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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十一章
  任務完了×また新たな仲間

「少し話をしようか、小波」

「話、ですか?」

俺の隣に来させると座った。なお、この辺りはIS部隊と桜花達が目を光らせている。

「これから一真隊及び黒鮫隊で一緒に働くんだ。小波の事を色々と知りたくてね。これも部下を持った職業病みたいだけど、質問いいかな?」

「はっ・・・・」

「まず小波が葵に仕えた経緯を聞かせてほしい。なぜ葵に仕えたのか」

「自分の家は元々、伊賀の三忍が一つ、服部家として伊賀の忍を治めておりました。しかし私の母、服部保長の代で松平家に乞われ、安祥に移住したのが始まりと聞いております」

「という事は、最初から忍者ではなかったと?」

「自分は武士です。・・・・が、お家のため、幼き頃より忍びの術を鍛え上げ、お家のために尽くしているのです」

「なるほどな。俺は最初から軍人だったからか、最初からこんなに強くはなかった。俺も小波のように部下と一緒に鍛えてたよ。今を思い出すとそれは懐かしい事だ」

「そう何ですね。では、ご主人様の家に帰りたいとは思わないのですか?」

「家か。俺には本当の家かは分からない。拠点として家はある。仲間や家族も住んでるけど、今は寂しくないのさ。聞いたかどうかは知らんけど、久遠の事は愛妾または恋人であると聞いた事はあるか?」

「はい。葵様から」

「俺にはな、結婚しているのだ。ここでいうなら正室って言った方がいいだろう。あと側室はたくさんいる。数十人くらいな」

「本妻は一人で、側室は数十人というのは驚きました。それで久遠様は愛妾なのですね」

「そうだ。それに俺が帰らないのは残念なのかな、ここに居たら葵の邪魔になるとか?」

「・・・・っ!?」

「・・・・ははっ、小波は隠し事をするのが苦手のようだな」

まあ、そしたら私は別に隠してませんみたいだったから。それ以上は野暮だと思ったけどね。

「小波はさ、これからどうしたい?」

「どうしたい・・・・?」

「そうだ。この国は鬼の脅威となっている。力のない民達が被害にあっている。被害はますます広がるばかり。久遠はその脅威を払拭するため、天下布武何て面倒な事をしようとしている。それが早道なのかもな。俺は人であって神仏の類だからな。目の前にいる人の願いを叶えなきゃいけないと思っている。俺だけじゃない、一真隊全員もそれを叶えるために願っている。今の小波は一真隊の一員だ。だから問いたい。それでも小波は俺の背中を守ってくれるか?」

「・・・・・・・・・・・・・はい」

「それはあの女狐である悠季の命令だから?」

「いえ。それはありません」

「じゃあ葵のためにか?」

「それは・・・・」

どう答えようとしているのか分からない様子だった。鞠は、しばらく離れて桜花達の所にいた。恐らく俺が二人っきりになりたいと思ったのか、それとも隊員達がそう思ったのか。

「ま、答えられないのなら別に無理に答える必要はない。頼りにしているぞ、小波」

「は・・・・全力を尽くします・・・・」

話はそろそろ終わらせてから、俺達は高見の見物を続けた。一応小波には味方が見える場所に行ってもらい、俺達は「付近に兵がいたら射殺せよ」と指示してある。今は夜で、やっと味方が平井丸付近で戦っているとの事だった。恐らく敵兵は六角氏が死んでる事は知らないだろう。それに本丸爆破した後、ちゃんと消火したから大丈夫だ。そしたら東側の長屋の所から気配を感じた俺は、鞠と数人の黒鮫隊IS装着者を連れて行ったら誰かいるな。長屋の影に身体だけを隠した少女なのか、それともさっきの爆音でしばらく隠密にしてたかのどちらかだな。

「一真。どうするの?」

「本来なら射殺するけど、あの子どこかで見た事あるな。どこかは忘れたけど、捕獲しよう。鞠と桜花達はここにいてくれ」

待機命令を出してから、あの子がいる場所に向かった。まだ見つかっていないようだし、これはチャンス。武装は槍と刀。それに若い、ひよと同じくらいかな?

