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ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~

作者:enagon
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第3章 さらば聖剣泥棒コカビエル
  第55話 聖魔剣

 
前書き

「おっぱいフラー―ーーーッシュ!! 受け取って祐斗! これがあなたの新しい力よ!」

「これが、これが僕の新しい力。これがおっぱいの力! すごい! おっぱいが、おっぱいさえあれば僕はどこまでも高みに行ける! もう何も怖くない!!」














すみません、嘘です。
衝動的にやってしまいました。
でも後悔はしていません。

さて皆さん、ついにここまで来ましたよ!
今回からついに第三章、クライマックスに突入です!
いや~、二章よりは短い予定だったんですけどなんだかんだで結構長くなってしまいましたね。
この話も残す所残り4話!
張り切って行きましょう!!


 

 



 ようやく来た、この時が!

 事情を知っている黒姉達以外がポカンと私を、いえ、私の胸を見つめる中、私は心のなかで安堵していた。今日でエクスカリバーを借りられるのは最後であったわけで、もし反応しなかったらどうしようかと思ったよ。

 私は安堵の溜息が漏れそうになるのをこらえつつ、胸の谷間に手を突っ込む。そして取り出したのは光り輝く4つの結晶。さすがに4個も同時に光るとすごい光量だね。それはもう仕舞っていた胸全体が光っているかのように見えるくらいに。

 そして私がその結晶を取り出した瞬間、これが何なのかを知る2人が驚きの声を上げた!

「なっ!? それは……!?」

「なんで……なんで火織ちゃんがそれを持っているの!?」

「イリナ、あれがなんだか知ってんのか!?」

 疑問に思う皆を代表して問いかけたイッセーに対して、イリナは困惑しつつも答えた。

「えぇ、あれは私達聖剣使いがエクスカリバーを承る際、神の祝福と共に体に入れられる結晶よ。私のここにもあれと同じものが埋められているの」

 そう言ってイリナは自分の胸を指さした。その答えに皆が更に驚いている中、

「神裂火織、貴様一体それをどこで、しかも4つも手に入れた?」

 とゼノヴィアが問いかけてきた。……でも前みたいに睨みつつ殺気を飛ばしてくるようなことはなかった。見た感じ戸惑いのほうが大きいように感じられるわね。この2週間で少しは柔らかくなってきたってことかな? それに信頼関係も築けたかなとも思う。

「少し、昔話でもしましょうか」

「昔話?」

「……昔々、あるところに聖剣が大好きな少年がいました。彼はお伽話に出てくる悪を倒す聖剣が大好きで、自分も将来必ず立派な聖剣使いになるんだと決意していました」

 皆が一体何のことか分からないといった表情を浮かべる中、私は話を続ける。

「しかしながら少年が大人になる頃には嫌でも思い知らされました。自分には聖剣を扱う素養がないと。そこでその者は、自分で扱えないのなら自分の手で聖剣を扱える人間を作ろうと思い、非合法の人体実験にまで手を付けるようになりました。そしてその者は気付いたのです。聖剣を扱うにはそのための因子が必要であり、自分の元にいた被験者たちにもその因子が備わっているということを」

 話の雲行きが怪しくなってきたことで皆が不安そうにし始める中、察しのいい者たちの数人、そして祐斗の顔がもしやと目を見開いた。

「しかしながら聖剣を扱える被験者は誰もいません。それは何故なのか? その者はこう結論づけました。聖剣を扱うには各々の因子が足りないからではないか、と。そして足りないのであれば別の場所から補えばいいのではないかと思ったのです。そして……その者、バルパー・ガリレイは被験者を皆殺しにし、因子を集めて結晶化させました」

 そこで皆は息を呑み、ある者は涙まで流していた。そんな中アーシアが

「なんて……なんて酷いことを……!」

 と言いつつ手で口元を抑える。と、そんな時イリナが何かに気付いたかのように自分の胸を抑えた。

「ウソ……じゃあ私の胸にあるこれも……!」

「それは違うよイリナ。祐斗の同志たちが殺された時に抜き取られた因子は今私の手の中にある結晶で全てらしいわ。教会を追い出された時にすべて持ち出したんですって。でも……イリナも持っているということは彼の研究を引き継いでいる者が教会にいるってことでしょうね」

 それを聞き、ショックを受けるイリナとゼノヴィア。まあ流石に同じように殺して抜き取っているということはないでしょうけど、製法はおそらく一緒でしょうね。

「祐斗、私の持っているこの結晶のうち3個はバルパーが3人の聖剣使いに与えていたのを龍巳が抜き取ってくれたもの、残りの1個はバルパーが使わずに持っていたものよ。さっき言った通りこれらはあなたの同士の人達から抜き取られたもの、受け取りなさい」

 そう言って私は呆然として地に膝をつく祐斗の手に4個の因子の結晶を渡す。祐斗はそれらを受け取ると涙を流し、その胸に掻き抱いた。……その瞬間、結晶から更なる光が発せられた!

