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万華鏡

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第五十四話 音楽喫茶その七

 その中でだ、里香は先生に尋ねたのだ。
「そうなんですね」
「そうよ、ただね」
「部長さんのグループはですね」
「あの娘のグループはトリだから」
 つまり最後だというのだ。
「いつもね」
「あと時間になれば体育館の演奏会もですよね」
「そっちもですよね」
「そう、そっちは一年生が先だから」
「じゃあ私達すぐですね」
「もうすぐ行かないと駄目ですね」
「時間になったら呼びに来てくれるから」
 だからだというのだ。
「行ってね」
「わかりました、じゃあその時になれば」
「体育館に行きます」
「それで演奏に行ってね」
 先生は微笑みつつカウンターに肘をついて立っている、そのうえで五人に対して言うのだ。
「いいわね」
「そうさせてもらいます」
「じゃあお茶来たわ」
 紅茶が三つ来た、それを五人に出して言う先生だった。
「一番テーブルよ」
「一番ですね」
「そこですね」
「そこに行ってね」
 こう五人に告げる。
「あとホットケーキも二つ出来たわ」
「じゃあ一人ずつですね」
「一人ずつ持って行けばいいですね」
「今のところはお客さんも少なめだから」
 それでいいというのだ。
「じゃあね」
「はい、行ってきます」
「そうします」
「もうすぐ忙しくなるわよ」
 今は暇でもだというのだ。
「だから覚悟してね」
「演奏の時まで頑張ります」
「そうさせてもらいます」
 五人も笑顔で応えそうして出来上がったメニューをテーブルに持って行く。彼女達は暫くはそうしてウェイトレスをしていた。
 だが文化委員の腕章を付けた男子学生が一人来てだ、先生に尋ねてきた。
「プラネッツの順番です」
「そう、わかったわ」 
 先生はその男子生徒の言葉に頷いて答えた。
「じゃあ今からね」
「プラネッツの人達に伝えて下さい」
「体育館に来て欲しい、ね」
「それでお願いします」
「わかったわ。出番よ」
 先生は生徒の言葉を受けてすぐにだった。
 今もウェイトレスをしている五人にだ、こう告げた。
「体育館に行ってね」
「わかりました」
「じゃあ今から」
「頑張ってきてね」
 先生は五人に優しい声でこうも告げた。
「今からね」
「はい、そうしてきます」
「気合入れていきます」
「音楽も気合よ」
 それが第一だというのだ。
「だからね」
「真剣に、ですよね」
「命を賭けて」
「何でも命を賭けてするのよ」
 先生はこのことは真面目な顔で告げた。
「さもないと形にならないのよ」
「音楽もですよね」
「そして勉強も」
「そうよ、真面目にしてこそよ」
 命を賭ける、それは即ち真面目にするということなのだ。先生の言うことはそうした意味のことなのである。 
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