久遠の神話
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第七十九話 次期大統領としてその一
久遠の神話
第七十九話 次期大統領として
大統領選挙に落選してもまだ任期が残っている、このことはアメリカ大統領についても同じである。
だから今の大統領は少なくとももう暫くは大統領のままだ、だが。
「落選したからな」
「はい、もう完全にですね」
「今の大統領は終わりだ」
領事は自分の部屋でスペンサーと話していた、二人でソファーに座り向かい合ってコーヒーを飲みながら話しているのだ。
その中でだ、領事はシビアな声でこうスペンサーに言ったのである。
「もうな」
「レームダックですね」
死に体、スペンサーはこの言葉を出した。
「そうなりますね」
「完全にな」
「次期大統領、民主党のあの人の政策がですね」
「世界の注目の的になる」
まさにそうなるというのだ。
「完全にな」
「そうですね、就任の時までは」
「私も移動することになるだろう」
領事は自分のことも話した。
「駐日大使も交代になるだろうしな」
「対日政策も変わりますね」
「間違いなくな」
「よく日本では民主党は日本に冷たいと言われていますが」
「それは違うな」
「はい、ただ民主党が考えているアメリカの国益を求めているだけです」
そしてその中で日本との外交をどう進めていくべきかと考えているだけだというのだ、アメリカ民主党にしても。
「どうもセオドア=ルーズベルトからそう考えられている様ですが」
「実際はな」
「国益を考えているだけですから」
「そうしたことまでは考えていない」
「それが現実のアメリカ民主党の対日政策ですね」
「共和党だから日本に優しいとも限らない」
これは八十年代から九十年代のアメリカの政治を少し勉強しただけでわかる、レーガンやブッシュも日本に言うことは言っていた。
「そこがわかっていない人が日本にいるか」
「ネットを見てみれば」
「ネットは情報を多く集められるがな」
「そこで勉強出来るかどうかは」
「また別か」
「その様ですね」
「本があっても読むとは限らない」
領事はスペンサーの話を聞いてこう例えを出した。
「そういうことだな」
「誰でもそうですが」
「ニュースも見ただけでもな」
「大事なことはニュースを見てその内容を検証することです」
それこそがだというのだ。
「ただ見るだけではなく」
「ニュースを鵜呑みにする人間はいるからな」
それもわりかし多い、しかもそれで知ったつもりになるのだ。
「ネットも同じか」
「嘘を嘘と見抜けなければ」
「騙されるな」
「世の中意図的に騙そうとする人間もいます」
マスコミにしても同じだ、中には読者なり視聴者なりを意図的にペテンにかけようとする輩も存在しているのだ。
「それを見抜くかどうか」
「それも大事だな」
「私はそう思います、アメリカについても」
「共和党もな」
「親日ではないですね」
「別に日本が好きではないな」
このことについてだ、大使はまた言った。
「特にな」
「そうですね、好きなものは」
「アメリカ、いやネオコンの場合は」
「自分達だけですから」
「自分しかない人間が他国を好きである筈がないか」
「ただ利用しているだけです」
ネオコンは日本をそうした対象としか見ていないというのだ。スペンサーはこのことを間違いないと見ていた、だが。
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