久遠の神話
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第七十七話 百億の富その三
「とても」
「そうでですね、政策転換が出来れば」
「しかしです」
その政策転換は出来なかった、それは何故かというと。
「共和党内のネオコン勢力が強く」
「数は少ないんですがね」
「しかし彼等が主軸になってしまっていて」
大統領自身もそのネオコンだ、それならばだったのだ。
「穏健派は数は多くとも力を持てず」
「ずるずるとですね」
「今に至ります」
「何か共和党は泥沼にはまっていますね」
少尉は共和党の現状をこの言葉で表現した。
「まさに」
「そうですね、実際に」
「ネオコンという泥沼ですか」
「そこから抜け出ない限りです」
決して、というのだ。
「復活は出来ません」
「そうですか」
「アメリカ社会も変わってきています」
どう変わってきているかもだ、スペンサーは少尉に話した。
「これまで白人が多かったですね」
「ええ、私もアイルランド系ですが」
所謂ホワイト、アングロサクソン、プロテスタントのワスプかつてアメリカの主流と言われた者達ではない。だが白人ではある。
「そうなりますね」
「しかしヒスパニックが増えてきていますね」
「ええ、凄い勢いで」
「彼等が増えてきているので」
「もう白人優位じゃないですね」
「そうしたアメリカは終わろうとしています」
「ヒスパニックが一番多い社会になるんですね」
所謂ラテン系だ、メキシコやキューバやプエルト=リコその他の様々な中南米諸国をルーツとしている国々からの移民である。
「アメリカは」
「はい、そうです」
「そのことは私も聞いてますけれど」
少尉にしても知っていることである、将校だけにこうした社会のことを知らなくては話にならないのである。
「実際にですか」
「そうなっていきます、そして」
スペンサーはさらに話した。
「ヒスパニックは民主党に多いですね」
「ええ、民主党は元々リベラルが多いですから」
所謂民族的人種的にも融和な政策や主張を掲げる一派だ、その彼等だからである。
「ですから」
「それで、ですね」
「ヒスパニックの民主党員も多く」
「ヒスパニックの支持も多いんですね」
「民主党はヒスパニックだけではないですが」
アフリカ系やアジア系、ユダヤ系、それにイタリア系といったアメリカ社会のマイノリティーとされる勢力からの支持が多いのだ。民主党の特色でもある。
「最近ではヒスパニックですね」
「ヒスパニックは経済的にもまだ辛いですね」
「その彼等を無視する政策ならば」
彼等から支持を得られるはずもないというのだ。
「とても」
「アフリカ系やアジア系もいますしね」
無論他の人種もだ、アメリカは人種的にも一言では語れない社会なのだ。
「白人の、ワスプの一部だけみたいな政策は」
「最早成り立ちもしないし支持も得られません」
「だから共和党は負けるんですね」
「そうです」
こう少尉に話す。
「確実に」
「ですか。まあ私にとってはいいことですがね」
「君も民主党支持者でしたね」
「鞍替えしました」
そうしたというのだ。
「最初は共和党支持でしたが」
「それをですか」
「士官学校にいる最中に」
空軍のだ、そこにいる中でだというのだ。
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