とある蛇の世界録
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第七話
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そこは綺麗な白い花が、たくさん咲き誇るお花畑だった。爛々と輝く太陽が眩しい。だが、それに反して陽は暖かく、とても心地の良い日だった。
お花畑の中心。そこにある大きな木の下に、二つの人影があった。
片方は死んだように白い肌に、艶のある黒髪をもつ。少女のような容姿をした男――まぎれもなく、朧だった。もう一人は、黒い修道服に金髪の少女だった。二人は肩でもたれ掛かり、支えあいながら眠っていた。
気持ち良さそうに眠る、金髪の少女。その膝の上には、黒い背表紙の大きな本が置かれていた。
パラッ。
そのページが一枚、風に吹かれて捲れた。その音に目を覚ましたらしい金髪の少女は、首を回し辺りをうかがう。そして、自分の右側にいるその少年をみて、綺麗な純白の花のように、顔を崩した。
「朧ッ! 起きてよッ! 朧ッ!」
耳元で大声で叫びながら、朧の肩を揺らす。それに目をゆっくりと開けた朧は、その姿を確認し、笑った。
「どうした? ●●●」
「んーとね。目が覚めちゃったから、そろそろ帰ろうかなって思って」
それに微笑み、朧は目前の白い花を見やる。
「おーぼーろー? お花に浮気ー?」
「そんなことないさ。帰ろうか?」
「むー、まあいいや。帰ろう」
「あぁ」
朧は立ち上がり、金髪の少女に手を差し出す。
「おー。朧、紳士だね」
「当たり前だ、私は男だからな」
「う……うん、まぁそうだね、うん」
「おい」
「えへへへ。ごめん冗談だよ」
「ふふ、分かってるよ」
金髪の少女は、その手をとって立ち上がった。そして、手をつなぎ歩き去っていた。
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目を覚ますと、そこは自室のベットの上だった。そのまま眠りについてしまったらしい。懐かしい夢を見た。そこで、自分の手に握られていた、金のロザリオに気付く。
それを強く握り締め、少ししてそれを首にかける。
「アーシアは何処だ?」
寝ぼけているわけではないが、それでも少しだけ疲れていた。眠っていたはずだが、もしかしたらさっきの夢のせいかもしれない。
――あいつはいつも私を困らせてくれたな、と苦笑する。
そこで、気がついた。魔力の反応だ。これは学校の方からだろう。ヤトの感じもするから、アーシアもそこにいるはずだ。
「くッ……!」
朧はそのまま窓から飛び立ち、駒王学園を目指した。
校庭には、オカルト研究部とゼノヴィアやイリナが倒れ伏していた。その中心の空高くにコカビエルは浮かんでいた。そこにはハルパーやフリードの死体もあった。残っているのは、アーシアとヤトのみ。
「聖剣を壊して油断したか? それとも、ただ単にこの程度だったということか?」
「くぅ……」
「本来ならば、そこの娘も殺してやるところだったがな。まさか、あの『蛇神』の子がいるとは、さすがの俺でも思ってなかったぞ」
それに笑って返すヤト。今までの蹂躙を見ても平然としている。一応は仲間であるリアスたちが死に掛けているというのに、あるべきであろう素振りを全く見せない。そもそも助けようとする素振りも見せなかった。
「みなさん……」
口を覆い、呆然とするアーシアをよそに――いや、しっかりとそれも気にしながらもコカビエルを見据える。
そして、ヤトは虚空を見つめ笑った。
「お前、早く逃げた方が良いよ」
「あん?」
「お前は、蛇のテリトリーに侵入したんだ。生きて返すわけがないだろう?」
「ほう、それはお前が戦うということか?」
そのコカビエルの問いに、いや、と笑って返す。その問いの答えは直ぐに現れた。
――外で生徒会の人間が張っていた結界が、軽快な音と共に壊れた。
さらに、壊れた結界の後に、また新しい結界が生み出されたのだ。それは先ほどまでの、隠蔽の結界とはまるで違う真っ赤な固有結界。この世界にも類を見ないほどの強硬な結界だった。その結界の出現と共に、
今は亡きハルパーの作り出した、地面の紋章が破壊された――否。跡形もなく霧消した。
「なにッ!?」
――そこで、叫ぶコカビエルに、圧倒的な威圧感が襲い掛かる。
「ッ!?」
次の瞬間。コカビエルの体が地面に叩きつけられた。
「ガグハァっ!?」
その悲鳴と共に降り立った影。
「力の無い戦闘狂ほど、面倒くさいやつは存在はしないな」
その影はの眼は、まるで蛇のように細い眼だった。
「私の友に手を出したんだ。死ぬ覚悟は出来ているんだろうな」
世界最強の神が、駒王学園に降り立った。
後書き
朧の固有結界は、正直言って最強です。
場合によっては、月姫のОRTより強いくらいです。
その設定は後々に…………
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