺の役目はここまでかな。俺は下がる。
「面白い。なら、俺も少し本気を出そう!俺が勝ったら、君の全てと君の周りにある全ても白龍皇の力で半分にしてみせよう!」
なんで俺も巻き込むねん!抵抗できるから大丈夫だけど。
「半分?俺の力なら兎も角、俺の周囲を半分にするってどういうことだ?」
「無知は怖い!知らずに死ぬのも悪くないかもしれないな!」
『Half Dimension!』
宝玉の音声と共に目映いオーラに包まれたヴァーリが、学校に植えられている木に手を向ける。
グバンッ!
木々は一瞬で半分の太さになる。さらに、圧縮されるようにどんどんと半分になる。自然破壊が多いです。
「赤龍帝、兵藤一誠、お前にもわかりやすく説明しよう」
「おお、総督。お願いします。バカな俺にもわかるように一つ」
「任せろ。あの能力は周囲のもの全てを半分にしていく。つまり白龍皇が本気になったら、リアス・グレモリーのバストも半分になる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
なんか、体の動きがぎこちなくなってるぞ?
ギギギと首だけを動かして、リアスに視線を向ける一誠。怖い!目のハイライトがない!
「ふ・・・・・・ふざけんなァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!貴様ッッ!部長のぉぉぉぉ!俺の部長のおっぱいを半分の大きさにするつもりかァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!』
・・・ドライグ、苦労してるんだね・・・。
「許さないッッ!絶対にてめえだけは許さないッッ!ぶっ倒してやるッッ!ぶっ壊してやるッッ!ヴァーリィィィィィィィィィィッッ!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost
BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost
BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』
全身に赤いオーラを纏い、赤と白色の太極図、というよりあれって陰陽玉?それが一個一誠の周りを浮遊する。あれって配色違う陰陽玉みたいな物なん?
「アッハッハッハッ!なんだそりゃ!?マジかよ!主様の胸が小さくなるかもしれないって理由でドラゴンの力が跳ね上がりやがった!」
アザゼル大爆笑。俺はそれよりもあの陰陽玉に興味がある。まあ、確実に俺の影響だろうが、面白い変化だな。
「リアス・グレモリーに手を出してみろッ!二度と転生できないぐらいに徹底的に破壊してやらぁぁぁぁぁっ!この半分マニアがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
一誠の絶叫で雲が割れ、満月が姿を現す。
「今日は驚くことばかりだ。まさか、女の乳でここまで力が爆発するとは。しかし、面白い!」
ヴァーリが一誠に向かって飛び出す。しかし、一誠がヴァーリ以上の速度でヴァーリを横合いから蹴り飛ばした!
「速いッ!スピードで俺を超えるのか!?」
そんな言葉に耳もかさず、ヴァーリを掴む一誠、そこに、容赦ない拳が入るーー!
「これは部長おっぱいの分!」
『Divide!!』
右腕で殴る。同時に白龍皇の力が発動し、ヴァーリを弱らせる。
「ぐはっ!」
吐瀉物を吐き出すヴァーリ。しかし、一誠はお構いなしに攻撃を続ける。
「これは朱乃さんおっぱいの分!」
顔面に一撃、兜が完全に壊れる。
「これは成長中のアーシアおっぱいの分!」
光の翼を発生している背中の噴出口を破壊。
「これはゼノヴィアおっぱいの分!」
勢いよく空中に蹴り上げる。
「これは半分にされたら丸っきり無くなっちまう子猫ちゃんのロリおっぱいの分!」
猛スピードでタックルを決める。やめて!ヴァーリのライフはもうゼロよ!言ってみたかった。口には出してないけど。
「最後だッ!これは俺に色々教えてくれた紫さんのおっぱいの分だぁぁぁぁぁあああああああああッッ!!」
『龍玉「紅白陰陽玉」』!!
一誠の周りを浮遊していた陰陽玉が、濃密なエネルギーを携え、ヴァーリの体に飛んでいった!
ドゴォォォォオオオオオンッッ!!
