こんな私(俺)の物語
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閑話 双紫異変Ⅱ
前書き
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不法侵入じゃねえかよ・・・・・・
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ふと、目を覚ますと、寝ているはずなのに地面が硬い。いや、これは床に寝ている感覚と言えば分かりやすいだろう。フローリングとかに寝ているような感覚。今度は拉致ですか!?
「ここは!?」
起きて喋って気が付いた。また、男になっている。いやまあそれは別にいいんだ。ただ、境界を操る程度の能力があんまり使えなくなるかもしれないのが嫌なんだ。案の定、ほんの少しのスキマと、ほんの少しの種族変換しかできなかった。前より増えている分、ましか。
「んで、ここはどこ?」
周りを見渡す。洋風の家のようだ。紅が映える、結構な豪邸だ。
「不法侵入じゃねえかよ・・・・・・」
うん。ゆかりんは不法侵入上等なんだろうけど、俺は生憎そこまで至ってない。まだ根は人間なんです。
とりあえず、今の俺は殆ど無力に等しい。だから、武器の雪器を取りだし、腰につけておく。そして、
「不法侵入してすいません。俺はさっさと出ていくので、どうか誰にも会いませんように・・・」
誰に何を言っているのかわからない意味不明な台詞を吐きながら歩み始めるのだった。
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暫く歩いて気が付いた。
「やけにこの屋敷広いな・・・・・・」
バカみたいに広いのである。エントランスがどこにあるかすらわからない。マップぐらい張っておいてよ。スキマで出れないんだからさ。また、力の殆どを失うって・・・。
「いっそのこと窓から出るって手もあるか」
と、窓の方を見たら、窓まで紅かった。
「ガラスまで紅いのかよ・・・・・・」
そう思って近づいて気が付いた。ガラスが紅いんじゃない。外の景色が紅いんだ!
「なんなんだよ!一体!」
窓ガラス越しに外の景色をみる。紅い靄のようなもの、いや、これは霧だ。紅い霧。
え、ちょっと待てよ。まさか・・・・・・。
「紅霧異変、東方紅魔郷?」
まさか、そんなわけ・・・・・・。
「また、幻想郷に来ちまったのかよ・・・・・・」
俺って忘れ去られやすい体質なのかねぇ。
「・・・・・・となると、ここが紅魔館と考えるのが妥当・・・か」
全くもって面倒な場所に来たものだ。俺はそう思いながら、スキマを開き緋想の剣も取り出しておく。願わくば、この幻想郷の緋想の剣が黄色であることを。
「となると、メイド長には会いたくねぇな。張り付けにされそうだ」
さて、どう脱出しようか?これが紅霧異変なら、霊夢か魔理沙が異変解決にきたどさくさに紛れて脱出するか?
だが、すぐに来るとは限らない。やはり自分で脱出するしかないようだ。まあ、敵意を示さなければ攻撃されないだろう。多分。
「それと、地下室には行かないようにするか。冗談抜きで死ぬ」
さてと、歩きますか。
窓から出ればいい?いやいや。割っちゃいけませんよ。
できれば話の通じる奴に会いたい。幻想郷の住民ってなんで話聞かないんだろう?
「さてと、お帰りはどちらかねぇ」
「こちらです」
「・・・・・・(汗)」
なんでいるんですか?メイド長。
「あ、あの、どなたですか?」
「この紅魔館のメイド長、十六夜咲夜と申します」
「あ、ご丁寧にありがとうございます。ところで、案内をしてくださるんですか?」
「はい。できれば早急にこの紅魔館から出ていってもらいたいのですが」
「わかりました。じゃあ、案内をお願いします」
というわけで、話が通じる十六夜咲夜さんについていき、俺はバカに広い紅魔館を出ることができた。
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「あービビった。紅魔館内だけなら神出鬼没なのかもしんねぇな」
案内され、玄関までつれてこられ、寝ている中国が咲夜さんのナイフの餌食になるのを見ていないと思い込みながら、俺は紅魔館の外に出れた。
「案外呆気なかったな。まあ、話が通じれば大丈夫か」
さて、次はどうしようかねぇ。やっぱりここは人里に行くのが鉄板だよね!
