こんな私(俺)の物語
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第十七話 聖魔剣ですか緋想の剣ですか
前書き
この主人公も一誠みたいに、ただの人間が『境界を操る程度の能力』を持っているようなものなので、そこまで強いわけじゃないんです。元々はチート能力を持ったただの人間です。
天子の技を使うことになるとは・・・・・・。
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Said木場祐斗
「ーー禁手、『双覇の聖魔剣《ソード・オブ・ビトレイヤー》』。聖と魔を有する剣の力。その身で受け止めるといい」
僕はフリードに向かって駆け出した。
『騎士』の僕の特性はスピード!フリードが目で僕の動きを追うが、フェイントを何度も入れて彼の視界から脱する。
ギィィィン!それでも僕の一撃をフリードは受け止めた。本当、大した「はぐれ悪魔祓い《エクソシスト》」だよ。
しかし、彼のエクスカリバーを覆うオーラが僕の剣によってかき消えていく。
「ッ!本家本元の聖剣を凌駕すんのか、その駄剣が!?」
驚愕の声を出す彼。
「それが真のエクスカリバーならば、勝てなかっただろうね。ーーでも、そのエクスカリバーでは僕と、同士達の想いは絶てない!」
「チィ!だったらこっちはどうだ!」
彼が左手に持っている紅い剣・・・緋想の剣と言われていたが、聞いたことがない。しかし、最強の聖剣と言われるくらいだ。強いのだろう。・・・と、思ったのだが、
キィィィンッ!
驚くほどあっさりと弾き飛ばせた。拍子抜け過ぎる。
「何だよ!何なんだよ!最強どころかとんだポンコツじゃねぇか!クソ!」
悪態をつくフリードは、僕を押し返し、後方へ下がった。
「伸びろぉぉぉぉぉ!」
彼のエクスカリバーが意思を持ったようにうねり始め、宙を無軌道に激しく動きながらこちらへ迫ってきた!
ーー『擬態の聖剣《エクスカリバー・ミミック》』の能力!
そうか、四本分の能力を有しているんだね。さらに剣は先端から枝分かれし、神速で降り注いでくる。
こちらは『天閃の聖剣《エクスカリバー・ラピッドリィ》』か。速度が武器だったね、あれは。
四方八方、上からも下からも縦横無尽に鋭い突きを放ってくるが、僕は凡て防ぐ。
君の殺気はわかりやすい。殺気の来る方向がわかれば、防ぐのも容易なことだよ。
「なんでさ!なんで当たらねぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!無敵の聖剣様なんだろぉぉ!昔から最強伝説を語り継がれてきたじゃないのかよぉぉぉぉ!」
フリードが叫ぶ。その姿はには明らかに楽しみと共に焦りの影も見えた。
「なら!なら、こいつも追加でいってみようかねぇぇっぇ!」
聖剣の先端が不意に消える。
透過現象?これは『透明の聖剣《エクスカリバー・トランスペアレンシー》』の力だ。刀身を透明にさせる能力。
だけど、殺気の飛ばし方を変えなければ、いくら刀身が見えなくてもーー。
ギィン! ギン! ギン! ギィィィン!
透明な刀身と僕の剣が火花を散らす。僕は彼の攻撃をすべていなしていた。
「ーーッ!」
フリードは目元を引きつらせ、驚愕の表情になる。
「そうだ、そのままにしておけよ」
横殴りにゼノヴィアが介入してくる。左手に聖剣を持ち、右手を宙に広げた。
「ぺトロ、バイオレシス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」
何かの言霊を発し始めている。何をするつもりだ?
疑問を感じていた僕の視界で空間が歪む。歪みの中心にゼノヴィアは手を入れた。無造作に探り、
何かを掴むと次元の狭間から一気に引き出してくる。
ーーそこにあったのは一本の聖なるオーラを放つ剣。
「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。ーーデュランダル!」
デュランダル!?エクスカリバーに並ぶほど有名な伝説の聖剣だ。しかも斬れ味だけなら、最強だと聞いている。それを何故彼女が?
