万華鏡
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第五十四話 音楽喫茶その四
「英語もアメリカやオーストラリアの方も勉強していてね」
「英語もですか」
「それもなんですか」
「それにフランス語に中国語、ドイツ語にタイ語ベトナム語フィリピン語に」
フィリピン語とはタガログ語のことだ、この国はスペインアメリカと主を変えてきたのでそうした国々の言語と原語のそれが共にあるのだ。
「インドネシア語、オランダ語にロシア語にってね」
「何か凄い人ですね」
「あらゆる言葉も知ってるんですか」
「そういう学者さんもおられるんですね」
「ああした学者さんもいれば」
そのテレビでいつも喚いている茸頭の女流学者のことだ、同じ学者という職業でも何もかもが違うと思った五人だった。
そしてだ、ここでだった。
部長は五人にだ、こう言った。
「それでだけれどね」
「はい、制服ですね」
「その話題に戻るわよ」
このことに話を戻したのだった、制服姿のままの五人に今言うことはというと。
「それならそれでいいから」
「制服で、ですね」
「それで」
「面白いからね」
部長は五人に笑顔でこう言うのだった、そうしてだった。
自分も阪神帽を見つけて手に持ってこんなことも言った。
「いいわよね、阪神はね」
「いいチームですよね」
「勝っても負けても」
「そうよ、阪神はいいチームよ」
部長も阪神については肯定的な、むしろその言葉には愛情さえ見られた。
「確かにここぞって時にこそ負けるけれどね」
「それも愛嬌ですよね」
「いいところですよね」
「そこにも華があるのよ」
負けるその姿にもだというのだ。
「阪神はね」
「勝っても負けてもですね」
「そこに華がありますね」
「それで、なんですね」
「部長さんも」
「好きよ」
実際にだというのだ。
「前に言ってなかったかしら」
「そういえばそうでしたね」
「阪神ファンって言っておられましたね」
「修学旅行の時に」
「そうでしたね」
「虎も好きだけれど猫も好きよ」
そちらもだというのだ。
「猫いいわよね」
「ですよね、うちの学園動物園があってそこに犬猫コーナーありますけれど」
「猫もいいですよね」
「見ているだけで癒されますよね」
「可愛いですよね」
「犬と猫は神の生きものだけれど」
その中でも特にだというのだ。
「猫はいいわ、ただ性格はね」
「悪魔ですか」
「猫はそれなんですね」
「ええ、けれどね」
それでもだというのだ。
「猫はいい生きものよ」
「悪魔でもね」
例えそれでもだというのだ。
「可愛いでしょ」
「可愛いからいいんですね」
「そうなんですね」
「可愛いことは正義よ」
まさにそれだとだ、部長は五人に言い切る。
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