ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第3章 さらば聖剣泥棒コカビエル
第56話 鬼神降臨
前書き
お待たせしました!
約3ヶ月ぶりの更新です!
……いや違うんです。
決してさぼってたわけじゃないんです。
前回の更新から年末にかけて研究所のほうが忙しくてですね……
書くほど体力に余裕がなかったんです。
それでもちょこちょこ書いてたんですが……その後何故か書いてたテキストが消え去った時には絶望しました。
それでも頑張って書き直して完成させたあとも「クライマックスがこれでいいのか!?」と納得出来ないような内容でして、戦闘の流れを大きく変えて完成したのが今回の更新です。
もう原型留めてるの最初と最後だけだよ……
まあそんなわけで待たせてしまった分、納得のできるクライマックスが書けたと思います。
戦闘描写苦手なんだけど、よく頑張ったぞ自分!
最初から最後までシリアスのガチバトルです!
それではみなさん、どうぞ!
祐斗は過去を乗り越えた。そして今度こそ、1人の剣士として私に挑んできた。だからこそ私はもう手加減をするつもりもなく、本気で勝ちに行くつもりだった。だけど……
ギィィィイイイン!!
「うそ……」
私の剣は受け止められていた。透明の聖剣の能力で姿を消し、天閃の聖剣の能力でとてつもないスピードが出ていたにも関わらず! それも反応できていなかった祐斗ではなく巴柄の刀とイッセーの赤龍帝の籠手によって! 私はあまりにも驚き、つい集中が乱れて透明の聖剣と天閃の聖剣の能力を解いてしまい、皆の前に姿を現してしまう。
「何年お前の太刀筋見てきたと思ってんだ!」
「手を抜いているならともかく本気の火織ちゃんならどこから斬りこんでくるかなんてお見通しなんだから!!」
「イッセーくん!? 巡さん!?」
それに遅れて振り返り、私とイッセー、巴柄の状況に驚き目を見開く祐斗。さらにそこで
「はぁぁぁあああっ!!」
後ろから真羅副会長が薙刀を振り下ろしてきた!?
私は即座に天閃の聖剣に意識を集中、能力を開放して即座にその場から退避する。
「皆、どうして……」
疑問の声を上げる祐斗。それに対し……
「手を貸しましょう、木場くん」
「っていうかついに本気の火織ちゃんを独り占めなんてズルいよ木場くん!」
「そうだぞ木場! っていうか火織を最初に倒すのは俺って決めてたんだからな! 横取りされてたまるか!」
三者三様の反応を返す皆。っていうかイッセー、そんなこと考えてたんだ。更にそこに
「木場祐斗、我々にも協力させてもらえないだろうか……?」
「私も……一緒に戦うわ!」
ゼノヴィアとイリナまで加わってきた!
「ゼノヴィア……それに紫藤さんまで、どうして……?」
「なに、私達もいつまでも負けっぱなしが嫌なだけさ」
「でも僕達は悪魔だ。君たちの信仰的に共闘なんてしていいのかい?」
「正直な話ね、私達にはもう何が正しいのか分からないわ。今でも神の教えが間違っているなんてことは思ってないけど……」
「だが木場祐斗、君に昔起きたことが正しかったとは到底思えないし、アーシア・アルジェントのことも神裂火織の説を否定することが出来なかった」
「私達、あの後いろいろ考えたんだけどね、引きこもって考えても結局答えは見つからなかったわ」
「でもそんな中、例え何が正しいのか分からなくなっても、たったひとつだけ変わらない思いがあったんだ」
「……それが、火織さんに勝つことかい?」
「ああそうだ! だから今は教会の戦士としての自分ではなく1人の剣士としての自分を優先する!」
「うん! 私も一緒!」
その言葉に皆は苦笑を漏らす。しかしながらその雰囲気は決して拒絶するものではなく2人を受け入れるものだった。
「……教会の戦士だろうに、そんな安直に考えていいのかい?」
