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戦国異伝

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第百五十一話 四国と三河その十三

「この者達はやはり」
「忍じゃな」
「それに近うございます」
 こう言うのだった、やはり自ら戦う家康に対して。
「それがしの見たところ」
「わしもそう思う」
「殿もですか」
「うむ、これは武士ではない」
 身のこなしといい武器の使い方といい、というのだ。
「忍じゃ」
「ですな、しかし」
「近いがな」
 近い、だが近いのと同じなのとは違うというのである。
「また別じゃ、妙にな」
「気色の悪いものですな」
「影、いや闇の様じゃ」
 家康は敵の一人を馬上から斬り捨てて言った。
「これではな」
「確かに、影よりも」
「この様な連中三河におったか」
 家康はこうも言った。
「忍の里すらおらぬのに」
「いえ、それがしも三河に生まれ育っていますが」
 大久保が応える、彼は代々三河に住んでいる言うならば生粋の三河者なのではっきりと答えることが出来た。
「この様な連中は」
「そうじゃな、わしも知らぬ」
「何者じゃ、本当に」
「三河者とは思えませぬ」
「ではどの国から来たのじゃ」
 家康は倒しながら首を傾げさせる。
「この連中は」
「武田、違いますな」
 すぐにだ、大久保はその可能性を否定した。
「武田殿も忍を持っていますが」
「特に真田殿がだったな」
 十勇士の名はもう天下に知られている、真田幸村の配下のこの者達はそれぞれ天下最強の忍達とさえ謳われている。
 だが、だ。その者達はというと。
「しかし十勇士も武田家の忍もな」
「こうした怪しい者達ではありませぬ」
「忍は影じゃ」
 家康はこのことも知っていた、それもよくだ。
「半蔵達もな」
「忍は影ですか」
「この連中は闇じゃ」
 それだというのだ、やはり。
「武器もやけによいしな」
「はい、刀に槍も」
「その使い方にも慣れておる」
「まことに奇怪であります」
「しかし幸い一人で戦うのは強うてもな」
「ですな、戦になりますと」
 彼等が今しているだ、それになるとだというのだ。
「それ程でもありませぬな」
「この者達は兵法を知らんわ」
 陣を組んで軍勢として戦うそれはというのだ。
「そう思うと楽じゃ」
「ですな、むしろ朝倉家よりも楽です」
 軍勢として戦うなら、というのだ。
「この連中は」
「ではこのまま攻めてじゃ」
 勢いに乗りそうしてだというのだ。
「勝とうぞ」
「はい、そうしましょうぞ」
 徳川家の軍勢は攻め続ける、そしてだった。
 遂には全て倒した、それを終えてからだった。
 家康は倒れ伏すその者達を見てだ、今もこう言うのだった。
「一人もおらんな」
「はい、一人もですな」
「背を向けて死んではおりませぬ」
「戦って死んでおりませぬ」
「この様なことは軍勢でもそうそうないわ」
 家康は言う。 
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