万華鏡
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第五十四話 音楽喫茶その三
「それであの人もなのよ」
「おかしいんですか」
「そうした人なんですか」
「学者さんっていっても色々でね」
それでだというのだ。
「ああした人も中にはいるのよ」
「幾ら何でも皆が皆ああじゃないんですね」
「非常識な人じゃないんですね」
「頭がおかしいとか」
「そういう人じゃ」
「学者さんが皆ああだと大変でしょ」
少なくとも学界は成り立たない、それは到底なのだ。
「うちの学校には仙人みたいな教授さんもいるけれどね」
「大学の方のですよね」
「確か悪魔博士とか仰いましたね」
「百二十歳でしたっけ」
「医学博士でしたよね」
「あれっ、百五十歳だったって聞いたわよ」
部長はその博士の話を聞いて反応してきた五人にこう答えた。
「それで医学だけじゃなくて文学とか法学とか工学でもね」
「博士なんですか」
「そうした人なんですね」
「そう聞いたわよ」
首を少し捻りながら五人に話す。
「日清戦争の頃からこの学園にいるらしいし」
「何か凄い人ですね」
「本当に何歳なんですかね」
「それであらゆる博士号を持っていてですか」
「リアルで仙人ですか?」
「普通の人とは思えないですけれど」
「私が聞いたところによると本当に仙人みたいよ」
部長は実際にこ聞いていた、仙人が実在するかどうかはともかくそう聞いているのだ。
「これからも生きていくって言われてるわ」
「ううん、凄い人ですね」
琴乃もその話を聞いて腕を組み考える顔になって述べた。
「学者さんはどうか以前に人間じゃないみたいですね」
「仙人は人間よ」
「いえ、人間だとしても」
普通の人間ではないというのだ。
「だって百五十歳ですから」
「普通に有り得ないけれどね」
人間の寿命は普通はそこまではない。百歳までいけば稀と言ってもいい。かつては七十で古稀と言われたものだ。
「大体日清戦争って前の前の世紀じゃない」
「一八九四年でしたね」
里香が日清戦争の年について答えた。
「そうでしたね」
「そうそう、明治の頃よ」
「明治自体が大昔ですよね」
「もうね、明治生まれの人も殆どいないし」
明治も遠くになった、大正にしてもだ。
「それでもあの博士はなのよ」
「その頃から現役でか」
「それで今も勉強し続けているらしいわ」
「えっ、百五十歳になられてもですか」
「まだなんですか?」
「まだ勉強しておられるんですか」
「百五十歳になられても」
このことにはプラネッツの五人も驚いた。流石に百歳を超えてまだ勉強することはしないだろうというのである。
しかも百五十歳だ、それではというのだ。
「まだ、ですか」
「百五十歳になられても」
「まだ勉強してるんですか」
「本当に学者さんですね」
「学究って言葉あるじゃない」
部長はこの言葉も話に出した。
「学んでその道を究めるっていう」
「それをですか」
「今もなんですか」
「百五十歳になられてもですか」
「勉強されてるんですね」
「語学も相当な人でね」
そちらも勉強しているというのだ、その博士は。
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