「デュランダルだと!」
「貴様、エクスカリバーの使い手ではなかったのか!」
バルパーばかりか、コカビエルも流石に驚きを隠しきれない様子だった。
「残念。私は元々聖剣デュランダルの使い手だ。エクスカリバーの使い手も兼任していたに過ぎない」
ゼノヴィアがデュランダルとエクスカリバーを構えた。聖剣の二刀流ーー。
「バカな!私の研究ではデュランダルを扱える領域まで達してはいないぞ!?」
「それはそうだろう。ヴァチカンでも人工的なデュランダル使いは創れていない」
「では、何故だ!」
「イリナたち現存する人工聖剣使いと違って私は数少ない天然物だ」
ゼノヴィアの言葉にバルパーは絶句していた。ゼノヴィアは僕たちと違い、元から聖剣に祝福された者だったようだ。
「デュランダルは想像を遥かに超える暴君でね。触れたものはなんでもかんでも斬り刻む。私の言うこともろくに聞かない。故に異空間へ閉じ込めておかないと危険極まりないのさ。使い手の私ですら手に余る剣だ。ーーさて、フリード・セルゼン。お前のお陰でエクスカリバーとデュランダルの頂上決戦ができる。私は今歓喜に打ち震えているぞ。一太刀目で死んでくれるなよ?精々エクスカリバーの力を存分に振るうことだ!」
あのオーラ、僕の聖魔剣以上の力を発揮している!
「そんなのアリですかぁぁぁぁ!?ここに来てチョー展開!クソッタレのクソビッチが!そんな設定いらねぇんだよぉぉぉぉ!」
フリードが叫び、殺気をゼノヴィアに向けた。目には見えないが、枝分かれした透明の剣を彼女に放ったのであろう。
ガキィィィィン!
たった一度の横凪ぎで、枝分かれした聖剣エクスカリバーが砕かれて姿を現した。
デュランダルからの剣風の余波で、校庭の地面が大きく抉れる。
「ーー所詮は折れた聖剣か。このデュランダルの相手にもならない」
ゼノヴィアはつまらなさそうに嘆息する。
凄まじい威力だ。『破壊の聖剣《エクスカリバー・デストラクション》』など比べ物にならない。
「マジかよマジかよマジですかよ!伝説のエクスカリバーちゃんが木っ端微塵の四散霧散かよっ!酷い!これは酷すぎる!かぁーっ!折れたものを再利用しようなんて思うのがいけなかったのでしょうか?人間の浅はかさ、教会のオロカサ、いろんなものを垣間見て俺様は成長していきたい!」
最早正常な思考さえ残っていない。今だ!これで決める!
僕は聖魔剣を、同士の想いが詰まった剣をフリードに振り抜く。フリードは聖剣で受け止めようとする。
バキィィィン
聖剣エクスカリバーの砕ける音。その勢いのまま、僕はフリードを斬った。
フリードは肩から斜めに斬り裂かれ、倒れ付した。
「見たかい、皆。僕は、僕たちはエクスカリバーを超えたよ」
Saidout
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フリードを倒したわね。でも、それじゃあダメだわ。
私は、倒れ付しているフリードに近づきながら、雪器を取り出す。そして、
フリードの心臓に突き刺し、息の根を止める。
『!!??』
何を驚いているのかしら?根を残したまま雑草を刈るなんて、そんなことするわけないじゃない。ここで殺しておくのが吉よ。
「せ、聖魔剣だと・・・?あり得ない・・・。反発しあう二つの要素が混じり合うなんてことがあるはずがない!」
「世の中にあり得ないことはないわ。それより、あなたの番よ」
「何を・・・!」
ザシュ
バルパー・ガリレイの首を斬り飛ばす。これは私が単純に気に入らないから。
木場君の役目を奪ったようなものだけれど、どうせコカビエルに先を越されるのだから、責めて自分の手で殺す。
「ふん、そこそこ楽しめたな。ーーが、やはり余興でしかない」
「あら、いつまで余裕でいられるかしら?」
ここでコカビエルも殺す。
「別に俺はバルパーなぞいてもいなくても変わらん。最初から全て一人でやれる」
あらそう。私はスキマを開き落ちている緋想の剣を拾っておく。妖怪の私じゃ使えないけど、使おうと思えば二つ使い方がある。一つは種族を変える。本来、緋想の剣は天人にしか使えない。なら、天人になればいい。でも、基本スペックが妖怪に劣る。だから、二つ目の手段をとる。
「ハハハハ!カァーハッハッハッハハハハハハッ!」
耳障りな哄笑ね。牽制程度に一個だけ維持しておいた『直死の魔眼』の即死光線を放つ。
バチッ!
