戦国異伝
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第百五十一話 四国と三河その七
「その三日の間な、そしてそれからもだ」
「何と、待たれるのですか」
「戦の後も」
「わしは待つ」
微笑んだままだ、再び言う家康だった。
「あの者達をな」
「殿の御前に来ることをですか」
「このままですか」
「そうじゃ、待つぞ」
また言う、そして残っている者達にはこう言うのだった。
「御主達は出陣じゃ」
「三河にですな」
「一向宗に」
「そうじゃ、武田の動きも気になる」
隣にあるこの家への注意は忘れない、今もだ。
「だから早いうちに話を収めるぞ」
「では一揆をすぐに平定し」
「そしてですか」
「どうも武田の動きが怪しい」
こう察してのことだ。
「だから早いうちにな」
「一向宗を収め」
「武田に備えますか」
「敵は一つではない」
このことは徳川家にしてもだ、本願寺だけでなく武田もなのだ。
「だからな」
「ですな、それでは」
「一向宗は急いで収めましょうぞ」
「ではわしも用意に取り掛かる」
出陣、それにだというのだ。
「すぐに取り掛かれ、そして半蔵」
「はっ」
服部が応える、彼は一向宗ではないのでここにいるのだ。
「一向宗の者達をですな」
「調べよ」
出陣する三日後までにだというのだ。
「そしてそのうえでじゃ」
「必要とあらばですか」
「仕掛けよ」
忍の技を使ってだというのだ。
「よいな、それで奴等を乱せ」
「畏まりました」
「敵が乱れればそれに越したことはない」
動きが鈍り隙が出来る、それでなのだ。
「だからじゃ、よいな」
「ではすぐに」
「他の者達は戦の用意じゃ」
即ち出陣のだというのだ。
「ではすぐにかかるぞ」
「それでは」
家臣達も家康の言葉に応えた、そしてそのうえでだった。
彼等は黄色い具足に旗を用意し出陣の準備に取り掛かる。出陣の用意は順調で岡崎城は忽ち黄色く染まっていく。
その彼等の中には家康もいる、家康は自ら出陣の指揮を執っている。
その彼にだ、鳥居が言って来た。その言う言葉とは。
「殿本多殿ですが」
「平八郎ではないな」
本多忠勝、彼ではない」
「あ奴か」
「はい、まだ」
「部屋に篭ったままか」
「はい」
その通りだとだ、鳥居も答える。
「残念ですが」
「そうですか、しかしか」
「動じられませんか」
「うむ」
その通りだというのだ。
「来る、あ奴もな」
「信じておられますか」
「あ奴だけではない」
「他の者達もですか」
「必ず来る」
己の前にだというのだ。
「だからな」
「今はですか」
「待つだけじゃ」
安心しきっている笑みでだ、言う家康だった。
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