不老不死の暴君
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第七話 ビュエルバの反帝国組織
スキップをしながらセアは魔石鉱の出口に向かって進んでいた。
出口の近くまで来ると声が聞こえてきた。
「大丈夫。彼、女の子は大切にする」
「フランは男を見る目はあるぜ」
「それは遠まわしに君がいい男って言いたいのか、バルフレア?」
なんでそんな話をしていたか知らないがとりあえずセアは思った事をそのまま言った。
するとバルフレアが顔を顰めた。
「あいつらはどうした?」
「馬鹿・モナンだったけ? そいつなら上手いことまいたよ」
「・・・あいつの名前はバッカモナンだぞ」
「そうか、変な名前だとは思っていたが俺の聞き間違いですか」
そんな感じでバルフレアと話してたらヴァンが話しかけてきた。
「それよりセア!」
「なんだ?」
「ラモンがラーサーで帝国の皇帝の息子だった!!」
「知ってるよ」
「え?」
ヴァンが変な声をあげ、周りの奴等もも変な視線でセアを見てきた。
するとセアはバッシュの方を向いて
「なんか変な事言ったか?」
「君は彼が皇帝の息子だと知っていたのか?」
「ああ」
「なら何故黙ってた?」
「だって俺の弟子が帝国嫌いだからばらすと面倒な事になると思ったんで」
「・・・」
なんか嫌な空気が流れた。
空気がまったく読めない筈のヴァンですら黙っている。
「・・・そういやパンネロは?」
苦し紛れにセアは話題を変えた。
するとヴァンが
「ラーサーが連れて行ったぞ」
セアがどういうことだと説明を求めるようにバッシュを見た。
「ジャッジに彼女が賊ではないかと疑われていたのだがラーサーが自分の供だと言いオンドール侯爵の客人として今は恐らく侯爵邸にいる筈だ」
「となると助けようとしたら侯爵邸にいかなきゃならないのか」
バッシュの答えにセアが途方にくれた声で答えた。
「侯爵は反帝国組織と繋がりがある。そっちの線でいい手があるぞ」
バルフレアはそう言ってバッシュの方を見た。
「侯爵は2年前に私の処刑を発表した。私の生存が明るみに出れば、侯爵の立場は危うくなる」
「侯爵を金ヅルにしてる反帝国組織にとっても面白くない話だろうな。『バッシュが生きてる』って噂を流せば、組織の奴が食いつくんじゃないか?」
なるほどとセアは思ったするとヴァンがそれを聞いて
「じゃあさ俺がこんなふうに町中で言ってくるよ」
そういってヴァンはポーズを決めて大声で叫んだ。
「俺がダルマスカのバッシュ・フォン・ローゼンバーグ将軍だ!!」
その声を聞いた周りの人たちが何事だとヴァンを見て、呆れてどっかに行った。
その事に気づかずヴァンは得意げにバルフレアに話しかけた。
「どうだ?」
「・・・・・まぁ目立つのは確かだな」
バルフレアは何とか表情を保ちながら答えた。
そしてヴァンに
「よしヴァン、お嬢ちゃんを助けるためにも、やるだけやってこい。できるだけ人の多い場所でな」
「わかった!任しとけよ!」
「オンドール侯爵と接触できるかどうかはお前次第だ。俺達は酒場にいる。何かあったら戻ってこい」
そうしてヴァンは街の方に走っていった。
「流石は俺の弟子だ。師匠として嬉しい限りだ」
「本気で言ってるのか?」
バルフレアは呆れたような顔でセアを見た。
セアは顔に笑みを浮かべていた。
「さて弟子が頑張っているのに師匠がサボってる訳にもいかないか」
「まさかとは思うが君もヴァンと同じ事をするきか?」
バッシュは慌てたようにセアに問いかけた。
するとセアは手を振って
「いやいや、ただの弟子へのサポートだよ」
「何をする気だ?」
「ヴァンがあなたの真似をしているところでヴァンに関しての根も葉もない噂を流すんですよ」
「例えば?」
「ヴァンは帝国の間者だとかそんな噂だよ」
そう答えるとセアも街の方へ歩いていった。
その後姿を見ながらフランはバルフレアに話しかけた。
「師匠があれだと弟子はああなるのかしら」
「・・・」
バルフレアはまたため息を吐いていた。
街の十字路の中心でヴァンがポーズを決めながら大声で叫んでいた。
「バッシュは生きているぞ!」
それを聞いたビュエルバのガイドがヴァンになにか言おうと近づいていくとヴァンは走っていた。
セアはヴァンになにか言おうとしたガイドへ話しかけた。
「まったく変な奴がいるものですね」
「ほんとうですね」
ガイドが同意してきた。
「そういえばあの少年さっきジャッジとなにか話してましたよ」
「え!?」
ガイドがおどろいてセアを見る。
セアはびっくりしたという演技をしながらガイドに話しかけた。