「こんばんは、御嬢さん」

「・・・・・・っ!?」

「そしてごめんよ・・・・っ!」

「きゃぅ・・・・っ!?」

挨拶後に、素早く後ろに行って手刀で気絶させた。ふう、うまく行ったぜ。

「一真、うまくいった?」

「ばっちぐーだよ。桜花、一応捕虜にするから縄と口を結ぶハンカチか猿ぐつわあるか?」

「少々お待ちを。これですね」

「そうそう。桜花この子を縛り付けやすいようにしてくれるか?」

と言って桜花は、武器を量子分解させてから少女を抱えてからグルグルと縛り付けてから猿ぐつわをはめた。そして、抱えてさっきの場所に戻ろうとした。

「(ご主人様)」

「(うおっ!何だ小波か。どうかしたか?)」

「(はい。お味方がもうすぐ本丸に来ようとしていますが、ご主人様は?)」

「(人の気配を感じたので、行ってみたら捕虜が出来た。理由は女の子だから殺せない事とどこかで見た事あるからだ)」

「(では一度合流しますので、少々お待ちください)」

と念話が止まったと思ったら小波の気配を感じたので振り返るといたけど。

「お待たせしました」

「おう早いな」

「ほわー、小波ちゃんもう来ちゃったの。すごいのー」

「ありがとうございます・・・・それで捕虜というのは」

俺が指を示すと女の子にしゃがみ込んで調べ始めた。調べ終わると立ち上がった小波。

「・・・・ふむ。いい当て身ですね。これならしばらく目を覚まさないでしょう」

「挨拶後に、神速で動いての首に手刀させた。まあ俺が良く使う気絶の仕方だけどね。とりあえずこのまま放置してたら本丸に来る予定の足軽達が何するか分からないからな」

この子を桜花に預けてから、俺達は安全な場所に戻った。その後また小波はどこかへ行ってしまった。味方がどの位置にいるか確認しに行ったと思う。

「(ご主人様。森衆が平井丸の兵達を嬲り殺してると。それと平井丸はもう落ちるかと)」

「(お、やっと来たか。待ちくたびれたぜ。という事はもうすぐ来るな。ここに来そうな敵兵はこちらで処分する。小波は引き続き、味方がどこにいるか見てくれ)」

「(承知!)」

「全員聞け。そろそろ本隊がこちらに来るぞ。たぶん敵兵が来るのでアサルトライフルで撃ちまくれ。ISを装着者は、ソードビットで頸を次々と刎ねよ。桜花はここで待機」

『了解』

「鞠もここで待機なの?」

「そうだよ。一応な」

まああとは残党を排除すればいい事だしな。お、森親子の声が聞こえてきたな。

「おらぁ!森一家が引導を渡してやらぁ!さっさと生きんの諦めろやぁ!」

「一振り二十七頸!坊主の生き血を吸ったこの人間無骨でてめぇら極楽往生を約束してやんよぉ!おらぁ、頸出せ頸ぃ!」

あー、あの事はこういう事だったのね。思わず耳を塞ぎたくなるような、罵声を撒き散らしながら本丸城門破壊後の場所で守っている足軽達を皆殺しにしていく。その後、こちらに来た兵士を銃で撃ってから脳天に当てた。敵足軽が固まっていたので、ピンを抜いた手榴弾を空間に突っ込んで塊の所の足元に置いたら爆死。これを見た足軽達は、戦意喪失したのに俺達はライフルで死なせた。観音寺城にいた足軽達は六角氏が死んでる事も知らずに死んでいった。

