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こんなチートでもありですかい?そうですかい。

作者:わいわい
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第41話。変人と七夜の技。

月の光が届かぬ分厚い雲の下。街灯の光だけが照らす夜。一つの死合が始まろうとしていた。

「さあ―――殺し合おう。」
「アホぬかせ」

七夜が少しずつ近づく。晋吾は構えを取る。

その構えは重心を低くとり、ズッシリとした重量感を抱かせる。

七夜が消える。

否、人間的ではない速度でしゃがみ、地を滑るように疾走する。

七夜の技が獣のようだと例えられる所はここにある。

七夜を支えているのは、蜘蛛に例えられる壁や天井を使った3次元戦闘よりもむしろ、立つ、しゃがむといった基本動作。

七夜は右手に持ったナイフを、左斜め下から首筋めがけて切り上げる。

地面スレスレからの浮き上がるような斬撃。常人ならどこから来たのか分からないまま終わる。

晋吾は左足を開き、円を描くように右足を後ろに廻し、ナイフの軌跡を先に辿るように躱す。

廻った先には、目の前に置いてあるかのようにある腕。

晋吾は七夜の手首を右手で掴み、左手で肘を抑え、逆関節をとりにいく。

さらに止めとばかりに左足で足払い。地面に倒れたら七夜の右腕を壊す。

七夜は肘の逆関節を取られているにも関わらず、腕と体が平行になるように跳躍。

晋吾は七夜の肘が軋むのを掌で感じる。

七夜はそんなことはお構いなしに蹴りを放つ。

鋭い蹴り。流石に避けなければいかない。晋吾は腕を離す。

七夜は、『攻撃は最大の防御』と言う言葉を実践してみせた。

「ちぃ、やはりなれへんわ」

体のキレが悪い。と晋吾は心の中で悪態をつく。

成長期真っ只中であり、今だ成長し続ける晋吾は、毎日感じる若干の誤差に戸惑う。

「いやいや、流石だね。生身なんだろ?それで」

賞賛すると共にニヤリと顔を歪ませる七夜。

「カァアアアアア」

晋吾は身体的な誤差からの苛立ちを払うかのように、腹の底から息吹を上げる。

今度は晋吾が仕掛ける。

滑るように摺り足。ザッ、と言う地面を擦る音と同時に晋吾は、右足で上段蹴りを放つ。

「マトモじゃないね。お互いさ・・・・」

七夜はまさに鬼の蹴り、と称せるほどの蹴りをしゃがみ、避ける。

確かにマトモじゃない。

七夜の頭上を通り越した蹴りが、クンッ!っと軌道を変える。

晋吾は腰を廻し、上段蹴りから踵落としに変え、七夜の脳天を狙う。

七夜は後方に飛び下がり躱し、半身を前に出し――――

「斬刑に処す……!」

――――閃鞘・八点衝――――

斬撃の乱れ打ち。晋吾は摺り足で最小の円の動きで躱しながら前進する。

七夜は元々混血に対する暗殺の一族。

どんなに優れていようとも、人間が魔や混血にかなうわけがなく、生粋の魔とは相性が悪い。

故に単純戦闘では分が悪い。奇襲こそが七夜の極意。

八点衝と言う技は所詮威嚇でしか過ぎない。そう、威嚇でしか過ぎない。

スッ・・っと斬撃が止んだ瞬間七夜が消える。

「ッ!?・・グッ!」

ナイフの切先から向けられていた、溢れんばかりの殺気が突然消え、戸惑いを見せた晋吾は、首に衝撃を感じ驚愕を抱く。

七夜はニヤリと再び表情を歪ませ。全体重をかけ、地面に叩きつけようとする。

咄嗟の判断で晋吾は自ら飛ぶ。

そして、足をめいいっぱい伸ばし、オーバーヘッドキックをするように七夜の後頭部を蹴りつけた。

バランスを崩した七夜は飛び退く。

晋吾は地面に叩きつけられたが、すぐさま起き上がる。

「・・・・流石七夜。と言ったところかのぉ。」

目で追えない訳ではない。完璧なる気の抜き、そして単純だが洗礼された上下の動きにより、見失う。

流石、七夜。流石、暗殺者。

剣道場のおっちゃんが言っていた『相手を認める事から武が始まる』って言うのはこのことかね。

今までは相手を見れなかった。

剣道場では如何に手加減するか。死徒との戦いでは如何に力を振るうか。

相手を考えて居なかった。いや、相手は居なかったのだ。ただ力を振るうだけですんだ。

相手を見る。七夜がニヤリと顔を歪ませる。

頭の中にスッっと風が吹いた気がした。晋吾は柔らかな笑みを浮かべていた。









「うがー。今日は月が雲で隠れてるわ。」

カラカラと何かを引きずり歩く少年が一人。空を見上げて呟いた。

やってられんね全く。

フラフラと少年は歩く。

「なんだこのガキ?」
「うぉ!?釘バットだぜ!」
「うわぁマジで!?」

品の悪いガキが数人。品性のカケラもない。

とりあえず潰そうと思った。

ブゥウン!ボグゥシャアア!ブゥウン!ボグゥシャアア!ブゥウン!ボグゥシャアア!

