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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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DAO:ジ・アリス・レプリカ~神々の饗宴~
  第十七話

 
前書き
 今回から《冥刀》獲得ストーリーです。 

 
 真っ暗な洞窟に、ぴちゃん、ぴちゃん、と、水の垂れる音がする。光源となっているのは、ところどころに配置された、発光する水晶だ。どことなくアインクラッドの迷宮区を彷彿とさせる洞窟だったが、ともに歩いているのはかつての《聖剣騎士団》の仲間たちではない。

 カズを先頭に、リーリュウ、ハクガ、コクト。ハクアはついてこなかった。《ジ・アリス・レプリカ》の中で出会った仲間たちと共に、セモンは今、この世界最強級のアイテムを獲得すべく、ダンジョンの先へと進んでいる。

 《ジ・アリス・レプリカ》のフィールドの名前は、《六門世界》と呼ばれている。その果てには、魔力を発する光の門がある、という伝承から、そのように呼ばれるようになったらしい。しかし、その《六門》に辿り着いたものは誰一人としていないという。なぜなら、《六門世界》の中心部分を、巨大な山脈がぐるりと囲ってしまっているからだ。

 山脈の中でも特に高い山々が、《方位の山》と呼ばれているらしい。方位の山からは《冥刀》、それも《伝承級》と呼ばれる、最強クラスの《冥刀》が発見されているらしい。
 
 《東の山》からは魂を引き裂く真紅の刀《東血桜(あずまちざくら)》が。

 《西の山》からは肉体を切り裂く白き刀《西肌雪(にしきはだゆき)》が。

 《北の山》からは神をも殺す大剣《断裁(たちはぎ)》が。
 
 《南の山》からは永劫不滅の黄金の剣《天輪(てんりん)》が。

 《北東の山》からは嵐を起こす槍《青乱(せいらん)》が。

 《南東の山》からは神の鋼をも絶つ刀《紫雲刃(むらくもやいば)》が。

 《北西の山》からは神木も切り裂く大斧《大地讃頌(だいちさんしょう)》が。

 《南西の山》からはいかな神罰にも耐える剣《常盤刃(ときわのやいば)》が。

 それを教えてくれたのは、今、自分たちを先導して歩く一人の少年だ。
 
 零、というなのその少年の美しい白髪に代表される容姿は、非常に目を引く。しかし、セモンが気にしているのはそのまるで少女の様な容姿ではなく、その頭部に生えた《角》だ。

 透き通っているのである。まるで水晶か何かの様に。

「……コクトさん」

 セモンは前を歩くコクトに話しかける。目だけで彼が「何だ」と言っているのが分かるので、質問を続ける。

「あの……零さんに生えてる角……今まで見た鬼族と違いますよね……」

 現在セモン達が歩いているのは、《西の山》近辺の《鬼族の村》周辺にある洞窟だ。立ち寄った村などで出迎えてくれたのは皆鬼族。彼らは《西の鬼》と呼ばれる種族で、《東の山》付近に生息する《東の鬼》と呼ばれる種族とは友好関係であり対立関係でもあるという。

 そんな彼らに優しく見送られつつ辿り着いたこの洞窟で、「案内をする」と買って出たのがあの零という少年だったのだ。

 だが、彼の角はほかの鬼族とは違う、透き通った色をしている。セモンには、それが何か特別なことのように思えて仕方がないのだ。

 そしてその直感は、コクトによって証明される。

「そうだろうな。彼は《晶鬼(しょうき)》だ」
「《晶鬼》?」
「そうだ。すべての神器級アイテムを特定条件下で無制限に使用できる《六門神》もしくは《ローレライ》の種族に次ぐ、人間種族最強の存在……《冥刀》を使うために生まれた、《冥刀使い》の一族だ」

 
 ***
 

「《冥刀》、ですか……それも、《ギア》ではなく、ドロップアイテムとしてのそれが欲しいのですね?」

 ハクアの家で、彼女は「《冥刀》を探すのを手伝ってほしい」というカズに向かって問いかけた。カズは大きく首肯する。

「なるほど……では、発見されていない《冥刀》を探す必要がありますね。現在発見されている23本、そのうち《ギア》として《冥刀》の形をとっているのは3本です。残りは20本。その中《伝承級》の物は9本……」
「《伝承級》?」

 カズもその言葉には聞き覚えがなかったようで、ハクアに聞き返す。すると彼女は、

「《冥刀》の中でも特に強力だと言われる武器たちのことです。《冥刀》は《神器級》と呼ばれるアイテムの中でも、特に武器の形をとっている物を指します。その中で最強と言われるという事は、実質武器としては世界最高の装備であるという事。こころしなさい。《彼ら》の力に飲み込まれないように」