「いいんだ! 私達はバカだからな!」
「ってゼノヴィア! それじゃあ私までバカみたいじゃない!」
「ん? だがイリナも私と同じ結論に至ったんだろう?」
「そ、そうだけどぉっ……!!」
そんなイリナとゼノヴィアに今度こそ苦笑ではなく笑顔を皆は向けた。
「分かった。共にエクスカリバーを、火織さんを倒そう!」
「ああ! 感謝する!」
そこで祐斗とゼノヴィアが握手をする。……っていうか、え? 何これ? いや、立場的には敵対中の皆がいい雰囲気になってくれたことは素直に嬉しいんだけど、もしかして皆同時に相手しないといけないの? まさかの1対6? ……そう思っていた私は甘かった。
「……ねぇ、リアス?」
「えぇ、そうね。 祐斗! 私達も力を貸すわ!」
「部長!?」
「ようやくあなたが一歩踏み出せたのですもの! 主として、あなたを応援するわ!」
「ファイトですわよ! 祐斗くん!」
「私も力を貸しましょう。これほどの物を見せられて手を貸さなければ、シトリー眷属の名の恥です」
「会長まで……」
「木場ぁっ! 俺も力を貸すぞ! 絶対に神裂さんを倒しやがれ!」
「頑張ってください木場くん!」
「負けないでぇっ!」
「木場……」
そこでイッセーが皆の思いに泣きそうな顔になっている祐斗の肩に手をおいた。
「うん……ありがとう皆!」
祐斗がそう言うと同時にオカ研と生徒会、そして教会組全員がそれぞれの得物や魔力の篭った手を私に向けてきた! っていうか、これマジで!?
「わ、私1人に全員でかかってくるっていうのは、流石にないんじゃないかなぁって言ってみたり……」
と淡い希望を持って言ってみても皆は何も言わず距離を詰めてきた。あ、ダメですか、そうですか……。なら私だって援軍呼んじゃうんだから!
「皆! 流石にきついから手を貸して!!」
と私の愛する家族へ助けを求める。向こうが全員でかかってくるなら私だって家族全員招集したっていいよね!
「「「ごめん。術式発動中だから無理」」」
「あぁっ!? そういえばそうだった!」
すっかり忘れてた! えっ、ウソ!? じゃあ本当に私1人!?
絶望に打ちひしがれる中
「行きなさい! 祐斗!!」
という部長の掛け声とともに
「はい!」
祐斗を先頭に前衛組が突っ込んできた!! しかも上空からは前衛組を飛び越えて後衛組の放った多種多様な魔力弾が!! ちょっとこれは流石に酷いんじゃないかな!?
私はすかさず天閃の聖剣の能力で加速し、飛来する魔力弾を斬って斬って斬り捨てる。その間に前衛組が一気に詰めてきた! 最初に私の所までたどり着いて斬りかかって来たのは……やっぱり祐斗! 魔力弾に対処していた私に容赦なくその聖魔剣で斬りかかってくる!
私は聖魔剣で斬りかかられる直前、最後の魔力弾を斬り捨てて、すぐさま天閃の聖剣で聖魔剣を受け止める……と同時にそのまま刃を寝かせ、聖魔剣の刃を滑らせて受け流した!
その瞬間、祐斗は怪訝な表情を浮かべ、一瞬の隙が生まれたんだけど私にはその隙を突く余裕がなかった。祐斗の聖魔剣を受け止めた瞬間、手に感じた一瞬の違和感。その正体を確かめるべく私は祐斗に気付かれぬようそっと受けた刃に目を向ける。するとそこでは……天閃の聖剣の刃がほんの少し欠けていた!
うぁっ! やっぱり!? 原作では4本を統合したエクスカリバーを砕いてたからもしかしたらと思ったけど! でもこれじゃあまともに打ち合えそうにない!
そんな私の苦悩は他所に、祐斗は更に連続で斬りかかってくる! 私はそれを後退しつつまともに受けずに受け流すか避けて避けて避けまくる! っていうかさっきまでとは速度が段違いだけどどういうこと!? もしかして原作では1個のところを4個も因子を吸収したから何かしらの補正が加わった!? このままじゃちょっとまずいかも!