「一真!」

「おう、久遠。またやってしまったよ」

「これが六角氏の首級だな。あとで検分するが、本物だろう。皆の者大義であった」

俺と黒鮫隊の者は敬礼した。鞠と小波は返事をしたけど。

「観音寺城、あっという間に落城。ここにいた足軽達は主が死んだ事も知らずに死んでいったけど」

「うむ。森の二人が、一真が頸を刎ねに行ったと伝えたら気合を入れ直して皆殺しにしてた。あと桐琴は骨がなさすぎだと不貞腐れて酒を飲んでいる」

「久遠様。此度の城攻めの状況が・・・・。一真様が頸を刎ねた時に、本丸にいた者は逃げようとしたようですが、全員死んでいます」

「もしかして一真がやったのか?」

「まあ、そういう事で。とりあえず、城内を掃討してから明朝まで寝ずの番って事になる。闇に紛れて残党が暴れる可能性がある」

「御意」

「その後は壬月、麦穂の報せを待って動きを決める。手配しておけ」

「畏まりました」

と言った後、俺の方に向いたけど、城門爆破のお蔭で楽が出来たと言ってたな。

「平井丸を落とそうかとしましたら、平井丸の内から爆発音が聞こえました。あれは一真様のですか?」

「ああ、あれね。ちょうど一塊でいたから、爆弾を足元に転ばせて爆死させただけだけど」

「そのお蔭で簡単に落とせました。・・・・ありがとうございました」

「まあそれが俺の仕事だから」

「お頭ーっ!お帰りなさーい!」

「ご無事で何よりですー!」

聞き慣れた声と共に駆け寄ってきた二人。俺を見ると一斉に飛びかかってきたので、優しく受け止めた。

「おう、ただいま二人とも。戦はどうだった?ちゃんと働いたか?」

「はいっ!詩乃ちゃんが指揮してくれましたから!」

「いえいえ。私の指示を二人が忠実に実践してくれたからこそ、良き働きとなったのですよ」

「だって詩乃ちゃんの言う事なら間違いないもん!」

「そうそう!さすが一真隊の軍師さんだよ!」

「ふふっ、ありがとうございます」

互いに互いを認めあい、尊敬の言葉を交換する仲間達。それが嬉しくてしょうがなかったけど。

「とりあえずお疲れさん。全員無事でよかった」

「えへへ、お頭が頸を取りに行くと行ったので心配はしましたら、すぐに取ったとの報告がきたので安心しました」

「鞠ちゃんも怪我とかしてない?大丈夫?」

「鞠、全然平気なの!お空の上から飛び降りたりしてたから、大丈夫なの!それに一真は強いの!」

「ふむ。今回も大活躍だったようですね?」

「大した事はしてないけど。したのかな?」

「あの頸をスパーッと斬り落としたり、女の子を気絶させたときも素早くやってたの」

「女の子・・・・だと?」

「観音寺城で本丸の爆破を行った後、しばらく様子見をしてたら気配を感じてね。行ってみるとそこに女の子がいて、見つかると面倒だから捕虜した」

「なるほど。で、その捕虜は今どこに?」

「それはだな・・・・・・・」

あそこにいると言おうとしたら。

「こんの色情魔ぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

「おっと危ない」

背後からの罵声を聞いた俺は、飛び蹴りを紙一重で避ける。

「んべっ!」

避けた瞬間、真っ赤な装飾に身を包んだ女の子が、ベチャッと顔面から地面に突っ込んだ。

「・・・・何だこれは?」

「あー、・・・・さっき言った捕虜の女の子」

「デアルカ」

皆が注目する中、女の子はバッと勢いよく立ち上がった。ビシッと音が鳴りそうな程の勢いで俺を指差す。

「ちょっとそこのあなた!この私を穢した責任、どう取って下さるのですっ!」

「はい?穢したってどういう事だ。桜花、俺何もやってないよな?」

「はっ、手刀で気絶させた後、ぐるぐるに縛った後は私が抱えていました」

と言ったら、皆納得したようだ。俺の部下は嘘つかない。

「ちょっとあなた方、この私を無視しないで下さいますっ!?」

「あ、忘れてた」

「くっ!私を穢しただけでは飽き足らず、公衆の面前で恥辱を味わわせるとは、何たる外道!この私がでうすに代わって成敗して差し上げますわ!」

「あのなあ、無実なのにどうして俺が成敗受けるのさ?それ以前、デウスに代わってと言うが、デウスでも許してくれるよ」

「んまぁ!この後に及んでまだしらばっくれるんですのっ!?私を気絶させ、いやらしい手つきで裸にひん剥き、荒縄で乳房をなぶるように縛り上げ、身動きの出来ない私に陸辱の限りを尽くしたではありませんの!」