「・・・・」

人はなんて悲しい生き物なんだろうね。

生の感情を剥き出しに、欲望のままに怠惰な日常を生きている。このような人類に、可能性はないに等しい。

『リセット』はできない。仮初の自分にそこまでの力はない。

ならば少しでも効率化を図った方がいい。少しずつ自分の手で・・・・

「待ちどうしいのぉ」

自分に会いたい。あの可能性に溢れていた自分に。可能性を信じていた自分に・・・・

「まぁ、眩しすぎて・・殺したくなるかも知れへんけどな。」

ボソリと呟いた言葉は、月の光も届かぬ闇に消えた。









晋吾は攻める。左で順突、所謂ジャブ。鋭い拳を七夜は首捻って避ける。

すかさず右ストレート。お手本通りのワン・ツー。流石の七夜も回避が間に合わず、腕で受ける。

「グゥ!」

凄まじい衝撃に腕が弾ける。止まる七夜。晋吾はこの機を逃さない。

ワン・ツーからの左でレバーブロー。綺麗に打ち分けたコンビネーションブローは七夜の腹を捉える。

「ッ―――!」

腹で爆弾が破裂したような衝撃を受け、七夜は悶絶。

体を離し、晋吾は右脚で廻し蹴り。七夜の首を狙う。

七夜は後方倒立回転とび、バク転をして後方に飛び退き、躱す。

「おいおい。腹痛くないんかい。」
「痛がっていたら、首がおさらばなんでね。生にしがみつく、獣の本能さ。」

言い切った後、七夜がまた消える。

「うぉ!」

七夜は晋吾の上空に姿を現し、頭上から斬撃。晋吾は驚きを隠せない。

ギリギリで躱したつもりが、ナイフが当たった感覚。

「?・・ッ!?ヤベッ」

右の視界が突然赤くなり、右眼を触ってみると血が手につく。

傷は浅いがダメージは大きい。

「おいおい。手応えは頭蓋骨を砕く勢いだったのにそれだけか。」
「いやいや、視界完全に塞がっとるから。・・血を拭く時間をください」
「悪いねっ」

七夜は飛び上がり、空中から斜め下に向けて直進する蹴りを放つ。

晋吾は腕で受ける。そして着地と同時に死角に向け、ナイフの柄で殴りつける。

「グッ・・!」
「蹴り・・・・穿つッ!!」

ドンッ!と腹に衝撃。

「けやっ!!」

七夜はさらに宙で一回転し、踵を落とす。

晋吾の目には、落ちてくる踵が、まるでスローモーション映像を見るように映った。

(まだだッ!たかが右眼がやられただけで!!)

晋吾は風のような速さで、落ちてくる七夜の背後を取る。

七夜の着地と同時に、ナイフを持った左腕を掴み、逆関節を極め、一本背負の如く投げる。

七夜はその勢いに合わせて飛ぶ。飛ばなければ腕が折れる。

そして向き合う形で着地。晋吾は七夜の懐に飛び込み、再び逆関節を極め、腰を入れ、今度は対面での一本背負。

背負いか――。七夜は警戒し四肢に力を入れる。

寸での所で晋吾は右手を外し、背負いの勢いのまま、七夜の脇に肘を入れる。

「――――――――ッ!」

先程食らったレバーブロー。

服の上からでは分からないが、内出血し、赤紫の花を咲かせたそこに、寸も違わぬ精度で、打ち抜いた。

流石の七夜も声にならない悲鳴を上げる。

晋吾は再び腕を取り、七夜の左側方に円を描くように移動しながら、逆関節を極め、背後に回る。

そして、投げながら、折る。

ブチィイという何かが切れた音と、ゴギィという何かが折れた音を同時に立てながら七夜は地面に叩きつけられる。

しかし、晋吾はまだ止まらない。

うつ伏せに倒れた七夜の首を押さえ、右手で握り拳を作り、七夜の後頭部目がけ――――





「―――――これにて閉幕―――――」

殴る





ビクンッと七夜の体が一度跳ねる。

「閉幕か。・・・・悪く無かったわ。あんたの舞台((武))。」

七夜の体は闇へ帰った。

これにて上映は終了にございます。お客さま、お忘れもののないようお帰り下さい――――― 
 

 
後書き
メルブラ編完!(大嘘)終わり方はRe・ACTの七夜エピローグより引用。悪いね☆

対七夜1回戦終了。そうなんです。まだあるんです。
七夜の技に関して少し自己解釈あり。所詮暗殺術ですから。
七夜の出番はまだあるよ。七夜の本領は室内戦闘なんですよ。
まだまだ強いのです。閃鞘・迷獄沙門も極死・七夜も使ってないしね!
次の登場は白猫の章までおあずけ。悪いね☆

七夜戦解説。
七夜がやったこと
閃鞘・七夜→見切られ蹴り→しゃがんでバクステ→閃鞘・八点衝→閃鞘・一風→失敗→
(偽晋吾ジャック)→腕で防御→バクステ中44(はっふん!)→閃鞘・八穿→
悪いね☆→柄で強打→閃走・六兎→追加の踵落とし→閉幕。

頑張ったな七夜。でも、悪いね☆

晋吾の体術のモデルはいるけど、みんなわかるかな?
とりあえず圓明流とだけ言っておく。
作者の好きな技は雷、狼牙、斗浪、飛燕裏十字。関節・投げ技好き。
 
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