当たったには当たったが、死の概念は効果を発揮しない。
やっぱりね。高い霊力や魔力で抵抗すれば対抗できる。それでも全く効いていないわけではない。少しは寿命を削れたとは思う。
本当に、霊力や魔力は偉大ね。使い方次第でなんでもできる。ある意味一番万能な力。単純に魔力量が多いというのは、厄介ね。
「・・・・・・フフフ・・・フハハハハ・・・面白い。実に面白いぞ!まさか俺に傷をつけるとはなぁ!」
実に面白そうに高笑いしながら、光の槍を産み出すコカビエル。
「いいだろう!相手をしてやる!精々俺を楽しませろ!下級悪魔!」
そう言って、火蓋は切って落とされた。
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まず、この戦いにおいて忘れてはいけないことがある。最低でも、十分以内に倒さなければ、この町は崩壊する。
光の槍が投げられる。それをスキマで返す。しかし、絶えず纏っているであろう魔力の壁に阻まれる。相手を利用したカウンターは決定打にはならない。
「フム、なかなかいいではないか。まさか、この俺の放った攻撃をすべて返してくるとは」
「あらそう。なら、私から攻めようかしら」
『幻巣「飛光虫ネスト」』
自分の後ろにスキマをいくつか開き、そこから高速の妖力弾を無数に放つ。
「ふん、数が多いだけ・・・!?」
ガキィン!
スキマ移動で四角から斬りつける。不意打ちだったが、凄まじい反応速度で弾かれた。即座にもう片方の手でコカビエルを掴む。概念を組み込んだ攻撃が通じないなら、直接相手の境界を操る!
「ふん!」
コカビエルの十の翼が大きく羽ばたく。その衝撃で、手を話してしまう。
握力には自信があったのだけれど・・・。
「・・・・・・貴様の神器・・・空間移動系ではないな?」
「応える理由はないわ」
三秒。これだけ触れれば殺せる。
コカビエルが光の槍を十作り出す。その一つ一つが、柱のように大きい。
「耐えてみせろよ!?こんなところで終わってくれるな!」
一本ずつ放たれる光の柱。恐らく、私のスキマ移動に対応できるように一斉に放たなかったのね。
でも、そもそも私に当たらない。全てスキマで異空間に飛ばせる。スキマ送りよ。
「随分と厄介な能力だな」
「ええ、役に立つ能力よ」
「だが、この数をどう相手にする?」
今度は無数の光の槍を作り出す。一個一個のサイズは小さいが、数が多い。
でもね、この程度の物量なら、何度も体験したわ。幽々子・・・と言うより死霊幽々子の物量に比べれば全然弱いのよ!
『境符「千二十四重結界」』
何度も何度も貫かんと迫る槍を全て防ぐ。
「スキマ意外に防御が無いとは言っていないわ」
「ククククク。面白くなってきたな。そうだ!戦いはこうでないとな!」
楽しそうに、いや、実際楽しんでいるのだろう。
「私たちを忘れてもらってはーー」
「困るね!」
な!?木場とゼノヴィアがコカビエルに斬りかかった!
何をしているの!?
「馬鹿!下がりなさい!」
「フン!デュランダルか!一度折れたエクスカリバーとは違い、こちらの輝きは本物か。だが、邪魔をするなぁ!」
右手からの衝撃波がゼノヴィアを襲う。
すぐにゼノヴィアの前に二重結界を張る。しかし、さらにコカビエルが蹴りを加えてきた。
そのせいで結界は壊れ、ゼノヴィアは吹き飛ばされる。
「がっ!」
苦悶の表情を浮かべるゼノヴィア。
「いいところなのだ!邪魔をするな!娘!お前ではまだ足りん!聖剣も使い手次第だ!お前ではまだまだデュランダルは使いこなせんよ!」
飛ばされながらも空中で体勢を立て直すゼノヴィア。
そして、木場と一緒にコカビエルに斬りかかる。
何故なの!?あなたたちじゃ相手にもならないのよ!
「紫さん。僕はもう、誰も失いたくないんだ。だから!僕の聖魔剣で!コカビエル!あなたを滅ぼす!」
「私は八雲紫、あなたに借りがあるんだ。それを返すのは今しかない!」
「ほう!聖剣と聖魔剣の同時攻撃か!なかなかだ!いいぞ!来いッッ!死力を尽くせ!それぐらいやらなければ俺は倒せんぞ!」
コカビエルは光の剣を生み出し二人の剣を捌く。それなら!