緊縛プレイ?やった事ないけど、それ。あと俺の趣味じゃないし。

「若い女の処女を無理やり散らし、あまつさえ孕めとばかりに子種を注いだ責任、取って頂きますわよ!」

「ちなみにその責任ってどんなの?」

「決まっておりますわ!乙女の処女をぺろりと美味しく頂いたあなたは、この私に一生奴隷にして差し上げますわ!」

奴隷なの?神を人間が奴隷何て聞いた事もない。内容を聞くとどれも地味な物ばかりで、どこがどう奴隷なのか分からない。

「ふむ。事情はおおよそ理解した。しかし、まずは互いに名乗り合うべきだ。解決に向けて話し合うのは、その後でも遅くはあるまい」

「むっ。確かに正論ですわね。・・・・しかし、そう仰るのでしたら、まずは貴方から名乗るのが礼儀でしょう」

「そうだな・・・・我が名は織田上総介久遠信長だ。見知りおけ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」

「耳悪か?ではもう一度聴かせて進ぜよう。我が名は・・・・・・」

「織田上総介信長、様?」

「何だ、聞こえておるではないか」

「・・・・・・・・・っ!!」

久遠の名前を聞いた瞬間、俺を指差して罵倒していた口を開けて固まってしまった。というか、神に向かって指を差すとか失礼だぞ。俺は少女に向かって呼んだり、顔の前で手を振ってみてもフリーズしたな。

「どうした?何故答えぬのだ?」

久遠の言葉を聞いて、まるで電池が入った人形のように鯱張って動き出した。

「わ、わ、わ!我が名は蒲生忠三郎梅賦秀!六角家家老蒲生賢秀が三女でございます!織田上総介様におきましてはご機嫌麗しゅう!」

スライディング平伏をして、地面に膝をついた。その姿はまるで神を拝めるような感じで、うっすらと頬が赤くなり、一気にまくし立てる。

「蒲生?蒲生とは六角家の大黒柱と呼ばれる、あの蒲生か?」

「はっ!三女でございますれば、跡取りではなく部屋住みでございますが・・・・・」

「なるほど。六角の部屋住みか。・・・・」

「(久遠様。蒲生氏と言えば六角氏の中核。織田家中に招き入れれば、江南の人心掌握に役立つかと)」

エーリカの耳打ちに軽く頷く久遠が、跪く梅の手を引いて立ち上がらせる。

「・・・・梅とやら」

「は、はひぅ!」

「処女を散らされたという貴様の言は、状況から見れば、貴様の勘違いだと思うのだ。我は一真の事を知っておる。女心をよく知り、本妻を愛し、離ればなれになっていようとも弱気な発言はしない。それにそこの者が言っていたが、もし行為をするのであれば双方承諾をしてからすると言っていた。無理やり手籠めにするような乱暴な男ではない。何せ、一真は我の恋人であるぞ」

「こ、恋人?久遠様のっ!?」

「そうだ。貴様も聞いた事があるだろう?織田久遠の恋人である、田楽狭間の・・・・・」

「田楽狭間の天上人っ!?こいつがっ!?」

何か失礼な事言われたな。しかもこいつ扱いとは。

「そうだ。梅がここにいるのは何故なのか、事の次第を説明してやれ、一真」

「・・・・了解した」

久遠に言われて、俺は鞠や小波と俺の部下の証言を素に説明した。梅を捕虜にした経緯をね。

「か、勘違いなのですね。・・・・よかった。じゃあまだ私は処女なのですね」

「まあそういう事だ」

「で、一真の説明を受けた後なんだが、梅よ」

「は、はいっ!」

「貴様さえ良ければ、織田の者にならんか」

「なります!」

「即答かよ!」

「ちょっとそこの貴方は黙ってください。五月蠅いですわよ。私、ずっと織田家に。いいえ、久遠様に憧れておりましたの。この乱世に舞い降りた、革命の戦士。古き慣習に縛られずどんな事にも次々と挑戦していくその御姿は、まさに英雄。墨俣に一夜で城を築いた方法など、因循な年寄り達には思いつく事さえ出来なかったでしょう。その憧れの久遠様直々に、ご勧誘される何て!この蒲生梅、命を賭して久遠様にお仕え致しますわ!」