と、目的地を定め、俺は歩き始める。
「ッッ!」
瞬間、何かに睨まれるような感覚に陥った。以前、幻想郷にきたときは、八雲紫に少し覗かれていたが、あれとは違い、なんと言えばいいのか・・・・・・邪悪過ぎると言えばいいのか?
『イイニオイ』
ギョロ
後ろを向く。そこには、いくつもの目玉を持つ四つん這いの化け物がいた。
「妖怪!?」
ちっ!なんでこう襲われるかねえ!しかもノラガミの妖じゃんか!通りでイイニオイとか言ったわけだ!しかも俺が持っている武器が雪器にそっくりとは何の因果かねぇ!
『簡易「人類と人外の境界」』種族、天人!
瞬間、俺の緋想の剣が紅い気質を纏う。緋想の剣を一番負担なく使う方法が、種族を変える。ただし、変える種族はあったことがあり、自分が認知している種族だけ。一応天子(地子)にあったから、天人になれた。おいおい、あいつなにげに人外だったのかよ。緋想の剣、あいつに渡すべきか?
「さてと、頑張りますか!」
以前来たときに教えてもらった身体強化を使う。
そして、緋想の剣に気質を込める。それを地面に突き刺し、気質を大地に打ち込み、隆起させる!
『地符「不譲土壌の剣」』
隆起した大地が妖を打ち上げる。やっぱすげえよな、緋想の剣。便利さが桁違いだ。
「因果の剣!」
緋想の剣を投げつける!緋想の剣は投げても戻ってくる。
投げつけられた剣が相手を斬り裂き、戻ってくる時に俺に引き寄せてくれる。ブーメランみたいだよな。
しかも、緋想の剣はなんでか任意のタイミングに手元に戻すこともできる。つまり、引き寄せると同時に斬りつけれるのさ!
「バラバラに引き裂いてやろうか!?っなんてね!」
『剣技「気炎万丈の剣」』
連続で斬りつけ、最後に斬り抜けるスペル。もっとも、見よう見まねだがな。
そして、9回、もろに喰らった妖は無数の昔風の漢字を撒き散らし、消え去った。
消えかたまでノラガミ風か。
「以外と余裕だったな。まあ、妖じゃ妖怪には及ばないしな。ま、宝の持ち腐れにならんようにしますか」
天子のスペルを見よう見まねでパク・・・・・・ラーニングしてみたが、やっぱり『剣技「気炎万丈の剣」』は滅多斬りだよね!
『要石「天地開闢プレス」』とか『気符「無念無想の境地」』はラーニングできそうにない。とくにドMモードはコピーできない。
それでも、『地震「先憂後楽の剣」』はコピーできそう。地震だから被害が大きいけど。
こうして天子のスペルを見ると、殆ど緋想の剣頼りなんだよな。
「さてと・・・・・・人里ってどこだろう?」
そういえば、なんでノラガミ風に妖死んだんだろう?もしかして、緋想の剣の効果?弱点纏うって怖い。天界の道具すげぇ。イカンイカン、思わず緋想の剣に感謝しまくっちゃったよ。投げても戻ってくるのもいいねえ。
俺は小さく開いた、と言っても、このサイズが限界なのだが。スキマに緋想の剣をしまう。いや、調子に乗ってノリノリで斬ったけど、頼りきりになっちゃいけないし、何より幻想郷で長時間だし続けるのは危険だ。色々と。
改めて雪器を腰に着け、また歩き始めた。
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緋想の剣で一つ思い出した。俺は一つ天子のスペルの上位版を創ろうとしてたんだ。
ベースは『非想「非想非非想の剣」』。相手の気質を封じ込め、天気の影響を受けなくさせるスペル。まあ、ゲームの話だがな。
そこから、相手の『能力』を封じ込める技が創れないかと考えたわけだ。専売特許を封じる。単純にして最高の一手だ。俺も封じられたら手も足もでない、なんてことにならないようにしないとな。
「人里を探して三千里?バカな。そんなに遠いなんて嫌だぜ?」
男の俺は速く飛ぶことができない。クッソー。スキマが恋しい。
そして今更ながら、俺は異常だと気が付いた。この霧は人間に有害なのに、俺はいたって平気だ。いや、今は天人なのだが、妖に会うまでは人間だったんだ。それまで下手すれば死にかけてもおかしくない妖霧の中にいて平気とは・・・・・・あれ?ちょっと待って。咲夜さん。さっさと屋敷出ろって今考えたら処刑宣告じゃないのさ!しれっと殺されかけた。恐ろしい人。
「雪器で使えそうなスペルは妖夢のスペルぐらいかな?あとは月牙天衝とか他作品のかな」
ジャンプ繋がりなら、幽々子も使えそう。『千本桜景厳』とか。
ただでさえ多い物量がさらに斬撃を伴う・・・・・・俺、生きていられるかな?
