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久遠の神話

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第七十八話 選挙の結果その一

                   久遠の神話
               第七十八話  選挙の結果
 王は願いを適えた、そして。
 その満ち足りた顔でだ、店に客として来ているスペンサーにこう話したのだった。
「最高の結末だよ」
「ハッピーエンドですね」
「うん、まさにね」
 それになったというのだ。
「誰も手にかけることがなかったから」
「そうですね、それで願いを適えられたことは」
「エゴにしてもね」
 例えだ、それが願いであったにしてもだというのだ。
「願いは適ったし」
「どうもエゴであることに後ろめたいことがあられる様ですね」
「あるよ、実際にね」
 その通りだとだ、王は返した。
「自分のことで誰かを手にかけることは」
「それは罪ですね」
「だからこの戦いについても悩んでいたんだよ」
「他の剣士の方と同じく」
 高代や広瀬の様にというのだ。
「貴方もまた」
「あったよ、けれどね」
「それでもでしたね」
「私はそのエゴの為に戦っていたからね」
 それが、というのだ。
「誤りだとわかているつもりだったし」
「それでも願いを適えたく」
「戦っていてそして」
「誰も殺めることなく願いを適えられた」
「よかったよ」
 また言う彼だった。
「まさに最高の結末だったよ」
「ではこれからはですね」
「うん、剣士としてではなくね」
 料理人である本来の彼として、というのだ。
「生きるよ」
「そうされますか」
「大尉さんとも戦うことはないよ」
 それもだ、ないというのだ。
「絶対にね」
「そうですね、相手が減ることは」
「大尉さんにとってもいいことだね」
「そうです、任務に近付けますから」
「それでだけれど」
 ここで王は話題を変えた、自分が今立っている傍の席で彼が作ったメニューを口にしている彼に対して。
「明日だったね」
「選挙ですね」
「うん、それだよ」
 大統領選挙、それだというのだ。
「それがあるよね」
「はい、あります」
「それで決まるね」
「大統領の政策次第でね」
「そのことはおわかりですね」
「これでも国際政治には注目しているんだ」
 そうだというのだ、王にしても。
「それがお店にも影響するからね」
「だからですか」
「国際政治、経済が特にだね」
「食材に影響しますね」
「そうそう、食材も今や国際色豊かだからね」
 これは中華料理だけではない、和食にしてもフレンチにしてもだ。勿論イタリアやスペイン、ロシアにアメリカと様々な国の料理もそれに入る。
「食材が滞ると料理店はそれで終わりなんだよ」
「極論では?」
「いやいや、極論ではないよ」
 王は笑ってスペンサーにこう言う。
「人が餓える様な状況で料理店もないからね」
「やはり極論だと思いますが」
「私にしても餓えは知らないけれどね」
 これは彼の国中国でもだというのだ、少なくとも彼は知らないというのだ。 
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