「我らは貴様を歓迎しよう。梅。励め」

「はっ!有難き幸せでございます!」

「うむ・・・・一真。こやつの世話をせい」

「えーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

「はい?すると俺の隊に入れろと?」

「そういう事だ。一真隊で面倒見てやれ」

「そ、そんな久遠様っ!私の貞操を、こんなケダモノに捧げろとっ!?」

「誰がケダモノだ。それに他の男なら構わんが、俺に向かってその発言は許さんぞ?俺の部下は大層お怒りのようだ」

と言ったら、特に桜花達が殺気を込めて梅を睨んでいた。いつ展開してもおかしくない状態だった。

「方針は変わらん。梅、我の恋人をよろしく頼むぞ?」

「は、はぁ・・・・」

久遠に言われて渋々といった調子で頷いた。こっちを見た梅は、睨みつけてられてたけど、そんなの全然怖くない。

「久遠が言うのなら、一真隊で面倒を見る。桜花達、いい加減殺気を閉じろ」

「うむ。しっかりと慣らせ」

「で、これからどうするの?」

「壬月達の到着を待つ。恐らく数日はかかるだろうが、その後、京に入るつもりだ」

「分かった。俺達が先に京に行って内部を探る事も可能だが?」

「いや、麦穂達に任せておけばよい。一真も休め」

「そうか。ならそうさせてもらおうか」

しっかりと休む必要もある。今回も降下したり頸落としたり、手榴弾で爆死を目の前で見た。

「それじゃ久遠、お疲れ様」

「あ、そのありがとうな」

「ん?俺はいつも通りしただけだ。君主に頭を下げられる程の事をしてはいない。今はこれだけだが」

と言って、皆の目の前で抱き合った。そして久遠の背中をポンポンと撫でるようにしてたけど。

「また来る。今は皆の目の前だから、これぐらいしか出来ない。あとでたっぷりと俺に甘えるがいい」

一度久遠に別れを告げてから、桜花達はIS展開させてトレミーに戻って行った。梅が、空を飛んでいる所を見たので固まっていたけど。まあいいとして、俺達は駐屯割り当てられた場所に向かう。

「お頭は何でも御見通し何ですね」

「鈍感よりマシさ。それに分かってないと、結婚などしておらん」

「さすが一真様です。久遠様のお心を察して私達の目の前であんな事を出来るのですから。あと何か耳打ちをしておりましたが?」

「耳打ちに関しては秘密だ。それより、身内だけで盛り上がるのは野暮な事だ。これから梅に自己紹介をさせたい。まずは一真隊以外の紹介だ。こちら明智衆を率いるルイス・エーリカ・フロイス。日の本の名前は明智十兵衛と言う」

