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久遠の神話

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第七十八話 選挙の結果その三

「少なくともアジア系への差別はかなり揺らいでいますし」
「だといいけれどね」
「アジア系はそもそも。日系アメリカ人は収容所に入れられていましたし中国人も移民を禁じられていた時期がかなり長かったですが」
「それでもなんだ」
「今はアジア系アメリカ人はかなり成功している部類です」
 アメリカ社会においてもだというのだ。
「それもかなり」
「知識人にも多いらしいね」
「起業家でも政治家でも」
 そうした責任ある立場に多いというのだ。
「聖職者にもいます」
「キリスト教のだね」
「そうです、勿論中華街も健在ですし」
「成程ね、変わったものだね」
「アメリカは常に変わっていく国です」
 変遷していく国だというのだ、いい意味でも悪い意味でもだが。
「ですからアジア系の権利もです」
「大きくなっていってだね」
「成功している人も多くなっています」
「じゃあ私もこの料理の腕があれば」
「成功するでしょう」
 そうなるというのだ。
「無事に」
「そうだね、まあ私は日本にいるつもりだけれどね」
「そうなのですか」
「馴染んでくればね」
 陽気な顔でスペンサーに話す。
「いい国だね」
「そうですね、日本は」
「ずっといたい国だよ、だからね」
「アメリカではなくですか」
「日本にいるよ。ここで暮らすよ」
「この中華街で」
「ははは、それはわからないけれどね」
 神戸の中華街に居続けるかどうかまではわからない、だがそれでもだというのだ。
「日本にはいたいね」
「そうなのですか」
「それも関西にね」
 地域も限定してきた、彼等が今いるこの地域にだというのだ。
「神戸でも大阪でもね」
「この関西ですか」
「いい場所だよ、賑やかでしかも食べ物も美味しいしね」
「だからこそですか」
「うん、いるならここだよ」
 関西だというのだ。
「野球の応援もいいしね」
「中国ではサッカーの方が人気があるそうですが」
「サッカーも好きさ、けれど日本にいて野球も好きになったんだよ」
「成程、それでなのですか」
「うん、この関西の球団」
 そのチームはというと。
「阪神タイガースだね」
「デトロイトタイガースではなく」
「名前はそこから来てるのかな」
「そう見ています」
「まあ日本のタイガースはね」
 今や日本で最も人気のあるチームだ、巨人はその本性が知れ渡り人気が落ちているのだ。日本も正しきことを知ることが出来る様になってきているのであろう。
「応援が凄いからね」
「甲子園というグラウンドで、ですか」
「一度暇で行ったらその熱さに驚いたよ、球場全体で一つのチームを応援しているのだからね」
「日本人は静かな方ですが」
「あそこはまた別だよ」
 甲子園球場、そこはだというのだ。
「またね」
「特別ですか」
「うん、 何もかもが違うよ」
 王は笑って甲子園球場の応援について話す、にこやな笑顔である。
「観ていて飽きないね、阪神もね」
「そのタイガースも」
「あのチームだけだよ、勝っても負けても華があるのは」
 完全に阪神の側に立ってだ、彼は言うのだった。 
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