私は一旦距離を取るため足に力を込めて後ろに跳ぼうとした……その時!
「逃がすか!」
匙くんの声とともに足に何かが巻き付いた!
「匙! それ!」
「見たか兵藤! これが俺の神器、黒い龍脈だ!」
匙くんの腕にはデフォルメされたトカゲの頭のようなものがついていて、その口から舌のようにラインが伸びて私の足に絡みついていた! っていうかこれの能力って力の吸収だっけ!? 繋がれたまんまはまずい!
私は慌ててラインを斬り離そうと透明の聖剣を振りかぶるんだけど
「させない!」
「あなたの力、削がせてもらいます!」
振りかぶった剣を巴柄と真羅副会長に受け止められた! さらに
「でやぁぁぁああああっ!!」
動きを止めた私に向けていつの間にか接近してきたゼノヴィアまでも破壊の聖剣を振りかぶってくる! くっ、こうなったらイチかバチか!!
私は横薙ぎに振るわれたゼノヴィアの破壊の聖剣しゃがんで避け、そのまま勢いをつけて跳躍! そのまま一気に皆の頭上に上がる! その結果
「う、うわぁぁぁあああっ!?」
匙くんもラインに引っ張られて上空に釣り上げられた! よし! 筋力なら私のほうが勝ってたみたい!
私はそのままラインのついた足を振り上げ、釣り上げた匙くんを振り回す! そして……
「ぎゃああああああっ!!!!」
「えっ!?」
「ちょっ!?」
「よ、避けっ……!!」
私はそのまま匙くんをこっちを狙っている後衛組の方に射出した! さらにラインがピンと伸びきる前に斬り離す! その結果匙くんは後衛組に着弾、陣形を崩した。これで少しは時間稼ぎが出来たはず!
そのまま窮地を脱した私は地面へと降り立った……瞬間!
「やぁぁぁあああっ!」
イリナが斬りかかってくる! 着地の瞬間を狙うとはやるわね! 私は天閃の聖剣の能力もあって、ギリギリイリナの斬撃を防ぐ。しかし!
「かかった!」
その瞬間イリナの持つ擬態の聖剣がぐにゃりと曲がり、私の天閃の聖剣に巻き付いた!
「逃さないんだからね!」
そのままその場で踏ん張るイリナ。っていうか動きを止められるのはマズい!! けどイリナ相手なら私の筋力の方が勝ってるはず!
私はそのまま右手に力をかけてイリナの拘束を解こうとする……その時!
「イリナ!」
「きゃっ!?」
イリナの後ろからイッセーが抱きつき、さらに左手の籠手で擬態の聖剣を掴んだ!
「イリナ、絶対に離すんじゃねぇぞ!」
「……うん!」
イッセーに抱きつかれて頬を赤らめたイリナだけど、イッセーの言葉を聞くとすぐさま切り替えてその場で擬態の聖剣を握り直した。相変わらず頬はちょっと赤いし若干嬉しそうに口元がにやけてるけど。
っていうかマズっ!? さすがに2人相手じゃ筋力だけで振り払うのは無理! こうなったら左手の透明の聖剣でぶっ飛ばして振り払うしか!
私はそう思い左手を振りかぶるんだけど……
「そうは……」
「させない!」
「押さえつけさせてもらいます!」
なっ!? 今度は祐斗の聖魔剣と真羅副会長の薙刀、巴柄の刀で透明の聖剣を押さえつけられた!? っていうかヤバっ! 両腕押さえつけられちゃ私完全に動けないじゃん! そろそろ後衛も立て直すだろうしこんな所魔力弾で狙われたら! とか思った私はまたしても甘かった!
「いいぞ! そのまま抑えていろ!」
私に突っ込んできたのは魔力弾ではなくゼノヴィアだった! ……けど、あれ? 何故か破壊の聖剣を左手に持ち替え、しかも振りかぶらずに突っ込んできた。しかも右手はあらぬ方向にかざしてて……って忘れてた! ゼノヴィアのメインウェポンは!