「うぅ~。今更ながら寒い。やっぱり咲夜さんのあれは処刑宣告だ!」
常人なら死ぬわ!俺は相変わらずちっさいスキマから白い羽織を取り出す!背中に太極図八卦が描いてある。ゆかりんの服の羽織版。男の俺が着るためにコツコツ作っていた。内側はジャージのままだが。
「うん。やっぱり自分で作ったものはいいねえ」
そして、人里目指し歩みを続ける。
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再度歩き始めて数分後。俺は完全に迷っていた。
「しくじったなぁ~。最初から上空から位置を確かめりゃよかったんだ。飛ばなくとも、結界を足場にして空中を走ればいいんだから」
そう考え付いた俺は脚力を強化して一気に五メートルぐらいジャンプして、最高到達点に達した瞬間に自身のすぐ下に薄い板のような結界を作り出す。うん。強度に問題はない。
「しっかし、俺は一人になると独り言が多くなる性格なのかねぇ」
そんなことを思いながら、俺は周りを見渡す。見渡そうとした。しかし、
『イイニオイ』
ギョロギョロ
「チッ!またかよ!」
先程より大きい妖が現れた。念のため、緋想の剣を腰に装備する。基本は雪器とコカビエル相手に使った、この幻想郷でかった短刀。名は伴器。ノラガミ繋がりだよ。この二本を使う。
相手の姿は、蜘蛛と同じ八本の手足。ただし、全て人の腕の形をしている。胴体は丸い形。そこに大きい目玉が一つと、周りに小さい目玉がいくつかある。
「さて、いい練習台になってくれよっ!」
『人符「現世斬」』
前方へ踏み込み、相手を斬り抜けるスペル。基本的な技術を技まで昇華させたスペル。だからか、俺はまだまだ完全に習得できていない。それでも、知性のない妖を斬るのには十分な速さを持っていた。
ズバァ。
腕を一本切り落とす。
『グギャアアアアァァァァ!!!』
「うるせえよ。その口、黙らせてやる!」
『剣技「桜花閃々」』
先程よりスピードを求められるスペル。強化も使い、全身をバネにして連続で斬り裂く!
まだだ!もっと速く!
もっと高みへ!
「届けぇぇぇぇ!」
『人鬼「未来永劫斬」』!!
相手を切り上げ、空中に縫い止める。結界をバネのようにして速度をあげ、一気に斬り裂く。
そして最後の切り上げを決め、妖は絶命する。
「まだまだだな。遅すぎる。やっぱり俺はまだ劣化コピーでしかない」
全く。いつから俺はスピード狂になったんだか。ただ、
「全力で体を動かすって楽しいな!」
ゆかりんじゃできないからな。イメージ的に。
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うー。寒っ。さっきから段々と寒気が強くなってくる。なんなんだか。
「おっ、湖か。ここらでひとまず休憩でもしようか?いや、きっとチルノがいる。止めとこう」
というわけで引き返す。いや、チルノの縄張り?に入ったら話聞かなさそうだし。
「あなたは食べてもいい人間?」
・・・・・・今生二度目のルーミアキター!いやー!食われたくない!
