ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~
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DAO:ジ・アリス・レプリカ~神々の饗宴~
第二十一話
世界の全てが、終わってしまったのではないかと思った。それほどまでに、《彼ら》のもたらした破壊は強力すぎた。
輝く八枚の翼をもった天使が、神罰の光を再び纏う。
黄金の焔を吹き出す聖巨兵が、神罰の炎を再び纏う。
黄昏と暁を従えた神造宝具が、神罰の風を再び纏う。
彼らの神威がもう一度放たれれば、今度こそ自分たちはまっさらに掻き消えてしまうだろう。
これが――――世界を掌握する神々の力。それも彼らにとっては、一切の本気ですらない、児戯でしかないのだ。悪夢、としか形容の使用がない。誰だ、神の祝福は光輝だ、などといったのは。
これでは、唯の《神罰》ではないか―――――
***
時は、しばらく前に遡る――――。
「《六門世界》がどのように成り立っているか、知っているか?」
戦闘を歩くラーヴェイが、セモンに問う。
「確か中心に《六王の神殿》があって、世界の端に六門属性の門がある、だっけ?」
「一般認識ではその通りだ。だが、より正確には違う」
幼いころ読み漁った創作神話の一部を思い出したセモンの答えに、ラーヴェイは正答とも誤答ともつかない判定を下し、続けた。
「本来ならば《六王の神殿》があった場所には、現在《白亜宮》なる純白の城がつくられている。《六王の神殿》はそれに中心を取られるかのように六方に移動し、そのうち二つ……《水》と《闇》の六王の神殿は滅びている。まぁ、二つの神殿の崩壊は六門神話の文章に詳しいのだが……」
そう言えばたしか、水の六門神と闇の六門神が、禁忌を破って恋に落ち、六門神の資格をはく奪された、という話があったはずだ。妙にスケールの大きい話だったから、子どもの頃のセモンはただのヒロイックファンタジーとしか見てなかったのだが……
「あれ《六王神》の話だったのかよ!?」
思わぬところで出てきた情報に絶叫するセモン。なぜそこまで重大な情報を見逃していたんだ!?と内心で自分に向かって絶叫。しかしラーヴェイはあくまでも冷静に答える。
「そうだ。セイレンとシーファルがこの世界を追放されてから、水と闇の六王神は誕生していない。いや……そもそも誕生させる気がないのかもしれないな。実際、あの事件があって以来、第七階位以上に到達した六門神はいない。第六階位には一人だけ到達した者がいたんだが……内部時間で三年ほど前に行方をくらまして以来、姿を見せていない」
「な……」
何だそのホラー、というつぶやきが、実際にカズから漏れた。
「《白亜宮》に入るためには、あの城の番人になり下がった《六王神》の許可を得る必要がある。俺達が以前あそこに行ったときは、ものすごい偶然で《六王神》の監視をすり抜けられたんだ。今回も可能だとは思えない……」
唸りながらコクトが言う。確かにそうだろう。そうそうラッキーなことが起こっていては、話が進まない。むしろセモンのリアルラック値はかなり低い方なのだ。生まれがちょっといい家だったり、《神話剣》なんてユニークスキルを手に入れられたことや、琥珀の様な可愛い彼女がいる時点ですでにリアルラック値は使い果たした。《六王神》の監視をすり抜けるのは、多分無理、と仮定する。
なぜならば、この世界ではそう言った見逃していいようなどうでもいいことが実際に起こりうるからだ。どんな中二妄想でも、時には力に変わる。それがこの《六門世界》、《ジ・アリス・レプリカ》。
「《六王神》の面々を確認しておこう。最初の一人が、火の六王神《オウエン》。《アークイフリート・ネオ》という名の、俺の《イフリート》をはるかに超える上位の聖巨兵型《ギア》を所有する。水の六王神だったセイレンの弟でな……闇の六門属性を持つ者に異様な執着……まぁ復讐心だな、を持っている。物理攻撃力に関してはほぼ無敵だから気を付けろ。《AEN》の手にかすめられた瞬間に四肢が吹き飛ぶぞ」
「――――!?」
「二人目が風の六王神《フェーレイ》。《ギア》は確かバッファ方向に特化した奴だったはずなんだが……遭遇したことがないから情報が少ない。三人目はべヴィティールという名前の、司書風の女なのだが……こいつは確実に戦闘に出てこないから無視していい。最も注意すべきなのは最後の一人だ」
ラーヴェイが一度言葉をきる。その表情は真剣そのもの。それどころか、多少の恐れすらまじっているように思える。