後ろに回り込み雪器を横凪ぎに振るう。
「甘い!俺の翼は刃となる!」
ギィン!
斬りつけた翼から金属音がなる。硬い。けど!
左手をスキマに突っ込み中から小型の短刀を取り出す。その短刀に死の概念を組み込み斬りつける!
「ぐぅ!?」
やはり死の概念は効果を発揮しない。それでも、体勢が崩れた!
すると、後方からかなりの魔力を感じた。
「皆、離れなさい!」
『Transfer!!』
最大まで倍加したリアスだ。
ちょっと!私たちごと消し飛ばすつもり!?
「フハハハハ!やるではないか!このタイミングで放ってくるとは!さあこい!迎え撃ってくれるわ!」
「消し飛べぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!」
リアスの手から滅びの塊が打ち出される!
強大な一撃を迎え撃とうとするコカビエル。
「面白い。面白いぞ!魔王の妹!その眷属ども!」
両手に光を集め、リアスの最大の一撃を受け止める。
「ぬぅぅぅううううううううんッッ!」
あの馬鹿『王』!味方も近づけないような力を放って!
『夢想天征』
コカビエルが防御に専念している今が勝機!概念から外れ、滅びの影響を受けないようにして、力がせめぎ合う中心に飛び込む!
雪器に妖力を込め、見よう見まねのスペル!
『断命剣「迷津慈航斬」』!!
斬ッ!
「がぁぁぁぁぁ!?!?」
コカビエルの右腕、そして右の五枚の翼を斬り裂いた。
防ぐ腕を失ったコカビエルは滅びの魔力に飲み込まれていった。
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「ごほっ、ガハッ。ククククク。素晴らしい。よく、俺の翼を斬り裂いたな」
「なんてしぶとい奴だ・・・!」
誰かが言った。本当にしぶといわね!それでも、ここまで弱らせれば、決めれるでしょう。
正直、体を斬って止めをさせる気がしなかった。だから腕を斬って滅びの魔力に巻き込ませたのだが・・・。
それも耐えるなんて。伊達に聖書に乗っているわけではないのね。
「しかし、使えるべき主を亡くしてまでよく戦うな。お前たち神の信者と悪魔は」
「・・・・・・どういうこと?」
リアスが怪訝そうな口調で聞く。
「フハハ、フハハハハハハハハハハハハ!そうだったな!そうだった!お前たち下々まであれの真相は語られていなかったな!ならついでだ。教えてやるよ。先の三つ巴の戦争で四大魔王だけじゃなく、神も死んだのさ」
知っているわ。一応転生したから。
他の皆は信じられない様子だ。
さて、私は止めの準備でもしようかしら。
「知らなくて当然だ。神が死んだなどと誰が言える?人間は神がいなくては心の均衡と定められた法も機能しない不完全な者の集まりだぞ?我ら堕天使、悪魔さえも下々にそれらを教えるわけにはいかなかった。どこから神が死んだと漏れるかわかったものじゃないからな。三大勢力でもこの真相を知っているのはトップと一部の者たちだけだ」
とある一つの境界を操る。そうね。これを操っている間は他の境界は殆ど機能しないわね。しかも、持続時間は五分あればいい方。下手をすれば一分もない。それに、初めてだからかなり難航している。
「戦後残されたのは、神を失った天使、魔王全員と上級悪魔の大半を失った悪魔、幹部以外の殆どを失った堕天使。最早、疲弊状態どころではなかった。どこの勢力も人間に頼らねば種の存続ができないほどに落ちぶれたのだ。特に天使と堕天使は人間と交わらねば種を残せない。堕天使は天使から堕ちれば数が増えるが、純粋な天使は神を失った今では増えることなどできない。悪魔も純血種が希少だろう?」
懇切丁寧に説明するコカビエル。その本心は心を折ろうとしている。コカビエルもさほど余裕はないのだ。
「・・・ウソだ。・・・ウソだ」
力が抜け項垂れるゼノヴィア。
神に使えることを生き甲斐にしてきた彼女にとって、この事実は自身の使命の否定。崩れ落ちるのも仕方がない。
「・・・主がいないのですか?主は・・・死んでいる?では、私たちに与えられる愛は・・・」
もう一人、悪魔になってでも神を信じていたアーシア。
「そうだ。神の守護、愛がなくて当然なんだよ。神は既にいないのだからな」
アーシアもその場に崩れ落ちる。信仰者に対して神の不在の事実。心を折るには十分だ。
「俺は戦争をーー」
「始めさせないわよ」
そんなことさせるわけがないでしょう?緋想の剣を右手にもち、雪器をしまう。そして、境界を操る。
『反則「可能と不可能の境界」』
瞬間、緋想の剣から紅い気質が吹き出た。
「な、なんだ、それは!」
生憎と説明するほど余力はないのよ。ただ一つ、この一撃はあなたを倒す一撃よ。
残りの妖力殆どを注ぎ込んで単純な砲撃を放つ。
『全人類の緋想天』
紅い気質を纏った砲撃がコカビエルを消し飛ばした。
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「や、やった・・・・・・」
『やったー!!』
ふう。終わったわね。やっぱりまだまだ弱いな、俺。
でもさぁ。なんで白龍皇来なかったんだろう?遅すぎませんか?