「残念、食べちゃいけない人間さ。頼むから、金平糖あげるから食べないでくれ」
そう言って金平糖を取り出す。子供は甘いものが好きだと相場が決まっている。
「おー。なんだこれー!」
「中に入っているのは食べられるから」
そう言ってそそくさとその場を離れる。結局、俺は一番近い建物の紅魔館に逆戻りすることにした。あの辺、妖が少ないんだよね。あの辺で時間を潰せば、以前みたいに幻想郷から出られるかもしれない。まあ、明確な出方はわからないのだが。八雲紫が俺を元の世界に送ったとは考えにくいし。
で、きた道を戻ってきたのだが・・・・・・。
「くーかー」
・・・・・・脳天にナイフが刺さっているのに寝ている中国。
なんなんだ!?この生命力は一体・・・。
「くーかーむにゃむにゃ・・・咲夜さん・・・それ睡眠ナイフ・・・」
どんな夢をみてるんだよ!しかも立ちながら!ナイフ突き刺しながら!しかもナイフはMH風!?
「この門番、大丈夫かなぁ?」
心配です。さて、敷地に入っていると何を言われるかわかったもんじゃない。
門番眺めるのはこの程度にしておいて、俺は紅魔館からちょっと遠いところにいる弱小妖を相手に、自分を鍛えることにした。
『イイニオイ』
ギョロギョロギョロギョロギョロギョロギョロギョロ
「多いわボケェ!」
右から来る妖を雪器で切り払い、前から来るカマキリのような妖の鎌を結界ではじき、左手にもった伴器で喉笛を掻き切る。上から迫ってくる鳥のような妖を緋想の剣を投げつけることによって撃ち落とす。そして、後ろから大型の熊のような妖をスペルで迎え撃つ。
『断命剣「冥想斬」』
縦一直線に斬られ消え去る妖。こんなものか。俺は紅魔館の近くにきて、結界を張り、眠ることにした。まあ、帰れれば万々歳だ。
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肌寒さを感じて、俺は起きる。周りを確認すると、紅い煉瓦の壁が見えた。
「マジかよ。まだ幻想郷なのかよ」
どうすれば帰れるんだよ・・・・・・途方にくれてしまう。
グゥゥ~。
・・・・・・腹減ったな。そういえば、昨日から何も食べていない。集中しすぎたな。さて、俺はスキマから飯ごうとその他食材を取り出して親子丼を作る。その時、あいつはやって来た。
ダダダダダダ・・・
えっと~。何かすごい勢いでこっちに来る門番が見えるんですが・・・・・・。
「ご飯のにおい!」
残念美人!?
「ご飯ー!」
「ああああ俺の朝食ぅぅぅ!!」
きれいさっぱり食べられた。なんてこったい。
「俺の・・・朝食・・・まあ、二杯目があるんだけど」
日頃の癖で2つ作っていた。幽々子にかっぱらわれるんだよな。勿論、余ったときは全部食べる。
「ふうー。二日ぶりのご飯です」
えぇ!二日ぶり!?
「最近パンばっかりで・・・」
「食ってんのかい!」
「ん?あなたは誰ですか?」
「あんたが食った親子丼を作った人だよ!」
「ああ、そうでしたか。ご馳走さまです。美味しかったです」
「あ、どうも。じゃなくて!」
なんなんだよこの美鈴!
「あ、あれ?このご飯はあなたが作った・・・・・・。ごめんなさい!」
「は?」
「においに釣られて・・・ごめんなさい」
ああ、状況把握ができてなかったのね。
「まあ、いいですよ」
「そうですか。ありがとうございます。ところで、おかわりはいただけますか?」
「急に図々しくなった!?そして三杯目を作っている自分が憎い!」
クソッ。なんでこんなことだけ予測できてるんだよ!
「ありがとうございます!ああ、米が美味しい」
うまそうに食うやつだ。
「ご馳走さまでした」
「食べきるのが速い!?」
「ありがとうございました。何かお礼をします」
マジで!じゃあ、
「気の扱い方を教えてください!」
俺は今生初の講師を得た!
