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検索失敗の異世界録

作者:biwanosin
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YES!ウサギが呼びました! 後編

 今、プリムちゃんの案内でベルゼブブのいるお城の周辺まで来たんですけど・・・

「人数で攻めろ!強力なギフトを持ってはいるが、相手は二人だ!」
「それも、片方はまだ未熟な小娘!危険なのはあっちの人間だけだ!」

 そう、ベルゼブブの部下の人たちに囲まれていま~す。
 まったく、もう百数人は消し飛ばしてあげたんですけどねぇ・・・学習しないみたいです。
 とりあえず、十字架を洋弓の形にして・・・

「浄化の力、三割開放。葵、いっきま~す!!」

 矢を放ち、向かってきた方々を消し飛ばしました~。
 全く、そろそろこんな有象無象の相手には飽きてきたんですけどねぇ・・・まだまだ出てくるみたいです。
 確かに広いお城ですけど、どこにこんな人数が・・・あ、そういえば相手は蝿でしたね~。そりゃ、たくさんいるわけですよ~。

「そろそろ飽きてきましたねぇ・・・プリムちゃんはどう思いますかぁ?」
「いや・・・ひたすらアンタが規格外だって分かるだけ・・・まあ、飽きたんなら一つ提案は有るけど?」

 プリムちゃんはそう言って、お城を指差し、

「あそこを消し飛ばせば、雑魚は消えて主力クラスだけが残るんじゃないの?」
「お~。それは、とってもいいアイデアですねぇ!」
「あ、でも・・・確かあそこにはベルゼブブだけじゃなくて・・・」

 プリムちゃんが何か言っていますが、そんなことは気にせずに弓を展開します。
 そして、今まで片腕だったのを両腕に十対の羽を持つ天使の刻印を浮かべ、弓を引き、

「浄化の力、二十割(・・・)解放。いっきまーす!」
「って、何それ!?近くにいるだけで浄化されそうなんだけど!?」

 大丈夫ですよ~。ちゃんと制御はしていますから~。
 まあタダの悪魔なら見ただけで消えそうですけど・・・プリムちゃんはサタンの娘ですから、きっと大丈夫ですよ~。

 そして矢はまっすぐにお城まで飛んで行って・・・あ、お城がまるっと消えましたね~。
 おや?なにやらこちらに向かって飛んで来たり走って来たりする影が六つほど・・・

 巨大な蝿に頭がカラス(それも二つ)に人間の体の人、牛の尾にねじれた二本の角、顎には髭を蓄えた醜悪人に竜みたいな影もありますね~。あ、堕天使に綺麗な女性もいますね~。
 あの顔ぶれは・・・あ、七つの大罪ですか~?プリムちゃんを入れれば全員揃いますね~。

「キサマか!?キサマが我が城を消したのか、サタンの娘よ!」
「あー・・・いや、それはこっち」
「初めまして~。ヘル・サタンの朱羽葵で~す」

 私が自己紹介をすると、皆さんが血走った目でこっちを見てきます~。怖いですね~。

「キサマァ・・・死ねえ!」

 そう言いながら何かを放って・・・この熱は、色はないですけど炎ですねぇ。とりあえず、右腕を出して取り込みますかぁ。

「面白いですね~。始めてみましたよぉ、色のない炎なんて~」
「な・・・我が炎が効かない、だと!?」

 巨大な蝿・・・ベルゼブブさんは驚いていますね~。あ、プリムちゃん以外全員驚いていました~。
 まったく、皆さんのような悪魔の方々がそんなほうけてちゃダメだと思うんですよね~。

「にしてもぉ、これだけの方々を手加減して(・・・・・)葬るのは少し骨が折れそうですね~。まあ、何とかなるでしょうけどぉ」
「「「「「「・・・・・・」」」」」」

 悪魔の方々は皆さん固まったと思ったら・・・あ、いっせいに炎を放ってきました~。瘴気も一緒にはなってきてますね~。
 色も黒、藍青と黄色、無色、虹色、青、冷たい炎までありますね~。瘴気もなんだか色々と違いますしぃ・・・まあ、全部取り込ませてもらいますけど~。

「全部・・・取り込んだ、だと!?」
「ご馳走様でした~。では、次は私から行きますね~」

 そう言いながら目の前にいた綺麗な女性・・・アスモデウスさんに手を向けて、瘴気に包まれた少女の刻印を浮かべながら、瘴気を槍状にして放ちます。
 お、上手いこと貫けましたね~。