ただ、アーシアとゼノヴィアがかなり精神的に来ている。聖書に記された神は死んだらしいけど、八百万の神は生きていそうだな。ケロちゃんとか夜トとか。
まあ、なんにせよ生きていられてよかったよ。ああああ疲れた~。クッソー。妖怪になっても大妖怪じゃないからまだ弱いとは。盲点だったよ。一回妖怪賢者の本気を見てみたい。
「ハア、疲れたわね」
これは、要特訓だな。不甲斐ない。
と、思っていたとき、そいつはやって来た。おいおい。今の俺に戦う力はないぞ。
白い光が一直線に地面に降下してくる。地面すれすれで止まり、その場で浮かんだ。
「白い龍《バニシング・ドラゴン》」
思わず声に出してしまった。
「コカビエルとフリードを回収しに来たのだが・・・・・・片方は死に、片方は消え去ったとはな」
普通に話しているのに、何故か圧倒される。力の差ってやつか。
「だとすると、俺にやることはない。・・・コカビエルを倒した奴に興味はあるがな」
「あら、もう少し早く来ていれば見れたかもしれないわね」
「俺もそうしたかったんだがね。謎の線に阻まれたのさ」
そう言って、飛び立ち立ち去ろうとするバニシング・ドラゴン。
・・・・・・ヴァーリが来なかったのって俺のせいかよ!
『無視か、白いの』
この場に初めて、いや、俺は一回聞いたことがある声が響いた。
ドライグ。
『起きていか、赤いの』
アルビオン。
『折角出会ったのにこの状況ではな』
『いいさ。いずれ戦う運命だ。こういうこともある』
『しかし白いの。以前のような敵意が伝わって来ないが?』
『赤いの、そちらも敵意が段違いに低いじゃないか』
『お互い、戦い以外の興味対象があるということか』
『そういうことだ。こちらは暫く独自に楽しませてもらうよ。たまには悪くないだろう?また会おう、ドライグ』
『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』
そのまま、白い龍は去っていた。
「あれは・・・なんだったんですか?」
思わず呆然としていた一誠が問う。
「そうね。あなたの好敵手、いえ、宿敵かしら。あとはドライグにでも聞きなさい。私は帰るわ」
俺は残りの妖力でスキマを開き、家に帰宅した。
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コカビエルの事件から数日後。俺は部室にいるゼノヴィアを見て驚いている一誠を見た。
「やあ、赤龍帝、八雲紫」
「え、なっ、なんでお前がここに!?」
「悪魔にでもなったのかしら?」
その質問に答えるように、ゼノヴィアは背中から悪魔の翼を出した。
「ああ、神がいないと知ったのでね、破れかぶれで悪魔に転生した。リアス・グレモリーから『騎士』の駒をいただいた。デュランダルが凄いだけで私はそこまですごくなかったようだから、一つの消費ですんだみたいだぞ」
いやいや、天然物の聖剣使いって結構貴重だと思うけど!?