「よしなに」

「ルイス・エーリカ・フロイス・・・・もしや天守教の司祭様のルイス・フロイス様っ!?」

「はい。僭越ながら、神の道を布教しております。最も、今は久遠様に招かれ、織田家中にて、武士として御奉公する身ではありますが・・・・」

「そうだったんですのね。私も天守教を信奉しておりますの。洗礼名はレオと申しますわ」

「あら。武士にも奉教人がいらっしゃるのですね。共にデウス様の教えを広めていきましょう」

「はい!よろしくお願い致しますわ!」

天守教同士なのか、すぐに打ち解けあった。ここにもデウスの事を知ってる者がいたとは。というか装飾品に十字架があるな。

「エーリカ、葵達は?」

「ただいま城内を探索して下さっております。残党はいないと思いますが、念のためにとの事です」

「そうか。まあ葵達は後にしよう。次は俺達の部隊である一真隊の仲間を紹介する。皆紹介しろ」

「それじゃ、私から自己紹介しますね。私の名前は木下藤吉郎秀吉、通称はひよ子です。皆からはひよって呼ばれています!」

「じゃあ次は私。蜂須賀小六正勝、通称は転子。ころって呼んでください」

「ひよは主に小荷駄の管理と弓組の指揮。ころは主に長柄組を率いてもらっている」

「ふむふむ。ひよさんにころさん、ですわね。しかと覚えましたわ」

「じゃあ次は詩乃な」

「はい。竹中半兵衛重治。通称は詩乃。美濃菩薩山城城主にして、一真隊では軍略を担当しております。以後お見知りおきを」

「竹中というと、美濃の今孔明殿っ!?あの稲葉山城を寡勢にて乗っ取ったという・・・・っ!?」

「今孔明という名乗りを自らした事はありません。我が名は竹中半兵衛重治。それ以上でも、それ以下でもございませんよ」

「何と・・・・それ程の賢人が、なぜこーんな怪しい男の下に・・・・」

「怪しいとは失礼だな。まあ今は本来の姿を見せる訳にはいかないから、次は小波」

「お側に」

「きゃーーーーーーーっ!?な、何ですのあなたなんですのっ!?」

「服部半蔵正成。通称小波。松平家中より織田家中、一真様の下に出向し、お仕えしております」

「松平?松平といえば三河の?」

「はっ」

「なるほど。久遠様の幼馴染で在らせられる松平家も、この男に力を貸しているという訳ですか。・・・・何だか納得いきませんわ」

「事実何だから納得しろ。あと俺に対する毒気も抜いてほしいんだが」

「却下ですわ。それよりこちらの方はどなたですの?戦場に立つにはまだ幼いような気がしますけれど?一真隊とやらは、こんな童を動員しなければならない程、人材不足なのかしら?やはり頭が頭だから、人が集まらないんですわね。おーっほっほっほっ!」

「そんな態度取ってると後悔するぞ、鞠、自己紹介しな」

小馬鹿にしている梅の目の前で、鞠がニコニコと名乗りを上げた。

「はーい!鞠は今川治部大輔氏真!通称は鞠っていうの!今はね、一真の部下をしているんだよ♪」

「じぶの!だゆう!さま!ですってーーっ!?」

「だから後悔するぞ、と言ったんだぞ。なあ皆?」

と言ったら、皆頷いた。

「い、い、今川治部大輔様と言えば、東海一の弓取りで在らせられた先代・今川義元公のご息女ではありませんのっ!?そ、そのような高位な御方が、なぜこんな怪しい男の下にっ!?」

「ぶーっ。梅ちゃん、一真の事悪く言っちゃダメなの。一真はね、凄く強くて、凄く優しくて、凄く凄くカッコイイ人なの!」

「えー・・・・・」

「ははは、ありがとな、鞠」

「うんなの♪」

「さて、以上が一真隊のメンツだよ、で」

「で、何ですの?」

「君もちゃんと自己紹介してくれるかな?」

「ふむ。名乗って頂いたからには、私も名乗らなければなりませんわね。いいでしょう。こほん、我が氏は遠く藤原秀郷様を祖とし、六角氏に乞われて客将となった六角家中が大黒柱!蒲生賢秀が三女、蒲生忠三郎梅賦秀とはこの私の事ですわ!」

「梅ちゃんっ!」

「梅ちゃん、これからよろしく!」

「梅さん、ですか・・・・」

「梅って可愛い名前なの!よろしくね、梅ちゃん!」

「よろしくな、梅」

「ちょ、ちょっと皆さん!梅、梅と気安く呼ばないでくださいますっ!?」

「でも可愛いの。鞠は梅ちゃんって呼びたいの。・・・・ダメなの?」

「そ、それは・・・・」

「ジーーーーーーーーーッ・・・・」

「ズルいですわ。今川のお屋形様に懇願されたら、お願いを聞くしかないじゃありませんか・・・・」

「えへへ、わーい♪梅ちゃん、これからずっと一緒なのー♪よろしくなの♪」

「はぁ・・・・よろしくお願いします、鞠様」

「様はヤなの!鞠でいいの♪」

「え、ええっ!?し、しかしながら鞠様は治部大輔を頂く、由緒正しきお貴族様で在らせられます!無礼を働く訳には・・・・」

「鞠がそう呼んでほしいからな。だから様付ではなく鞠と呼んでほしいんだ」

「そうそう!私達だって無位無官だけど、鞠ちゃんって呼んでるよ!」

「一真隊は、身分とか血筋とか家格とか、そういった格式ばった事は無しにしてるんだよ」

「はぁ・・・・で、では鞠さん。よろしくお願いしますわ」

「えへへ、うんなの♪」

梅の言葉に、鞠は満面の笑みを浮かべて返事をする。その返事を合図に、一真隊の仲間達が、梅を囲んで歓迎の意を示した。皆が皆、口々に質問を発し、それに梅は自信に満ち溢れた表情で答えたけど。俺の自己紹介はあとでいいか。俺の名前や本来の姿に神の名、創造神。