一誠がスペカ使ったよ。予想外デス。
「ガハッッ!」
強大なエネルギーの塊をモロに受けたヴァーリは、全身の鎧は砕けちり、吐血しながら地面に落ちた。
「特に子猫ちゃんはなー!小さいおっぱいを気にしてたんだぞ!?それを半分!?俺が許さない!あの子からこれ以上おっぱいを奪うなッッ!その苦しみをお前は理解できるのか!?この半分マニアがッ!」
未だに怒髪天な一誠。霊夢の陰陽鬼神玉みたいだったな。一誠の初スペカ。まあ、スペル宣言して出したわけじゃなさそうだが。
「・・・面白い。本当に面白い」
そんななかでも嬉々とした笑みを浮かべるヴァーリ。見る人が見ればあんたドMか?って思うぞ?
『ヴァーリ、奴の半減の力に対する解析は済んだ。こちらの力の制御方法と照らし合わせれば、ある程度は対処できる』
「ある程度?完全には無理なのか?」
『ああ、恐らく、あの女の影響だろう』
おおう、嬉しい誤算です。
「そうか。・・・アルビオン、今の兵藤一誠ならば白龍皇の『覇龍』を見せるだけの価値があるんじゃないだろうか?」
『ヴァーリ、この場でそれはいい選択ではない。無闇に『覇龍』となればドライグの呪縛が解けるかもしれないのだ』
「願ったり叶ったりだ、アルビオン。『我、目覚めるは、覇の理にーー』」
『自重しろ、ヴァーリッ!我が力に翻弄されるのがお前の本懐か!?』
そんなとき、夜空に浮かぶ満月をバックに人影が一つ降りてきた。
「ヴァーリ、迎えに来たぜぃ」
「美猴か。何をしに来た?」
「それは酷いんだぜぃ?相方がピンチだっつーから遠路はるばるこの島国まで来たっていうのによぅ?他の奴らが本部で騒いでるぜぃ?北の田舎神族と一戦交えるから任務に失敗したのなら、さっさと逃げ帰ってこいってよ?カテレアはミカエル、アザゼル、ルシファーの暗殺に失敗したんだろう?なら監察役のお前の役目も終わりだ。俺っちと一緒に帰ろうや」
「・・・そうか、もう時間か」
「なんだ、お前は?」
一誠が突然現れた霊長類を指差し、聞く。
「ーー闘戦勝仏の末裔だ。ソッコーで把握できる名前で言ってやる。ーー奴は孫悟空。西遊記で有名なクソ猿さ」
「そ、そ、孫、孫悟空ぅぅぅぅぅぅぅっ!?」
「正確に言うなら、孫悟空の力を受け継いだ猿の妖怪だ。しかし、まさか、お前まで『禍の団』入りとは世も末だな。いや、『白い龍』に孫悟空か。お似合いでもあるのかな」
「俺っちは仏になった初代とは違うんだぜぃ。自由気ままに生きるのさ。俺っちは美猴。よろしくな、赤龍帝」
挨拶をした美猴は、棍を出現させくるくると器用に回し、地面に突き立てる。するとそこから黒い闇が広がり、ヴァーリと美猴をずぶずぶと沈ませていった。
「待て!逃がすか!」
一誠が追おうとするが、禁手が解除される。
「アザゼル!あのリング、まだないのか!?こいつを逃がすわけにはいかない!」
「あれは製作に恐ろしいぐらいの時間がかかる。量産もできん。それにあったとしても、多用すれば完全な禁手になれる可能性が薄れるんだよ。ーーあくまで応急処置だ。もっと言えば、あれだけの力を一瞬とはいえ爆発的に発散すれば体力やらも空っぽになる。今のお前じゃ、貯蔵できるものが限られていて長時間の戦闘は無理だ」
「クッ!」
「旧魔王の血族で白龍皇である俺は忙しいんだ。敵は天使、堕天使、悪魔だけじゃない。いずれ再び戦うことになるだろうけど、そのときはさらに激しくやろう。お互いにもっと強くーー」
それだけいいかけて、二人は闇のなかに消えていった。
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あー、疲れた。魔術師ウザかったな。あれGなんじゃね?うじゃうじゃと。
今俺は校庭の修復を行っている。砂を集めて、穴を埋め、木は苗を植え、仙術で成長させる。アシスタントの藍は、死体運びをしている。すまんな。手伝ってもらって。
「無事だったか。良かったよ」
サーゼクスに声をかけられる。