「な・・・なんだ、今のは・・・」
「キサマ、一体何者だ・・・」
「そうですねぇ・・・検索失敗、とでも認識してくださ~い」

 あ、アスモデウスさんが虫の息ですねぇ・・・とりあえず、天使の浄化で止めでも刺しておきますかぁ。

「さあ、一人終わりましたよ~?もう何日も弱い方々をけしかけられて、飽きているんですよね~。せいぜい、私を楽しませてください~」

 そう言いながらベルゼブブさんを殴り、第三宇宙速度で殴り飛ばしま~す。
 そのまま蹴りでベルフェゴールさんも第三宇宙速度で蹴り飛ばして、ルシファーさんをそちらに向かって投げ飛ばしま~す。
 お、三人ともぶつかりましたね~。

「さて、後はリヴァイアサンさんとマモンさんですか~。では、やりますかぁ、ミカさん?」
「まあ、いいんじゃない?悪魔を滅するのは仕事だし」

 私が呼びかけると、十字架からチャラそうな人が出てきま~す。

「・・・ねえ、葵。そちらは・・・?」
「ん?ボク?ボクは天使長ミカエル!親しみを込めてミカと呼びたまえ、宿敵の娘よ!」
「ミカさん、そう言うことはまず目の前のごたごたを片付けてからにしましょうね~?」
「それもそうだね。じゃあ、そうしようか!」

 そう言いながら翼を広げて、ミカさんは私が投げ飛ばした悪魔達の方に飛んで行きました。
 生き生きとしていますね~。悪魔と戦うのが心底楽しいといっていましたし、仕方ないでしょうけど~。

「さあ、こっちはこっちでやりましょうか?大丈夫ですよ。半分の力も出しませんから~」

 そう言って微笑む私に、悪魔三人は心底怯えていました。
 プリムちゃんに向けたつもりはなかったんですけどね~。



△▼△▼



「ふう、終わりました~」
「こっちも終わった。ボクのことを思って多く渡してくれて、サンキュー!」
「別にいいんですよ~。私はもう、一人倒していましたから~」
「・・・もう、何があっても驚かない・・・アタシ、今そんな自信がある・・・というか、どうしてベルフェゴールを生け捕り出来るのよ・・・」

 プリムちゃんが遠い目をしていますけど、何とか我を取り戻してこちらに歩いてきました~。

「では、ボクはもう帰る。あまり長く限界出来ないし!」
「はい~。お疲れ様でした~」

 そう言って、ミカさんは十字架に戻っていきましたぁ。
 もう既に魂だけの存在ですしぃ、あまり長いこといれる状態ではないんですよね~。

「あの・・・」
「はい?どうしました、プリムちゃん?」

 プリムちゃんがもじもじしながらこちらを見てきたかと思うと、バッと頭を下げ、

「今回のことは、本当にありがとう!私自身の手で敵も取れたし、全部終わった!だから、ありがとう!」
「別にいいんですよ~?私も一応、ヘル・サタンのメンバーですし~」
「それなんだけど・・・これから、どうする?」

 プリムちゃんは頭を上げて、こっちを見てそう聞いてきます。

「前にも言ったと思うけど、私のコミュニティは名と旗こそあれ、土地はない。だから、アンタが箱庭を楽しみたいと思ってるなら、他のコミュニティに行くべきだと思う」
「・・・いまさら、何を言ってるんですか~?」

 私はそう言いながら、プリムちゃんと目を合わせます。

「私は、確かにこの箱庭を楽しむために来ました。私みたいな規格外とつりあうような存在を求めて。ですから、箱庭の中には行きます」
「そう・・・じゃあ、」
「でも、それはプリムちゃんも一緒ですよ~?」

 そう言うと、プリムちゃんは驚いたように目を見開いています。

「別に私としてはコミュニティに水準はなかったんです。ですから、どこかしらに所属さえできればいいですし、なんなら、知り合いのいるコミュニティと同盟でも結べばいいですから~」
「じゃ、じゃあ・・・」
「一緒に行きますよ、プリムちゃん。忘れたんですか?あなたは、私に隷属してるって事」

 そう言いながら立ち上がって箱庭の方へと足を向けると、少ししてプリムちゃんも小走りでついてきます。

「仕方ないわね!いいわ!コミュニティのリーダーとして、アンタについていってあげる!」
「は~い。では、行きましょうか~」

 私達は二人で揃って、箱庭の中へと歩いていきました。
 なにやら空では流星群が起こっていますが・・・まずは、私と一緒に召喚された人たちのところ、ノーネームの本拠にでも向かいましょうか?