「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」
その言霊とともにゼノヴィアのかざす手の先の空間が歪み、そしてゼノヴィアはその空間に手を突っ込んだ! これは本格的にマズい!!
「この刃に宿りしセイントの御名において、我は開放する。―――デュランダル!」
そしてその引き抜かれた長大な剣を私は……
「何っ!?」
両手のエクスカリバーを離し、白刃取りで受け止めた。幅広の剣、そして何が来るのか分かってたからこそ出来たことだけど、これすごいキツい! 術式のおかげで聖剣のオーラに焼かれることはないけど、体がばらばらになりそうなくらいの衝撃が来た!
「ぐっ……ぅぅぅううああああああっ!!」
私はそれ以上押し込まれる前にゼノヴィアをデュランダルごと投げ飛ばす。くぅぅっ、腕がキツい! でもここで止まるわけには!
私はゼノヴィアを投げ飛ばした後、私がエクスカリバーを急に離したことでバランスを崩してその場にすっ転んでるイリナたちの元からエクスカリバーを回収し、急いで距離を取る。っていうか私の腕、もう次はまともにデュランダル受け止められそうにないわね。
一方私が距離を取る中、皆は追跡せずに目を見開いてゼノヴィアに注目していた。
「ゼノヴィア! その聖剣は!!」
「ああ、以前話したコカビエルに対する切り札さ。私は本来このデュランダルの使い手でね。エクスカリバーの使い手は兼任していたに過ぎない。このデュランダルは想像を超えた暴君でね。異空間に閉じ込めておかないと危険きわまりないんだ。だからこそこれは切り札だったわけだが……」
とそこで私に投げられた後、片膝をついていたゼノヴィアは……そのままうなだれた!?
「まさか初見で、しかも素手で受け止められるとは思ってもみなかった……」
どよ~んとした空気がゼノヴィアを中心に立ち篭める。あ、あはははは……。なんか悪いことしちゃったな。とは言っても私だって決して無事ってわけじゃないんだからね。
「元気出してゼノヴィア! 火織ちゃんの強さは分かってたはずじゃない! それにプライドも捨てようって約束したでしょ!?」
「……ああ、そうだ。そうだったな!」
イリナの声に元気を取り戻したのかゼノヴィアは右手にデュランダルを、左手に破壊の聖剣を持ち立ち上がった!
「神裂火織! 君の持つエクスカリバーと私の持つデュランダル、どちらが強いか勝負だ!」
そう言うとともにゼノヴィアが距離を詰めて斬りかかって来た! っていうかどっちが強いか勝負と言われても原作を知ってる身としてはその答えは歴然なわけでして! まともに受けたら私のエクスカリバーは粉々に砕けちゃう!
私はそう思い、ゼノヴィアの振るうデュランダルを両手のエクスカリバーを使い受け流し続ける……けど、これまで破壊の聖剣を受け流してた時とはやはり手応えが違う! 一太刀受け流すごとに嫌な感触が伝わってくる。どちらにしてもこのままじゃそう長く保ちそうにない!
更にそこに……
「はぁぁああっ!」
「でやぁあっ!!」
祐斗やイリナ、それに他の皆からもさらなる攻撃が! 魔力弾やイリナたちの斬撃はどうにかなっても祐斗の斬撃はデュランダル同様受け流さないとマズい、っていうか受け流してもだんだん刃が悪くなってきている感触が手に伝わってくる! これは本格的にピンチかも!
とそこで一旦下がっていたゼノヴィアがまたしても右腕を大きく振りかぶって突っ込んできた! そろそろ休憩しないと私の腕も限界に近いんだけど! 仕方ない、右手のデュランダルを受け流したら大きく蹴り飛ばして一旦離れる!
そう決め、まずは振り下ろされたデュランダルを受け流す。ってウソっ!? これは破壊の聖剣!?
「かかったな!!」
右手のデュランダルと左手の破壊の聖剣をいつの間にか持ち替えてた!? 一体いつからそんな悪知恵まで働かせられるようになったのよ!?