「で、この学園にも編入させてもらった。今日から高校二年の同級生でオカルト研究部所属だそうだ。よろしくね、イッセーくん♪紫ちゃん♪」
「不思議ね。真顔で言われるとおぞましいわ」
「イリナの真似をしたのだが、上手くいかないものだな」
「あなたはあなたのままでいいのよ」
「部長!貴重な駒を使っちゃっていいんですか!?」
「まあ、デュランダル使いが眷属にいるのは頼もしいわ。これで祐斗とともに剣士の二翼、紫もいれば三翼かしら?語呂が悪いわね」
いやいや、それなら『騎士』の二翼って言えばいいじゃんか。わざわざ俺を入れんでもいいやん。
「そういえば、紫さん。結局緋想の剣ってなんだったんですか?フリードが持ったら何の役にもたってなかったのに、紫さんが持つと紅いオーラが出るし。あれってどんな剣なんですか?」
「・・・・・・天気を操る剣・・・かしら?」
「なんで疑問系なんですか!?」
「ついこの間初めて使ったのよ?わかるわけないじゃない」
本当はわかってるけど。気質を見極める剣です。
「そうなんですか・・・。ところでイリナは?」
「イリナなら、私のエクスカリバーを合わせた五本とバルパーとフリードの遺体をもって本部に帰ったよ。統合したエクスカリバーを破壊したせいか、芯となっている『欠片』の状態で回収された。まあ、奪還の任務には成功したわけだよ。運よく神の不在を知らなかったお陰で、異端にもならず、信仰も揺るがない。私以上に信仰が深かったからね、イリナは」
とりあえず、イリナは帰ったと。
「緋想の剣も回収するかもしれなかったのだが、使える人材が現れた以上、その者に譲渡するらしい。よかったな、八雲紫」
おおう、以外と心の広い方々。
「ただし、研究させてくれとか」
「イヤよ!?」
思わず反射的に応えてしまった!
「冗談だ」
・・・えー。ゼノヴィア、冗談言えたの?なんか悔しい。
「・・・・・・話していいかしら?」
あ、リアスさん。
「今回のことは堕天使の総督アザゼルから、神側と悪魔側に真相が伝わってきたわ。エクスカリバー強奪はコカビエルの単独行為。だったそうよ」
「まあ、他の幹部が関わってない分よかったわ」
流石に手に負えない。本来は地獄の最下層《コキュートス》で永久冷凍らしいが、俺が消しとばしたしな。
「まあ、今回はよくやったわ、紫。お尻千叩きはなしにしてあげるわ」
なんか得した。先伸ばしになってたが、解消された。
「近いうちに、天使側の代表、悪魔側の代表、アザゼルが会談を開くらしいわ。なんでも、アザゼルから話したいことがアルらしいわ。その時にコカビエルのことを謝罪するかもしれないなんて言われてるけど、あのアザゼルが謝るかしら。私たちもその場に招待されているわ。事件に関わってしまったから、そこで今回のことを報告しなくてはいけなくなったの」
「マジッスか!?」
「まあ、想定はしていたわ。呼ばれるだろうと思っていたわよ」
多分、他の部員はともかく、俺は絶対に呼ばれる。能力のこともあるからな。
「なあ、ゼノヴィア・・・・・・あの白い奴、『白い龍《バニシング・ドラゴン》』は堕天使側なのか?」
「そうだ、アザゼルは『神滅具』を持つ神器所有者を集めている。何を考えているかはわからないが、ろくでもないことをしようとしているのは確かだね。『白い龍』はそのなかでもトップクラスの使い手。『神の子を見張る者《グリゴリ》』の幹部を含めた強者のなかでも四番目か五番目に強いときく。あの場で見た鎧姿、既に完全な禁手状態。現時点での君より断然強い。・・・それとーー」
あれで四番目。改めて聞くと桁違いだな。あの技を創ってみるか。緋想の剣もあるし。
そして、アーシアの元に向かうゼノヴィア。
「すまなかった、アーシア・アルジェント。主がいないなら救いも愛もなかったのだから」
謝るのはいいのだけれど、こんなときぐらいポーカーフェイスを止めなさい。
「ゼノヴィアさん。私は今の生活に満足しています。悪魔ですけど、大切な方々に会えました。私は、この出会いと今の環境だけで本当に幸せなんです。だから、顔を上げて下さい。私は気にしていませんから」
「そうか・・・ありがとう」
やっぱりアーシアはいい子ですなぁ!泣きそうですよ。表にはださんが。
「さて、和解したところで全員が再び揃ったのだから、部活動も再開よ!」
また、誰一人欠けていない日常が始まる。さて、俺も頑張るか!
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後日の休日。
カラオケの一室。
一人で熱唱する金髪の男性がいたとかいなかったとか。
後書き
これにて三巻、エクスカリバーは終了です。四巻からは、オリジナリティを増やしていきます。他のキャラが薄くなりがちになるかもしれませんが、これからもよろしくお願いします!
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