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戦国異伝

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第百五十二話 近江平定その一

                  第百五十二話  近江平定
 森は長政と共に戦い虎口を脱した、だが。
 敵はまだ攻めてくる、戦はまだ続いていた。
 その戦の中でだ、森は長政にこう話していた。城は相変わらず十重二十重に囲まれそうして攻められている。
 森は自ら槍を振るう、その中で共に槍を振るう長政に言ったのだ。
「今日中にです」
「おお、朽木殿がですな」
「はい、来られます」
 辛い戦いの中でも笑顔で言うのだった。
「ご安心下さい」
「そうですな、ここでまた援軍が来られると」
「余計に頼りになりますな」
「そうですな、それでは」
「今日を凌げば」
 それでだというのだ。
「後は殿が来られます」
「義兄上がですな」
「来られます、それでは」
「そうしましょうぞ」
 こう話してだ、そうして。
 彼等は今も凌ごうと城の者全員で戦った、それは激しい戦であり本願寺の者達が殺到し続けて来た、だが。
 一刻程した時にだ、都の方角からだ。
 歓声が起きそうしてだ、青い軍勢が現われたのだった。
 その彼等を見てだ、森は笑みを浮かべて長政に話した。
「来られましたぞ」
「ですか」
「はい、これで」
 今日もだというのだ。
「助かりました」
「左様ですな、朽木殿ですな」
「来られました」
 援軍、待っていた彼等がだというのだ。
「では今から我等も」
「朽木殿をお迎えしましょうぞ」
「ですな、それでは」
「今から」
 彼等はこの日も城を出てそのうえで門徒達を攻めて朽木の軍勢とも合流した。そして朽木は城内で言うのだった。
「いや、間に合って何よりです」
「よくぞ来られました」
「猿夜叉殿もご一緒とは」
「いえ、それがしも昨日来ましたが」
 そうしてだとだ、長政も応える。
「与三殿がご無事で何よりです」
「全くですな、しかし」
「しかしですか」
「はい、それでは」
 こう言うのだった。
「この日も凌げば」
「そうですな、それでは」
「殿が来られます」
 信長がだ、大軍を率いてだというのだ。
「明日にも」
「一日一日ですな」
 長政は確かな顔で述べた。
「この近江の戦は」
「そうですな、全く」
 森も長政のその言葉に頷く。
「一日一日が大事です」
「戦はそうしたものですが」
「しかしこの近江の戦は確かに」
 普通の戦以上にだというのだ。
「そうした戦になっていますな」
「全くですね」
「では」
 それではと話してだ、そうして。
 彼等はこの日も戦う、やはり夜もだった。
 朝まで戦が続いた、朽木はその戦が一旦終わってから疲れきった顔で森に言った。
「いや、この戦は」
「厄介ですな」
「それがしも多くの戦は経てきましたが」
 それでもだというのだ。
「これだけ激しい戦は」
「そうありませんでしたが」
「全くです」
 こう森に話す朽木だった。 
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