「光の六王神、リ・エリューラ。《大天使アンダルギア=メタトロン》の名を持つ天使型《ギア》を所有する、金髪の幼女だ。実年齢は300ほどなんだが、外見が全く変わらない。精神年齢も幼いから、全く罪悪感がないままに《殲滅の光》を放つんだ。《殲滅の光》は、一撃で大都市を掻き消すことができるレーザー光線、と考えてくれればいい。チャージに時間がかかるから、その隙に何とか対策をとるんだ。かなり上位の防御魔術を使えば防御できる。……全力を振り絞ってもらう必要があるぞ、ハクガ、リーリュウ、コクト」
「……了解した」
「わかりました」
「了解」
コクト達が頷く。恐らくその《殲滅の光》とは、ハクアがかつて言った、《大都市を殲滅した光線》のことだろう。京都府規模の都市なら一撃で存在を抹消できるという《ソレ》は、まさしく神の罰、といっても過言ではないのではないか。
「では、そろそろ《六王の神殿》前の最後の街、央都《ゼクスゲート》に着く。そこで準備を整えたら、《白亜宮》に向けて出発だ」
***
べヴィティールは、自らの居城たる《土王の神殿》、その自室にこもっていた。机の上には一冊の魔導書が置かれている。
べヴィティールの《ギア》の一つである魔導書で、言ってみれば《遠見の術》を発動させるものだ。その術の効果で、鏡の様な物体が出現している。もちろん、写されているのはべヴィティールではなく、《央都》へと達した《勇者》達だ。
できることならば、彼らを逃がしてやりたい。できることなら、彼らに「来てはいけない」と忠告をしてやりたい。実際、べヴィティールの持つ魔導書の一つを使えば、彼らに声を届けることも可能だ。だが――――
それは、絶対に許されない。それを行った瞬間、自らの後ろに立つ人物が、自分を殺す。
「始まるな、惨劇が」
その人物――――水の色とも、空の色とも異なる、青い長髪を持った少女が、嬉しそうに呟く。べヴィティールが何か不審なことをすれば、彼女によって八つ裂きにされてしまうだろう。
「(わが身を犠牲にしてまで人を助けよう、とは考えないあたり……私も”良くない”のね)」
こころの中で嘆息する。本当に善の心にあふれた者ならば、死ぬことが分かっていても彼らにコンタクトを取ろうとしただろう。結局のところ、べヴィティールも最後には自分の身が可愛いだけの偽善者なのだ。
――――《あの存在》が好きそうな内容だ、と思う。結局は自分という存在も、この青髪の少女も、遠見の鏡に映しだされた青年達も、《あの存在》によって創られ、管理され、踊らされているに過ぎない。それを振り切ることはまず不可能だし、振り切る気も起きない。
「土の王、《六王神殿》区画入口付近、第一コロッセオの監視を強化せよ。同時に《転移門》の魔術を準備。私をすぐに転移させられるようにせよ」
青髪の少女が指示を出す。逆らってはいけない。無言でべヴィティールは用意をする。《ギア》のうちの一つを取り出す。この魔導書には転移の魔術を無尽蔵に使用させるための術が刻まれている。
同時に、既に使用していた《遠見鏡》の魔術を強化する。青年達を写した鏡の隣に、もう一つの鏡が出現する。
そこには、三人の自らと同格の存在が写されていた。
無邪気な笑顔を浮かべる親友、リ・エリューラ。
憎悪によって歪んでしまった顔のオウエン。
こんな状況でなお表情の変化を見せないフェーレイ。
いちばん動揺しているのはきっと自分だ。そして多分、それは青髪の少女にも、あの白い女神にも、その上、《あの存在》にも知られている。
にやり、と青髪の少女が歪んだ笑みを浮かべ、祝詞の様に呟く。
「確か、こうだったか……”さぁ、今宵の恐怖劇を始めよう”」
後書き
……刹那?
刹「……は、はい、何でしょう作者」
あのさ……『神話剣』の総合ポイント数が一夜にしてものすごいことになってるんですけど!?え!?何!?一晩で400P増加って……。
刹「夢でないことを祈りましょう」
うん。評価を下さった方々(主にArditoさん)、ありがとうございました!
さて、次回はいよいよVS六王神。ちなみにラストで青髪のが言ったセリフは、ゲーム『Dies irae』のメルクリウスのセリフが元ネタ。というかそのまんま。
刹「そもそもこの方のモデルがメルクリウスさんですしね」
うん。青髪のところとかニートがモデル。
というわけで
刹「次回もお楽しみに!」
またとられた!!
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