「・・・すまなかったな。俺のところのヴァーリが迷惑をかけた」
「・・・彼は裏切ったか」
「元々、力にのみ興味を注いでいた奴だ。結果から見れば、『ああ、なるほどね』と納得はできる。ーーだが、それを未然に防げなかったのは俺の過失だ」
少し寂しそうなアザゼル。アザゼルとサーゼクスの間にミカエルが入る。
「さて、私は一度天界に戻り、和平の件と『禍の団』についての対策を講じてきます」
「すまないな、今回このようなことになって。会談の場をセッティングした我々としては不甲斐なさを感じている」
「サーゼクス、そう責任を感じないでください。私としては三大勢力が平和の道を歩めることに喜んでいるのですよ?これで無益な争いも減るでしょう」
「ま、納得できない配下も出るだろうがな」
もう俺帰っていいよね?疲れたし。流石に全てを二つに断つ線はきつかったかな?今日撃ったスペルのなかで一番消耗が大きいからな。帰ろ。一誠もミカエルにアーシアとゼノヴィアの件いってるし、和平も結ばれたし、修繕も結構したからええやろ?アザゼルは当分ここに滞在するらしいな。よし、帰るか。俺すっげえ寝たい。
俺はこっそりスキマを開いた。
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駒王協定が結ばれた後日。
「てなわけで、今日からこのオカルト研究部の顧問になることになった。アザゼル先生とよべ。もしくは総督でもいいぜ?」
胡散臭いおっさんがいた。
「・・・どうしてあなたがここに?」
「ハッ!セラフォルーの妹に頼んだら、この役職だ!まあ、俺は知的でチョーイケメンだからな。女生徒でも食いまくってやるさ!」
「それはダメよ!って、なぜソーナがそんなことを」
「堅いな、リアス・グレモリー。いや、何。サーゼクスに頼んだら、セラフォルーの妹に言えと言うんだ。だから頼んだ」
流石にこの時のソーナの思考は理解できなかった。勿論、五体満足だ。義手ではない。
「俺がこの学園に滞在できる条件はグレモリー眷属の悪魔が持つ未成熟な神器を正しく成長させること。まあ、神器マニア知識が役に立つわけだ。お前らも聞いただろうが、『禍の団』ってけったいな組織がある。将来的な抑止力の一つとして『赤い龍』とお前ら眷属の名が挙がった。というよりも、対『白い龍』専門だな。仕入れた情報では、ヴァーリは自分のチームを持っているって話だ。仮に『白龍皇眷属』と呼んでおくか。判明しているメンツは今のところヴァーリと孫悟空を合わせて数名だ」
「ヴァーリたちはまたここを攻めてくるんスか?」
「いや、もう攻めてこないだろうさ。一応チャンスだった三大勢力のトップ会談での暗殺だが、それも失敗した。奴らの当面の相手は天界、冥界だ。冥界は俺の命令で全堕天使が悪魔と共闘する。そう簡単に冥界を落とすことはできない。天界もセラフの連中が黙っていないだろう。それに天界には居候の強い聖獣、魔獣もいるしな」
「・・・戦争か」
「いや、まだ小競り合いレベルだな。奴らも俺たちも準備期間と言える。安心しろ、お前らがこの学園の高等部どころか、大学部を卒業するまで戦なんて起きやしない。学園生活を満喫しとけ。ーーただ、折角の準備期間だ。色々と備えようじゃねぇか」
「うーん・・・」
「赤龍帝、難しく考えるな。どうせ脳が足りてねぇんだから、余計な心配をしても埒が明かんぞ。お前の敵はあくまでも白龍皇ヴァーリだ。それだけは忘れるな。お前がヴァーリを退けたのは、ミカエルから貰った龍殺しの剣と赤龍帝の籠手の力が合わさったからだ。あと、奴は手を緩めていた。そうじゃなければ負けていたな。というよりも今回は相性のおかげで戦えたに過ぎない。仮に相手がヴァーリ並の力を持つドラゴン以外の存在だったら、お前は殺されていた」
なんと懇切丁寧な説明なんでしょう。うん。先生と呼んでもいいかもな。
「それで、白龍皇の力はあれから使えるのか?」
「あ、はい。一回しか半減できませんけど」
えぇ!?使えるの!?これも俺のせい!?
