もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
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もしもチート外伝 我儘な使い魔 ~世界は才人でまわってる~
前書き
※この作品は本編内で2回ほど登場した転生者サイト君のショートストーリーです。
※ライトノベル「ゼロの使い魔」についてある程度の知識を持っていることを前提として書いてます。
※NDS専用ソフト「世界はあたしでまわってる」というゲームを知ってればタイトルの意味が分かると思います。
始めは、些細な我儘だった。
それが少しずつ、しかし確実に積み重なって。
そして―――
「てめぇ空飛ぶ上に分身とかキッタネーぞヲイ!ハンデつけろ!スクウェアじゃなくてトライアングルくらいの力で勝負しやがれ!!それなら俺も勝てるだろ!!」
「ハッ!何故私が君のルールで戦わねばならないのかね?・・・って、あれ?」
暫く間抜け面を晒したジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドはその瞬間、マジで系統を4つ足すことが出来なくなっている―――自身のランクが一つ落ちている―――ことに気付いて超焦った。人生で最大級に焦った。
余りの焦りっぷりに周囲にいたはずの自身の分身、『風の偏在』が全員居なくなっている事にも気づかないほどの焦りっぷりだった。それを確認した剣士―――平賀才人はとっても悪そうな笑みを浮かべてワルドにじりじりにじり寄る。
「おお?流石貴族の悪奴様!これは『平民の君に全力で挑むのは主義に反する!』っていう貴族の美学って奴ですね!?そーなんですね!?という訳でいざ勝負!!」
「え、ちょちょちょちょっと待っ・・・」
待ってくれと言われて待つ馬鹿もいなければ、止める馬鹿もいない。
「喰らえ必殺剣!デルフストラーーーッシュ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁーーーー!?」
『・・・おでれーた。今までの6千年、相棒より我儘な奴は見たことがねー。っつーかそれ出来るなら魔法封じればよかったんじゃね?』
「いや、それだとなんか騎士道精神に反する気がするから。気分的に」
『どういう基準だよそりゃ・・・』
「嗚呼、今日もサイトの我儘が世界を台無しにしていく・・・」
そして、今日も私ことルイズはその怪奇現象に頭を抱えるのだ。いや、助かってることは助かってるんだけどさ。
もしもチート才人外伝
~ 世界は才人でまわってる ~
私が召喚した使い魔は、何と前例のない事に”人間”だった。
普通動物とかが呼び出されるものなのに人間である。しかもどれだけ田舎から来たのか『貴族』と云うものを分かっておらず、とにかく礼儀知らず。そして・・・そんな彼が、がんだーるぶがどうとかを抜きにして「あれ?」と思い始めたのはいつだったか。
あれは召喚初日の事。
夜になって、自分の寝床が存在しないことに腹を立てたその使い魔―――サイトは生意気にも飼い主であるはずの私に対して全力抗議してきた。
『フザケんなコラ!いきなりこんな所に召喚しておいて寝床も用意しないとかお前それでも人間か!?一日本人として布団と毛布と枕を要求するね!!』
余り生意気を言わせるのも、とも思ったが夜中にこれ以上騒がれたら逆に笑いものだと思い、適当なメイドを捕まえて一先ずの寝床を用意してやった。毛布やシーツを硬い床の上に敷いただけの貧相な寝床だったが、彼の故郷ではそれだけあれば十分らしい。
この時は不思議に思わなかった。
そして次の日の事。今になって思えば、あの日に才人はその片鱗を見せていたのだ。
その日の朝、床の上に用意された自分用の食事を見たサイトは、懲りずに全力抗議してきた。唯でさえこの食堂に入れるだけでも光栄なことだというのに本当に生意気だと当時は思っていた。
『えー!?何だこの「ワザと不味く作りました」と言わんばかりの食事!?お前コラテーブルの上の食い物分けろ!どーせ全部食い切れねえんだろ!?余るんなら寄越せ!!マザーテレサもそういうのはいけないって言ってたぞ!?(※)』
『いや誰よそのマザーテレサって!?』
『ヨーコーセー!!』
最終的には「身体が資本の使い魔から体を動かす為の食いものを奪ってどうする」というごもっともな意見に折れ、分けてあげることになった。ついでに食事の大切さについて無駄に説教された。生意気だったので折檻しようかとも思ったけど、流石に食堂の皆が見ている前でそれは恥ずかしいのでやめておいた。
まだそれほど不思議には思っていなかった。
(※マザーテレサはそんなこと言ってませんが、飛行機の機内食の余りを貧しい人に分けろとは言ってました)
その後授業で失敗して、励まされて、次に会った時には何故か才人は同級生のギーシュと決闘をすることになっていた。
「てめぇ平民相手に魔法使うとかチン○ついてんのか!?男なら素手で勝負しやがれぇーーーッ!!」
「なにおう!?そこまで言うなら素手でやったろうじゃないか!こちとら軍人の家系なんだぞ!?たかが平民一人、腕っぷしで黙らせて差し上げよう!!」
いや、何でそうなる?と素直に思ったが、素手の乱闘は最終的にサイトに軍配が上がった。冷静に考えればギーシュがわざわざ素手の勝負に乗る道理など無かった。なぜあの時私たちはそれに気付けなかったのか、今でも不思議だ。
とにかく何故かその件も丸く収まった。
そしてさらに時間が立ち、学院の宝物庫に大泥棒”土くれのフーケ”が入り込んだ事件で、流石の私もおかしいと気付いた。
「なぁ、マジで探しに行くのか?破壊の杖・・・」
「当たり前でしょ!泥棒に盗まれたままなんて貴族の恥よ!」
「なんかその辺の草むらとか探して出てこねぇかな~・・・いや、むしろ出て来い!そうあれかし!」
「何馬鹿言ってるの!あのフーケがそんな雑な・・・」
「お、これじゃね?なんか形が限りなくパンツァーファウストだけど」
「「「「そんな馬鹿な!?」」」」
そう、このころから「何かがおかしい」と気付き始めたのだ。でもそれが何なのか分からないまま一日一日が過ぎていった。そして、しばらくして何が可笑しいのかに気付いた。
―――サイトの主張というか我儘が、妙に実現してない?
