不老不死の暴君
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第七・五話 侯爵邸にて
ヴァンがビュエルバの街で「俺がバッシュだー!」と言いまくってる頃。
オンドール侯爵邸の貴賓室に少女と少年の二人が話していた。
「ヴァンは元気なんですね。帝国に連行されたから、もう・・・」
ヴァンの話を聞いたパンネロはそう言った。
ラーサーは書類を書きながら話す。
「すぐに会えますよ。それまでは僕があなたをお守りします」
「そんな」
そう言ってパンネロは俯いた。
するとラーサーが書類を書く手を止め、話しかける。
「それにしても・・・ラバナスタの帝国軍はやりすぎのようですね」
先程ラーサーはパンネロから聞いたラバナスタの帝国軍の有様を聞いた。
パンネロとしてはラーサーが帝国の上流階級の人だと思っていたので帝国兵が偉そうみたいな曖昧な表現しかしていなかったが。
具体的に言うと多くのダルマスカ人は市民権を買えなかった為、外民であった。
外民が住むのがダウンタウンで、その住民に対する帝国兵の暴行や凌辱など日常茶飯事だった。
色々原因はあるが一番の原因はヴェインの前のダルマスカ地方執政官の性格であろう。
その執政官は大の外民嫌いだったのである。
新民になり税を納めるダルマスカ人には寛容ではあったが外民には凄まじい差別を行った。
それを批判する外民には無実の罪を着せナルビナ送りにしたり、死刑にしたりした。
執政官に言わせれば新民や政民のように税も払わず、国家に貢献もしない奴などに寛容である必要など感じなかったのだ。
ヴェインが執政官に就任してからはヴェインの指導の下、外民差別は急速に減っているのだがパンネロはヴェインが執政官職に就いて直ぐに誘拐されたため、その事を知らない。
その為、ラーサーにはそれがラバナスタの現状だと思い、言葉を続ける。
「僕から執政官に話しておきます」
パンネロは少し驚いた顔でラーサーを見た。
するとラーサーは椅子から立ち上がり、パンネロのほうを向く。
「ヴェイン・ソリドールは僕の兄です」
パンネロは驚いて声を出せなかった。
ラーサーはパンネロの方に近づきながら話を続ける。
「執政官の仕事はダルマスカの安定を守ること。そして兄はどんな仕事もできる人です。今はうまくいっていないかもしれませんが・・・ラバナスタの暮らしはきっとよくなります」
ラーサーは自分の兄を尊敬し、信頼していた。
その為、兄が執政官になったのだからラバナスタの治安は回復すると疑ってなかった。
だからラーサーは景色を見ながら自信のある声でパンネロに言った。
「大丈夫ですよ。兄は凄い人ですから」
「あの人・・・恐いんです」
「えっ?」
パンネロの言葉にラーサーはパンネロの方に振り返る。
「すいません。お兄様のことを。でも、あの戦争で傷ついた人がたくさんいて・・・私も孤児です」
「帝国が恐いんですね」
ラーサーの言葉にパンネロは頷いた。
するとラーサーはパンネロの前で方膝をつき話しかけた。
「パンネロさん。ソリドール家の男子は人々の安寧に尽くせと教えられて育ちます。あなたを守るのも僕の仕事のうちなんですよ」
「信じていいんでしょうか」
パンネロは躊躇いながらそう言った。
するとラーサーは立ち上がり
「僕の名誉にかけて。兄もわかってくれます」
そうラーサーは言った。
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