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久遠の神話

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第七十七話 百億の富その四

「考えが変わりました」
「そうだったのですか」
「最初はあまり考えていませんでした」
 士官学校に入る前までの彼はそうだったというのだ。
「政党の政治については」
「それで何故共和党支持だったのですか?」
「共和党の政治が合衆国の敵を倒していると思ったからです」
「テロ支援国家をですね」
「はい、イラクや北朝鮮を」
 そう考えていたというのだ、かつでの少尉は。
「しかし、北朝鮮についても」
「テロ支援国家から外していましたね」
「はい、かなり前に」
 息子のブッシュの時だ、それまで散々と悪魔の如く言っていたが結局テロ支援国家、即ち合衆国の敵としなくなったのだ。
「それはどうしてかと考えますと」
「資源ですね」
 スペンサーは一言で言った。
「それのあるなしですね」
「結局はそれですね」
「それ自体は合衆国の国益を考えてですね」
「そう思いますが」
 だが、だというのだ。少尉も。
「建前と本音が違うのが政治です」
「それはどの国でもです」
 アメリカに限らない、本当に政治は建前と本音が違うものだ。このことが理解出来るか出来ないかが政治への理解のしやすさの分かれ目だろうか。
「同じです」
「そうですね、そのことはわかっていましたが」
「それでもですね」
「はい、その国益がです」
「一部にしか行き渡らないですね」
「今の共和党の政策では」
 ネオコンとごく一部の富裕層だけにしか及ばない、少尉もそのことがわかったというのだ。
 それでだ、今はだというのだ。
「そういうことがわかりまして」
「今はですね」
「民主党を支持しています」
 そうしているというのだ。
「まあ公には言いませんが」
「そうですか」
「一度共和党は惨敗して」
「それからですね」
「ネオコン的色彩をなくしていくべきですね」 
 それがいいというのだ、少尉は。
「そうしてより広い層、合衆国全体を考えた」
「そうした政策を掲げて実践していくべきですね」
「私はそう思います」
 少尉は手振りも入れてスペンサーに話した、右手を少し開いて上から下に降ってみせつつ話したのである。
「違いますかね」
「私も大体そうした考えです」
「大尉もですか」
「合衆国が世界のリーダーにある為には」
「自分達のことだけを考えるのではなく」
「世界全体を考えていくべきです」
 これがスペンサーの考えだった。
「さもないと世界のリーダーであり続けられません」
「今はそうであってもですね」
「その座から落ちてしまいます」
 降りるのではなくだ、そうなってしまうというのだ。
「若しくは剣が落ちてくるというべきか」
「ダモクレスの剣ですね」
 古代ギリシアの僭主ダモクレスがおべっかを使う家臣の一人を玉座に座らせてその上に剣を垂らしてみせて自分の座、玉座はそうしたものだと話した逸話である。古来より玉座はそうしたものだと言われている。 
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