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「そういえば、名前を聞いてなかったな」
「ああ、そうでしたね。私の名前は紅美鈴と言います」
「じゃあ中国で」
「名前で呼んでください!」
ああ、やっぱり美鈴はいじられキャラだよ。
「あなたの名前は?」
「ああ、幽璃っていーー」
「偽名ですね」
一瞬でバレた!?
「なんで偽名ってわかったんですか?」
「勘です」
バカな!霊夢並の勘をもつ人物がいるだと!?
うーん。じゃあどんな偽名にしよう。よし!またもや安直だが、これでいいや!
「エン。これで勘弁してくれ」
「エンさんですね。わかりました。じゃあ、教える間の食は保証してくださいね?」
「偽名の代償!?」
因みに、名前の由来は
紫→縁→縁→エン
単純な連想ゲームさ。
「まずは、自然の中にある気を感じることから始めましょう」
それは結構簡単にできる。緋想の剣を使うようになってから、気質がわかるようになった。それのお陰で気を感じることは案外できる。
「ああ、できました」
「そうですか。では、次は自然の気と同化してください」
いきなりハードルが上がった。
「あの、まずは気の操作とかしないんですか?」
「え?気の操作は霊力とかと同じ感覚でできますよ?教えるのは、自分以外の気を感じることです。さあ!」
えええええ!?すっ飛んだ人ですなぁ!
とまあ、基礎なのか応用なのかわからん修行は続いた。
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それは突然やって来た。
「あなた、何故ここにいるのですか?」
十六夜咲夜さん。
「あ、咲夜さん。少し恩があったので返してたんです」
「恩?」
「ご飯を恵んでくれて」
ああ、美鈴が説明してくれている。有難い。
「そうですか。では、お客様ということですね。では、お茶でもどうですか?」
「え?いいんですか?いいのならいただきます」
咲夜の紅茶って美味いらしいじゃん?
「では、こちらにどうぞ」
そういうことで、俺は館の一室に来た。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
一口飲む。
ッッ!!!!
すげぇ。うん。すげぇ。これ以外ない。
「ところで、一つあなたにお願いがあるのですが」
ん~?お願い?今ちょっと眠いんだ・・・けど・・・。
「妹様の遊び相手になってくれませんか?」
その依頼に返事をすることができない。何故なら、既に意識がなかったのだから。
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目が覚めた。そして周りを確認すると、真っ暗だった。
「なんなんだか・・・」
多分、嵌められたんだろう。十中八九、ここは悪魔の妹、フランドール・スカーレットの部屋だ。そうじゃなかったらどれだけいいか。実際、部屋の奥の方に気配を感じる。多分美鈴はお客様は帰ったとかいっているんだろう。
「あなた、誰?」
・・・・・・あはははは。寝ていてくれれば勝機はあったのに。
「俺?俺はエンって言う。人間・・・・・・だと思う」
「そうなの?」
「で、君の名前は?聞いたところ、女の子みたいだけど」
「私?私はフランドール・スカーレット」
あははは。やべぇ。死亡フラグ満載だぜ。今の俺に『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を防ぐ手だてはないぞ?
「そっか。じゃあさ、フランドールさん。ここってどこ?」
「私の部屋だよ?」
「そうか。じゃあさ、この部屋の出口ってどこ?」
「なんでそんなこと教えなきゃいけないの?」
「なんでって、いつの間にかここに放り込まれたから、出ていこうと思って・・・」
「咲夜が遊び相手だって言ってたよ?」
・・・既に退路は断たれていた。
「ああ、そうか。で、何で遊ぶつもりなんだ?」
「えっとね!弾幕ごっこ!」
無邪気な死刑宣告だった。
「生憎と、俺はその遊びは得意じゃないんだけどね!」
雪器を右手に、緋想の剣を左手に。よかった。没収されてなかった。まあ、スキマにいれてたから没収も糞もないのだが。
「アハハハ!アソボウヨ!」
「気ぃ触れてんじゃん!」
幻想郷最初の弾幕ごっこの相手は、悪魔の妹でした。
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俺は地に仰向けに伏していた。
「あっはっはっは。フランドールさん強いねえ。死にそうだよ」
「アハハハ!凄い凄い!まだ壊れてない!」
いやいや、壊さないでよ。スペル一個も使ってないのにこの強さ。レーヴァテインとか使われたら死ぬんじゃね?
