八条学園怪異譚
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第五十八話 地下迷宮その十一
「確かにのう」
「そうですよね、サイドカーもそんな感じで」
「あのサイドカーもデザインがいいですしね」
「わしが改造したものじゃがな」
それがだというのだ。
「デザインは変えなかったのじゃ」
「そのままで充分格好いいからですね」
「だからですね」
「そうじゃ、カラーリングもよいからな」
「黒と金色がいいですよね」
「黒をベースとして金色のラインがあるのが」
それがいいというのだ、そうしてだった。
牧村もだ、自分のサイドカーについてこう言うのだった。
「あれはうちに代々あるものでだ」
「えっ、あのサイドカー年季ものだったんですか」
「デザインがえらく格好いいんで最近のものだと思ってました」
「エンジンも大きいですけれど」
「あのサイドカー古いんですね」
「そうだ、造られて何年かはわからない」
もっと言えば何十年かになる。
「あのサイドカーはな」
「ううん、しかもそこに博士の改造が加わってですか」
「凄いマシンになったんですね」
二人も博士が施す改造がどういった代物なのか大体わかった、何しろあらゆる学問それこそオカルトにも通じている博士だからだ。
それでだ、博士はこう言うのだった。
「それこそ空も飛ぶとかですね」
「変形出来るとかですね」
「ミサイルを撃つとか原子力で動くとか」
「オリハルコンで出来ているとか」
二人はここでも特撮の話から話した。
「そういうサイドカーなんですね」
「明らかに普通じゃない」
「ほっほっほ、まあ普通の改造はせぬぞ」
博士自身もこのことを認める。普通のサイドカーにはしなかったことを。
「普通は面白くないからのう」
「じゃあ私達が今言ったうちの幾つかはですね」
「本当なんですね」
「まあそうじゃ」
ただしどれが本当のことかは言わない博士だった。
「そこはな」
「そもそも牧村さんって背が高いし身体つきもいいし」
「ぱっと見ただけで特撮ヒーローみたいだからね」
「しかもキャラ経ってるから」
「そのままよね」
「そしてわしは特撮の名物博士じゃな」
自分で言う博士だった。
「そうなるな」
「はい、博士も滅茶苦茶キャラ立ってますから」
「学園の有名人ですよ」
二人は博士にも言う。そうした話をしながら四人共自転車に乗り研究室の方まで戻る。これまた長い道のりである、
その道のりを進みながらだった、そのうえで話すのだった。
「もう相当に」
「商業科でも皆知ってますし」
「どういう感じで有名か気になるのう」
「仙人って言われてます」
「不老不死だとか」
そうした意味で有名だというのだ。
「あと魔法使いとかいう噂もありますよ」
「妖術使いとか」
「ネクロノミコンを持っているとかいう娘もいますし」
「この世の叡智に通じているとか」
「そんな話ばかりですよ」
「そうした感じで有名です」
「ほっほっほ、面白いのう」
そうした自身の怪しい噂についてだ、博士は雪の様に白い顎鬚をその左手でブラッシングの感じで触りながら応えた。
「そういう噂は実にな」
「人間じゃないって噂もありますよ」
「それでもいいんですか」
「いいのじゃよ、そういうのが面白いのじゃ」
何処かの脚本家の様に返す。
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