戦国異伝
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第百五十一話 四国と三河その十四
「とてもな」
「うむ、敵であるがな」
見事だとだ、家康は言うのだ。
そしてだ、さらにこうも言うのである。
「とても百姓ではないわ」
「百姓は戦うものではありませぬ」
井伊もだ、いぶかしむことを止められずに家康に応える。
「それがどうしてここまで」
「やはりこの者達は百姓ではありませぬぞ」
本多正信もだ、黄色い具足や陣羽織も朱にさせたままで家康に述べる。彼もまた懸命に戦ってきたのだ。
「忍に近いですがそうでもありませぬ」
「ううむ、何者じゃ」
いぶかしみ続ける家康だった。
「この者達は」
「殿、とりあえずはです」
石川が家康に言って来た。
「今はです」
「うむ、この者達を弔ってじゃな」
「はい、一向宗とも思えませんが」
灰色の服も着ていない、だがそれでもだというのだ。
「それでもです」
「弔いは忘れてはならんな」
「坊主達にそうさせましょう」
「ではな」
「そのうえで織田殿をお助けに向かいましょう」
「何処に向かうべきかのう」
「摂津かと」
石川は行くべき国も述べた。
「あの国がよいかと」
「摂津か」
「はい、おそらく越前も大変でしょうが」
「ここはか」
「摂津は本願寺の拠点、あの国でこそです」
激しい戦が行われているだろうというのだ。
「ですから」
「そうか、ではな」
「はい、ではことを収めてから」
摂津に向かおうというのだ。
「そうしようぞ、すぐにな」
「摂津にはおそらくですが」
酒井が家康に話す。
「雑賀孫市も来ているでしょう」
「あの鉄砲の名手のか」
「そしてあの者が率いる雑賀衆も」
彼等もだというのだ。
「彼等が来ています」
「雑賀衆がのう」
「伊賀、甲賀、風魔と並ぶ腕揃いの者達です」
そこまで強いというのだ、彼等は。
「その者達も来ていますので」
「そうじゃな、加賀や越前はな」
門徒達が暴れているこの国々のことはだ、家康が言う。
「信長殿ならどうということはない」
「はい、しかし摂津は」
「織田家は石山御坊には何万の兵を送っておられる」
「五万です」
酒井はその数も話した。
「そして長宗我部殿も来られるでしょうが」
「長宗我部殿の一万も加わり六万か」
「その六万で囲まれているでしょうが」
「辛いのう」
家康は六万の大軍と聞いてもだ、難しい顔で述べた。
「あの寺は相当な広さと堅固さじゃしな」
「はい、ですな」
家康も徳川家の者達も石山御坊は堺に行く時に来ていた、それで石山御坊もよく知っているのだ。その広さと堅固さを。
だからだ、こう言うのだ。
「あの寺は十万、いや二十万でなければ」
「攻め落とせませぬな」
「六万では足りぬ」
これが家康の見立てだ。
「むしろ六万では攻めて来れば」
「その時は」
「押されるやも知れぬ、ですから」
「はい、摂津に向かいましょう」
「そうするぞ、ではな」
「それでは」
こう話してだった、そして。
彼等は三河でのことを収めそうしてだった、摂津に急行するのだった。一向宗との戦いは徳川家も巻き込み派手な戦になっていた。
第百五十一話 完
2013・9・4
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