「いや、魔石鉱の所で金ぴかの鎧を着たジャッジと話してるのを見たんです」
「金ぴかの鎧ってそれってジャッジマスター・ギースじゃないですか?」
あの金ぴか鎧がジャッジマスターだとはセアは解っていたが名前がギースということはこの時初めて知った。
「そういやジャッジの紋章が入ったマントを着けていたような・・・」
そう言ってセアは頭をひねる真似をしてガイドに話しかけた。
「ま、俺は別に政治なんかに興味がありませんからね」
そう言ってセアはターミナルの方へ歩いていった。
そこで暫く待っているとヴァンが走ってきて大声で叫んだ。
「オンドール侯の発表は嘘っぱちだ!」
そういってるところビュエルバの警備兵に見つかりヴァンが警備兵に説教されていた。
その様子にセアは軽く笑みを浮かべたが直ぐに消しターミナルの入り口にいるガイドに話しかけた。
「ターミナルで聞いたんだけど街中に侯爵を貶めるような演説している少年がいるって本当なんですね」
その台詞を聞いたガイドは顔を顰めた。
「ターミナルでも噂になっているのですか」
「ええ、なんでもロザリア帝国の工作員だとかなんだとか・・・」
「は?」
「え?」
「アルケイディア帝国の工作員って噂じゃないのですか」
「いや、俺が聞いたのは侯爵と帝国の関係を悪化させるって話だったけど?」
「・・・私が知っている噂と違いますね」
「まぁ噂なんて尾ひれがつくものだし信憑性なんてないみたいなものですよ」
「そうですね」
「そうだよ」
そう言ってセアは酒場の方へ歩いていった。
酒場に入るとバルフレア達が席に着いていた。
セアは無関係を装い酒場のカウンターにいる女性に話しかけた。
「酒をひとつ」
「はいよ」
「それにしても街中で変な演説してる少年の噂聞きました?」
「ええ」
「まったく馬鹿らしいですよね。彼がビュエルバの反帝国組織の一員だなんて」
「え!?」
女性が驚いた顔でセアを見る。
何故か周りの店員達も驚いたようにセアを見ているがセアは無視した。
バルフレア達もセアに変な視線を向けてきたがそれも無視。
セアは店員たちが自分を見てきた理由を思い当たり内心で笑いながら思い出すようにして話を続ける。
「確か帝国寄りの侯爵を排除する為にやってるって話でしたよ」
「・・・そう」
「そもそもビュエルバは独立国ですよ?反帝国組織なんかあるわけ無いじゃないですか!!」
「そうね」
そう言ってセアはカウンターから酒を受け取りバルフレア達が座っている隣のテーブルに酒を置いて座った。
そして酒の入ったボトルのフタを空け、ボトルを呷った。
20分程すると変な演説をしていた少年が黒いバンガに担がれて酒場に入ってきた。
セアはバッシュの方に目線を向けた。
流石は将軍。ただそれだけでセアが言いたいことを察したようだ。
バッシュはヴァンを担いだ黒いバンガに話しかけた。
「すまない。彼は私達の知り合いだが・・・彼がなにか?」
「なんだとじゃあ奥に入れ!」
黒いバンガがそういうと店員達がバルフレア達を囲む。
その様子を見ていたセアが自分の予想が当たっていたことを確信した。
ここが反帝国組織のアジトなのだ。
情報が集まる酒場が本拠地とはまた古典的な。
バルフレア達がここにいたのもヴァンが連れ去られたという情報が入手し易いからだ。
そしてセアはちゃっかり店員達の囲みの中に入った。
バルフレア達と一緒にセアも酒場の奥へ連れて行かれた。
そして黒いバンガが座っている人物へ話しかけた。
「連れてきたぜ、ハバーロ」
「似ても似つかんな」
「やっぱり偽者かタチの悪い悪戯しやがって」
「だがそこらのガキがローゼンバーグ将軍を名乗るとは思えん」
ハバーロはそこで一旦言葉を止めた。
その隙を逃がさずセアが爆弾発言を投下する。
「ローゼンバーグ将軍はそっちじゃなくてこっちだよ」
セアがバッシュを指差しながら言った。
すると反帝国組織の人たちまたタチの悪い悪戯かとセアを睨んだ。
しかしハバーロの言葉によってその誤解は解ける。
「あんたは・・・本当に生きていたのか!」
「ああ」
そうなるとセアに向いていた視線はバッシュの方に移る。
「いかにも裏がありそうだとは思ったがまさか本人のご登場とはな。このことを侯爵が知ったら・・・」
「さて、なんと言うかな。直接会って聞いてみたい」
ハバーロはその台詞を聞き後ろにいるレベ族の人物に話しかける。
「・・・どうすんですかい、旦那」
「致し方あるまいな。侯爵閣下がお会いになる。のちほど屋敷に参られよ」
やっと面倒事の終わりが見えてきたなセアはため息をついた。
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