▼△▼△



「お久しぶりです、皆さん。私達のコミュニティと同盟を結びませんかぁ?」
「急に戻ってきたと思えばそれか・・・と言うか、まずそう言うことは俺たちではなくうちのリーダーに聞け」
「連れて来た・・・」

 連れて来られたのは小さな男の子でした。
 まあ、プリムちゃんと変わらないくらいですかね。

「初めまして~、私は朱羽葵。今回はリーダーと一緒に同盟の話しをしに来ました~」
「あ、ええと・・・僕はジン=ラッセル、齢十一になったばかりの若者ですが、コミュニティのリーダーをしています」
「アタシはリリム=サタン。リーダーだけど葵に隷属してるから、今回の件は全部葵に任せてる」

 ふむ、ジン=ラッセル・・・ジラル君でいいですかね?
 それとプリムちゃんの名前を聞いて少し動揺していますけど・・・いざやんに肩を叩かれて、話を再開しました。

「それで、まずはそちらのコミュニティの名と旗印、階層を確認させてもらえますか?」
「分かりました~。コミュニティの名前は『ヘル・サタン』。旗はこちらになりま~す」

 そう言いながら私はギフトカードを渡して、ついでにギフトも明かします。
 出来る限り、相手に手を明かした方が信用されそうですし~。

「・・・階層は?」
「それが、土地はないんですよね~。今回の同盟も、住むところ欲しさによるものなんですよ~」
「・・・では、こちらから出すのは住む場所や食事、といったところでしょうか?」
「そうなりますね~」
「分かりました。では次に、そちらからは何を差し出してくれますか?」
「私達のコミュニティ・・・といっても私とプリムちゃんだけですけど。この二人はあなた方のコミュニティの掲げる魔王打倒に手を貸します」

 私の言葉に、向こうは息を呑みました。

「それは、全ての戦いに参加する、と言うことでしょうか?」
「はい。サタンの娘であるプリムちゃんは主催者権限を持っていますし、悪用はしていませんから、魔王ではありません。そして、私の実力についてはそのギフトカードを見ても分かると思いますが、未知数です。これを買っておこう、とは思いませんか?」
「・・・確かに、僕たちは戦力を求めていますし、このギフトはギフトカードすら正体を特定できない未知数なもの。たったアレだけのことで手に入るのなら、十分すぎる価値があります」
「それと、これはオマケですけど、サウザンドアイズのようなお店を利用する際に、私達のコミュニティの旗印を使うことも出来ま~す」

 これには、向こうも考えるだけの価値があったみたいです。
 ノーネームであるが故に持っていないものをちらつかせ、少しでも有利に進められるようにする。交渉には必要なことですよね~。

「・・・分かりました。僕個人としてはこの交渉に乗ってもいいと思います。十六夜さんと黒ウサギはどう思いますか?」
「そうだな・・・俺からはなんとも言えねえ。こいつはあまり嘘をつかないやつだと思うが、それでもあってからが短すぎるからな。判断が出来ねえ」
「黒ウサギは、正直反対です。せめて知り合いからの紹介ならよかったんですけど・・・」
「じゃあ、知り合いの方に頼みますか?ミカさん、お願いしま~す」

 そう言いいながら十字架を持ち上げると、中からミカさんが出てきます。

「よ、久しぶり、黒ウサちゃん!」
「へ・・・ミカエル様!?」

 黒ウサさんはミカさんを見てすごく驚いていますね~。
 まあ、かつての同士にあったらそうなって当然でしょうけど~。

「ど、どうしてこちらにいらっしゃるのですか!?」
「いやね。魔王のコミュニティに捕まっていたところを葵ちゃんに助けてもらったんだよ!ちなみに、ここを紹介したのもボクさ!」

 そんな感じで、ミカさんは黒ウサさんと話しを進めて行きます~。
 まあ、ほとんどが嘘なんですけど。この場を乗り切って、かつかつての同士達が箱庭の外の世界に飛ばされていることを知らせずに済むように、前もって決めていたことです~。

「・・・かつての同士、ミカエルさんが信用している相手なら大丈夫そうですね。では、ノーネームは同盟に賛成します」
「では、これからよろしくお願いしますね~」

 これでようやく、頼まれていたノーネームの復興に手を貸せそうですね~。
 さて、これからも頑張りましょう! 
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