八条学園怪異譚
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第五十八話 地下迷宮その十
「とにかくわしは泉は通れぬのじゃ」
「そうですか」
「博士はですか」
「俺もだ」
牧村もだ、ここで二人に告げた。
「残念だがな」
「えっ、牧村さんは人間ですよね」
「そうですよね」
「そうだがな」
それでもだというのだ。
「おそらくだがな。俺もだ」
「ええと、それって」
「どういうことですか?」
二人は牧村の言葉を聞いて首を傾げさせた、そのことがどうしてもわからずそれで自然とそうなったのだ。
「人間なのに泉に入られないって」
「何かあるんでしょうか」
「色々あってな」
牧村もまた己のことを隠して二人に答える。
「だからだ」
「それでなんですか」
「とにかくですね」
「俺も泉は通れないだろう」
自身の予想だがそうだというのだ。
「残念だがな」
「じゃあ私達かですか」
「青木先輩か小林先輩になりますか」
「そうなるのう」
博士も二人に答える。
「君達なら確かめられる」
「それじゃあですね」
「その時は」
「うむ、言って来るのじゃ」
博士は二人に穏やかな声で告げた。
「時計塔にな」
「そうさせてもらいます」
「次に」
「何事にも終わりはある」
今度は教育者の顔になった、そのうえでの言葉だった。
「君達の探検も次で終わりじゃな」
「そう思うと感慨があります」
「長い様で短かったです」
二人は自転車に向かいながら述べた。
「ずっと学園の中を巡ってきまして」
「それで探してきてでしたから」
「けれど次ですね」
「次で終わるんですね」
「そう思うとやっぱり」
「色々と思います」
「そうじゃな、君達は泉を探す中で二人で色々な人に会い色々な場所に行った」
そうしたことがだというのだ。
「それがそのまま君達の成長になっている」
「一人一人じゃなくてですか」
「二人が」
「そうじゃ、君達はじゃ」
まさに二人がだというのだ。
「そうなる」
「そうですか」
「そうなりますか」
「そうなのじゃよ」
「泉を探している中で、ですか」
「成長されたんですね」
「そうじゃ、少なくとも入学したての時とはかなり変わった」
そうなったというのだ。
「随分とな。しかしまだこれからじゃ」
「成長していくんですね、私達も」
「そうなんですね」
「そうじゃ、これからもな」
そうなっていくというのだ。
「人の成長は無限じゃ、光速でなくともな」
「光速の成長って普通はないですよ」
「何処かのヒーローですよ」
二人は博士の言う光速の成長についてはすぐにどのヒーローのことなのか察したうえでそのうえで答えた。
「格好よかったですけれどね」
「背が高くてすらりとしていて」
「ちょっと牧村さんに感じが似てましたね」
「外見は違いますけれど」
「牧村君は特撮ヒーロータイプじゃな」
博士は牧村の話が出たところで彼の方に顔を見て言った。
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