「喰らえっ!!」
ってヤバっ!? そのままゼノヴィアは左手に持ち替えてたデュランダルを振り下ろしてきた! 破壊の聖剣を受け流した直後でまだ次を受け流す準備出来てないのに! このまままともに受けたらこっちの天閃の聖剣が折れちゃう!
苦肉の策として私は一旦右手の力を緩める。その結果天閃の聖剣は折れることはなかったけど、その代わり天閃の聖剣は弾かれ、右腕が大きく開いちゃった! でも右手を離さないようにするだけで今は限界! と、そこで
「はっ!」
「せりゃぁっ!」
祐斗と巴柄が私にではなく左手の透明の聖剣に同時に斬りかかってっきた!? ちょっ!? 流石に2本同時には受け流せないわよ!? でもまともに受けたら透明の聖剣が折れちゃう!
と、迷ってた結果左手まで弾かれて大きく開く。ヤバイ、今の私完全に無防備! と、そこで正面から
「いやぁぁああっ!!」
イリナが斬りかかってきた! いくら天閃の聖剣で速度が上がってても、このタイミングじゃ両手とも防御に間に合わない!
擬態の聖剣がスローモーションで私に迫る中、私は必死に打開策を探し……
でももうどうしようもないと諦めかけ……
そんな中、それを見つけ……
そして……!!
ギィィィイイインッ!!
「ウソッ!?」
イリナが驚く中、私は擬態の聖剣を受け止めていた。口に咥えた夢幻の聖剣によって! いくらこの中では非力な部類のイリナとはいえ、歯が折れるんじゃないかと思うくらいの衝撃が来たけど、それでもなんとか耐えぬいた!
私は驚きで動きの止まったイリナの擬態の聖剣を両手のエクスカリバーで弾き飛ばし、そのまま一旦全員から距離を取る。皆も追ってこないし、ようやく少し休憩できるわ。ちょっとだけでも腕を休めないとさすがにキツい。
それにしても助かったわ。あの一瞬、イリナに斬られると思った時、視界の隅で龍巳が振りかぶり、そしてコカビエルたちから奪うも使うこともなくずっと龍巳が持ってた夢幻の聖剣をぶん投げてきた時には驚いたけど、それを何とか口でキャッチしイリナの斬撃を受け止めた時は自分でも自分でしたことが信じられなかった。まさかこんな方法であの窮地を脱することが出来ようとは……。
でもこれからどうする!? いくら口に3本目のエクスカリバーを咥えたって、そんなものたいして役に立つとは思えない。ONE PIECEのゾロの三刀流じゃあるまいし、使えるとすれば剣としてではなくその能力くらい? でも夢幻の聖剣の能力って夢を操作したり、幻覚見せたりだったわよね? そんなものこの状況でどうしろと………………ん? 幻覚? 幻覚ってもしかして実体のある幻覚見せたりも? ちなみに今の私のスタイルは自ら望んだものではないとはいえゾロの三刀流。三刀流と幻覚……? もしかしてあの娘これを狙って……!?
私はそう思い龍巳の方に目を向けてみると………………龍巳と、ついでに白音もいい笑顔でこっちにサムズ・アップしてきた! 分かってやったわねあの娘たち! でも他に活路はないし……しょうがない! 出来るかどうか分かんないけど、やってやるわよこんちくしょう!!
皆がこちらを向いて、警戒しつつもジリジリと距離を縮めてくる中、私は目をつむり口に咥えた夢幻の聖剣に意識を集中する。想像するのはゾロのあのシーンにおけるあの姿!! すると……
「何っ!?」
「えぇっ!?」
「ウソ……」
「おいおいマジかよ……」
「シャレになってないわよ……!」
「「キターーーーーーーーーーーー!!!」」
皆の驚きの声、そして一部の歓声を聞き、私の思惑が成功したことを悟る。そして私は6つの目を開けた!