「そうか、まあ、あんな強力な力はそう簡単に扱えるはずがないからな。少し使えるだけでも進歩だな。だが、それを自由自在に使えるかはまた別だ。下手をすれば禁手に至るよりも難しい技能かもしれない。まあ、修業次第だな。ーーそれも地獄のようなしごきを長期間にこなしてだ。弱いくせに無茶に張り切ると死ぬぞ。赤龍帝の力も不安定すぎる。爆発力は凄まじいが、それも一時だ。相手が格下ならそれで瞬時に倒せるだろうが、格上の相手には封殺される。お前も悪魔として今後レーティングゲームにも参加するなら、強大な赤龍帝の力を安定させろさせろ。それもこれも、まずは禁手になってからだな。かといって、レーティングゲームも一筋縄じゃない。駒消費一の『兵士』が『王』をとるなんてことも起こる。全ては戦い方次第だ。それも含めてお前らに教えないとな」
「レーティングゲーム詳しいッスね」
「ゲームのファンは悪魔だけじゃないんだぜ?和平協定のおかげでゲームを堂々と観戦する天使や堕天使も多くでるだろうよ。とりあえず、長時間戦える体作りからだな」
「・・・はい」
俺もそこまで長く戦えるわけじゃないからな。無限より先に妖怪を長く続けられるようにするのがいいな。普段もできるだけ妖怪でいようかな?
「俺、強くなれますか?」
「強くさせてやるよ。俺は暇な堕天使さまだからな」
うわぁー。胡散臭い笑みだぜ。原作ゆかりんといい勝負なんじゃね?
「仮に今度攻めてきたらギャスパーの時間停止でどうにかできないですかね?」
「せ、せ、せ、先輩!な、な、な、何をおっしゃってるんですか!」
「単独じゃ話にならん。どんなのが『禍の団』にいるかわからないしな」
バッサリきられるギャスパー。頑張れ。
「ごめんなさい!未だに役立たずでごめんなさい!見捨てないでください!」
「見捨てないわよ。安定なさい」
段ボールはそろそろ卒業だな。今も入ってないし。
「そうだ、聖魔剣の。お前、禁手状態でどれだけ戦える?」
「現状、二時間が限界です」
あら、ちょっと延びてる。
「ダメだな。最低でも三日は継続できるようにしろ」
「お、俺は条件付きで十秒ですけど・・・」
「お前は一から鍛え直す。白龍皇の禁手は一ヶ月は保つぞ。それがお前との差だ」
俺の禁手ってどれだけ持つんだろ?正直、十分持つ自信すらない。源力が足りないよ!
続いて、アザゼルは朱乃の方に向く。
「まだ俺らがーーいや、バラキエルが憎いか?」
「許すつもりはありません。母はあのヒトのせいで死んだのですから」
「朱乃、お前が悪魔に降ったとき、あいつは何も言わなかったよ」
「当然でしょうね。あのヒトが私に何かを言える立場であるはずがありません」
「そういう意味じゃねぇさ。いや、まあ俺がお前ら親子の間に入るのも野暮か」
「あれを父だとは思っていません!」
朱乃はハッキリと言い切る。
「そうか。でもな、俺はお前がグレモリー眷属になったのは悪かないと思うぜ。それ以外だったら、バラキエルもどうだったかな」
「・・・・・・」
複雑な表情を浮かべる朱乃。まあ、あれは朱乃自身の問題だから、俺はあまり関わらないようにするか。関わるのは一誠だけで十分だろ。
さて、アザゼルと一誠がエロについて語っている。俺は帰るか。約束もあるしな。
俺はスキマに身を潜らせた。
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「(パクパクモグモグ)」
「・・・籃、いくら食べれば気がすむのかしら?」
「油揚げを禁止されていましたからね。とことん食べますよ!」
「おいしいわ~」
「作る身にもなりなさい・・・」
こんな日常。
後書き
Taken→撮影
Fusion→融合
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