まあ、俺もスペル一個も使ってないけど。通じそうにない。
「それと、フランでいいよ?呼びにくいでしょ?」
「そうだな。じゃ、フランちゃん。休憩できたし、お手柔らかに頼むよ」
「うん!いくよー!」
無邪気な声と共にばら蒔かれる色とりどりの弾幕。
俺はその弾幕を時には横に転がり、時にはジャンプし、時には雪器ではじき、時には結界ではじく。
完全に防戦一方。さすがEXTRAボス。
ま、俺の目的は脱出なんだがな。
この部屋はそこそこの広さしかない。しかも、見通しが悪い。何てったって暗闇だからな。幸いにも、弾幕は若干光っているからわかる。だから、俺は扉を見つけて脱出することが目的だ。
いやだってさ、フランに勝てるわけがないだろう?今の俺はいいとこ下級妖怪相手に戦えるかどうかなんだからさ。多分、美鈴にも負ける。
「アハハハ!お兄さん逃げるのが上手だね!」
無邪気な言葉の中に何故か淑女のような言葉使いがある。一応お嬢様なわけか。
「でも、そろそろ本気出してよ。じゃないと、壊しちゃうよ?」
『禁忌「レーヴァテイン」』
出たよ。フランの代名詞のようなスペル。炎に包まれた歪な棒のようなもの。
あんなん喰らったら死ぬって。俺は緋想の剣に気質を凝縮する。範囲が狭くなるが、こんだけしないと防げそうにない。
「アハハハ!」
ガキィン!
「・・・重たっ・・・!」
あの小柄な体躯のどこにこんな力があるんだよ!やっぱり吸血『鬼』なんだな!
なんとか受け流す。
「凄いね!これを耐えた人間は初めてだよ!」
あははは。そんな勲章ほしくなかった。
「なら、これはどうかな!?」
『禁忌「クランベリートラップ」』
紫色の固定弾と俺を狙ってくる青い弾。いやはや、鬼畜にも程がありますよ。
ここが室内である時点で緋想の剣の大地を使ったスペルは使えない。あれ?詰んだ?
いやいやいや!考えろ!そうだ!基本に戻れ!
『結界「四重結界」』
一応四重結界ぐらいなら張れるんだよ!
ドドドドドドドドドド!!
量多い量多い!ああもう!自分の非力さに腹が立つ!
「アハハハ!アハハハハハハハ!」
「トリガーハッピーなんですか!?」
とってもハイなフランちゃん。
「あー。お兄さん攻撃しないから飽きちゃった」
「そうかい。じゃあ、帰るよ」
子供は飽き性。よかった、生き延びれた。
「キューっとして」
「ッッ!!」
俺は少し明るめの弾幕を放ち周囲を淡く照らす。そして、フランの右手狙って緋想の剣を投げる!
斬ッ!
狙い通り、フランの右手首を切り落とした。確かどこぞの小説では、吸血鬼の防御力は攻撃力に反比例するらしいからな。簡単に切り落とせた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ヤバイ。多分キレた。
「フフフフフ・・・アハハハ・・・アハハハハハハハ!!」
なっ!ついに狂ったか!?
「なんだ!お兄さん攻撃できるじゃない!」
「クソッ。攻撃しちまった。攻撃せずに逃げるつもりだったのに」
「ダメだよ!こんなに面白いんだから!もっと遊ぼうよ!」
やっぱり狂ってる!俺が投げたのは緋想の剣だ。『弱点』を突く剣だ!吸血鬼の弱点が練り込まれているのだから、相当痛いはずなのに、笑うなんて!?
「アハハハ!お兄さん!名前は何て言うの!?」
「ちゃんと覚えとけ!エンだ」
「エンお兄さん!壊れないでね!」
『QED「495年の波紋」』
フランを中心に波紋のように無数の弾幕が広がるスペル。狂うといきなり使うんですか?