「ふぃふぃふゅうふょうゆう……はふゅあ!!」
私の腕は2本から6本に増え、さらに顔も頭の側面にさらに2つ現れた。そして6本の腕、3つの口にはそれぞれにエクスカリバーが! その姿はまさに三面六手の阿修羅が如し!! けどこれやばい! 視界が360°になったことに加え、腕が6本になったせいで脳の処理が追いつかない、っていうか普通に頭痛い! けどどうせ私がエクスカリバー使えるのはあと数分、ならこのまま無理にでも押し切る!
私は意を決して、今度はこちらから攻める! まずはこの中で一番要注意なゼノヴィア!
「くっ!」
ゼノヴィアもすぐさま反応し、私にデュランダルを振り下ろしてくる。それに対して私は正面からエクスカリバーを振るった。その結果!
「なっ!?」
私の振るったエクスカリバーは先程とは逆にゼノヴィアのデュランダルを弾き飛ばした! 理由は簡単、両手の計6本のエクスカリバーを合わせてかかったから! 1本なら簡単に折られるし、原作同様に4本でも折られるだろうけど、6本ならちょっとやそっとじゃ折れないみたい! まあ若干嫌な手応えと共に聞きたくない音まで刃から聞こえた気がしたけど、あと数分持ち堪えてくれたらそれでよし!
「ゼノヴィア!」
「くっ!」
ゼノヴィアが押し負けたことに驚きつつも両側から祐斗とイリナが斬りかかってくる。それに対して私はイリナには左腕と左側の口の計2本、祐斗には右手と左手、そして右側の口の計6本で応戦する。どうやら祐斗の聖魔剣もエクスカリバー6本なら対抗できるみたい!
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
私はそのまま2人を力で弾き飛ばす!
「このっ!!」
「せいっ!!」
弾き飛ばした瞬間、さらに巴柄と真羅副会長が攻めてくるけど、それも難なくエクスカリバーを2本ずつ使って受け止める。
「はぁっ!!」
と、その時私の真後ろから生徒会の戦車、由良翼紗さんが殴りかかってくる。さっきまでの私なら前の2人に気を取られて対応が遅れるほど完璧なタイミングの一撃、けど顔が3つに増え360°見渡せる今の私に死角はない!
私はすぐさま反応、巴柄と真羅副会長の刀と薙刀を受けつつ、後ろからの拳も難なくエクスカリバーの剣の腹で受け止め、さらにもう1本のエクスカリバーの柄で由良さんを殴り飛ばす。そしてその後は抑えこまれ動けない巴柄と真羅副会長を順に蹴り飛ばす。よし、この調子なら時間まで何とか逃げ切れそう!
ここから全員戦闘不能にするのはさすがに諦める。だってさっきから怪我するそばから皆アーシアが治しちゃうんだもん! っていうか最近頻繁に使ってたせいか、いつの間にか回復エリアを拡大して複数人同時に治すなんてことしちゃってるし! それ出来るようになるの原作では5巻からじゃなかったっけ!? まあそれを出来るように前の山での修行でアドバイスしたの私だけどさ!
とにかくそんなわけで全員今から倒すのは無理! でも私がエクスカリバーを使える残り数分を逃げ切ることなら出来そう。さすがにこれ逃げきれたら私の勝ちでいいわよね?
「らぁぁああっっ!!!」
「やぁぁああっっ!!!」
と考えてる間にまたしても正面からゼノヴィアとイリナ!! 受け流したり後退したりしてグズグズしてると囲まれちゃうし、ここからはもう正面から受け止めてすぐさま蹴り飛ばし、次に対処する! これしかない!
というわけでまずは正面から振り下ろされるデュランダルと擬態の聖剣に対処する! 両手と正面の口の計7本ならなんとか受け止められるはず。間髪入れず蹴り飛ばせばゼノヴィアの左手の破壊の聖剣も擬態の聖剣の形態変化も間に合わないでしょ!
そう思い二人の剣を受け止めようとした瞬間……!!
「イリナ! ゼノヴィア! 受け取れぇっ!!」
『Transfer!!』
……えぇっ!? ウソ、そんな!? ちょっと待っ……!!
