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万華鏡

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第五十三話 音楽喫茶その一

            第五十三話  音楽喫茶
 琴乃は多忙だった、お化け屋敷が交代になると。
 次は部活だ、軽音楽部の方に行くと。
 部長がだ、得体の知れない派手な格好でいた。その格好は和風だが服の丈は短く足は網タイツだ。服の柄も何が何かわからない。
 それでだ、琴乃は首を傾げさせつつ部長に問うた。
「あの部長、その格好は」
「浴衣よ」
 それだというのだ。
「ギャル浴衣ね」
「そうなんですか?」
「そうよ、よく見てね」
 部長はこう言って琴乃に今の自分の格好を見せた。それは確かにだった。
 浴衣だ、しかしその浴衣の柄はよく見ると。
「黒字に青や赤の蝶々ですか」
「派手でしょ」
「しかも脚は網タイツですか」
「どうかしら」
「あの、どうしてその格好なんですか?」
「ちょっといつもより目立とうと思ってね」
 それでだというのだ。
「この格好にしたのよ」
「そうなんですか」
「派手にいかないと、どぎつい位にね」
 見ればメイクもかなり派手だ、 部長はその派手な目張りと赤く輝くルージュの色も琴乃に見せつつ言う。
「こんな感じでね」
「派手過ぎません?」
「過ぎるのがいいのよ」
 それこそが、というのだ。
「だからなのよ」
「それでその格好ですか」
「下着は見えない様にしてるから」
 それは大丈夫だというのだ、確かに見えそうで見えない。
「いいでしょ」
「絶対領域ですね」
「絶対領域もね」
 それもだというのだ。
「見せるものだからね」
「見えそうで見えない、ですね」
「実際に見せたら駄目よ」
 部長は微笑みつつ琴乃にこの秘訣も話す。
「中身はね」
「そうですね、それは」
「実際に見せないことにこそ味があるから」
 それ故にというのだ。
「見せるのならね」
「見せパンですか」
「それかブルマよ」
「ブルマなんてもうないですよ」
「例えよ、スパッツとか半ズボンよ」
 これが現実である、八条学園でブルマが廃止されて久しい。もうそういったスパッツや半ズボンになっているのだ。
 それでだ、今はなのだ。
「そっちになるわ」
「確かに見せても何ともないですね」
「どんどん見せられるでしょ」
「はい、平気で」
「むしろブルマよりもね」
「ブルマは下着ですよね」
 琴乃は首を傾げさせてこう言った。
「あのデザインだと」
「正直それ以外の何でもないわね」
「ブルマだと見られることは恥ずかしいですけれど」
 それでもだった。
「スパッツや半ズボンですと」
「恥ずかしくないでしょ」
「そのままの格好で出ても」
 全くだというのだ、琴乃も。
「恥ずかしくないです」
「スパッツや半ズボンの体操服で歌ってもね」
「動きたいですけれど」
「何とも思わないわね」
「はい、本当に」
「それは駄目よ、着る方もね」
 スパッツや半ズボンをミニスカートの下に穿くことはというのだ。 
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