「ああ。壊れるつもりは更々ねぇよ!」
『境符「緋色の四重結界」』
四重結界に緋想の剣の気質を纏わせた常に相手の攻撃に有利な結界。
それでも、ふざけた威力をもつ弾幕を防ぎきれるかはわからない。
「フフフ、やっぱり防ぐんだね。じゃあ、これはどう!?」
左手に持っていた『レーヴァテイン』を振るってきた。なんなんだよ。スペル二個同時って。いやまあ正式な弾幕ごっこじゃないんだけどさ。反則だよ。
壊される結界。その凶刃と狂弾が俺を襲う。ああ、死ぬのかな。
このとき、俺の意識は完全に途切れた。だが、なんの因果か、意識の対極にある『無意識』が、俺の体を動かした。
『境界「全てを二つに断つ線」』
全てを断ち、全てを遮る境界が引かれた。
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うぅ。俺はどうなった?最後、波紋と炎剣が襲ってきて、それから・・・・・・。
「・・て、お・・、・き・、起きて!」
「んあ!?」
誰かに叩き起こされた。俺、生きてるのか。よかったぁ~。
「あ~!やっと起きた!」
・・・フランさん?いやぁ、夢のシチュエーション?殺されかけた相手に起こされるって怖いんだぞ!
「大丈夫?痛いところない?」
ええええ~。殺されかけた相手に心配されるってのも・・・・・・まあ、美少女だからいいや。可愛いは正義。
「いや、痛いところはないさ。疲労が凄まじいだけだ。もっと休ませて」
「うん!」
パンパン。
あの~。なんで膝枕を勧めてくるの?そんな恐れ多いことはできないので、俺はその辺の壁を背もたれにして休む。
「むぅ~」
むくれないでよ。可愛いじゃん。思わずそっち(ロリコン)に目覚めそうだよ。
「あら、生き残ったのね」
「・・・・・・咲夜さん」
扉が開かれ入ってきたのは、メイド長だった。
「客にこの対応はないだろう?」
「言ったでしょう?妹様の遊び相手になってくださいと」
「遊び相手?殺されかけたよ。もう少し手加減を教えとけ」
全く。実は薬盛ったんじゃねぇだろうな?
「ほらね、咲夜。私の言った通り生き残ったでしょう?」
と、咲夜の後ろからカリスマのあるロリっ子がいた。
「はじめまして。私が紅魔館の主、レミリア・スカーレットよ」
来ました、おぜう様。
「スカーレット?フランさんの姉妹ですか?」
「ええ、姉よ」
まあ、知ってたけどさ。カリスマすげぇ。やっぱ『うー☆』がなければカリスマ性溢れる吸血鬼ですよ。背伸びしている感があるのは仕方ないが。
「なんか、俺が死なないことがわかっていたみたいな言い草ですね」
「ええ。あなたの運命を見たのよ。それで死なないとわかっていたから」
レミリアの『運命を操る程度の能力』はレミリアの周りにいる人が数奇な運命を辿るようになる能力だったり運命を見たりする能力だったっけ?もう少し有効活用したら?
「はあ、運命ですか」
「ええ。そうよ」
無い胸を張るレミリア。止めろ。悲しくなってくる。
にしても、今回の幻想郷は殺伐としてたな。
「そうですか。俺の名前はエンと言います。すみませんが、疲れているので休んでもいいですか?」
「あらそう。じゃあ、気が済むまで休みなさい」
了解をとってから、俺は目を瞑り眠る。そして、俺が眠った数分後、俺は光となって消えていった。
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「うぅ~ん」
暑苦しさを感じたため、俺は起きた。周りを確認って何度目だよ。まあ兎に角確認すると、幽々子と籃に抱きつかれていた。暑いわけだ。余りの暑さに寝巻きの着物がはだけてるじゃねえか。
「数奇な運命を辿るって言うのは眉唾物じゃなさそうね・・・・」
夢の中で精一杯体を動かしたお陰で、爽やかな朝だ。
さて、また一日を始めましょう。
俺は二人を起こすのだった。
後書き
the Embodiment of Scarlet Devil.
今回はちょっと変わった紅魔郷でした。
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