私は狼狽えつつすぐさま反応し受け止めることを諦め、飛び退ろうとするんだけど
「まず1本!!」
「私も!!」
その言葉と共に
バッキィィィイイインッッ!!
手に持つ6本のうち2本のエクスカリバーが砕け散った!? まずっ!! このままじゃ!!
でも幸いに、砕けたのは夢幻の聖剣で創りだした偽りの2本! 私はさらに後退しつつそれでもなんとか意識を集中させてもう一度エクスカリバーを創ろうとする。けど……!
「させない!!」
なっ!? 祐斗!? それもまさかの真上から!? しまった!! 死角ないと思って油断しちゃってた!! 流石に真上から来るとは思ってなかったよ! それでもいつもならなんとか対処できただろうけど、今はもう一度エクスカリバーの幻覚を創ろうと集中しちゃってたせいで対処が遅れた! その結果……
ベキィンッッ!!
「これで3本!!」
さらに1本砕かれた! これは本格的にマズいかも!! とにかく距離をとって体勢を……!
「逃さないよ火織ちゃん!」
「このまま一気に押し切る!」
くっ! そんなに甘くなかったか! 立て直す暇もなくまたしても正面からイリナとゼノヴィア! えぇい、こうなったら作戦変更! 砕かれた3本は諦める!
私は空いている手で咥えていた3本を掴む。6刀流になっちゃうけど、新たに作る暇が無いんだからしょうがない!
正面からくるイリナとゼノヴィアの対処に回る。と言っても6本じゃ同時に相手にできない、っていうかイッセーのパワーが加わってるからまともに受けるのは自殺行為。ならっ!
私はまず透明の聖剣の能力で姿を消し、さらに天閃の聖剣の能力で加速してイリナの横に回り込み、そのまま横っ腹に回し蹴りを叩き込む! 剣で打ち合えないんなら能力と体術で対抗するしかない!
「そこか!」
しかし今の攻撃でゼノヴィアも私がどこにいるのか分かったみたい。デュランダルが的確に私に向けて振り下ろされてきた! なんとかそれを避けるけど……
ペキッ……
透明の聖剣の刃先が持ってかれた! そのせいか私の姿も現れてしまう! でも今のデュランダルを振りぬいた状態なら隙だらけ! 思いっきり蹴り飛ばす!
「ぐあぁっ!?」
よし! 思いっきりやったしイリナとゼノヴィアに関しては少しは時間が稼げたはず! あとの脅威は祐斗1人! と思った時
べちょっ!
足に何か張り付く、ってまたしても匙くんの黒い龍脈!? ああもうしつこい! もう一度ぶん投げてあげる!
そう思って足にグッと力を入れようとした……その時!
「今だ! 引けぇっ!!」
「「「うおりゃぁぁぁあああっっ!!!」」」
後衛組の部長や会長たちはもちろんのこと、さっきまで近くにいたイッセーや由良さん、巴柄や真羅副会長までもが一斉にラインを引っ張ってきた!? やばっ!! 対応ミスった!! さっさと斬り離すべきだった!!
思わぬ力で片足を引っ張られた結果、盛大にバランスを崩してそのまま数メートル引っ張られる!
「くっ! なんのっ!!」
しかしこのまま動きを封じられる訳にはいかない! 2本のエクスカリバーを地面に刺して引きずられてた体を止めると同時にバランスを取り戻す! そして残ったエクスカリバーでラインを斬り離そうとした時
「そこだ!」
なっ!? 祐斗!?
祐斗は横合いから今の状態じゃとてもじゃないけど対応できないスピードで突っ込んできて、そのまま地面に突き刺していたエクスカリバーに聖魔剣を叩きつけてきた! その結果
バキィィイイッ!!
「これで4本目!!」
さらにエクスカリバーを折られた! しかもそれは運の悪いことに本物の夢幻の聖剣! っていうことはつまり……
「火織の増えてた腕と顔が消えたわ!」
「よっしゃあっ!!」
「あとちょっとよ!」
「引けぇっ!」
うっ、これは本当にマズい! とにかくまずはラインを切り離して……
「「させるかあっ!!!」」
バキィッッッ!!