「こ、これは!?」

 混乱するように周囲を見回す祐斗。そんな祐斗の周りには何人もの光で構成された少年少女たちがいた。あれが祐斗の同志たちなんでしょうね。その少年少女たちが優しげな表情で何事かを語りかけていた。残念ながら私達には聞こえないけれど、祐斗にはしっかりと届いているみたいね。無言で涙を流しながらも、しきりにうんうんと頷き、少しづつ表情が救われたかのような晴れやかなものへとなっていく。

「皆……」

 そして少年少女たちは口をリズミカルに動かし始める。それに初めに気がついたのはアーシアだった。

「……聖歌?」

 アーシアの言う通り、少年少女たちは聖歌を歌っている。それに合わせて祐斗も歌い始め……驚くべきことにそれに合わせてゼノヴィアやイリナ、そして頭痛を耐えるかのようにして表情を少し歪ませつつもアーシアまでもが歌い出した。

 そして聖歌を歌い終えると同時に少年少女たちは光となり、祐斗の胸に吸い込まれていった。

「ありがとう、皆……。僕たちは……僕たちの心は……ひとつだ」

 そして最後には静かに涙を流す、だけどもうそこに悲壮なものは残らない祐斗だけが残された。







「……で、祐斗。気分はどう?」

「……ありがとう。僕も、そして同志たちもようやく救われた。全部火織さんのおかげだよ。今まで色々とひどいことを言ってすまなかった」

 祐斗は本当に晴れやかな笑顔でそう言った。どうやら原作通りに成功したみたいね。

 実はコカビエルたちを倒して因子を手に入れた後、当初はこれをそのまま祐斗に渡そうと思ってたんだけどそこで私はひとつの疑問にぶち当たった。果たしてただ渡しただけで祐斗は同志たちの魂を開放できるのか、ってね。よく考えてみたらあれは悪魔と堕天使、更に聖剣が入り乱れる戦場において極限状態に陥ったからこそ起こった現象、ならただ渡しただけではどうにもならないんじゃないかって。そのことに気付いた時には後の祭り、コカビエルたちは氷漬けだし聖剣使いたちの因子も龍巳が抜き出した後だった。

 そこでどうするか考えた結果、私が祐斗を極限まで追い詰め心の底から同志たちを求めさせることにしたのよ。正直賭けの要素が強かったけど、もうそれ以外方法が思い浮かばなかったし、実際さっきまではヒヤヒヤ物だった。うまくいって本当に良かったわ。

 ちなみになんで胸の谷間に入れてたかというと、まずなるべく祐斗の近くに置いておかなければならないと思って、そうなると私が持ち歩くというのが確実だった。でもポケットに入れてると何かの拍子に転がり落ちる可能性があったし、そうなるとしっかり挟み込んでおける胸の谷間くらいしか場所がなかったんだよね。決して他意があったわけじゃないからね?

「そう……で、どうする? まだやる?」

 そう言って私は右手に持つ天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を掲げた。

「……もう僕はエクスカリバーに憎しみは持っていない。同志たちは復讐を望んでいなかった。ただ僕に生きて、幸せになってほしいって……でも……!」

 そこで祐斗はこれまでとは違う……そう、実に男らしい目で私を見つめてきた。

「僕は……火織さんに勝ちたい! エクスカリバーとか、復讐とか、そういうこととは一切関係なく1人の剣士として火織さんに勝ちたいんだ!」

 そう言うとともに祐斗は右手を天へと掲げた!

「僕は剣になる。友の、仲間の、我が主の剣となる! 行こう皆! 共にエクスカリバーを、そして火織さんを越えよう!! 僕達の想いに応えろ! 魔剣創造(ソード・バース)!!」

 その瞬間祐斗の体から爆発的に聖のオーラと魔のオーラが発せられ、右手に集まるとともに混ざり合い、1つの剣の形を成した!

禁手(バランス・ブレイカー)双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)! 僕自身の魔の力と同志たちから受け取りし聖の力、その両方を有する剣。この剣で火織さん、あなたを倒す!!」

 そう言ってついに成し遂げた禁手(バランス・ブレイカー)の聖魔剣を正眼に構える祐斗。

「ようやくだ。ようやくここまで来た。ようやく君と同じ領域までに至ったよ火織さん」

 ここに来て私も1つの感情に支配されていた。祐斗が過去を乗り越えられてよかったとか、原作通りことが運んで良かったとか、そんなことではなく私はただ1人の剣士として、こうしてまっすぐ挑戦してきてくれた祐斗という存在が嬉しかった!

「えぇっ! やりましょう祐斗!! ここからは私も本気を出すわ!!」

 そう言って私は両手のエクスカリバーを振るい両手を大きく広げると同時に叫んだ!