「梅。一真隊でやっていく上で、いくつか聞いておきたい事がある。いいか?」

「ええ。よろしくてよ」

「では遠慮なく。梅は何ができる?それを元に上洛の部隊編成を弄りたいんだけど」

「ふふふっ、良くぞ聞いてくれましたわ。この蒲生梅、出来る事は数知れず。日の本の武士の誰よりも、多才だと自負しておりますの。兵の進退から治政は言うに及ばず、茶の湯から連歌、果ては駄目人間再生まで!何でもござれですわ!」

「多才ねぇ。じゃあ梅には、騎馬と足軽の一部の指揮を頼むか」

「・・・・は?い、いきなりそんな大役をさせて。私、つい先程まで捕虜だったのですわよ?」

「梅は裏切る気あんの?」

「そ、そんなつもりは毛頭ありませんわ!一度、織田に与すると決めた以上、どこまでも付いて行きますわよ」

「ならそれで構わない。久遠のために働いてくれる仲間なんだから、頼りにさせてもらぞ梅」

「は、はぁ・・・・」

「まぁ、言いたい事は分かりますが、一真様はこういう御方。それに一真隊の指揮は私達にお任せされております。一真様直属部隊黒鮫隊の指揮や前線で戦う程ですから」

「まあな。俺は後ろで指揮するより前で戦っている」

「あら。中々度胸がありますわね。少しだけ見直してあげましょう。まぁ、私が所属する隊の大将ならば、それぐらいの気概がありませんとね」

ひよところは驚いて耳打ちをしていた。たぶん、梅が猪の人何じゃないかってね。そんな武者、裏方が多い一真隊でやっていけるのか心配のようだ。まあ何とかなるだろう。

「で、最後に俺の事も自己紹介しておくが、一真隊及び黒鮫隊の頭をしている織斑一真だ。俺の本来の姿は見せるべきだと思うんだが、詩乃、どう思う?」

「あの御姿ですか?そうですね。後程の方がよろしいかと」

「あとでか。なら、そうしよう。これから、どんどん戦は激しさを増す。色んな相手と戦う事になるけど、いけそうか?」

「あら。誰に物を言っていますの?この蒲生忠三郎賦秀、戦う事に臆した事など、今生に生まれ落ちて以来、ただの一度もありませんわ!」

「頼もしいな。頼りにさせてもらおうか、梅」

「うふふっ、この蒲生梅にお任せなさい!」

笑みと共に言い放つその姿は、とても頼もしく、力強く思えた。

「あ!お頭お頭!これから皆で、梅ちゃんと小波ちゃんの歓迎会をしませんかっ!?」

「か、歓迎会っ!?」

「自分も、ですか?」

「当然だよぉ!梅ちゃんに小波ちゃん、一気に二人の仲間が増えたんだもん!」

「大切な仲間が増えるって、凄く嬉しい事だよ。その嬉しさをもっともっと味わうために、一つのお鍋を皆でつつくの!」

「同じ釜の飯か。やろうか、でも兵糧は大丈夫なのか。ひよ?」

「へへー、大丈夫です!ちゃんと計算してますから♪って訳で、ころちゃん、お鍋が食べたいよぉ!」

「あはは、了解。でもひよも手伝ってよ?」

「もっちろん!わーいお鍋お鍋ー♪」

わいわいと騒ぎながら、ひよところは早速、お鍋の準備に取り掛かる。俺の料理もいいけど、たまには鍋もいいなと思ったけどね。

「・・・・やれやれ。賑やかな隊ですこと」

「そういうのは苦手か?」

「いいえ。楽の感情があればこそ、人は生きて行けるのだと私は、思っておりますから。・・・・精一杯、楽しませて頂きますわ」

「そういう事だ。皆で笑って楽しんで。生きる事を実感した方がいいかもな。・・・・小波も。な?」

「はぁ・・・・」

困惑した表情を浮かべ、どうすればいいのか迷っていたけど。小波にも笑いや楽しさを実感させたいと思った。人間は喜び合い、悲しみもあり笑いや怒りという風に喜怒哀楽がある。

「さて。詩乃、二人の寝床の準備を頼む」

「御意。一真様は?」

「黒鮫隊の状況と野暮用だ」

「はい。ではお待ちしております」

こうして、観音寺城攻略は、俺達と森一家の活躍があって終了した。次はいよいよ京か。一葉達が首を長くして待ってると思うな。 
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