なっ!? ラインを斬ろうと振りかぶった透明の聖剣が粉々に砕け散った!? 一体どうして………………ってすぐそばにデュランダルと擬態の聖剣が落ちてる!? もしかして投げたの!?
見れば離れた所でイリナとゼノヴィアが私に蹴られた所を抑えて膝をつきつつも、してやったりといった表情でこっちを見てる! やられた!! 360°の視界もなくなった直後だったから気付けなかった!!
「行っけぇぇぇえええっ!! 木場ぁぁぁあああっっ!!!」
「うおぉぉぉおおおっっ!!!!」
って感心してる場合じゃない! 正面には聖魔剣を振りかぶった祐斗が! どうする!? 残った天閃の聖剣じゃ受け止めるのは不可能だし、ラインに引っ張られて体勢崩してる状態じゃうまく受け流すのもちょっと難しい! ライン斬って思いっきり後退する!? とてもじゃないけど間に合わない!
悩んでいる間にも祐斗の聖魔剣は迫り、結局どれも選択できなかった私は、それでも悪あがきに天閃の聖剣をかざして聖魔剣を防ごうとして
「これで……ラストォッ!!」
敢え無く天閃の聖剣も聖魔剣の前に敗れ去り……
そして……
私の胸から紅い鮮血が舞った。
☆
僕、木場祐斗は今日過去の呪縛から開放された。同志たちとの心を通じ合わせ、禁手という形で一歩前に進むことが出来た。そして今の仲間達と共にエクスカリバーに挑み、そしてついに今最後のエクスカリバーを僕の、いや僕達の聖魔剣で折ることが出来た! そう、僕たちの想いはエクスカリバーをも超えていることを証明できたんだ! ……なのに、なのになんでこんな!!
僕が最後のエクスカリバーを砕くと同時に、火織さんの左肩から右脇腹にかけて斬り裂かれ、そこからまるで噴水のように鮮血が舞っていた。
僕はどこかで思ってたんだ。火織さんは僕なんかよりずっと強い。例えこの勝負の結果がどのようになろうとも最後には結局火織さんはケロッと今まで通りにこやかにしてるんじゃないかって。
でもじゃあ、目の前のこれは一体何だ? 目の前で真っ赤な血を噴き出している彼女は……?
この時僕はようやく気付いた。火織さんも僕達と同じなんだって。斬られれば血が出る、か弱い一人の女の子なんだって! なのに僕は、そんな彼女を! こんなことをしたいがために禁手に目覚めたわけじゃあ……!!
と、その時
ふぁさっ
誰かに頭を撫でられた。見れば……えっ? 正面の火織さんがいつものにこやかな表情で僕の頭を撫でていた。
「よく頑張ったわね祐斗。お姉さんは嬉しいわよ」
火織さん! 良かった、無事だったんだ! なんだ、やっぱり火織さんは僕なんかじゃ敵わないほどの……
ズルッ
……え? 目の前で笑いながら僕の頭を撫でてくれていた火織さんの体が傾いて……そして……
ドシャァッ!
という音と共に地面に倒れた。そして倒れた箇所からおびただしいほどの量の血が広がり始めた。どうして、だって君はたった今までいつも通りに笑って……!
「火織!」
「火織さん! しっかりして下さい! 今治しますから!」
皆が火織さんに駆け寄り、アーシアさんが火織さんの治療を始める。でも僕にはそれらのことが目に入らなかった。
こんな、こんなはずじゃない。こんなこと、あっていいはずがない!!
「火織さん……火織さん………………火織ぃッ!!」
後書き
次回予告
「死ぬな、火織!」
「お願いです! 目を開けて下さい!」
「そんな……せっかくまた会えたのに、こんなのってないよ! 火織ちゃん!」
「目を開けなさい火織! 主に無断で死んじゃうなんて絶対に許さないんだから!!」
「火織ぃぃぃいいいッッ!!」
次回、第57話 愛、故の殺意
「……」
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