「黒姉! 龍巳! 白音! お願い!!」

「「「了解!!」」」

 3人は返事をするとともに黒姉と白音は龍巳の張っている結界に両手をつけ、さらにそんな2人の肩に龍巳は手を乗せた。

「にゃっははは、準備しといた甲斐があったにゃ」

「ん、徹夜の頑張り、無駄にならずに済む」

「行きますよ、火織姉さま!!」

 その瞬間龍巳が強大な力を発し、その力は黒姉と白音を介して結界に流れ込む。そして結界に途方も無い数の魔法陣が浮かび上がった!

「なっ!?」

「これは……一体何を始めるつもり!?」

 周囲の変化に驚き声を上げる部長たち。祐斗もこちらに聖魔剣を向けつつも困惑したように周囲に目を向けていた。でも……驚くのはこれからなんだからね?

 皆が驚いている中私は目をつぶり意識を集中する。そして私達を覆う結界から私の体に流れこんできた力を両手に集め、そのまま両手のエクスカリバーへと流し込んでいく。その結果………………コォォォォッ!! と低音が鳴り響くとともにエクスカリバーから聖なる波動が噴出した!

「そんな……バカな!?」

「エクスカリバーが反応している!?」

「どういうこと!? なんで悪魔なのに聖剣を……!?」

 口々に驚きを露わにする皆。でも本当に驚くのはこれからだからね?

 私は右手に持つ天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)に意識を集中し、その上でその場で軽く振ってみる。すると右手は私自身の限界を悠々と超えてとんでもない速さで振るわれた。さらに

ズッパァァァアアアンッ!!!

 という音とともに地面に無数の斬線が走る。私も意識すれば斬撃を飛ばすことはできるけど、まさかこんな簡単に斬撃を飛ばすことが出来るようになろうとは。これだけ見てもエクスカリバーが最強の聖剣だって言われる理由が分かるわね。折れる前はどれだけ凄まじい聖剣だったのか。

 一方その光景を目の当たりにした皆は絶句していた。人は驚きすぎると反応できなくなるって聞いたことがあるけどどうやら本当みたいね。

 私はさらに今度は左手に持つ透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)に意識を集中する。すると今度は私の全身が透明になった。ふむ、どうやらこちらもちゃんと使えるようね。

 確認作業の終えた私は自分の体の透明化を解除する。すると思考停止からようやく復帰した皆が口々に叫んできた!

「火織! これは一体どういうこと!?」

「なんで火織ちゃんが聖剣を使えるの!?」

「見た限り能力の使用も問題無さそうですわね」

「問題ないどころではないよ。先ほどのあの動き、能力使用の練度も私やイリナよりおそらく上だ」

「っていうかなんだよさっきの剣捌き!? どうなってんだよ火織!?」

 そしてそんな中、祐斗だけは落ち着いて私に聞いてきた。

「どういうことだい火織さん? 身を焼かれながら強引にエクスカリバーを振るうだけでも驚きなのに……その上エクスカリバーを見たところ完璧に使いこなすなんて。この魔方陣の効果かい?」

「ええそうよ。なにせこの2週間近く3本もエクスカリバーが手元にあったからね。だから必死に解析してついに悪魔でも聖剣を扱える術式を黒姉と白音が開発したわ。……とは言ってもできたのは聖剣をほんの少し騙して身が焼かれる強さを2~3%減らすことだけだったんだけどね」

「……どういうことだい? それでは今の君のその力は説明できないんだけど?」

「後は簡単、龍巳の膨大な力を使って術式をブーストしてるだけよ。とは言っても無理やり力でだまくらかしているだけだからね。30分もすれば術式は崩壊するし、聖剣がそのことを覚えちゃうためかもう二度とこの術式は使えないわ。……けどこの30分だけは私は正真正銘今代最強のエクスカリバー使いよ。祐斗、エクスカリバー使いの私を倒したいのならこれが本当に最初で最後のチャンスよ。……さあ、どうする?」

 そう不敵に微笑みながら言う私に祐斗は聖魔剣の切っ先を向けてきた!

「そんなの、決まってる!」

 その言葉に私は

「そう……」

 両手のエクスカリバーから極大の聖なるオーラを噴出させながら答えた。

「さあ……始めましょうか!」

 その言葉と同時に私は透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)の能力で自分の姿を消す。そして天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)の能力で一気に祐斗の背後に回りこみ、祐斗の右斜め後ろから首筋めがけて斬りかかった。


 
 

 
後書き

次回予告

「「キターーーーーーーーーーーー!!!」」

「これで……ラストォッ!!」

「いいぞ! そのまま抑えていろ!」

「何年お前の太刀筋見てきたと思ってんだ!」

「行きなさい! 祐斗!!」

 次回、第56話 鬼神降臨

「ふぃふぃふゅうふょうゆう……はふゅあ!!」


 
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