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万華鏡

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第五十四話 音楽喫茶その二

「そうなんですか?」
「ええ、そうみたいよ」
 実際にそうだとだ、部長も答える。
「八条学園って古いけれどね」
「自衛隊じゃないですよね、じゃあ」
「陸軍さんが協力してくれたみたいよ」
 学校の校舎やグラウンドを作るにあたってというのだ。
「明治の初期のね」
「滅茶苦茶大昔ですね」
 琴乃は明治初期と聞いてこう答えた。
「それだと」
「まあね、それに新築の時もね」
「自衛隊の人達が協力してくれたんですね」
「八条グループは昔から日本軍とは仲がいいから」 
「自衛隊ともですね」
「仲いいんですね」
「自衛隊さんの理解者よ」
 それが八条グループだというのだ。
「国を守ってくれている人達のね」
「だから余計になんですね」
「校舎やグラウンドの建築とかにも協力してくれるんですね」
「自衛隊さんがなんですね」
「有り難いですね」
「自衛隊はいい組織よ」
 部長もにこりと笑って自衛隊について友好的かつ好意的に述べた。
「とてもね」
「そうですよね、本当に」
 琴乃も部長に同意して頷く。
「自衛隊は」
「ええ、色々言う人はまだいるけれどね」
「震災の時なんて」
「神戸なんてね、酷かったでしょ」
 阪神大震災の時に神戸八条学園のあるこの街は文字通り壊滅した。多くの犠牲者が出たことは言うまでもない。
 しかしその災害救助に自衛隊は大きな貢献をしたのだ、それは阪神大震災以上の災厄となった東日本大震災でも同じだ。
 そのことを知っているからだ、部長もプラネッツの面々も言うのだ。
「困った時は助けてくれる人達よ」
「少なくともあれですよね」
 景子がここで言う言葉はというと。
「そこまで言って、とかに出て来る学者さんみたいなことはですね」
「ああ、あの派手な眼鏡かけて赤い茸頭の人ね」
「はい、あの人みたいにな」
「あの人おかしいから」
 その目に嫌悪を見せてだ、部長はその学者について述べた。
「というか学者に思えないでしょ」
「言ってることがあんまりですから」
「そうでしょ、私もね」
「部長さんもですか」
「あの人好きじゃないし」
「言ってることが酷いからですね」
「酷いなんてものじゃないでしょ」
 幾ら何でもだというのだ。
「あの人はね」
「本当に学者なんですか?」
「どうなのかしらね」
 部長は首を傾げさせて景子に応えた。
「論文書いたのは間違いないけれど」
「あれで論文書けるんですか?」
「そうじゃないの?」
 部長は甚だ懐疑的といった顔である。
「やっぱり」
「学者って頭いいんですよね」
「そうじゃないとなれない筈ですよね」
「けれどあの人って」
 どう見てもだとだ、景子は言うのだった。
「ちょっと」
「おかしいわよね」
「そうとしか思えないです」
 景子もこう言うのだった。
「あの人は」
「まあね、学校の先生もおかしな人多いから」
「学者さんもですか」
「そうじゃないかしら」
 幾ら言っていることが非論理的かつ感情的で学ぶ姿勢も進歩も感じられなくともだ、学者になれるというのだ。 
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