 カズとリーリュウがごくり、と唾を飲む。セモンはリーリュウが意外とこういった『最強アイテム獲得イベント』好きであるという事を知って、「秋也みたいなやつだな」という感想を抱いた。奴も奴で、興味なさそうな顔してレアアイテム狙ってる節があったからな……とか考えていると、ハクアの話が再開された。

「《神器級》アイテムの中には、最高レベルに達した《ギア》も含まれます。現存する《ギア》の中で最も強いとされるのは、光の六王神エ・リリューラの《ギア》、《大天使アンダルギア=メタトロン》。一度、一瞬にして京都府規模の大都市を消し炭にするのを見たことがあります。いいですか?京都《市》ではなく、京都《府》です。」
「だ、大都市を消し炭に……」

 思わず絶句するセモン。京都規模の大都市、となると、少なくとも東京よりは面積が広い計算になる。それを一瞬で消し飛ばすなどと、どれだけチート性能だ、と愚痴りたくなってしまう。

「それだけではありませんよ。《六王神》のギアは全てがもはや神威の域。並みの六門神では前に立つことすらできません」
「……《六王神》とはできるだけ対立しないようにした方がいいですね……」

 ハクガも神妙な面持ちで呟く。

「《ギア》以外の神器級では、世界の中心である《白亜宮》に存在すると言われる宝具、《アッスール・ヤラ・アッスール》があげられます」
「……《原初のときを見た者》か?あれは《神器級》と言えるのだろうか……」

 コクトの疑問形に、なんでさ、とカズが問う。

「……この世界の中心である《白亜宮》なる建造物には、真の神が住まうと言われています。そこには、世界が誕生するのを見届けたと言われる神器、《原初のときを見た者(アッスール・ヤラ・アッスール)》が封印されていると聞きます。彼の神器は、世界の再設定を可能とする……という噂を聞いたことがあります。残念ながら私は《白亜宮》に赴いたことはないので、それをじかに見たことはありませんが……」
「俺は見たことがあるぞ」

 コクトが告げる。

「一度だけ、ウォルギルの馬鹿とラーヴェイと共に、《白亜宮》に行ったことがある。その時、偶然あれを見たことがあるのだが……とても、《神器》とは言えない外見だった」
「……どんな、外見だったんです?」

 ハクアが、興味深げに聞く。いつの間にやらメガネなんか取り出しちゃっている。

「―――――人の顔だ」

 ぴしっ、とメガネにひびが入る。

「黄金に光り輝く人の顔。それが、表示される緑色の半透明の光を眺めながら、なにかを小声でぶつぶつと呟くんだ……不気味、以外の言葉が思いつかない。あそこに神の神々しさなんてない」

 それに……とコクトは続ける。

「《白亜宮》の中は、何かがおかしい。あんなにでかいのに、だれも住んでいる風には見えないんだ。なのに、誰かの視線を感じる………」
「《白亜宮》……そこは、どんな外見だったんです?」

 その名前に、どこかちくちくと反応する物を感じたセモンは、思わずコクトに問うていた。

「その名の通り、純白の城だ。大理石とも、プラスチックとも取れない素材で作られた、な……」

 その外見に―――――セモンは、心当たりがあった。あれは、この世界に初めて来た日の夜。夢の中で、小波の後ろに屹立していた巨大な城。あれが、恐らく《白亜宮》――――となると、そこに世界の秘密が、この世界の真実がある可能性はかなり大きい。

 なら……行かない手はない。

「なあ、皆……もし、首尾よく《冥刀》を手に入れられたら……俺だけでもいい。《白亜宮》に行かせてくれないか」


 ***


 小波が口にした、世界の秘密。それを解明するために、セモンは此処にいる。コクトの話を聞く限り、《白亜宮》は危険な場所だ。《真の神》がいるというのだから、何が待っているのかもわからない。

 そのための《冥刀》だ。彼らに対抗するためには、神威にも匹敵すると言われる《神器》を手にする必要がある。

「……そろそろ、《玄室》に着く」

 先頭を歩く零が言う。

 さぁ、いよいよ《冥刀》とご対面だ。 
 

 
後書き
 お久しぶりです、Askaで~す。

刹「いつにもまして軽いノリですね作者」

 いーじゃん別に。ちょっとくらいテンション高くても。そんなわけで次回は《冥刀》とご対面!お楽しみに。

 ちなみにホワイトデー特別編(?)も公開しました。前回のバレンタイン編の下の所にあるので遡ってみてください。

刹「珍しく何もない終わりでしたね……」 
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