そこに気付いてからはもう怒涛だった。
「俺も使い魔欲しいわ!!・・・お、何だこの鳥?俺の使い魔になってくれんの?」
「ルイズでも使える魔法探そうぜ!あ、ほらこれなんかどうだ?この『エクスプロージョン』っての!・・・へ?この本って元々白紙だったの?いや、俺は知らんけど」
「この辺って妙に殺風景だよな。どうせなら花畑とかになればいいのに・・・おお!?地面から大量の花がッ!?」
「俺に先攻取らせろ!いいよな?な?よっし俺が先攻だ!!」
「俺思ったんだけどさ。エルフって多分話せばわかるやつだと思うんだよね!この前ちょろっとガリアに行った時に知り合ってさぁ・・・」
「わーわーちょっとタンマ!お前動くな!俺が苦戦するだろーが!・・・あれ、マジで止まってるぞこいつ・・・チャーンス!やっちまうぜデルフ!!」
「えーいーじゃん別に平民の出でも。面倒だから俺も貴族って事にしてくれよ~!・・・え!?いいの!?マジでかおい!!」
「いやーロバ・アル・カリイエって頑張れば1日で往復できたんだな!なんかタルブにあった飛行機使えば普通にいけたわ!超久しぶりに生魚食ったぜ~」
待てやコラ、と口に出す気力さえ奪う勢いでサイトは謎の伝説を量産しまくり、今では本物の虚無である私を差し置いて冗談交じりに「始祖の再来」と言われることもあるほどだ。もうこの世界にサイトを止められる存在はいない。あのガリア王ジョゼフに至っては「おぬし、いい体をしておるの!ウチの騎士にならぬか?」などとスカウトをし出す始末。
こんな状況に置かれて時々思う。私って、いらない子じゃない?と。
だけどそう思うと直ぐにサイトが私の所に飛んできて、手を握って引っ張るのだ。
「ちょ、ちょっと・・・?」
「寂しそうな顔してないでちょっと付き合えよ!なんかサキュバスクインとかいうスゲー魔物が出たらしいぜ?」
「・・・ねぇサイト。何でいっつも私を連れて行こうとするの?あなた一人でも行けるでしょうに・・・」
ルイズはあれから虚無の魔法を学び強くなった。ゼロから虚無へと成長した。しかし、それでもなお、ルイズよりサイトの取った手柄が圧倒的に多かった。酷い時では自分がいたせいで余計な手間を取らせてしまう足手まといになったことだってある。
もうサイトは使い魔の枠を逸脱していた。既にルイズが居なくてもサイトは一人で生きていけるのだ。ならば、自分と一緒にいる必要も、もうないのではないか?
その疑問にサイトは一瞬きょとんとし、次の瞬間破顔した。
「そんなの決まってんだろ?一人だとなんか寂しいじゃん!だからちょっとばかし”ワガママ”に付き合ってくれよ、ご主人様?」
「はぁ、これじゃどっちが飼い主なんだか・・・」
そんな使い魔を、どうしてか私は憎めないのであった。
説明しよう!サイトのチート能力「ワガママシステム」とはッ!!
WP(ワガママポイント)というポイントを溜め、それを消費することで普通では考えられない我儘を押し通す能力であるッ!ポイントは一度寝れば全部回復!!そして当然の如くサイトはチート恩恵の影響でポイントの最大値がカンストしているッ!!
その力たるや絶大!乱数操作や地形変更はお手の物!メイジに魔法使うなとか動くなとかそういう命令をすると一時的にではあるがマジでその命令が通るッ!!現実に入手不可能なものもサイトの我慢の限界が来ると須らく草むらの影に落ちている”ことになる”し、サイトと敵対した相手があまりにも強すぎると感じたらその実力がRPGゲーム換算でレベル10ほど下がっている”ことになる”ッ!!
そしてッ!!
実はこの能力、ポイントを使わなくても時々因果律を歪めて我儘が実現する流れになることもありッ!!
結果として、ハルケギニアを初めとする世界が―――『サイトのためにまわる』のだッッ!!!
「あー・・・いい加減こっちの世界も回り尽くしたし・・・そうだ!久々に実家に帰ろう!そうと決まれば・・・ルイズー!!身支度しろー!一緒に行くぞー!!」
「はいはい、今度は何所に行くのかしら?」
翌日、海鳴市に転生者と魔術師が現れてひと騒動あったとか。
後書き
最終話の評価が100点を突破しました。何だか感慨深いね。
ところで、最終話の「ラストストーリー」のLASTには形容詞では「終わり」、動詞では「続く」って意味があるんだよ。
・・・ん?こんな所に何故か新品のPSvitaと第三次スパロボZがあるぞ?
あるものは仕方ない。ちょっと執筆を休んでプレイしてみるか・・・
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